リフレイム   作:アカネのメガネ

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CHAPTER.10「エゴだったとしても」

それから数時間後。

 

地下生活者「…ヒヒヒ…。これはこれは…中々面白くなってきましたね…」

メグ「…全っ然面白くないよ、こっちは」

地下生活者「それは失礼…!」

メグ「…で、もう動くの?」

地下生活者「えぇ、このキャンペーンの終わり…見届けなければいけませんから」

メグ「…それで、どうするの?ここから」

地下生活者「そう焦らないでください…。今に始まりますから」

メグ「…始まるって…」

 

メグがそう言いかけた途端、爆発音が響く。

それは、ゲヘナ学園の方向からだった。

 

地下生活者「ヒヒッヒ…!始まった様子ですね…!」

メグ「…何を…いや、まさかフランシス…?」

地下生活者「ご名答…!さぁ、この混乱に乗じて、あなたのやりたいようにやりなさい…!」

 

地下生活者がそう言い切る前に、メグは体を動かしていた。

 

─そして、先生もその爆発を検知していた。

 

アロナ「せ、先生!ゲヘナ学園で爆発が…!」

プラナ「明らかに人為的なもの…かつ、外部からの干渉によるものです…!」

 

二人からのその発言を受け、先生はゲヘナへと向かった。

 

“ヒナ!そっちの様子は!?”

ヒナ「こっちは平気…。でも、何が起きてるかはまだわからない…!」

 

その言葉を聞いて、少し胸を撫で下ろす。

 

“怪我がないなら良かった。これからそっちに向かうから、無理はしないで!”

ヒナ「わかった、先生こそ気をつけて」

 

通話を切りゲヘナへと急ぐ。

 

“…ん…?”

 

その道中、先生は見覚えのある車を発見する。

 

“あの車…ハナエの…!”

 

メグとハナエが拠点として利用していた装甲車両。近づくと鍵は閉まっていない様子だ。ドアを開けると、中ではベル…別世界のハナエが倒れていた。

 

“ハナエ?ハナエ!!”

 

尋常でないその様子から、先生はハナエに必死に声をかける。

 

ハナエ「………せん、せ…?」

“大丈夫!?”

ハナエ「…………わたし…なにして………ッ!?」

 

ハナエは目を見開いて飛び起きる。

 

ハナエ「メグさん!先生、メグさんは!?」

“落ち着いてハナエ!…ここにはいないよ”

ハナエ「…どこに行ったか、わかりますか?」

“それは、わからないけど…”

ハナエ「…そうですか…。ごめんなさい先生。少し、取り乱してしまって…」

“いいんだよ、ところで…何があったの?”

 

ハナエは、先程起きた出来事を先生に話した。

 

“…メグが…!”

ハナエ「…私のせいです。私がもっと強かったら…」

“ハナエのせいじゃ…”

ハナエ「私のせいですよ!私が…弱いから…何も、できないから…」

 

ハナエはポロポロと涙を零している。

 

ハナエ「…結局…ダメだったんです…!私は…誰も救えないッ…!!助けられたと思ったメグさんも…!結局は助けられてなかった!!団長の…最期の頼みだったのに…私は…うぅ〜…!!」

 

溢れんばかりの思いがハナエの目から流れ落ちる。先生は、何も言わずにハナエの頭を撫でていた。

─そしてその嗚咽と雫が治まってきた頃、先生は話を切り出す。

 

“ね、ハナエ。良かったらさ…昔の話をしてくれない?”

ハナエ「…昔の…話?」

“…したくないなら、いいんだけどね。ハナエとメグ…二人がどうやって出会ったのかとか…そういうところも含めて、知りたくなって”

 

少しの沈黙の後、ハナエはまだ少し潤んでいる目で先生を見つめる。

 

ハナエ「…わかりました。先生になら…話せると思うので…」

 

そうしてハナエは、何度か呼吸を整えた後…その口を開いた。

 

 

 

─崩壊したキヴォトスで、私たち救護騎士団は負傷した生徒の救護を行ってました。襲い来る機械や精神を侵された生徒たちから逃げながら、私たちは救護を続けていました。

 

やがて、戦火も治まってきた頃…温泉開発部の皆さんが運ばれてきたんです。

 

ミネ「…損傷が激しすぎる…。既に手遅れなものもいるようですし…仕方ありません。この方だけでも救護いたしましょう」

ハナエ「はい!」

 

温泉開発部の皆さんは、どうしようもできないほどの怪我をしている人が多く、残存している医療機器などの面から最も助けられそうな人を一人、選ぶしかありませんでした。

 

それが、メグさんだったんです。

 

ミネ「…左腕と両足の神経の損傷が激しい…。義肢を装着させるしかなさそうです」

 

身体を欠損した患者さんの為の義肢。それをメグさんに取り付けて、治療を行いました。

そうして空が白み出した頃、やっとメグさんの容態が安定したんです。

そんな時、団長は私にこう告げました。

 

ミネ「その方の救護を、任せましたよ。ハナエ」

 

団長は他の生存者を探しに行きました。他の団員の皆さんも、残っている生存者を探したりしているうちに、一人…また一人といなくなっていきました。

それからは、団長もみんなも…戻って来ず、私はメグさんの救護に、たった一人で専念することになりました。

 

そして、長い長い時間の末に…ようやくメグさんが目を覚ましたんです。

 

でも─

 

目が覚めたメグさんには、何も残されてなかった。

 

温泉開発部の皆さんは既に死んでいて、片手と両足の欠損…義肢の都合でお風呂…つまり温泉には入れなくなった。

その事実を知ったメグさんは、発狂しました。

何とか落ち着かせることはできましたけど、メグさんの心は既に壊れてしまっていたんだと思います。

 

メグ「…ねぇ…なんで、私を死なせてくれなかったの?」

 

…目が覚めてしばらくの間は、メグさんは私に何度もそんな風に問いかけていました。

私はそれに何度も『私が救護騎士団だからです』と誤魔化していました。

 

他にも、どこを見ているかわからない虚ろな目でずっと何かに謝っていたり…悪夢に魘されて飛び起きて、いわゆる過換気症候群の症状が見受けられる状態になったり…。

その度に私はメグさんに『大丈夫です。私がここにいますから』と、声を掛けていました。

 

やがてメグさんはそういったことを言わなくなって、リハビリを始めました。それで、私はひとまず…救護ができたんだと、思ってたんです。

 

でも、違った。私は、メグさんのこと…なんにもわかってなかった…。メグさんの心を、救えてなんていなかったんです。

 

ミネ団長との約束もありましたし、メグさんを救護すること…それが私のやるべきことだって、メグさんには言ってました。

メグさんの笑顔が見たいから、メグさんと一緒にいるんだって…メグさんには言いました。

 

…でも、ホントは違ったんです。

 

ホントは、メグさんが死んでしまったら…。私には、何も残らなくなってしまうから…。

 

…笑っちゃいますよね?患者を救護する理由が、自分のためだなんて。

 

こんなエゴの塊みたいな私が、メグさんを救うことなんて、最初から─

 

“違う!”

 

そんなハナエの回想をぶった切るように、先生は吠えた。

 

“…自分のためでもいいんだ。メグを救いたいって気持ちは本物だったんでしょ?”

ハナエ「で、でも…私は…」

“ハナエならできるよ。大丈夫”

ハナエ「………」

 

アロナ「…先生、ハナエさんのことを心配するのもわかりますが、ゲヘナへ急がないと…」

“そ、そうだった!”

 

先生はアロナからの言葉を受けて、立ち上がる。

 

“ハナエ!車借りるよ!”

ハナエ「ど、どうしたんですか?」

 

先生はハナエにゲヘナで起きたことを説明する。

 

ハナエ「…まさか、メグさん…?」

“…そうと決まったわけじゃないけれど…可能性はゼロじゃない…!”

ハナエ「…!…急ぎましょう先生!運転は私が!」

 

ハナエはゲヘナ学園へ装甲車を走らせる。先生は、その間にヒナへ連絡をしようとしていた。

 

しかし─

 

『おかけになった番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないか─』

 

そんな音声が、無機質に響くのみだった。

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