時は少し遡る─
ヒナ「…く…!何が起きているの…!?」
突如として起きた爆発。どこから、そして誰が仕掛けたものかわからない。更に電波障害も発生しているようで、他の風紀委員のメンバーと連絡がつかない。
それだけならまだマシだったのかもしれない。しかし、今一番の問題は…。
ヒナ「どこ行ったのよ、メグ…!」
爆発騒ぎの中で、メグとはぐれてしまった。
今この状況でメグと逸れるのはまずい。ホムラが襲撃してきた場合、止められるものが居なくなる。
ヒナ「なんとかして、合流しないと…!」
地下生活者「おお…おおお!!この感覚、神々の星座…ですか…!」
ホムラ「…何?それ…」
ゲヘナ学園へ侵入したメグは、地下生活者からの聞き馴染みのない言葉に疑問を投げかける。
地下生活者「小生が属していた世界…あの書に記録されている…超越的な存在たちです…!ヒヒヒ…それはまさに神格の顕現そのもの…!」
ホムラ「…そんなのが出てきてるの?」
フランシス「正確には、顕現する予兆が出ている、だ。そしてそれは、お前が呼び寄せているものである」
ホムラ「私が?」
どこからともなく現れたフランシスからの言葉に、メグは少し呆気に取られながらも尋ねる。
フランシス「変質したお前の神秘に呼び寄せられているのだ。爆発こそ私の仕込んだものだが、今発生している電波障害はそれの予兆だ」
ホムラ「…私の神秘が変質とか、よくわからないけど…それで私に何か不利益が出たりしないよね?」
地下生活者「そこはわかりません。何せ超越的な存在なのですから。何を考え何のために行動するか…。矮小な小生たちでは理解できぬ領域の話なのですよ…ヒヒ…!」
ホムラ「ふーん…まぁ、私のやるべきことは変わらない…よね」
地下生活者「えぇ、ちょうどこの世界の下倉メグは空崎ヒナとはぐれているようです…。今がチャンスですよ…!」
その言葉を受け、ホムラは銃に弾丸を装填する。
メグ「ヒナ委員長とはぐれちゃった…どうしよう、これまずいよね…?」
爆発により所々崩壊したゲヘナ学園にて、メグはヒナを探し回っていた。自分が狙われていることはわかっている。だからこそ、早く合流しなければまずい。
そんなことを考えていると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえる。
ホムラ「…また会えたね。会えて嬉しいよ…私」
メグ「…!」
別の世界の自分。…しかし、そこにいるのがあの時出会った彼女と同じようには、メグには見えなかった。
ホムラ「…あの時は逃げられなかったけど、今なら護衛は誰もいない。さぁ、これで終わりだよ」
武器をメグへ向けながらホムラは笑った。
メグはそれを見て、同じく構える。
ヒナ「伏せて!」
「「!!」」
その言葉が響くと共に、二人は回避を行った。
メグ「…ヒナ…」
ホムラ「…はぁ…また邪魔されるの?」
そう言うとホムラはヒナに近づき近接戦を仕掛ける。それを冷静に捌き、ヒナはホムラと取っ組み合いになったまま窓を突き破って校庭へと飛び降りた。
ヒナ「…ここなら思い切りやれるわね」
ホムラ「…なんで、邪魔するのさ…。私にはもう、こうするしかないのに…」
そんな恨み言を吐くホムラに、ヒナは問う。
ヒナ「…何も残ってない、あなたはそう言っていたけれど…果たして本当にそうなのかしら?」
ホムラ「…どういうこと?」
ヒナ「…朝顔ハナエ」
自身の心臓が強く打たれたような感覚に、ホムラは襲われた。
ヒナ「…彼女は、まだ残ってるじゃない」
ホムラ「…あの子は違う」
ヒナ「何が違うのよ。あなたのことを心配して、ずっと一緒にいてくれたのよ?」
ホムラ「ハナエは、私を…こんな私を…ずっと、助けようとしてくれた。私からは、何も返せないのに…」
ホムラは顔を俯ける。
ヒナ「…彼女は、何か見返りが欲しくてあなたを助けたんじゃないわ」
ホムラ「…違うよ、ヒナ。やっと、わかった。…私が一番嫌なのは、そんなハナエに何も返せない自分。私は…ハナエに幸せになってほしい。だけど、この世界の自分が憎くて仕方ない…。ハハ…ねぇ、委員長」
顔を上げたホムラの顔を見て、ヒナは軽く恐怖を感じた。
その目は、まるで塗り潰されたかのような─
ホムラ「私、なんでまだ死んでないんだろうね?」
黒に、染まっていた。
フランシス「…成功だ。今この瞬間を以て、彼女は主人公になり得る存在から、この物語を終焉へ導く『炎の悪鬼』[イブリース]となった。さぁ、その変質した力を解き放つがいい…」
ホムラ「…大切な人の幸せを願って、その他の人の不幸せを願う。…歪んでるよね…アハハ…」
ヒナ「メ、メグ…?」
明らかに様子がおかしい。それにこの感覚─
ホムラ「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
狂ったように、壊れたようにホムラは笑う。
それは、今までなんとか抑圧していた感情をすべて解放かのしたような笑い声だった。
─そうだよね。そもそも今までのうのうと生き続けていたこと自体がおかしかったんだ
何もかも喪って、たいせつな人の幸せをねがっても、結局はこんなしゅだんしか取れない
もう、めんどうだ
こんなわたしも、わたしをしなせてくれないこのせかいも、なにもかも、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ
も え つ き て し ま え
突如として、淀み始めた空を貫くほどの火柱が上がる。
先生とハナエも、その光景を遠目から確認する。
ハナエ「あの火柱は…!?」
“ゲヘナ学園から…?アロナ、プラナ!”
声を掛けると、二人は暗い顔をしていた。
そのうち、プラナが口を開いた。
プラナ「…この感覚、間違いないかと思われます」
“そ、それって…”
嫌な汗が、頬を伝うのを感じた。
プラナ「…別世界のメグさん…。彼女は…反転してしまいました」
それは、一番聞きたくなかった言葉だった。