リフレイム   作:アカネのメガネ

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CHAPTER.13「救護」

ジュンコ「うわあーッ!!」

アカリ「ジュンコさん!あっ…!!」

 

響く爆発音。蹴散らされる生徒たち。

 

イロハ「押されてますよ、マコト先輩。どうします?」

マコト「むぅ…生意気な蛇め…!」

 

総力を挙げて『ザッハークの怨嗟』に戦いを挑むゲヘナの生徒たちだったが、数でどうにかできるほどの相手ではなく、一人また一人とやられていく。

 

そして、苦戦しているのはマコトたちだけではなく─

 

ミネ「大丈夫ですか、ヒナさん」

ヒナ「問題ない。でも…」

 

トリニティ総合学園救護騎士団団長『蒼森ミネ』とゲヘナ学園風紀会委員長『空崎ヒナ』

キヴォトスでもトップクラスの実力を誇る二人だが、メグ*テラーは歯牙にもかけない。

そもそもメグの実力はキヴォトス全体で見ても上澄みだ。反転したことで更に力が高まっているとしたら、何ら不思議ではない。

 

ヒナ「…厄介ね」

ミネ「向こうも相当押されているようです。早く救護を済ませなければ…」

ヒナ「…」

 

ヒナの頭には、一つの懸念があった。

反転した存在は、元には戻せない。と、耳にしたことがある。

それが正しければ、あのメグは…もう手遅れだということになる。

 

あのメグは、私たちには救うことができないとするならば…どう対処すればいいのか。それをまず考えよう。

 

ヒナ「…彼女を元に戻すこと…そして、倒すことは諦めましょう」

ミネ「…それは、このまま負けを受け入れようということですか?」

 

ヒナは首を横に振って、ミネのその発言を否定する。

 

ヒナ「…彼女は私たちじゃ、どうしようもできない。なら、他の誰かが対処する為の突破口を見つける。その為にも…」

ミネ「…なるほど、接近戦ですね…!」

 

こくりと頷き、ヒナはメグへ一気に近づく。ミネもそれに続く形で攻撃を仕掛ける。

メグ*テラーは火炎放射を放ち牽制するとハンドガンで応戦する。

その銃弾を避けず、ヒナはメグを捕らえる。しかし─

 

ヒナ「あつ…!!」

 

メグの表面温度は相当な高さになっているようで、反射で手を離してしまう。

その隙に、メグはヒナの鳩尾に蹴りを一発喰らわせる。

 

ミネ「ヒナさん!」

 

次いでメグはミネに殴り掛かる。咄嗟に盾で塞ぐが大きく吹き飛ばされる。体勢こそ崩されなかったが、再び距離が空いてしまった。

 

ヒナ「…ふぅ…!大丈夫?」

ミネ「あなたこそ、蹴りが入っていたと思うのですが…」

ヒナ「蹴られたと同時に後ろに退いたからダメージはそこまでないわ。それより…厄介ね」

 

あの熱量ではそう簡単に近づけない。とはいえ近づかなければ観察も難しい。

 

ハナエ「…大丈夫ですか?」

ヒナ「…あなた…それに、先生…」

 

ハナエはヒナにそう声をかけ、軽く火傷した手の治療を行う。

 

ミネ「ハナエの方こそ、もう大丈夫ですか?」

ハナエ「はい、ご心配をおかけしました」

 

ミネとハナエが言葉を交わしていると、突如としてメグ*テラーがヒナに襲いかかる。

 

“ヒナ!”

 

振り抜かれた拳を躱し、メグの腕を掴む。無論相当な温度になっているそれを掴んでいる自分の手が焼けるような感覚はある。だが、今度は絶対に離すまいとヒナは腕に力を入れる。

 

メグ*テラー「……………」

ヒナ「…ッ!」

メグ「救護ッ!」

 

これ以上は看過できないと言わんばかりに、ミネはシールドでメグを突き飛ばす。

 

ミネ「なんという無茶を…!今すぐ火傷の救護を…」

ヒナ「…聞こえた…」

“き、聞こえたって…?”

プラナ「…近くでメグさんを観察できたおかげで、彼女の今の状況がわかりました」

 

突き飛ばされたメグ*テラーだったが、体勢は崩されていない。

 

プラナ「メグさんはまだ、反転しきっていません。助けられます…しかし…」

ヒナ「…メグの意識は確かにある。でも、それも恐らくかなり希薄になってる」

アロナ「…つまり、完全に反転するのも、時間の問題…ということです…!」

 

三人の言葉を聞いて、先生は顔を険しくする。反転しきっていないのであれば、あの時のホシノと同じような状態ではある。しかし、その進度は全く異なっているということだろう。声をかけた程度では元に戻らないかもしれない。それなら、どうすれば─

 

そう考えていると、メグ*テラーは火炎放射を仕掛けてきた。

ミネはシールドでその攻撃から先生たちを守る。

 

ミネ「ヒナさん、あなたはもう無茶しない方がいいかと。その火傷は早急に救護を行う必要があります」

ヒナ「…でも…」

 

あれに一人で立ち向かうつもりか、そうヒナが言おうとしたその時。

 

メグ*テラーに向けて、どこからともなく攻撃が加えられる。

攻撃が行われた、その方向にいたのは…。

 

“AMAS…?…ミレニアム!?”

ユウカ「助けに来ましたよ、先生!」

 

多数のAMASを引き連れてユウカとウタハが乱入してきた。

 

“どうしてここに?”

ユウカ「ニュース、見てないんですか?ゲヘナで大火事だって、クロノスが特番を組んでるんですよ?」

ウタハ「近くで現状を確認したところ、ただの火事ではなさそうだけどね」

 

確認してみるとユウカの言った通り、ゲヘナでの戦いは既にキヴォトス全土に知れ渡っているようだ。

 

ハナエ「ウタハさん…」

ウタハ「久しぶりだね、ベル…いや、ハナエと呼んだ方がいいのかな?」

ハナエ「…お好きな方でお願いします」

ユウカ「彼女の足止めはこっちに任せて、ウタハ先輩は先生に例のものを!」

ミネ「私はヒナさんを救護班のところへ運んできます」

ヒナ「だ、大丈夫だって言ってるのに…」

ミネ「いえ、無茶はいけません。早急に救護を行わなければ、手遅れになりかねませんからね!」

 

そう言うとミネはヒナを抱き抱えたまま救護班の元へ向かう。

ユウカもAMASと共にメグ*テラーと交戦を開始する。

 

ウタハ「…さて、今回私がここに来たのは…先生にこれを渡す為さ」

 

そう言うとウタハはジュラルミンケースの中からとあるものを取り出す。

 

“エルピスの星…!”

 

マコトから解析を頼まれた謎の機械、エルピスの星がそこにはあった。

 

ウタハ「…解析は完了した。…これの本来の機能、そして作られた経緯がわかったよ」

 

ウタハはメグ*テラーの方をチラリと見て続ける。

 

ウタハ「…結論から言おう。これは、まさに今のような状況を打開するための…箱の底に残った最後の希望だった」

“最後の希望…?”

ウタハ「…先生、反転したものを反転させると…どうなるかわかるよね?」

ハナエ「反転の反転…つまり、元に戻るってこと…ですか?」

ウタハ「その通り。解析の中でこのエルピスの星は色彩に似た精神に干渉する波長を発生させることがわかった。だがそれはあくまでも色彩に『似た』ものだ。『同じ』じゃない」

 

ウタハはエルピスの星を先生に渡す。

 

ウタハ「…性質を強制的に反転させる。それはつまり、反転した存在に使えば…それすらも強制的に反転させることになる。…試してはないから、仮説ではあるけどね」

“つまり…メグを元に戻せるってこと?”

ウタハ「そういうことになるね。…だけど、どうやらこの機械は一回コッキリの使い切りらしいんだ。悪用を懸念したのかはわからないが、少なくとも乱用はできないだろうね」

 

解析結果とウタハの言葉を信じるなら、このエルピスの星はまさに最後の希望だ。これを使えば、メグを元に戻せるかもしれない─

 

しかし、脳裏にフランシスの言葉が過ぎる。

 

『あなたの力を持ってしても…この物語の結末は変えられない』

 

…それは、メグを元に戻すことはできないと言われているようなものだった。実際、これを使ってもメグが元に戻る確証はない。

そもそも、今のメグに何と言葉をかければいいのか…全くわからない。こんな状態では、メグを救うことなんて─

 

『別世界から来た彼女たちはあなたの生徒ではありません。あなたの生徒でない以上、あなたが彼女たちを救うことはできません』

 

黒服の言葉がフラッシュバックする。別世界の存在である私が、私と異なる世界のメグを救うことはできない。

 

…そうか。そういうことだったのか。

 

“…ハナエ”

ハナエ「は、はい…?」

 

別世界の人を救えるのは、その人と同じ境遇を生きた人。つまり─

 

“…君に、メグの救護を…全任する”

 

力強く言い切られたその言葉に、ハナエは困惑している。

 

ハナエ「ぜ、全任するって…!せ、先生!」

“…申し訳ないけど、今回の件について…私じゃ力になれそうもない”

 

心底申し訳なさそうに先生は告げる。

 

“…今のメグを助けられる人がいるとすれば、それは彼女と一緒に歩いてきた人…つまり、君しか有り得ないんだ”

ハナエ「で、でも…私は…」

“できるさ。だって君は…”

 

エルピスの星をハナエに手渡し、先生は微笑んだ。

 

“あの子にとっての、最後の希望だったはずだから”

ハナエ「…私が…?」

 

『ハナエにはさ、幸せに生きていてほしいんだ』

 

確かに、方法こそ間違っていたし、自分の為でもあったかもしれない。が、メグがハナエのことを思って行動していた事実に間違いはない。

 

『あなたに、幸せになってほしいから』

 

私に幸せになってほしい。それはきっとあなたの本心なんだろう。

 

だけど─

 

『…ありがとね、ハナエ』

 

私は、それだけじゃ満足できない。

 

ハナエ「…ユウカさん、先生。あちらの怪物と戦ってる人たちの増援に向かってあげてください」

ユウカ「…ハナエさん?」

“………わかった”

ユウカ「…えぇ。AMASは残しておくわね」

ハナエ「…ありがとうございます」

 

ハナエの言葉を受けた二人はザッハークの怨嗟と戦っている部隊の元へ移動する。

 

AMASの軍勢を蹴散らし、メグはハナエの方向を睨む。

 

メグ*テラー「………」

 

炎が照らす夜空の元、ハナエは吠える。

 

ハナエ「トリニティ総合学園救護騎士団所属、朝顔ハナエ!!」

 

─ねぇ、メグさん。あなたは私に幸せになってほしいって、言ってましたけど…。

私は、あなたが幸せになるだけじゃ…物足りないんです。だって私は─

 

「これより…ゲヘナ学園温泉開発部所属、下倉メグの!」

 

─あなたと、幸せになりたいから。

 

「救護を、開始しますッ!!」

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