リフレイム   作:アカネのメガネ

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CHAPTER.16「世界の終わりへ、あなたと」/エピローグ

地下生活者「…キャンペーンも終わり、ですか…。仕方ありません。小生はまた苦行に戻らせてもらうとしましょう…」

「…いい心掛けですが地下生活者。その前にお話が」

地下生活者「…その声は…黒服…?何故ここに…?」

黒服「…少し、苦行のレベルを上げようかと思いまして」

地下生活者「なにぃ…?」

黒服「あなたがしたことは、私が追い求める真理に傷をつけかねない行為です。ですので、更に苦痛を与える罰を」

地下生活者「ひ、ひぃぃ!?ま、待て!小生はフランシスと共謀していたんだぞ!?あいつは無視するのか!?」

黒服「無視などしていません。フランシスにも相応の罰は与えました。最も、デカルコマニーは不死身ですので…彼にとって罰になるかはわかりかねますが」

 

黒服が手を翳すと、泥のようになった床の中に、地下生活者の体が沈んでいく。

 

地下生活者「ま、待て!小生は、ゲマトリアとして当然の行いを…!」

黒服「ゲマトリアは解散しました。ですのでこれは、私の個人的な鬱憤晴らしです。勝手で申し訳ありませんが、更なる苦痛の底へ沈みなさい。地下生活者」

地下生活者「あ、あぁぁ…!苦しい…く、るし…」

 

そうして、地下生活者は混沌の領域、その更なる深部へと沈んでいった。

 

 

 

─その翌日。一連の事件はゲヘナの大火事として大きく報道された。メグとハナエのことについては特に言及されてはいなかったが…それはそれで良かったのかもしれない。

あの後、この世界のハナエやカスミを含めた攫われていた生徒たちは全員無事に戻ってきた。攫われていた時のことは覚えていないらしいが…まぁ少し悪い夢を見たのだと思っていてほしいところだ。

そんな二人は改めてホムラとベルと名乗り、ミレニアムを訪れていた。

 

ウタハ「…さて、これが完全防水の義肢…そしてこれはミレニアム製掘削用ドリルだ」

ホムラ「ありがとう。それにしても…こんなものよく用意できてたね」

ウタハ「そっちの方がいいかと思ってね。君専用の義肢を作った後、こっそり作ってたんだ。それに、このドリルは誰も使わないままだったし…それなら誰かに使ってもらった方が置物になるより遥かにいい。あぁそれと防水仕様の義肢はお風呂に入る時や水仕事の時に付け替える形で使うといいよ」

ベル「何から何までホントにありがとうございます…!」

ホムラ「ホントだよ。車用のガソリンの予備とかもそうだし…どうしてここまでしてくれるの?」

ウタハ「なに、先生からの頼みだからね。少し奮発しただけさ。君たちのおかげで、このエルピスの星も役割を全うできたようだしね」

 

ウタハはそう言うとガラスケースの中に入れられたエルピスの星をガラスの上から撫でる。

 

ウタハ「壊せない以上、悪用されないよう保管するべき…。ゲヘナからの通達だよ」

ベル「でも、起動しないんですよね?」

ウタハ「そうだね。でも、万が一があるかもしれない。やっぱり厳重に保管するべきだとは、私もそう思うよ」

 

ウタハと話を終え、ミレニアムを後にした二人は次いでトリニティへと向かった。

 

ハナエ「あ、あの…は、はじめまして!!」

ベル「あはは…そう緊張しなくてもいいですよ」

ハナエ「で、でも…私、将来はこんなお姉さんみたいな感じに…」

ベル「驚いた?」

ハナエ「とっても!」

 

まだまだ未熟な雰囲気のハナエと少し大人びた雰囲気のハナエ。メグはそんな二人の会話を救護騎士団と共に眺めていた。

 

ハナエ「どうしたらあなたみたいになれるでしょうか…!?」

ベル「え?うーん…まずは信憑性の薄い治療法を信じることをやめることかな…?」

ハナエ「し、信憑性の薄い…その見極めが難しいところですが…」

ベル「あ、それともう一つ。…チェンソーはそこまで使わないですよ」

ハナエ「そんな!?」

みんな(そこまで…??)

 

一通り話し終えた後、ミネやセリナとも話をする。

 

ミネ「…なんだか、一段と頼もしく見えますね」

ベル「そうですか?…えへへ」

セリナ「笑顔は変わらないですけどね。でも、ハナエちゃんらしくていいと思います!」

ベル「…ミネ団長、セリナ先輩…」

ミネ「…大丈夫です。あなたはあなたの救護を信じて」

セリナ「応援してるよ!」

ハナエ「わ、私も…あなたみたいになれるように頑張ります!」

ベル「…ありがとうございます…!」

 

そうして二人を乗せた車は、ゲヘナへと向かう。

 

ホムラ「それにしても、まさかゲヘナに私たちの世界に通じる穴が開くなんてねー」

ベル「ゲヘナでエルピスの星を起動したのと関係がありそうだって、先生は言ってましたが…」

ホムラ「難しいことは私にはわからないや。ひとまず元の世界に帰れるってことだよね」

ベル「開いてから結構な時間が経ってるみたいですけど…まだ大丈夫ですよね?」

ホムラ「多分…念の為急ごっか」

ベル「そうですね!」

 

ゲヘナへ通じるトリニティ郊外の道。先生に指定されたポイントへ向かう二人の耳を爆発音が劈く。

 

ベル「なんですか今の音ー!?」

ホムラ「なんだろうね?」

 

見てみると、遠くで温泉開発部のメンバーが開発作業…という名の破壊行為を行っているようだった。

 

ベル「…この辺って温泉出るんでしょうか?」

ホムラ「…………」

 

メグは車から出て爆発の中心地へと向かう。

 

ホムラ「…元気そうだね。部長」

カスミ「んん?君は…」

メグ「あ、もう一人の私…」

 

やや重たい空気が流れる。自分が二人にしたことを考えれば当然ではある。

何を言おうか言葉に詰まっていると、温泉開発部の部員の一人がつるはしを渡してきた。

 

ホムラ「…これは…?」

部員A「いや、なんだかんだ言ってメグちゃんなら温泉を掘るのが好きなんじゃないかと思って…」

 

少し前までなら、温泉を掘りたいだなんて考えていなかったかもしれない。でも、今は─

 

ホムラ「…そうだね。少し前までは温泉を掘ることに対しての情熱なんてなくなっちゃってた。でも今は違う…」

 

メグはつるはしを握りしめて、二人に頭を下げる。

 

ホムラ「部長!それに、この世界の私!…迷惑ばっかりかけてごめん!な、何かしてあげられる訳じゃないから…許してくれなくてもいいけど…。もう少ししたら、私…元の世界に帰るんだ!それで…帰ったら…温泉を掘りたいって思ってる!だから…」

 

言っててなんだか熱いものが目から零れてきた。今更虫がいいと思われるだろうか。そんなこと伝えて何になるんだとか言われないだろうか。不安になりながら視線を下に向けていると…。

 

メグ「そっか!頑張ってね!」

 

自分に、そう声を掛けられる。顔を上げるとカスミもにこりと微笑んでいた。

 

カスミ「うんうん、君は君のやりたいようにやるといいさ」

 

そう言われて、なんだか夢の中でカスミ部長言われたことを思い出して─

 

ヒナ「あら、感動的なシーンの途中だったかしら?」

 

─いたらヒナたち風紀委員が現場に駆けつけてきたようだ。

 

ヒナ「聞いたわよ別世界のメグ。帰るんですってね」

ホムラ「あ……うん」

ヒナ「そう、元気でね。…さて」

 

ヒナはカスミたちの方に向き直る。

 

ヒナ「覚悟は、できてるわよね」

カスミ「ひ、ひ、ひえええぇっ!!!」

メグ「あっ、また部長が気絶した!」

 

涙を拭い、あっちはあっちでいつも通りだなぁと思いながら、私はその場から離れるのだった。

 

指定されたポイントには先生と、自分たちが通ってきた謎の建造物があった。

 

“お待たせ。お別れは言ってきた?”

メグ「うん」

ハナエ「…これで、お別れなんですね…」

 

先生は、引き留めたいとも思っていた。崩壊した自分たちの世界より、自分たちの世界でなくてもまだ崩壊していないこの世界にいる方がいいんじゃないかと…そう思っていた。でも、彼女たちは結果として元の世界に帰ることを望んだ。それが彼女らの望みであるなら、私がそれを否定する理由はない。

 

“…車、通れそう?”

メグ「入口大きいし大丈夫でしょ」

“ならいいけど…”

ハナエ「それじゃ、先生!…またいつか会えたら…よろしくお願いします!」

 

またいつか。その日は果たして来るのだろうか。わからないけど、彼女たちはきっとまた会えると思っているのかもしれない。

 

“うん、またね”

メグ「体には気をつけてね!先生!」

 

メグはそう言うとアクセルを踏んで別世界の穴の中へ突っ込んでいった。

車の駆動音が聞こえなくなると同時に、その建造物はまるで霞のように消えてなくなった。

 

“帰れたかな…あの二人”

 

別世界の存在である私には、二人の幸せを願うことしか出来ないが…これから先も、彼女たちのことを忘れないようにしようと考えるのだった。

 

───────────────────────

 

─建造物の中を走り抜け、光の中へ飛び込んだ先にあったのは…荒廃した大地と荒涼とした光景。

 

メグ「…帰ってきたね」

ハナエ「…そうですね」

 

自分たちの世界に帰ってきたことに若干の感慨深さを覚える二人。

これからどうするか。その答えは、既に出していた。

 

メグ「それじゃ、キヴォトスの外を目指して…出発ー!」

ハナエ「おー!」

 

キヴォトスは確かに崩壊した。それでも、この世界のすべてが崩壊したわけではないはずだ。それを確かめる為にも、キヴォトスの外を目指そう。それは、二人で決めた…確かな約束だった。

 

崩壊した世界でも、二人には微塵も不安なんてなかった。

傍らに、大切な人がいる。それだけで、何処までも行ける気がするから。

 

メグ「あ、あそこ!いい温泉が掘れそう!」

ハナエ「え?どうしてですか?」

メグ「んー?なんとなく!」

ハナエ「勘ですか!?」

 

静かな風が吹き抜ける世界に、そんな二人の声が響く。

二人を乗せた車が何処へ向かうのか、二人がこの先どうなるのか、それは誰にもわからない。

それでも、彼女らはこの世界で生きていく。もう二度と喪われないであろう、笑顔を携えて。

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