リフレイム   作:アカネのメガネ

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CHAPTER.1「異なるキヴォトス」

「いらっしゃいませー!出来たてだよー!」

 

自分たちの歩いてきたあの世界が嘘に感じられるほど、平和な世界がそこには広がっていた。

 

メグ「ここ、確か百鬼夜行連合学園…だったっけ?」

ハナエ「そうですね、どうやら今お祭りの真っ最中らしいですよ!」

 

賑やかな街並み、楽しげな声…それに包まれていると、どこか暗い感情を覚えてしまう。かつての自分なら、抱かなかったであろう…そんな感情を。

 

ハナエ「あ!見てください!お面がありますよ!」

 

物思いにふけっていると、ハナエからそう声を掛けられる。どうやらそこはお面屋のようで、色々な種類のお面が並べられていた。

 

「いらっしゃい!君たち、百鬼夜行の生徒じゃないでしょ?」

メグ「…まぁ、そうだね」

「百鬼夜行のお祭りといえばお面だよ!どうだい?お友達とお揃いってのもありだよ!」

 

お面屋にそう促され、私はポケットを弄る。

お金は持っている。お面を買うだけのお金自体はあるけど…。

 

ハナエ「メグさん!私これ欲しいです!お揃いにしましょう?」

 

ハナエにそう促される。…まぁどうせ大した金額でもないしいっか。

 

「ありがとねー!」

 

店主は活き活きとした声を発する。私は少し歩いて人混みとは無縁の場所へとやってきた。

 

ハナエ「ここから先、私たちはこのお面を被って行動しましょう」

メグ「え?なんで?」

 

ハナエの唐突な発案に、私は首を傾げた。

 

ハナエ「…ここが何処かはわかりませんが…この世界が過去のキヴォトスだとするならば、この世界には過去の私たちがいることになります。もしもこの世界の私たちと出会ってしまったら、大きな騒ぎになりそうなので…」

メグ「なるほど…」

 

単純にそこまでは及びがつかなかった。しかしこの世界の自分に迷惑をかけてしまっては、面倒なことになりそうなのは確かだ。

 

メグ「わかった、そうしよっか」

ハナエ「はい!」

 

─それにしても、これからどうしようか。

あの謎の建造物は私が外に出た瞬間、跡形もなく消え去っていた。元の世界に帰る手段は、現状ないも同然だ。いっそこのままこの世界で生きるというのも─

 

「…本当にそれでいいのですか?」

メグ「…?」

 

何処かから声が聞こえた気がした。明らかにハナエの声ではない声だった。

 

「この世界は、あなたの世界ではないのですよ?」

 

心の中に話しかけられているような感覚。耳を塞ごうとも、その声は私の心に響いてくる。

 

ハナエ「…メグさん?」

 

隣から私を心配する声が聞こえる。それでも、その声は私の心を揺らしてくる。

 

メグ「…だったら、どうすればいいのさ…!」

「簡単です。あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです…。例えば、この世界から」

メグ「………」

「…自分は全てを喪ったのに、周りの人間は自分の幸せをひけらかす…先程のそんな光景に、悪感情を抱いたことは確かなことのはずですよ」

メグ「…それは…そう、だけど…」

「…ヒヒッ、であるならば…やることは1つのはず…!」

メグ「………私、は…」

ハナエ「メグさんッ!!」

 

必死に私を呼ぶその声が、私を現実へ引き戻した。

 

ハナエ「…大丈夫ですか…?凄く怖い顔してましたよ?」

メグ「…あ…ごめん、大丈夫だよ」

 

…そうは言ったものの、メグの頭の中では先程の謎の声が発したとある言葉が何度も反唱されていた。

 

『あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです』

 

それが赦されるのなら、それしかないのかもしれないと…少しでも思ってしまう心があった。

 

 

 

─百鬼夜行連合学園から離れた2人は、トリニティの自治区にやってきていた。別に誰か会いたいとかそういった訳じゃない。ただ歩いていたら辿り着いただけだ。

 

ハナエ「…久しぶりに見た気がします…」

メグ「…だろうね」

 

最後に見たのは恐らく2年前だろう…トリニティ総合学園の校舎を、ハナエは見つめている。…しかし、昔を懐かしんでばかりもいられない。

 

私は寝床の確保に急いでいた。少なくとも拠点となる場所は必要不可欠だ。幸いお金は十二分にある。いざとなれば住処を売ってもらうこともできないわけではないはずだ。

 

メグ「流石にこれは力づくでは難しいよねー…」

 

そう考えたメグの脳内を、あの言葉が駆け巡る。

 

『あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです』

 

…その言葉は、何度否定しても頭の中に浮かび上がってくる。まるで、私自身がそれを望んでいるみたいな…。

 

メグ「…そんなわけない」

 

私は自分の心の中に響く言葉に、弱々しくそう返すことしか出来なかった。

 

ハナエ「…思ったんですけど、建物である必要はないんじゃないんでしょうか?」

メグ「…どういうこと?」

 

ハナエが指を差した先では装甲車両が売られていた。値段は高めだが、休める程度のスペースはありそうだ。それに、移動もかなり楽になる。…運転はあまりしたことがないが、まぁ大丈夫だろう。

 

メグ「…今日はもう寝よっか。布団とかはないけど…」

ハナエ「それならさっき買ってきましたよ!」

 

いつの間に。とも思ったが車を実際に買うまで少し時間も空いていたし、その間に色々買ってくれたのだろう。

…それにしても、どうして彼女は私にここまで尽くすのだろう。私から返せるものは何一つないし、今までだって何も返してないのに。

 

─翌朝、腹ごしらえを済ませた私はシャーレへと向かっていた。ひとまず先生には自分たちのことを話しておいた方がいい、というハナエの提案あっての行動だ。

アポは取れていない、というか取れるわけがないので取り合ってくれるかだけが不安だけど…そこはもうどうとでもなれと言う他ない。

ひとまずシャーレへやってきた私たちは受付に先生に会いたいということを真正面から伝えてみる。しかし、お面を被った怪しい風貌の2人組の要求など通してもらえるはずもない。

 

ハナエ「…そんな気はしてましたけどね…」

 

そうなるとこれからどうするか。何かいい方法は…。

 

メグ「…先生に会えないなら、先生に会いに来てもらえばいいんじゃないかな?」

ハナエ「え?」

 

そうだ。これなら私の知ってる先生ならきっと来てくれるはずだ。

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