メグ「…ここがミレニアムサイエンススクール…」
“話は通してあるからね。行こう”
ハナエ「あ、待ってください」
メグ「…どうしたの?」
ハナエ「…私たち、そのままの名前だとまずいかなって…今更ですけど…」
メグ「…今までは名乗る場面なかったから気にしてなかったけど…確かにそうかも」
“じゃあ先にそっちから何とかしようか”
そうして、二人はこの世界における偽名をつけることに。必要に応じてメグはホムラと名乗り、ハナエはベルと名乗ることとした。自分とは異なる名前を名乗るのは暫く慣れないかもしれないが、仕方ないことだと割り切ることにした。
ウタハ「ようこそ先生、それに…はじめましてだね。私はエンジニア部の部長『白石ウタハ』だ」
ベル「よろしくお願いします!」
ウタハ「先生から事情は既に聞いているよ。義肢の作成…だったね」
ホムラ「うん、お金はちょっと足りないかもしれないけど…」
ウタハ「そこは気にしてくれなくていいさ。私たちも初めて作るものだから、少しワクワクしているしね」
ベル「…普通の義肢でいいんですよ?」
ウタハ「あぁわかっている。ここから応用させてコ〇ラのサイ〇ガンのような義肢も作れるだろうが、今回はあくまで普通の義肢を作るつもりだ。安心してほしい」
ホムラ「…ちょっと興味あるかも」
ベル「ダメですよ!?」
義肢の作成をしてもらっている間、メグはふと疑問に思っていた事をハナエに聞いてみることにした。
メグ「…そういえば今つけてる義肢って誰が作ったの?」
ハナエ「それは…私もよくわからなくて。でも、団長が持ってきてくれたものなんです」
メグ「団長?」
ハナエ「救護騎士団の団長『蒼森ミネ』団長です」
メグ「…私、会ってないんだけど…」
ハナエ「…そうですね。救護が必要な人がいますと言って…メグさんを私に任せて…それっきり行方不明ですから」
メグ「………そっか」
メグは、それ以上聞かなかった。
恐らくそのミネという人がハナエに私を任せたのは、ハナエなら大丈夫だと思ったからだろう。それでも、ハナエは不安だったはずだ。失踪がいつ頃の話だったのかはわからないが…ハナエは一年間、私を看てくれていた。
私はハナエの頭を、優しく撫でた。
ハナエ「な、なんですか?」
メグ「…ありがとね、ハナエ」
ハナエ「い、いきなりそんな…えへへ…」
ハナエはふにゃりとした笑顔を見せる。とてもその顔を見ていると、なんだか心の中がポカポカとしてくるように思える。
ウタハ「…すまない、どれくらいかかるかの目安を伝え忘れていたね。多く見積って2日はかかると思う。無論、早め早めを心がけるが…」
ホムラ「作ってくれるだけでもありがたいことだし、時間は気にしないよ」
ウタハ「そう言ってくれると助かるよ。…できたら電話する。これ、私の連絡先」
ベル「ありがとうございます、ウタハさん!」
ひとまず私たちはミレニアムサイエンススクールを後にした。その夜、装甲車両内で寝転びながら、メグはとあることを考えていた。
メグ(…この世界に私が来たのに、何か理由とかあったりするのかな?)
あの謎の建造物…あれに足を踏み入れて、この世界にやってきた。あれがあそこにあったことに、何か意味があるとするなら…自分たちがこの世界に来たことに、何か理由があるとするならば…それは一体何なのだろうと、メグは考えを巡らせた。しかし、すぐに『よくわからない』という結論を出した。
メグ(いずれにせよ、私たちの世界に帰るまではこのまま…)
そう考えているとまたあの声が脳内に響いてきた。
「帰って、どうするつもりです?」
メグ「…またこの声…」
「あなたの世界のことはよく知りませんが…既に滅びた世界に帰って、あなたは何を為さるおつもりで?」
メグ「…この世界の人間じゃない私が、この世界に長く居続けるわけにはいかないでしょ。それに、誰か知らないけど…言ってたよね?この世界は私の世界じゃないって」
「えぇ、ですから…この世界をあなたの世界にすればいいのです」
メグ「…何言ってるの?そんなことできるわけ…」
「できる、としたら?どうします?」
メグ「………」
「…喪ったものは取り戻せない。であるならば、どこかから奪えばいい。これは前にも言っていたかと思いますが…あなたがあなたであるためには、必要なことかと」
メグ「…そもそも、奪うってどうすればいいの」
「おお、小生のキャンペーンに興味が出てきましたか?」
メグ「…別に。ただ…」
メグはハナエを一瞥する。
メグ「…この世界で、生きていく為に必要なことがあるなら…私はなんだってやるつもり」
「…ヒヒヒッ!では…またいずれ」
メグ「…待った。結局あんたはなんなの?」
「小生の名ですか?…そうですね…」
地下生活者「地下生活者…とでもお呼びください…ヒヒッ!」
ウタハ「…着け心地はどうだい?」
ホムラ「…うん、問題ない。むしろ前のより動かしやすいかも」
ウタハ「以前まで着けていた義肢と比べると、今回は君専用の調整を施してあるからね」
ベル「…一応聞いておきますけど、変なものが出たりはしないですよね?」
ウタハ「あぁ、そこは心配いらないよ。ビームや弾丸を発射したりはできないから安心してくれ」
ベル「…それならいいですけど…」
メグとハナエはウタハに礼を言って、ミレニアムを後にする。
メグ「これから先、どうする?」
ハナエ「…しばらくは何もしなくてもいいんじゃないでしょうか。帰れる手立ても見つからないですし」
それもそうだ。別世界と繋がるなんてこと普通はありえないことなわけだし。
メグ「…じゃ、私買い出しに行ってくるね」
ハナエ「はい、気をつけてくださいね!」
元気に笑ってそう見送るハナエ。あの笑顔の為ならなんだってしてやるという感情が、地下生活者との会話を経て、メグの中に芽生えていた。
「…彼女はどうだ?」
地下生活者「…ひとまず、小生に一定の理解は示したようです。しかし『匿名の行人』…よく彼女の存在を観測できましたね?」
フランシス「お前の方こそ、死の神に脅され心の余裕がなくなったと思っていたが」
地下生活者「ヒヒ、コデックスが更新されたとなればそれに適応するのは当然のこと…!別世界の存在への干渉ならば…死の神も反応が遅れるでしょう」
フランシス「…私が彼女の存在を観測できたのは単なる偶然だ。それに彼女については興味深い部分もある。これは、それを確かめるための行動でもある」
デカルコマニー「そういうこった!」
地下生活者「興味深い部分…それは一体?」
フランシス「…彼女から、先生と同じものを感じるのだ。すなわち、彼女は物語の主人公となり得る存在と言っても過言では無い」
地下生活者「先生と同じ存在…。それが、あの下倉メグということですか?」
フランシス「…正確には、向こう側の世界の下倉メグだ。しかし、それは向こう側の世界から先生…主人公が消えたことで暫定的に作り上げられた存在。故に実に不安定な存在だ。主人公でありながら、主人公ではない存在にもなり得る…。…お前のゲームがどのような結果になるか…今回は見守ることにしよう。またお前に襲われてはたまったものではないからな」
地下生活者「ヒヒヒ…それはそれは、結構なことです。…しかし、焦ることはありません。じっくりと、ゆっくりと…ことを進めるとしましょう…!」