─ホムラがヒナと対峙してから2日が経過した。
未だにホムラは見つからない。メグが狙われたわけではないが、常に風紀委員会の監視があるというのは彼女にとって窮屈なものだろう。
ヒナ「…というのが、ホムラに対する私の所感よ」
“…そっか、あの時のホシノに…”
ヒナ「…今の彼女をそのままにしておくのは危険よ。とんでもないことになりかねないわ」
“そっか…”
メグ「………ねぇ」
“どうしたの?メグ”
メグ「私、どうしてもあの子が私だって信じられないんだけど…」
ヒナ「…それは私も同じよ。過去に何かあったとしか考えられないわね」
“…別世界のメグの過去…”
…彼女たちが自身の世界で何をしてきたのか。それを知っておかなければいけないように、私は感じた。
“…ひとまず、ヒナもメグも気をつけてね”
ヒナ「えぇ、先生こそ無理はしないで」
その言葉に軽く頷いてから、私は部屋のドアを開けた。
ところ変わってミレニアムサイエンススクールの一室。
マコト「…いい茶だな。客人への最低限の礼儀は心得ていると見える」
ユウカ「…褒め言葉として受け取っておくわ」
ミレニアムの生徒会『セミナー』の会計『早瀬ユウカ』は、ゲヘナの生徒会『万魔殿』の議長『羽沼マコト』と一対一で話をしていた。
ユウカ「リオ会長はいないから、私が代理として話をさせてもらうわよ」
マコト「キキキッ、失踪中ということか?よもや例の事件と関係があるとは言うまいな?」
ユウカ「例の事件…。あぁ、トリニティとゲヘナの誘拐事件のこと?それなら心配ないわ。リオ会長はかなり前から失踪してるので」
マコト「そうかそうか、ならばいい」
ユウカ「…それで、わざわざ一対一で話がしたいって…どういう話なの?」
マコト「…一つ、調べてほしいものがある」
そう言うとマコトは持っていた大きめのアタッシュケースを机の上に乗せて開ける。
その中にはガラスケースの中に厳重に保管された携帯型のトランシーバのような機械が入っていた。
…液晶とボタンが一つだけ。それ以外は何もないという、よく見てみると通信機とするなら相当の欠陥品のようにも思えるが。
マコト「…これがどういう機械なのか、解析してほしい」
ユウカ「…これ、何なの?…パッと見ただけなら通信機みたいに見えるけど」
マコト「…そうだな。見た目はアンテナらしきものがあり通信機然としているとはいえ、液晶と一つのボタンしかなく、スピーカーやマイクらしきものはない」
ユウカ「見た目はともかく、冷静に見れば通信機ではないだろうということはわかるわね。…ボタンを押しても起動しないの?」
マコト「…起動はさせていない」
ユウカ「起動させてないって…。それじゃどんな機械かわからないのも当然じゃない」
マコト「…起動させることで何が起きるかわからんからな。解析をする時も、起動させないように気をつけた方がいいだろう」
ユウカ「起動させない方がいいって…。何でこんな通信機モドキをそんなに警戒してるのよ?」
マコト「…これが『ただの通信機モドキ』ならここまで警戒はしない」
マコトはカップを口に運び、フゥ…と静かに息を漏らした。
マコト「…こいつは、雷帝が遺した…いわば遺産だ」
ユウカ「雷帝…!?」
会ったことはおろか顔すら見た事はないが、名前だけは聞いたことがある。
『雷帝』。2年前、ゲヘナを支配していた生徒会長。詳しくは知らないが、このミレニアムすら凌駕しかねない程の技術力を持っており、それによっていくつもの危険な兵器を作り出してきたらしいが…。
ユウカ「…これが、雷帝の造ったものだ…って?」
マコト「あぁ。私たちとしては問答無用で破壊したかったんだが、壊すことはかなわなかった。用途がわからない以上危険なものでない可能性もあるが、万が一があれば事だ。せめてどういったものかは把握しておきたい。報酬もしっかり出すことを約束する」
ユウカ「…それなら断る理由もないわね。ところでこれ、名前とかついてたりするの?」
マコト「…正式名称かは知らんが、『エルピスの星』という名がつけられていたようだ」
ユウカ「…仮にこれが通信機だったとしてつけるに相応しい名前ではないように思えるけど…。まぁいいわ、調べてみる」
マコトがミレニアムを去った後、ユウカはひとまずエンジニア部に『エルピスの星』の解析を依頼するのだった。