救護騎士団の本拠地にて、ハナエは頭を悩ませていた。
先日のメグ襲撃の件もあり、いよいよほぼすべての団員が自分の世界のメグ…ホムラがこの世界のハナエを誘拐した犯人であるという風に考えて動いているのだ。
個人的にはその事実を否定したいがそれが可能なものがない以上ホムラが犯人と断じざるを得ない。
でも、それを認めてしまうと…自分の中の大切な何かが、ぷっつりと切れてしまいそうで─
ミネ「…ハナエ?」
ハッとして振り返る。振り返ると心配そうな表情の団長がそこにはいた。
ミネ「…大丈夫ですか?思い悩んでいたようですが」
ベル「あ…はい、大丈夫…です」
ミネ「…とてもそうは見えませんが」
ベル「………ミネ団長は鋭いですね…」
観念したハナエは「誰にも言わないでほしい」という前置きをしてから、団長と話を始める。
─ホムラが犯人であるということを心の中では理解していること。彼女の動機がわからない自分が情けないこと。そして、それを否定したい自分がいること。
ベル「…わかってるつもりなんです。でも、それを認めてしまったら…私は…」
ミネ「…認めたくないものがあるのは当然のことです。人は何時だって甘い理想を夢見るもの。苦い現実から、目を背けたくなるものです。…それでも、目を背けてはいけないものというものはあります。向き合わなければいけないものはあります」
ベル「…そう、ですよね…」
ミネ「…ですが、いまあなたがあなたが真に向き合うべきは…恐らく、あなた自身だと思いますよ」
ベル「…私?」
ミネはハナエの頭を撫でる。それは、彼女にとってはもう二度と感じられないと思っていた暖かさだった。
ミネ「…あなたが彼女に何をしてあげたいか。きっとそこが重要になります。彼女をわかってあげられるのは、きっとあなただけ…ですから」
ベル「…団長。…ありがとうございます」
団長の暖かみを感じながら、それでもベルはとあることを感じていた。
本来であれば、ここにいるべきなのは私ではなく『この世界の朝顔ハナエ』なのだ。
居場所を奪ってしまっているように思えて、ベルはぎこちない笑みをミネに向ける。
それについて、ミネは気づかなかったかそれとも気づかないフリか…それはわからないが、何も言わずにベルを撫で続けた。
日も沈んだ頃、トリニティに停められた装甲車両内─
ベル「私がメグさんにしてあげたいこと…」
彼女とは、2年間…向こうにとっては1年間だが、共に過ごしてきた。辛い時も苦しい時も、一緒に生きてきた。滅んだ世界をかつての姿と比べる度に泣きそうになった。それでも、メグさんがいたから…ここまで頑張ってこれた。
私は、ホントは彼女のことを何もわかっていなかったのかもしれない。現に、彼女がこんなことをしている理由が私にはわからない。
でも。
ベル「私は」
メグさんの笑顔が見たい。
ベル「…よし!」
その夜、ミネのモモトークにメッセージが届いた。
《本当にありがとうございました、団長》
《いつかまたどこかで》
それだけ送って、ベルは車のアクセルを踏んだ。