如意棒でノイズぶっ叩くお話。   作:テムテムLvMAX

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五話 切っ先の鈍る時

 私たち戦場で歌う戦士、ノイズと戦う戦乙女。

 

 

「我が刃、何人も防ぐこと叶わじっ!」

 

 

 シンフォギア、それが私たちの扱う力の名前、私はアメノハバキリを、奏はガングニールを、神話に名高い聖遺物の欠片を、私たちの歌で力を発揮させる仕組み。

 

 ノイズと戦うための力として私は鍛えられた、私は剣、この身は風鳴翼と人は呼ぶ。

 

 だけど、奏は、私の片翼は、そうではない、なのに確かな思いを力に変えて戦っている。

 

 

「よぉし! 今日は特別気分がいいぜ!! 持ってきなぁ!」

 

 

 力任せで豪快なアームドギアたる槍の一振りでノイズの軍団を灰に返した、技はないが力はある、それが彼女の望んだ力、私はその彼女の支える技がある。

 

 

「はあっ!」

 

 

 奏の背後に回り込むノイズを一閃にて仕留め、返す刃で退路を確保する。

 

 

「奏! 前に出過ぎよ!」

 

「あ、わりぃ! おらぁ!」

 

 

 2人で軍団を切り裂きノイズの包囲から抜け出して一息つく、今日はノイズの数が多い、いくらシンフォギアが強くともたった2人でやれる事は限られている、当然手の回らない場所が出てしまう。

 

 だけれど、それを乗り越えてこそ私たちは比翼の鳥たり得る! 

 

 私が囮となって敵を引き付け、敵を一箇所に集めた所に突破力に優れる奏の槍で一息に突き抜ける! 

 

 

「今よ! 奏っ!」

 

「よっしゃぁっ!」

 

 

 こぼれたノイズも私の剣の間合いから出られる訳もなく速やかに仕留めきる! 

 

 

「はあっ!」

 

 

 集まってきたノイズの最後の一体を斬り伏せた所で通信が入りこの周辺に現れたノイズは全て撃退されたとの報告があった。

 

 その通信が入ったことで私と奏はほんの少し気を緩め、この後の動きへと意識を集中させていた。

 

 

「あー全く、市街地じゃなくて海岸にでも出てくれりゃやりやすいのにな……」

 

「……奏、ちょっと急ぎ過ぎじゃない?」

 

「隠してたんだが……バレちまったか?」

 

「当然よ、やっぱりお兄さんのため?」

 

「まぁ、な……へへ……」

 

 

 いつも以上に頬が緩む彼女を見て私はとても嫉妬した、奏と積み上げた二年じゃ到底叶わないと知っていたけど、奏とお兄さんの親密な様子に私は嫉妬してしまった。

 片翼として最低だと、内心で自分を叱責する、でも偽らざる本心であることも認めてしまっている。

 

 

「(ああ駄目……これではイケないのに……どうしてこの心は収まらないの……!)」

 

「翼……? おーい……」

 

「あ、ごめんなさい、なんだった?」

 

「いやいや、なんかいきなりぼーっとしてさ、こっちがどうしたって聞きたいくらいだけど?」

 

「……明日の訓練メニューを思いついたの」

 

「なんだぁ真面目だなぁ翼は! ま、そういう所に助けられてるんだけどな、でもたまには息抜きも必要だぞ?」

 

 

 自分の心に嘘をつき、奏にも嘘をつき、何をしているの、私は。

 

 いよいよ自己嫌悪で唇を噛み切りそうになるけど、それを察してか、奏は私の肩に寄り添ってくる。

 

 

「まーた小難しー顔して〜、スマーイル!」

 

「うにゅ……」

 

「固い顔してると心まで固くなるってさ、だからとりあえず笑うんだぜ」

 

 

 奏は私の頬を優しく引き伸ばすと、微笑みを浮かべて笑ってみせた。

 私も釣られてクスリと笑っていた、こういう所が奏の魅力で助けられている。

 

 

「それ、誰が言ってたのよ」

 

「アニキだよ、昔、私が泣いてるときに教えてくれたんだよ」

 

「……いいお兄さんね」

 

「血は繋がってないけど、一緒にいた時間は家族と変わんねぇからさ……あ、私の場合は親が海外転勤ばっかなのもあったけど……」

 

 

 妬ましい、そうやって奏に思われているお兄さんが妬ましい。

 

 本当に、そう? 私が妬ましいのは奏に思われているから? それとも奏の心が私から離れていくと思うから? 

 

 私は、どっちなの……? 

 

 

『ノイズの反応が現れました!』

 

 

「なに!」

 

「ノイズはどこにでたんですか?」

 

 

 司令室からの通信で我に帰り、私は即座にノイズの出現位置を求めた、オペレーターの答えは今の私達には苦しいものだった。

 

 

『そこから南東と、北、それに西に規模の大きな集団が、西側は避難誘導が済んでません!』

 

 

「手が足りねぇのはいつものことだけど、今回は尚更足りねぇ……アタシが西に行く、そんでもってそのまま南下ってことでいいか?」

 

「ならば私は北が終わり次第西の援護に回ります」

 

『……いや、待ってください、北と南に一課の避難誘導班が取り残されています、おそらくノイズの奇襲にあった形だと思われます……なんで今の今まで反応が検知されなかったんだ』

 

 

 状況は想像以上に悪い、私の知る限りここまで手詰まり感を感じることは久しくなかった。

 

 避難誘導が終わっていない西を優先したいが、北と南に残された一課もまた等しく助けたい命……もう一人、もう一人、いれば……。

 

 

 __シュッ

 

 

「……おっ」

 

「あ、アニキ!?」

 

「奏、その格好は……あぁ、いや後でいい……僕が南に行くよ」

 

 

 

 ……突然奏のお兄さんが目の前に現れた? 私は何を見ているの? 幻覚? でも確かに出撃前には地下にいたはず、そこから正確に私たちの座標を特定して追いかけてきた? ありえない、世界トップクラスのセキュリティをいとも簡単に突破してみせるなんて……

 

 

「翼さん、で、あってるよね? 僕の事は後で話すよ、自分でもよく分かってないんだ、奏のこと任せます!」

 

 

 ……生身の人間がビルを飛び越えて行ったように見えたけど、とりあえず今言えることは。

 

 

「不意に対する修行不足……!」

 

「翼? こればっかりは修行どうこうで対応できないと思うけど……とりあえず、あの様子だとアニキに任せていいかもな」

 

 

 奏はお兄さんのあの様子に心当たりがあって、冷静なように見える、とりあえず今はノイズを排除し人命救助に向かわないと! 

 

 

「私は北へ」

 

「アタシは南東だ」

 

 

 今は私たちの他にもう一人の戦力がいることを頼もしく思おう、シンフォギアなしにシンフォギアと渡り合うような存在が全くいないわけではないから、ある意味事情を難しく考えず飲み込めていた。

 

 そうして私たちは三方に分かれてノイズを殲滅し、取り残されていた人々をほぼ無事に助け出すことができた。

 問題なく全てうまく行った、被害は多少出てしまったものの私たち3人の活躍は間違いなくうまく事を運んだ。

 

 その後、事後処理を終えた私たちを迎えに来た車に加え、物々しい装備に身を包んだ部隊が現れた。

 

 奏のお兄さんはそれを見ても意に介していないように見えて、少し底冷えするような、感覚が私にはあった。

 

 風鳴司令がわざわざ迎えに来ているという所も恐ろしい、奏が口を挟もうとしたくとも出来ない空間が出来上がっている、いや奏でなくとも私程度の胆力では、風鳴司令の迫力だけで尻込みしてしまう。

 

 

「風鳴さん、ずいぶんと警戒してますね」

 

「そうしなきゃならない状況になっちまったからな……」

 

「僕がノイズを倒せるから? それとも地上に出られるから?」

 

「全部だ、少なくとも君が動いたせいで洗いざらい話してもらわないといけなくなった、隠していることを全部話してもらおう」

 

「……逃げても?」

 

「逃がすとでも? ……酷な話だが奏は俺たちの組織に所属している、君の首根っこを掴んでいるのはこちらだ」

 

「やっぱりそうなんですね……奏のあの姿と力はあなたの組織が与えたんだ」

 

「ああそうだ、だが無理矢理ではない、我々は手を差し伸べたが、それ自体は彼女の意思で掴み取ったモノだ」

 

「そうですか……では、僕は何も抵抗しません、むしろ協力させて欲しい、僕は奏の信用した組織を信用します」

 

「君の思いを裏切ることがないようにしよう……皆、拘束は不要だ、俺が隣に座る……それと今回の彼の活躍は徹底的に情報統制を敷いて外部に漏れないようにするんだ」

 

 

 一気に場の空気が穏やかになっていく、まさに一触即発の状況で肝がずっと冷えてっぱなしで、もうしばらくは風鳴司令の本気の顔は見たくない……。

 

 私と奏は胸をなで下ろし、迎えの車に乗り込んで帰路についた。

 

 

 

 

 

奏を任せる……か、私はその言葉に安堵していた、奏を奪うような人間じゃないとその言葉だけでわかる、よく考えれば私が奏と出会い同じ道を歩むことになったきっかけですらある。

 

私の奏への親愛と憧れは、元を辿ればお兄さんなんだと思うと……私は彼のことが少し気なっていた。

 

 

 

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