高評価や感想、ここすき、誤字報告、いつも感謝しております。
難産でした。
《名前》
アイズ・ヴァレンシュタイン
『Lv.5』
《基本アビリティ》
力 : B 722
耐久: B 701
器用: A 897
敏捷: S 903
魔力: S 989
《発展アビリティ》
狩人:F
耐異常:G
剣士:G
《魔法──────
────
──
「これがアイズのLv.5の最終ステイタス……」
「う~む、どう見ても」
「ああ、高すぎる。特に顕著なのが【力】と【耐久】だ。
いままでのアイズなら良くて600を超える程度だった……」
「せやなぁ……リヴェリアの話を聞く限りごっつう激戦やったんは間違いない。
でも【アビリティ】は本人の素質でもあるからなぁ……伸びんもんは伸びんし、伸びるもんは伸びる。せやけど、これまでアイズたんの【ステイタス】の伸び方は前衛剣士っちゅうより一般的な
そこは【ロキ・ファミリア】の
そこに記載された内容は彼らにとって娘とさえ言える派閥の幹部である【剣姫】──『アイズ・ヴァレンシュタイン』の【ステイタス】。先日の小規模深層遠征の際、急なアイズの我が儘に対し、リヴェリアの同行を最低条件とすることで許可した。結果、彼女は単騎で
相手は深層1体目の
全身を強固な黒い骨で覆った巨大な骸骨型のモンスターで、下半身が地中に埋まっている為に旋回能力を持たないが、地面から無数の
単純な【ステイタス】だけでは太刀打ちできない。『ウダイオス』との一騎打ちの為には、生み出される『スパルトイ』の対処をしなければならず、その最中も『ウダイオス』が態々止まってくれることなどない。
どちらにも対処できるようにならなければ、そもそも戦いにすらなりはしないのだ。
そんな強敵と戦い、勝利を収め、無事に帰って来た。嬉しいことは続けざまに起こると言わんばかりに彼女の
本来は諸手を挙げて喜ぶことだ。事実、昨日の夜は急遽『アイズ
なお、テンションの上がった団員たちからもみくちゃにされまくった当人は早速Lv.6となって更に強化された
「階層主とやり合ったからと言って、短期間でこれほどまでに伸びるとは思えない」
「お主らが言っていた18階層で出会った赤髪の
「……いや、それは無いだろう」
「断言するんやな」
「僕も同感だ。確かに彼女は強かったけど、良くてLv.6成りたての前衛剣士と言ったところ。アイズも最初の方は押されていたらしいが、その後は互角の勝負には持っていける程度の実力だった。
最後の方は僕たちも
フィンとリヴェリアがリヴィラの街にて同時多発的に発生した食人花モンスターの群れの対処を
明らかに冷静さを欠いた様子をみせる赤髪の
全身に青痣と切り傷を持ちながらも、果敢に攻め続けて勝利を得んとする
両者をその視界に捉えたフィンとリヴェリアは一瞬介入を検討した。本来であれば即時の介入を決断する場面で、だ。敵の手札がまだ残っている可能性を考慮して、2人はもう少しだけアイズ1人に任せようと判断したのだった。
戦闘中の両者には精神的な余裕が決定的に開いていた。推測した
「う~ん……、ウチとしてはその場におったっちゅうドチビんとこの
ロキが漏らした勘のように曖昧な一言に三首領全員が疑問を抱く。
「彼がかい?」
「流石に憶測が過ぎる気がするのう」
「同感だ。……だが、もしそれが当たりであったなら、確実にオラリオ中で奪い合いが起こるな」
リヴェリアの
他派閥の冒険者相手であっても、何らかの条件をクリアすることで大幅な【ステイタス】の上昇補正が掛かる。所謂の『成長補正スキル』。『神時代』が到来して1000年、記録上前例のないことだが、彼らは既に
「1ヶ月半……。彼が……ナイン・レイルが
「アイズの1年を大幅に更新……。そもそもの話、彼は我々が取り逃がしたミノタウロスを5階層にて3体も討伐している。だが
まず
ロキ、神としての所感は?」
「う~ん、考えられるのは明らかに速い
2つ目は【アビリティ】がまだ満足できる数値じゃぁなかった~とかやないか?」
基礎となる5項目の【基本アビリティ】のみに0から999までの熟練度が存在している。【アビリティ】はIからA、そしてSの十段階で
本来、冒険者の【アビリティ】の評価値は良くてB。
そんな【アビリティ】の最高評価であるSに昇り詰める者は全くと言って良いほどおらず、幹部陣である三首領たちも各々の種族的に向上させ易い【アビリティ】以外で評価値Sに届いていない程度には熟練度の上昇とは困難を極めている。
「ふぅむ……、しかしフィン達の話を聞く限り
「手加減はしてたがな。
……いや、途中からボコボコにし始めたから流石に止めたが」
頭痛が痛いとばかりに頭を抱えるリヴェリアと乾いた笑いを上げるフィンの脳裏には、話したそうにしつつも話し掛けれずじまいなアイズとそんな彼女に優しく微笑み掛けに行くナインの姿があり、手合わせを終えたあと全身に打撲痕を作りながらも「また今度~」と手を振る少年の姿が映る。そんな彼に対して嬉しそうに小さく手を振るアイズの姿も。
正直に言えば常軌を逸した耐久力を見せられてちょっと引いた。『耐久』が伸びにくい
「ママから溜飲の下がる話が出たところで……「ママというな」、本題は──コレやッ!」
一拍置いてロキが執務机に叩き付けたのはもう一枚の用紙。先程同様アイズの【ステイタス】が記載されているソレだが、記載内容が変わっている。
新しく増えた項目としては
1つは【発展アビリティ】である【精癒:I】。これは良い。発展アビリティ自体は
だが、もう1つは────、
・
・疑似精霊化。特定対象に
・体力及び
・発動中、自身の
「「「「………………………………」」」」
その場に集った4人が黙って一枚の用紙を覗き込むという珍光景がそこにはあった。
アイズには隠し事がある。それを知っているのは主神であるロキと三首領を除けば、憶測の範疇を出ないが女神フレイヤぐらいだろう。神経質なまでに隠し続けてきた彼女の秘密。その一端である『精霊の血を引く』という事実なのだが、このスキルに至っては疑似的にとはいえ精霊と化すらしい。
おかしいんちゃう?
これが感想だった。
「…………ロキ、これを」
「言えるわけないやんか」
そう。ロキはこの【スキル】をアイズに渡した用紙には記載していない。明確な【
しかしフィンの頭の中ではこのスキルの有用さが理解できてしまう。
今まで蓄積されてきたアイズの
自身の【第二魔法】にも似たような記載がある分、彼の中ではどうにか
「……なぁロキ「嫌や」、まだ何も言ってないじゃないか」
「嫌や。ぜぇっっっっったいにッ! 嫌やッッ!!
何が悲しくてかわいいかわいいウチのアイズたんをどこの
そもそも足らんわレベルもダンジョンの経験もなッッッ!!!! 誘う価値ナシッッ!!!
以上! 解散ッッッ!!!」
と、勝手に締めくくったロキは扉を全力で開け放ち、「こんなん寝取られやんかぁぁぁッッ!?!!」と叫びながら自室へと帰っていった。
彼女を見送った首脳陣である3人はそれぞれ顔を見合わせた後、呆れたように小さく笑い合う。少なくとも今続けるような話題ではないとして現在ファミリア
────
──
その1時間後、大半の上級冒険者が出払ったタイミングでとある神が
ロキは先程までの憤怒を一度飲み込んで応対していたのだが、そこへフクロウが一羽。足に付けられた小さな筒から取り出されたのは彼女が心から愛するアイズからの手紙だった。
『ちょっとダンジョン内で
同行者も居るので心配しないでください。
────あ、後日
「ツッコミどころ満載やンかぁーーーーーッ!!!!」
客神の前であることも忘れ、ロキは空へと吼えたのだった。
「……24階層の
そして彼を殺した赤髪の怪人──『レヴィス』なる人物と、最後に現れた仮面の存在。……単なるダンジョンの道というには怪しすぎる」
『旅人の宿』と呼ばれる
書類に記載されている内容は今回の一件に対するあらましだ。
男神──【ヘルメス・ファミリア】の主神、神ヘルメスの眷属である
今回の一件はそれを引き合いに出されたことと、ギルドへ報告している所属団員のレベルや到達階層を偽っている点を指摘されたことが原因だった。
だがこれらの件に関してはそこまで気にしていない。ギルド長のロイマンからは薄々勘付かれている節もあり、同時に見過ごされているゆえにだ。
問題はこの一件で起きた様々な
24階層で起きていたモンスターの大量発生は最奥に位置する
そしてそれを完遂するべく用意された死兵という名の
怪人だけでも厄介極まりないところへ、第一級冒険者の打撃を跳ね返すほどの耐久力を誇るモンスターは養殖可能ときた。頭の痛いことである。
頭を抱えている最中、ヘルメスの神室のドアがノックされ思考を一度クリアにしようと入室の許可を出した。
「失礼します、ヘルメス様」
「おかえりアスフィ。容体は?」
「幸運なことに全員峠は越えたと
「おおっ、流石アミッドちゃ~ん」
ヘルメスは【ロキ・ファミリア】の面々よりも遅く帰還したアスフィらがその足で【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院へ駆け込んだことを聞いた時、まずはホッとした。彼らの背中に刻んだ
どのような状態であれ、一命は取り留めるだろう。そう思い、胸を撫で下ろした。
だが、アスフィの口からは「しかし──」と続く。
「失明したポットは別にして、四肢を欠損した者たちは……」
「その為の金だろう? 義腕に義足……本人たちの要望を聞き届けてやってくれ」
「了解しました」
言うが早いか、それともすでに用意していた為か、安堵の息と共にドアを薄く開いて外で待機していたルルネへ証文を渡す。無制限の金銭担保か、それとも上限額の提示か。ヘルメスは目を瞑ることとする。現場指揮をした者が負う責任と言うモノは計り知れないのだから。
廊下を駆けていく音が消えた辺りで漸くヘルメスが口を開いた。
「それじゃあ、そろそろ本題だ。
援軍として来てくれた【剣姫】……彼女と共に来た黒いローブを羽織った人物について分かったことは?」
「今のところ何も。【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院にもそれらしい人物は居ませんでした」
彼らの話す議題は正体不明の援軍である黒のローブで全身を覆った人物。ルルネにも確認を取ったが、
「おそらくは認識阻害の
「判明していることは2本の剣を佩いている前衛剣士であること。身長は180セルチに届かない程度で……。ここからは推測だが性別は男、強さに関しては──推定Lv.3に届きうる……、か」
18階層のリヴィラの街にて落ち合ったアイズの隣に立つ人物。正体を明かすように指示しても無視をされ怪しんだが、アイズが信用しても良いと宣言したことで一定の──監視を前提とした信用を置く。【剣姫】というネームバリューに対する信頼が大半の比重を占めていたが。
基本的に無口かつ指の先まで覆う厚手の手袋で体型から骨格まで隠していた為に性別すらも断定には至らない。ローブに施された認識阻害の細工の所為だろうとし、
下手に藪を突いて【ロキ・ファミリア】と敵対する気はないのだ。万が一主神であるロキが隠したがっていたお気に入りであった場合、【ヘルメス・ファミリア】の痛いところを知っている彼女に総攻撃を喰らいかねない。最低限、事故でなければならなかった。
「ひとまず『彼』としておこうか……。
負傷に関しては?」
「食人花の群れとの戦闘ではローブの先端が破れる程度で認識阻害が解除されるほどではありませんでした。ただ……」
「……ただ?」
「
「うっわー……いたそ」
その類いの女性だったのだろう。黒ローブの人物は右手を短剣で貫かれて血を流すこととなった。
ゆえに治療のため治療院へと足を運んでいるだろうと考えアスフィも向かったが、それらしい人物は見当たらなかった。【ディアンケヒト・ファミリア】の団員にも聞いてみたが、そちらも芳しくなく。
バベルに併設されている治療院も訪ねたが、こちらも収穫は無かった。
「それじゃあ……誰が裏にいると思う?」
本人ではなく、その裏にいるであろう顔をみせぬ推定協力者について。
「【剣姫】が連れて来たことから【ロキ・ファミリア】……と言いたいところですが、
あとの候補は……
「ギルド……いや、ウラノスかな」
ダンジョンでアスフィたちが苦労している最中、ヘルメスもまたそこへ己の眷属を送り出した神ディオニュソスの下に
結局なにも判明しなかった。彼の眷属がここ数年で同様の
「私の推測ではギルド側ですね」
「理由は?」
「1つは彼の着ていたローブがルルネに
そして……────」
アスフィが一度口を噤む。当時の光景を、自分たちでは手に負えない食人花の群れとその奥から悠然と自分たちを見下ろす
指揮官である彼女は味方の命を預かる立場であると同時に、時に非情な選択を強いられる立場でもあるのだ。あの場で最も命の価値が高かったのは【ロキ・ファミリア】の眷属、そして次点に【ヘルメス・ファミリア】団長であるアスフィ。つまりは自分を生かすために味方である部下の命を消耗させてでも敵の進攻を遅滞させろと命令しなければならない状況であった。
だが、その場から1も2も無く飛び出したのが黒いローブを着た人物だった。片手に鈍色に光る片手剣を握り、迷うことなく敵陣へ吶喊していく。戻れと命令しようにも、彼女の中で一番命の価値が低いのは正体不明の『彼』だった。
オリヴァスの魔石を食し、強化された怪人を対処するため離れた【剣姫】と
しかし惹き付けた時間は30秒を優に超えていた。広い
陣形を整えた【ヘルメス・ファミリア】であれば、時間稼ぎ程度であれば問題無く行えた。
「『彼』にはまだ奥の手があった……」
「食人花の上位個体──
にわかには信じられないね……推定レベルが5はあるだろうモンスター相手に通用する
「えぇ、私の
「1人で数十体のモンスターを相手取れる実力に、レフィーヤちゃんの魔法に見向きもさせないなんらかの効果不明の魔法……若しくは
「さてどうするかな……」と、ヘルメスは今後の予定を組み直す。近いうちにオラリオの外へ出るつもりでいた彼だが、この案件を放置して良いものか、と。
「……っあ、そうだ。頼んでおいたことって終わってるかい?」
ここで丁度思い出しましたと言わんばかりの口調と表情でアスフィへと問うヘルメス。対するのは疲れたOLのような表情と化した
「──
「さっすがアスフィ~、愛してるぜ?」
「口だけ野郎が……ッ」
「言葉がささるね~」と宣いつつもアスフィより数枚の用紙を受け取る。彼が都市から離れていた間に起きた出来事などを公表されているモノよりずっと詳細な内容の書かれたアスフィ個人へ頼んだ秘密事項。
以前より──そう、ずっと昔から目を付けていた人物についての報告書へ、ヘルメスが目を通す。期待半分、恐怖半分。自分が接触するのは
「……………………は? マジ?? すっげぇ……」
しんじらんねー、というような間抜けな声が神室のなかを木霊したとか。
そこは世界の中心たるオラリオの西地区。住宅街などの一般市民の生活圏が広がる比較的安全性の高い地区である。ここに構えられた『豊穣の女主人』という酒場の前で1人の従業員が呼び出された。
彼女の知る彼が呼び出すとすれば同僚であり、種族がら端麗な容姿をしている
だからこそ彼が彼女ではなく自分を呼んでくれたことにどこか優越感を覚えたこと自体には目を瞑ろうと心の中で呟いた。
僅かに顔を朱に染めながら案内した店の裏にある広場についた両名。出歯亀よろしく覗き込んでくる恋愛模様に目が無い同僚たちの視線すら無視して話を始める。
覚悟を決めたように真剣な様子をみせるナインの雰囲気に圧されつつも何かしら良いことが起こるかもという勘に頭の中を
────などと思っていたのは鈍色髪の街娘だけ。
「貰ったお弁当をモンスターに喰われてしまい、ほんっっっとうにッ……すいませんでしたァァァ!!!」
彼女の対面に立っていた漆黒髪の少年は齢にして3つから鍛え上げてきた肉体を全霊で酷使して全力の土下座を敢行するのであった。
なんやかんやあり、巨大なたんこぶをこさえたナインが後日一緒にお料理するということで決着がついたとか。
──────次回、
オ「俺は?」
ナ「だってお前食人花とか興味ないじゃん。12階層で黒大剣の欠片持って帰ったよ」
オ「でば……」
ナ「俺も数行だけだけど?」
オ「…………」
今日のあれこれ
・朝稽古の場にオッタル登場。
・帰りの際ナインへアイズがドロップアイテムについて概要を話す。興味を持ったオッタルが来るということで場所がダンジョン内に(ロキFとフレイヤFが敵対派閥なので見つかりにくい場所で)。
・黒大剣の欠片をオッタルが買い取ることで決着。直後
・ナインは同行した(珍しく剣2本という構成だった)。ついでに認識阻害のローブを貸して貰った。もう返した。
・巨大花までは原作通り。しかし純前衛をしていたナインのリュックの紐を触手で切られ、リュックを丸ごと喰われる(回復薬やその他、ダンジョンへ行く前に貰ったシルの弁当を捕食)。
・
・人から貰った物を粗末にした自分が許せず吶喊。背後で行われているレフィーヤの魔法に目が行かないように付与魔法に限界まで
・レア・ラーヴァテイン。
・素性を隠したままのナインでしたがレフィーヤからはジト目を、ベートからは呆れを貰う。前者は1割ぐらい、後者は半ば気付いている。
・フィルヴィスに挨拶がてら握手しにいったらグッサリ。「これで俺の手も血に塗れたからお互い様ですね」と小声で伝えて無理矢理握手。
・地上に戻って家に帰りエリクサーをグビり。『豊穣の女主人』へ。
・初めて作って貰ったお弁当を味わうことなく台無しにした謝罪を敢行。ハジケタ巨大花を見ても食う気だった。帰り道とかに。
『これが嘘かどうか曖昧なら揶揄えたのにね。嘘じゃないって知れるから、彼女』