高評価とか感想、ここすき、誤字報告感謝です。
「行なう」って書いてるのは読み上げに絶対「おこなう」って読ませる用です。無視して構いません。一応正しい表記ではあるので。公的に使うと恥を掻きますけどね。
豊穣の女主人に勤める店員2名と別れたナイン達は、まずはギルドへと向かう。
現在の時刻は朝の8時前。ナインたちの住むオラリオはバベルを中心に幾つかの大通り、つまりはメインストリートが延びている。その内の1つ、通称冒険者通り。北西に延びるこのメインストリートはとても混んでいた。
それも当然で、一種の自営業でもある冒険者であっても、やはり日の出ている時間帯にこそ潜りたい。別に地下に潜っているのだから太陽が出ていようがいまいが関係なくない? と考える人もいるだろうが、夜潜って他の同業者と同じ時間潜っていると、出てくるのは朝。それも日の出るかどうかの時間になる。
そうなると早朝から開いている飲食店を見付けるのは難しいし、ホームがあっても出入りの音で「変な時間に起こすな」と怒られるかもしれない。
何よりほかの冒険者たちが一定の範囲内に居てくれれば、
わざわざ
そんなこんなでこの時間帯は混む。それはもう混む。ナインがベルの首
ギルドに用事のある冒険者だけでなく、一般の市民も使う道であるためだ。
「相変わらずこの時間帯は多いな。やっぱりもう少し早めに出るのが
いつもなら既にダンジョンの10階層で持ち込んだ複数のリュックサックを地面に置いて、インプやオークなどのモンスターと戦闘を開始している時間。今日は何故か朝稽古の場に【
まぁ、別に自分の通れる道を見付けることはそこまで難しいことでもない。空いたスペースへ体を入れてギルドへと向かう。手に持ったベルを放すことなく。
────
──
バベルの地下。オラリオが迷宮都市と呼ばれる
そこは彼女の担当アドバイザーである
最大到達階層、なんて大それた言葉に対してたったの4階層かよという人もいるだろうが、この階層でも
いけない、のだが……。
空中を
その先には後続として走っていたコボルトが3匹。しかしその歩みはコボルトの亡骸と衝突したことで完全に停止して、更には首を斬られていたコボルトはそのタイミングで完全に事切れる。よってモンスターの生態に準じて魔石とドロップアイテムだけを残して灰となり、その奥で足を止めているコボルト3匹までの安全な最短距離が形成される。
衝突した影響からか、顔や腹を抑えているコボルト達へ一気に近寄る影。そして一閃。相手が同じ体格だからこそ可能な、たった一撃での3体同時の斬首。
それは首にある消化器官のような場所を斬るだけで、決して骨に当てないようにして刃毀れによる戦力低下が可能な限り起こらない様にしている。
当然だが、ただ腕を伸ばして振るっただけで成せることではない。
標的との的確な距離感と適切な力加減、そして何よりも適した刃の入射角。他にも様々な要因を乗せなければ成しえない芸当ではあるが、ベルの目の前で戦うナインは昔からずっと反復練習を1人で繰り返してきたのだ。コボルト程度のモンスター相手ならば容易く行なえる。
そうして最後に残っていた4匹のコボルトは数秒で倒され、周辺に散らばるのはこの階層で出現するモンスター達の魔石やドロップアイテム。しかも大量。ナインは戦闘中、モンスターの魔石を砕くようなことをしていなかったことから、それは出現数と同数ということになる。つまりは大体50個ほど。
5分前に突如として起きた4階層での
彼女の戦闘スタイルが原作主人公と同じになるのであれば、基本は
しかし残念なことにこの場にいるベル・クラネルは小柄な少女。彼から彼女に変わった影響は大分キツイものとなっている。
例えば身長。男のベルは14歳の時点で160セルチを超える健康優良児。オラリオに来てじゃが丸くん生活を1ヵ月近く続けていたのはいただけないが、それでも身長が高ければその分筋肉も付くしなにより大きな武器を振るえる。
対してこの場にいるベル・クラネルは少女。その身長はどう頑張っても150セルチに届かない程度。腕も訓練や筋トレをしたような筋肉の付いたモノではなく、贅肉が付いていない程度の健康体でしかない。挙句、胸などは成長期ですよと元気に声を上げているかのように服の上からでも少し膨らみが分かる。
どう考えても今のままだと前衛に向きません、本当にありがとうございました状態なのである。
と言って完全な後衛職に置くかと言えど、彼女は魔法も発現していなければ弓などの扱いに
ならばと、自分に武芸の基礎を叩き込んでくれた女神さまの動きをトレースして見せてみようと思ったのだ。あの
そう考えた次第であった。
「────とまぁ、こんな感じだ」
乱雑に転がっている魔石とドロップアイテムを踏むことなく、そしてモンスターに踏ませるようなことも無く、一切傷つけずに戦い続けたナイン。彼はそう言いつつ、
そして鞘に納めた
「やれ」
「無理ですけどっ!?!?」
この1ヶ月間、対モンスター用に調整し続けてきた戦闘スタイル。そして攻撃と回避、防御の切り替えを瞬時に行なう技術をこれでもかと詰め込んだ1対多数の戦闘風景。下地があればこそたったの1ヶ月でここまでの流麗さを見せられたが、今までのほほんと暮らしていたベルにそんなものはない。
勿論、無理だと叫んだ。
「別に今すぐ同じことをしろとは言わない。実際出来たらこの都市随一の才人だと神々さえ平伏するだろうしな。*1
それに、いま見せたのは別にただの一例だ。ベルは戦ったり鍛錬したりの経験は無いんだろう? なら自分の戦い方を一つ、決めておいたほうが良いと俺は思った」
「戦い方を?」
2人は周囲に散らばる魔石とドロップアイテムを拾いつつ会話を続ける。
「初心者にありがちなのはあれやこれやと手を出した挙句、全部中途半端になって、その重量に押し潰されることだ。ある程度の下地があるならそれを基盤に動けるだろうが……。ベル、お前にはそれはない。
だから最終的に
「わ、分かりました!!」
ナインのアドバイスを聞いたベルは素直にそれを脳内で反芻させる。今まで知らなかったことだ。そしてその言葉は自らの憧憬対象から与えられた今後に繋がるヒント。決して忘れないようにと、先ほど見た光景と共に心の奥深くに記録した。
(まぁ、実際すぐ出来るようになるんだろうけど。
それだけ
もし原作通りにヘスティアがヘファイストスに武器製作を頼んでナイフができたらどうしようという思いがナインの中にはある。別にナイフが悪いとは言わないが、その刃渡りは30セルチ。リーチの短さゆえに
出来ればあの武器には今後の活躍を期待したい。
その思いを内に隠しつつ、地面に散らばる物を拾っていく。
(というか本当に多いなドロップアイテム。目算で30はあるぞ。いつもなら10匹に1個出れば良い方だってのに……。やっぱ【発展アビリティ】の【幸運】は今も発動中だろ、これ。
というか初期のIかHでカジノ馬鹿勝ちしたんだっけ? やっぱヤバいわこの幸運うさぎ)
改めてこのベルという少女が持つ幸運に感嘆しつつ、集め終わった魔石などを見る。
リュックサックに満載となった魔石やドロップアイテムにベルは目をキラキラとさせているが、ナインとしては先日までこれを5つほど作ったら地上へ向かい、ギルドで換金し、計算を後で纏めてくれと言い残して再度ダンジョンに潜るという生活をしていたので、今更でしかない。
しかしベルとしては今手元にあるリュックサックよりも小さいものをある程度埋めて帰還するのが基本だった。破裂しそうなほどに膨れるのを見るのは初めてなのだ。
「わぁー凄いですっ!」
(凄いのはお前の幸運ですぅっ!)
ナインは流石におくちにチャックをした状態でリュックサックを両方とも持つ。
「それじゃ、次はお前だ。ベル」
「はいっ! 分かりました!!」
────
──
そうしてその日は2人で延々と4階層を練り歩き続けた。端から端まで、モンスターが出てくれば即座にベルが発走。そして回避に専念しつつ、隙を見付けたら弱点部位か魔石を狙って攻撃。それが外れれば次手、
とにかく動けと、敏捷と器用を今の内に上げさせるべく指示を出し、駄目な部分は厳しく問い詰め、そして反省点を念頭に置きつつ動きの修正を自分でさせ続けた。
常に最善手の変わる戦況の中、その時々の最善手を打てと教え続ける。
彼女の手に持つ
返却すれば特に何もなく終われるのだが、ギルドの上層部には金にがめつい豚
ほんまカス。
そのため、武器も労わる動きを教えたのだが、さわり程度は徐々に出来始めているように見えるのは錯覚だろうか。
(そういや
ナインは少し離れて後方からベルの戦闘風景を見ているが、うずうずして仕方がない。非常に
ゴブリンやコボルトぐらいしか出現しない階層ではあるが、これらも正しくモンスター。人類の生活圏を侵略し、地上を人の住めぬ大地に変えようとした化物たちの一種なのだ。今のベルの耐久では、爪などで喉を抉られればそのまま出血多量で死ぬ。
一応防止策としてベルの急所には
後ろから見ているナインは、それ以外の場所に適用させるつもりはない。そんなことをすると、今の自分の魔力から考えるとゴブリンやコボルトの攻撃など本当になんのダメージにもならず、ベルの【耐久】が上がらなくなる。
ここで最低限打撃を喰らったりして耐久は上げさせておくつもりなのだ。
(つもりだったんだけどなぁ……。
めっちゃ回避すんじゃん。攻撃受けてたの最初の方の10回ぐらいか? まだまだ大きく距離を取っての回避だけど、その内紙一重の回避に繋がるんだろうな、これ)
交戦回数が二桁に入った辺りからベルは相手の攻撃の予備動作を掴めるようになってきたのか、爪の振り下ろしや飛び付き、
これはもう耐久のステをこの階層で伸ばすのは無理かな、と思いつつ、本日二度目の
流石に時間が掛かると思い、ナインも参戦して2人で素早く100匹近いモンスターの群れを撃退していった。8対2の割合でナインが狩ったが。
オラリオの都市運営、冒険者及び迷宮の管理、魔石やドロップアイテムの売買を仕切る機関、通称ギルド。そしてそこに所属する者たちが職務を
その内の1つ、遮音性に優れた一室で2つの影が向かい合っていた。
「ベルちゃんに危険なことはっ?!」
「させてません!」
「後輩には?」
「正確でしっかりとした教育を!」
「ダンジョンは?!」
「危ないところ! 無理はしない!!」
「じゃあそれを守っていない人~」
「………………」
「答えなさいっ!!!」
────
──
現在19時。ダンジョンから出てきたナインは、一度汗を流す為にシャワーを浴びようと共に出て来たベルに提案された。昨日の血塗れ状態でギルドに駆け込んだ時の反省を活かそうとしたベルなりの成長なのだ。
しかし悲しきかな。バベルに併設されているシャワー施設は有料かつ個室で狭い。そのため、ナインは「ここのシャワーを使用するぐらいなら一度自分が借りている賃貸に帰ったほうが良い」と発言。
妄想逞しいベル少女の中では「おうちに誘われてしまった!?」とフィーバータイムに突入。しかしそんなピンク色の逢瀬になるはずもなく、順番に汗を流したら即座にヘスティアの待つ廃教会へと足を向けた。
期待が心中の9割近くを占めていたベルはトボトボと歩いていたが、頭をぶんぶんと横に振って復活。今日は新しく知り合ったシルやリューに酒場へとお呼ばれしているのだ。自分たちの主神も誘って3人で初めてのパーティーをしようと、再度奮起した。
そして廃教会に戻ってきた2人はやっぱり思う。
((ぼろいなぁ……))
まぁ、居住スペースは地下にあるので然したる不利益は被らない。精々周辺の奥様方からの視線に憐憫が乗る程度。気にしなければ問題無いのだ。
そうして地下へと足を運べばバイト終わりのヘスティアが本を読んで待っていた。
「ただいま帰りましたーっ」
「おかえり、ベル、ヘスティア神」
「あぁ、ただい……、違うからね!? ナイン君が! いま! ベル君と一緒に帰って来たんだからね!? おかえりっ!!!」
いつも通り騒がしい神さまだが、彼女は根っからの善神。そのツッコミにも優しさが溢れているのはナインも知るところだ。
《名前》
ナイン・レイル
『Lv.1』
《基本アビリティ》
力 :SSS 1609 → SSS 1632
耐久:SSS 1291 → SSS 1680
器用:SSS 2005 → SSS 2034
敏捷:SSS 1798 → SSS 1801
魔力:SSS 4053 → SSS 4208
発展アビリティから先は同じなのだが、ヘスティアは基本アビリティの伸び具合だけで胃がキリキリとなり始めた。
合計で約600の上昇。というよりも昨日更新してから1日しか経っていないのに【耐久】が400弱も伸びているのはなんなのか。「わけわかんないよぉ!」と叫びそうになるも、「ビークール」と心の中で唱えて何とか平静を保った。
そんなヘスティアの目の前ではその用紙を興味なさげに見てから炉にくべるナイン。刻まれた
ヘファイストスのところにいた時に、同じ神である彼女から聞いた内容からは逸脱している。そんな事実に気付いてくれと、ヘスティアは思いながら次はベルの番となった。
《名前》
ベル・クラネル
『Lv.1』
《基本アビリティ》
力 :I 42 → H 181
耐久:I 66 → H 112
器用:I 71 → G 201
敏捷:I 43 → G 202
魔力:I 0 → I 0
(うん知ってた)
諦めの境地へと至ったヘスティアは慈愛に満ちた顔となる。スキル欄にある
それを見たベルは当然のように硬直。【ステイタス】の伸び具合に自分の目を疑っているのだろう。
(分かる。……分かるよ、ベル君! キミの後ろにその前任者居るからね! もし居なかったらボクはもっと驚いていたさ! でもキミまで胃痛の原因にならなくても良いじゃないかぁ……!!)
内心、自分の眷属になった子供たちは可笑しくなるのだろうかと悩みだすヘスティア。
「成長期なんじゃないか?」
(なんか言い出したよ
ベルの後ろから用紙を見るナイン。その声に振り返ったベルは突如として憧憬対象の顔が目前に迫ったことで硬直しかけたが、ナインの言ったセリフになんとか聞き返す。
「成長期……ですか?
ステイタスにそんな感じのものあるんですね!」
「疑問形で言っただろ? 不明。正確なモノじゃない。
例を挙げるなら、そうだな…………、
「
「ああ。王族
《魔法》の詠唱式に特有の
「なるほどぉ……」
感心したように目をキラキラさせるベル少女。本当に純粋な子である。
(わぁ、本当に誤魔化し切ったよ、この
実際スキルとかも含めてバグってるのが目の前にいる所為で安易に否定も出来ないし……)
目の前で「あれ? ナインさんの用紙は?」、「憶えたから燃やした」とやり取りしている2人を微笑ましく見ていれば、もうそろそろ時間となった。
クローゼットの扉を開けたヘスティアと、彼女の身長では背伸びをしてやっとの場所にある特注のコートをナインが代わりに取って渡す。そのまま小柄な体格に不釣り合いなほど大きい胸も覆い隠す外套を羽織ったヘスティアが笑顔で振り返った。
「さて、ボクはバイト先の打ち上げがあるからそれに行ってくるよ」
「……えっ」
「ん? どうかしたのかい、ベル君」
「あの……、ですね。その―……」
少しばかり気落ちしてしなしなとなっているベル。代わりにナインが口を挟んだ。
「今日ダンジョンに行く前に酒場に来てくれって誘われてな。そこに3人で行こうかって話してたんだ」
「あー……、それは悪いことしたね」
「いや、いいんです。僕が勝手に盛り上がっていただけですので……」
うるうると瞳を潤ませ、その表情で責任の所在を持っていこうとする。だが、全くもって説得力の欠片も無い。
「ま、今度はしっかり予定を立てて行けばいいさ」
そう言いながらベルの頭を優しく撫でるナイン。その手の平から伝わるぬくもりで頬を赤らめ始めた様子を見つつ、ヘスティアはふむと頷く。
「じゃあ、このホームに住んでいないナイン君はしっかり、そうしっかり! 予定をボクらに教えてくれよ!!」
これ幸いとばかりにナインの無茶を止めようとするヘスティアだった。
────
──
そして時は進んで、ギルド内の談話室。先日ベルが紛失した剣の代金の支払いと、本日の稼ぎの換金額を受け取りに来たナイン。ベルには先に豊穣の女主人に
換金用のカウンターで待っていると、肩に添えられた女性の手。すわ恐怖体験かと思えば、
恐怖体験に違いはなかったため、勘は冴えていることが証明された。
そのまま談話室まで連行されたのだ。説教の内容は本日のダンジョン内でのあれこれ。つまりはベルへの指導なのだが、同じ階層にいた他の冒険者たちから
「良い!? ベルちゃんはつい一週間前に冒険者登録したばかりの初心者なの!! 新米冒険者なの!! なのに1人でモンスターの群れに突っ込ませるだなんて!! それ以前に女の子なんだよ!? その辺、ナイン君は分かってるのかなっ?!」
「でも冒険者にはなってることに変わりはなくて……」
「なぁに? 言い訳でも、あ る の か な ~ ?」
美人が怒ると怖いというが、
「ありまぁす!」
しかし残念なことにこの場にいるのは純粋バカ。
「へぇ―……。ならしっかり、聞こうかな?」
眉根をぴくぴくと動かしながらナインへ席に座るように促し、一応お茶を出して長期戦の構えを取った。
既にベルは豊穣の女主人で席に座り、差し出されたメニュー表に書かれた金額に目を剥いているというのにこの男は……。
そして「冒険者なのだから傷付く覚悟はしている筈だ」、「今の内から基礎を築かないと後で後悔するのはベルだ」と厳しくしていたのは事実だが、群れに1人で突っ込ませるような真似はしていないと、キッパリ断言。
その様子に話に尾ひれが付いただけだったのかとエイナは安堵を覚え、「俺も一緒に戦ったから問題無い」と聞こえたことで再燃。
もう少しだけ続くんじゃ、と説教が追加された。
「酷い目に遭った」
すっかり日の落ちたメインストリートをナインが歩いていく。行く先は豊穣の女主人。予定の時間よりも約2時間の遅刻となったが、その顔には少しばかりの笑みが乗っていた。
換金所で手にした約30万ヴァリスは後日等分して廃教会へと持っていけばいいとして、賃貸へと仕舞う。換金所の受付には「これだけの量のドロップアイテムをどうやって手にしたのか」と聞かれたが、
実際に起きたのだから仕方の無いことであり、そしてたかが4階層でナインが苦戦するような相手など、もういない。長槍のリーチを
冷静に、単純な力押しは決してしないように技術で倒そうとすればその難易度は跳ね上がる。しかし器用のステイタスは単純な身体操作以外にも魔力制御にも影響を出すので、上げれる時に上げないなど愚の骨頂なのだ。
今日のドロップ率を考えれば、もしかするとベルを10階層まで連れていけば、今まで一度も会えていないインファントドラゴンに出会えるかもしれない。そんな思考が湧いてくる。当然そんなこと危険すぎるためにしないが、好い加減そういった
ヘスティアは隠しているつもりだが、曲がりなりにも原作知識を持った転生者。自分の【ステイタス】には、記述されていない『成長促進系スキル』の類いが
それを隠しているのはきっとヘスティアの勘のようなモノ。それは明かさないほうが良いと考えた上での行動ならば仕方ないと受け入れている。
勘というものは今までの人生で蓄積してきたあらゆる情報から導き出された一瞬の閃き。それは一瞬だけ視界に入ったただの文字情報だけだったとしてもだ。それを神に置き換えてみれば、彼ら彼女らの蓄積してきた情報量はいったいどれほどか。それを思えば無視はできない。それがナインの結論なのだから。
「さてと、今日はベルのおかげで結構稼げたしな。奢ってやるとしようかね。
それに一応先輩枠に収まった訳だし、後方腕組み先輩面出来るように今から自慢の後輩ですよアピールもしないとな」
懐に入れた約20万ヴァリスの入った財布の重量を感じつつメインストリートを進むナイン。
しかしその途中で処女雪のような色が視界に入った。
視線の先から走ってくるのはベルだ。一心不乱に足を動かし、走り続けている。
日はだいぶ前には沈んでおり、このメインストリートを照らす光は街灯として用意された魔石灯。そのおかげで人々は安心して出歩けるのだが、その明かりのおかげでナインはベルを見付けたが、ベルはナインに気付いた様子はない。おそらく視線が下へ向いていることも原因の1つだろう。
だがそれ以上に目から大量に流している涙が視界をぼやけさせているのが最大の原因だ。
近付いた分よりくっきりと見えるようになったベルの表情は非常に悔しそうに歪んでおり、奥歯を噛みしめていた。
そんな彼女がどこへ行こうというのか。自分の背後にそびえる点にも届かんという建造物、バベルのその下だろう。
どうするか。
そんな思考が選択肢を幾つか提示する。しかし脳内で議論を交わし続ける時間はない。即座に判断しなければならないと悟り、今一番ベルの為になる選択を、ナインはとった。
人混みの中、ゆっくりとベルの進行路へと近付いていき、向こうが気付くことないように横を素通りする。それでしたいことは終わりだ。
背後に消えていった処女雪の影。それを見送ったナインはようやく視界に捉えた豊穣の女主人へと向かった。
ナイン(ベルって魔法スロット2つ持ってたっけ? もう読んだのなんか転生してからの年月に転生前の時間もプラスしなきゃだから分からんわ…。まぁ、2つあるデメリットとかないし良いか!)
発現初期の【クリステス】は身体の一部、若しくは全体に光を灯すだけです。他に効果?ないよ、んなもん。
光ならこれ出来るだろって使い続けてたらなんか色々生えた。