とある星界の艦隊訓練   作:ケンタ〜

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 女の子たちが頑張って艦を動かすお話が書きたくて書きました。

 原作知らない人でも楽しめるように書いてます。

 よかったら読んでね。


新任の艦長と騒がしい仲間たち

「アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・セースル子爵(ベール=セースラル)・ラムローラ艦長(サレール)、ただいま着任いたしました」

 

 ぴっ、と銀色のアルファ(頭環)の横に、揃えて突き出される星界軍(ラブール)式敬礼。

 

 はつらつとしたその声が、新造宇宙艦のまだ出来立ての匂いの残る空間に、元気に広がった。

 

「お待ちしておりました、アブリアル艦長(サレール)

 

 そして、それに笑顔で返す青髪の翔士(ロダイル)

 彼も同じように、銀色のアルファ(頭環)の横に、手慣れた様子で指を突き出す。

 

書記(ウィグ)の、イトー・ボルジュ=タラカル・ケン主計翔士(ロダイル・サゾイル)。すべての荷物の積み込み、完了しております」

「ご苦労、イトー主計翔士(ロダイル・サゾイル)

 

 ラムローラは嬉しそうにうなずくと、それからあたりをぐるりと見回した。

 

 広い艦橋、乗組員の操作卓、そして、壁面いっぱいから、きらびやかに降り注ぐ星々の光。

 

 軌道塔最上階、宇宙空間に浮かぶ宇宙港に接舷したこの艦、その艦橋内。

 

 その場には、いろいろな役回りの人間が立ちまわっている。

 

 全員、ほぼ漏れなく青髪のアーヴだ。

 

 地上人のそれとは違う、遺伝子の科学で手に入れた美しい容姿と宇宙の旅に適合した肉体を持つ、純粋なヒトとは違う人々たち。

 

 しかし、何もそんな不思議な人間だけではなかった。

 

 いくらか茶髪や金髪、黒髪のものも混じっている。それらは地上人だ。アーヴの世界にはなにもアーヴだけというわけではない。

 

 アーヴの世界には、その他多種多様な人種が混じり合って存在している。それこそ、アーヴのように、遺伝子をいじくった他の人種も。

 

 ただ、この場において、この艦を指揮し支配するものは、アーヴをおいて他にいなかった。

 

「他の役回りの者は?」

 

 ラムローラがそう聞くと、ケンはこくりとうなずいて答える。

 彼もまた、青系統の髪を持つアーヴの一人だった。

 

先任通信士(アルム・ドロキア)は現在通信の方を最終確認中。それから先任砲術士(アルム・トラーキア)は火器全般の動作確認を、監督(ビュヌケール)は……あ、そうだ。現在トイレ休憩中です。すぐ戻ってくるかと」

「トイレ休憩……え、あと十分で出港なのに?」

 

 ラムローラは思わず艦長としての顔を崩して、かくんと首を曲げた。

 

「すみません、それまでずっと休みなしで点検を行っていたみたいで……こまめに休憩をとれって言ってたんですけど、なんか……嫌だって」

「ええ……出発直前にダメだったら世話ないよ……。はぁ」

 

 ラムローラは心底からため息をついた。

 

 そして、その薄青色の髪の毛を、わしゃわしゃと掻きむしる。

 

「大丈夫、この艦? 新設艦って聞いたけど、もうまずくない??」

「いやあ、もう……っていうか、こういう報告って本来、監督《ビュヌケール》の仕事ですよね。思いっきり押し付けられちゃって……」

 

 あはは、とケンは苦笑いをした。

 それに、ラムローラは苦々しい顔をして天井を仰ぐ。

 

「まあ、しょうがないよ。だって、始めての、学生による(・・・・・)新設艦の実践訓練(・・・・・・・・)だからね」

「まあ……そうですね。もう、なんかいきなりいろいろ問題点出てますけど」

 

 アーヴの世界が持つ星界軍、そしてその慣例は、今彼女たちの置かれるこの状況とは異なるものだった。

 

 星界軍(ラブール)の慣例……本来、学生は見習い翔士、つまり翔士修技生(ベネー・ロダイル)として、熟練の大人の星界軍士の慣熟航行にまざって、すこしずつ育成されていくもの。

 

 でも、この艦は少々様相が違った。

 

 まだ見習い翔士の翔士修技生(ベネー・ロダイル)たちだけをたくさん集めて、一つの艦の運営をさせてみようという、革新的な試みだったのだ。

 

 しかし革新的といえば革新的、言い換えればかなりむちゃなやり方とも言えるわけで。

 

「訓練でやったことはあるけど、実践になるとこうもうまくいかないかぁ……」

 

 ラムローラは眉間に皺を寄せて唸った。

 

「まあ、しょうがないですよ……あ、監督(ビュヌケール)来た。おーい、レンさーん、艦長もう(サレール)来ましたよー」

 

 奥の方から、艦橋(ガホール)にあわただしく駆け上ってくる黒髪に近い髪色のアーヴ。

 その背は小さく、見るからに気も弱そうであった。

 

「す、すみませんっ、ごめんなさい、我慢できなくって……!」

 

 そう言って涙目で、彼女は自らの仕事の席へと身を戻した。

 

 それを、ラムローラは心底からの心配の目で見つめる。

 

「……ほんとに大丈夫かなぁ」

「さぁ……」

 

 あはは、とケンは苦笑いをして。

 

 はあ……と、二人で一緒にため息をついた。

 

 そして、ラムローラは若干疲れた頭で思考した。

 

(星界軍の上層は何を考えているんだろう……わたしも将来そこへ行くと考えると、憂鬱だなぁ)

 

 ラムローラ。彼女は星界軍のなかで、最も高い役職に就くことを許された家系のアーヴであった。

 

 まだ齢十五にも達していない若いアーヴだけれども、しかし自分の未来は決められたようなものだった。

 

(まあ、軍に入ったからには上を目指すけども……)

 

 帝国の最も高貴な血に名を連ねるそのアーヴは、その立場の重みにはに似合わぬ軽口で、思考をした。

 

 あたりを改めて見回すと、彼女は違和感に気が付く。

 

「あれ? 先任航法士(アルム・リルビガ)、兼、副艦長(ロイサレール)は? ケン、名前言ったっけ?」

「あ、それが……」

「え? まさか、まだ乗艦してない!?」

「は、はい……」

 

 ラムローラは、がっと自らの頭をかかえた。

 

「十分前で副長(ロイサレール)が乗艦してないって!? どうしようっ!? 落第になっちゃうよっ!」

「す、すみません、止めたんですけどっ」

「と、止めた? じゃあ、どっかに行って」

 

 すると、ケンは何かに気がついたように、ラムローラの後ろを覗き込もうと体を横に向ける。

 

「あっ、来たっ、スロージュっ!」

 

 とがめるような口つきで、ケンはその名前を呼んだ。

 

 それを聞いて、ラムローラはばっと後ろを振り返る。空色の髪の毛が、その空間にさっと広がった。

 

 そこには、ラムローラを半目でうかがうように見る、真っ赤な瞳孔を持つ瞳が待っていた。

 

 燃え上がるような赤目。そして、それとは対照的な鮮やかな髪色。

 散らばったラムローラのそれとは相反して、きれいにまとめられたその髪は、すとんと人工重力に引かれて、静かに下へと落ちている。

 

 それへ、ラムローラはかじりつくように咎めた。

 

「スロージュ! 今までどこ行ってたの!? 遅いよ、もうすぐ出港だよ!?」

「っ、うるさい、ラムローラっ!」

 

 それに対して、赤目をしたアーヴ、スロージュは、噛みつき返すように言い返した。

 

「そっちだってついさっきまで手続きミスって十分前まで出港手続きしてただろう! その口が、一体何を言う!」

「っ! 確かにそうだけど!」

「あ、ラムローラ(艦長)遅れたのそう言う理由だったんですね」

 

 その横で、ケンは苦笑いをした。

 

 その場で、取っ組み合わんばかりににらみ合う二人。

 

 それに割り込むように、艦内に放送が響いた。

 二人の諍いが、一瞬ピタリと止む。

 

修技艦(ベネー・メーニュ)へ本部より通達! 全艦は、出港準備が完了したことを報告し次第、出港せよ』

 

 すると、ケンは慌てて自らの操作卓に向かう。

 

「はっ、はやく二人とも着席しないと! ほら急いで! アブリアルとスポールの長年の因縁はあとにしてくれ頼むから!」

 

 むっ、とラムローラは眉間にしわを寄せた。

 

「くっ、こっちが噛みついたんじゃないし、スポールの性格が悪いのが悪いんだし!」

「はあ!? そんな皇族(ファサンゼール)なんてテキトーな役やってる方がよっぽどガサツだろッ!」

 

 そう言いながらも、二人は二人、それぞれの位置へと着席する。

 

 中でも艦長(サレール)であるラムローラは、皆が座するひとつながりの操作卓の後ろにある、一つ高い艦長席に腰を下ろした。

 

 そして、ラムローラは一つ息をついて。

 それから、大きな声で通達した。

 

艦長(サレール)からガホール(艦橋)より通達!! 総員、配置に着けい!!」

「最初からずっとそのテンションでやってくれればいいのに」

「なんか言った書記(ウィグ)!?」

「言ってませんっ!」

 

 ぴんっ、と背筋を伸ばして、ケンはしっかりとビビった。

 

「ならよし! 出港準備っ!」

 

 それから、ラムローラは続ける。

 

主機関(オプセー)、点火用意!」

「点火用意!」

 

 それに続く、監督レンの復唱。

 

「全機関異常なし、艦内環境異常なし! 点火用意、完了しました!」

 

 そして、ラムローラは口にする。

 

「よろしい!」

 

 そして、彼女は自らの体の横にある、この船を制御する根幹であるグーヘーク(制御籠手)を装着した。

 

 それは手を入れて、指の動きで艦を操舵する、アーヴ特有の操作機構。

 

 それと同時、自らのアルファ(頭環)、その耳の横部分から垂れるもの。一見風変わりな耳飾りに見えるそれ、キセーグ(接続纓)を、座席後方にある孔へと放り込む。

 

 ラムローラは目を閉じると、体中の全神経と、この艦そのものがつながるような感覚がした。

 

 艦の感知系を通じて映った情報が、アルファ(頭環)の処理系を通じて、自らの脳前頭野にあるリルビドー(航法野)に流れ込んでくる。

 

 その感覚で、すぐにわかった。この艦の、どこにも異常がないという事が。アーヴとしての直感でもうわかるのだ。

 

 設計された生命体、アーヴにのみ許された感覚。

 

 体を確かに包む満足感、それとともに、ラムローラは大きく息を吸って、確かな自信と共に口にした。

 

ダイセーレ(抜錨)!!」

 

 ぐおんっ、とその瞬間、艦全体が大きく揺れた。

 ほんの一瞬ラムローラは制御籠手(グーヘーク)を動かし、一秒にも満たない時間、機関(セー)を噴射させる。

 

 それだけで、艦は宇宙港から真空空間へと静かに躍り出る。数百メートルある艦の体躯が、いとも簡単に。

 

 途端に脳になだれ込む、果て無き無限の星々たちの景色。生まれたころよりアーヴならば、誰も慣れ親しんだ、故郷の自らの住処の世界。

 

 そして、自らをこのようにして、無限の空間へと連れ出してくれた存在の名を、ラムローラは言った。

 

突撃艦(ゲール)〈ギュクロール〉、出港(ゼービドート)!!」

 

 主機関(オプセー)に反物質が流れ込み、そして生まれた大爆発が艦を力強く前へと推し進める。

 

 そして感じる、自ら以外にも。

 (ビドート)から出港する、何十もの艦たち。

 

 無数に開いた巨大な扉。そこから、あらゆる種類の艦たちが。

 

 突撃艦(ゲール)だけじゃない。

 暴力の化身巡察艦(レスイー)

 破壊の王戦列艦(アレーク)

 帝国の盾護衛艦(レート)

 その他さまざまな形をした帝国の新設艦たち。

 

 これらほぼすべてに、未だ軍士としての名を持たぬ、見習いの子雛たちが乗っているのだ。

 

 ラムローラはグーヘーク(制御籠手)を微速の形に制御をして、その列に連なるように、艦を動かしていく。

 

(すごい、本物の艦の感触! 力強い、そして荒いっ……! くぅっ……!)

 

 言いようのない高揚感、そして抑えきれず上がる口端。

 

(わたしの艦が、これからはじまるんだっ)

 

 ぎゅっと目をつむって、ラムローラはその心から喜んだ。

 降り注ぐ幾千幾万もの星々(グリューラシュ)。それが、まるで自分を祝福してくれているかのように。

 

(見てて、お母さんっ、おばあちゃんっ! わたし、立派な皇族(ファサンゼール)になってみせるからっ!)

 

 こうして、未来の帝国(フリューバル)の歴史に名を連ねる皇族(ファサンゼール)のひとり、ラムローラの人生のページの一行目が、ここからはじろうとしているのだった!




 読んでくれてありがとうございました!
 ダリ・エイラーク、あなたに栄光あれ!
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