原作知らない人でも楽しめるように書いてます。
よかったら読んでね。
「アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・
ぴっ、と銀色の
はつらつとしたその声が、新造宇宙艦のまだ出来立ての匂いの残る空間に、元気に広がった。
「お待ちしておりました、アブリアル
そして、それに笑顔で返す青髪の
彼も同じように、銀色の
「
「ご苦労、イトー
ラムローラは嬉しそうにうなずくと、それからあたりをぐるりと見回した。
広い艦橋、乗組員の操作卓、そして、壁面いっぱいから、きらびやかに降り注ぐ星々の光。
軌道塔最上階、宇宙空間に浮かぶ宇宙港に接舷したこの艦、その艦橋内。
その場には、いろいろな役回りの人間が立ちまわっている。
全員、ほぼ漏れなく青髪のアーヴだ。
地上人のそれとは違う、遺伝子の科学で手に入れた美しい容姿と宇宙の旅に適合した肉体を持つ、純粋なヒトとは違う人々たち。
しかし、何もそんな不思議な人間だけではなかった。
いくらか茶髪や金髪、黒髪のものも混じっている。それらは地上人だ。アーヴの世界にはなにもアーヴだけというわけではない。
アーヴの世界には、その他多種多様な人種が混じり合って存在している。それこそ、アーヴのように、遺伝子をいじくった他の人種も。
ただ、この場において、この艦を指揮し支配するものは、アーヴをおいて他にいなかった。
「他の役回りの者は?」
ラムローラがそう聞くと、ケンはこくりとうなずいて答える。
彼もまた、青系統の髪を持つアーヴの一人だった。
「
「トイレ休憩……え、あと十分で出港なのに?」
ラムローラは思わず艦長としての顔を崩して、かくんと首を曲げた。
「すみません、それまでずっと休みなしで点検を行っていたみたいで……こまめに休憩をとれって言ってたんですけど、なんか……嫌だって」
「ええ……出発直前にダメだったら世話ないよ……。はぁ」
ラムローラは心底からため息をついた。
そして、その薄青色の髪の毛を、わしゃわしゃと掻きむしる。
「大丈夫、この艦? 新設艦って聞いたけど、もうまずくない??」
「いやあ、もう……っていうか、こういう報告って本来、監督《ビュヌケール》の仕事ですよね。思いっきり押し付けられちゃって……」
あはは、とケンは苦笑いをした。
それに、ラムローラは苦々しい顔をして天井を仰ぐ。
「まあ、しょうがないよ。だって、始めての、
「まあ……そうですね。もう、なんかいきなりいろいろ問題点出てますけど」
アーヴの世界が持つ星界軍、そしてその慣例は、今彼女たちの置かれるこの状況とは異なるものだった。
でも、この艦は少々様相が違った。
まだ見習い翔士の
しかし革新的といえば革新的、言い換えればかなりむちゃなやり方とも言えるわけで。
「訓練でやったことはあるけど、実践になるとこうもうまくいかないかぁ……」
ラムローラは眉間に皺を寄せて唸った。
「まあ、しょうがないですよ……あ、
奥の方から、
その背は小さく、見るからに気も弱そうであった。
「す、すみませんっ、ごめんなさい、我慢できなくって……!」
そう言って涙目で、彼女は自らの仕事の席へと身を戻した。
それを、ラムローラは心底からの心配の目で見つめる。
「……ほんとに大丈夫かなぁ」
「さぁ……」
あはは、とケンは苦笑いをして。
はあ……と、二人で一緒にため息をついた。
そして、ラムローラは若干疲れた頭で思考した。
(星界軍の上層は何を考えているんだろう……わたしも将来そこへ行くと考えると、憂鬱だなぁ)
ラムローラ。彼女は星界軍のなかで、最も高い役職に就くことを許された家系のアーヴであった。
まだ齢十五にも達していない若いアーヴだけれども、しかし自分の未来は決められたようなものだった。
(まあ、軍に入ったからには上を目指すけども……)
帝国の最も高貴な血に名を連ねるそのアーヴは、その立場の重みにはに似合わぬ軽口で、思考をした。
あたりを改めて見回すと、彼女は違和感に気が付く。
「あれ?
「あ、それが……」
「え? まさか、まだ乗艦してない!?」
「は、はい……」
ラムローラは、がっと自らの頭をかかえた。
「十分前で
「す、すみません、止めたんですけどっ」
「と、止めた? じゃあ、どっかに行って」
すると、ケンは何かに気がついたように、ラムローラの後ろを覗き込もうと体を横に向ける。
「あっ、来たっ、スロージュっ!」
とがめるような口つきで、ケンはその名前を呼んだ。
それを聞いて、ラムローラはばっと後ろを振り返る。空色の髪の毛が、その空間にさっと広がった。
そこには、ラムローラを半目でうかがうように見る、真っ赤な瞳孔を持つ瞳が待っていた。
燃え上がるような赤目。そして、それとは対照的な鮮やかな髪色。
散らばったラムローラのそれとは相反して、きれいにまとめられたその髪は、すとんと人工重力に引かれて、静かに下へと落ちている。
それへ、ラムローラはかじりつくように咎めた。
「スロージュ! 今までどこ行ってたの!? 遅いよ、もうすぐ出港だよ!?」
「っ、うるさい、ラムローラっ!」
それに対して、赤目をしたアーヴ、スロージュは、噛みつき返すように言い返した。
「そっちだってついさっきまで手続きミスって十分前まで出港手続きしてただろう! その口が、一体何を言う!」
「っ! 確かにそうだけど!」
「あ、
その横で、ケンは苦笑いをした。
その場で、取っ組み合わんばかりににらみ合う二人。
それに割り込むように、艦内に放送が響いた。
二人の諍いが、一瞬ピタリと止む。
『
すると、ケンは慌てて自らの操作卓に向かう。
「はっ、はやく二人とも着席しないと! ほら急いで! アブリアルとスポールの長年の因縁はあとにしてくれ頼むから!」
むっ、とラムローラは眉間にしわを寄せた。
「くっ、こっちが噛みついたんじゃないし、スポールの性格が悪いのが悪いんだし!」
「はあ!? そんな
そう言いながらも、二人は二人、それぞれの位置へと着席する。
中でも
そして、ラムローラは一つ息をついて。
それから、大きな声で通達した。
「
「最初からずっとそのテンションでやってくれればいいのに」
「なんか言った
「言ってませんっ!」
ぴんっ、と背筋を伸ばして、ケンはしっかりとビビった。
「ならよし! 出港準備っ!」
それから、ラムローラは続ける。
「
「点火用意!」
それに続く、監督レンの復唱。
「全機関異常なし、艦内環境異常なし! 点火用意、完了しました!」
そして、ラムローラは口にする。
「よろしい!」
そして、彼女は自らの体の横にある、この船を制御する根幹である
それは手を入れて、指の動きで艦を操舵する、アーヴ特有の操作機構。
それと同時、自らの
ラムローラは目を閉じると、体中の全神経と、この艦そのものがつながるような感覚がした。
艦の感知系を通じて映った情報が、
その感覚で、すぐにわかった。この艦の、どこにも異常がないという事が。アーヴとしての直感でもうわかるのだ。
設計された生命体、アーヴにのみ許された感覚。
体を確かに包む満足感、それとともに、ラムローラは大きく息を吸って、確かな自信と共に口にした。
「
ぐおんっ、とその瞬間、艦全体が大きく揺れた。
ほんの一瞬ラムローラは
それだけで、艦は宇宙港から真空空間へと静かに躍り出る。数百メートルある艦の体躯が、いとも簡単に。
途端に脳になだれ込む、果て無き無限の星々たちの景色。生まれたころよりアーヴならば、誰も慣れ親しんだ、故郷の自らの住処の世界。
そして、自らをこのようにして、無限の空間へと連れ出してくれた存在の名を、ラムローラは言った。
「
そして感じる、自ら以外にも。
無数に開いた巨大な扉。そこから、あらゆる種類の艦たちが。
暴力の化身
破壊の王
帝国の盾
その他さまざまな形をした帝国の新設艦たち。
これらほぼすべてに、未だ軍士としての名を持たぬ、見習いの子雛たちが乗っているのだ。
ラムローラは
(すごい、本物の艦の感触! 力強い、そして荒いっ……! くぅっ……!)
言いようのない高揚感、そして抑えきれず上がる口端。
(わたしの艦が、これからはじまるんだっ)
ぎゅっと目をつむって、ラムローラはその心から喜んだ。
降り注ぐ幾千幾万もの
(見てて、お母さんっ、おばあちゃんっ! わたし、立派な
こうして、未来の
読んでくれてありがとうございました!
ダリ・エイラーク、あなたに栄光あれ!