FGO 異端特異点 B.C.12000 人類統一王権 ギョベクリ・テペ 円卓の女王 作:笑嘲嗤
ギネヴィアを追いかけるのはなかなかにしんどい。あっちこっちに現れるのはわかるけど、まじで捕まらない。だけど今回有力な情報を得た。
「ギネヴィア様なさっき来たばかりだよ。男たちとあっちの方へ歩いていった」
とある村にてその情報を得た僕たちは全力でその方向へ走った。そこは穏やかな川沿いの平原。そして見つけた。
「かくてベディヴィエール卿は森の奥の寺院にて偉大なるアーサー王が埋葬されていることを知ったのであります。彼はどれほど喜んだことでしょう。アヴァロンに行ってしまったはずのかの王が地上にてその死を迎えられた。王は人々の下に帰ってきたのです」
トマスが何かを諳んじてる。それをお花畑に優雅に座って聞くギネヴィアがいた。緑色のドレスを着ている。不倫で国をぶっ壊した女には見えない楚々として優雅なただずまい。っていうかさ。
「なにやってるんですかあなたたちは……」
「あら?みんなもトマスのお話聞く?素敵な御伽噺よ。お茶もあるしお菓子もある。私のお茶会にようこそ」
そうである。ギネヴィアの周りには騎士たちがいた。ケイは樹の根元であくびをしている。イデールは草冠を作ってギネヴィアの頭に飾る。アリルはなんか菓子を配ってる。メリアグランスはギターをかき鳴らしている。なにこのまったり感。
「ほう。いいサロンだな。酒はある。一つ我を招待してもらうか?」
「ええどうぞギルガメッシュ王。トマスは今日、かの有名な騎士王の御伽噺、【アーサー王の死】を語ってくだるのですよ。楽しんでいって」
「はは。愉快な演目だな。面白そうではないか」
ギルガメッシュは酒を王の蔵から取り出して、トマスに差し出した。それをトマスは恭しく受け取り、一気に飲み干す。
「このようなうまい酒はきっとアヴァロンにもないことでしょう。ありがとうございます。麗しきギルガメッシュ王陛下」
「よい。では語れ。かの王の御伽噺をな。くくく」
「お供させてください。僕もいいですよね?ギネヴィア?」
「ええ。ハンムラビ。お菓子は何がいいかしら?」
「クッキーがいいな。クマトリア!君も来なよ!面白い話が聞けるぞ!」
「クマも行くクマ!」
ハンムラビもクマトリアもギネヴィアのお茶会に参加しやがった。一応仮想敵なんだけどねぇ。まあ人の話しを聞くなら英雄なんてやらないだろう。
「ではかの王が生まれるときの話を。ウーサー王は美しきイグレーヌ王妃に横恋慕をなさったのです。そこへマーリンが……」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!お前らは!!」
周りにひどい殺気が飛び散る。モードレットが剣を抜いていた。彼女のクラレントは禍々しく光を放っている。
「もういい!ふざけたおすならここでしまいにしてやる!!クラレント・ブラッドアーサー!!!」
「待って!!」
だけど彼女は止まらない。振るわれたクラレントから赤雷が放たれて、地面を穿ちながら、ギネヴィアに迫る。このままだとギネヴィアは間違いなく死ぬだろう。アーサー王の王妃と言っても戦闘に関する逸話なんかない。他の騎士の守護も間に合わない。そして激しい閃光が鳴り響いて煙が上がる。跡形もないだろう。そう思って目を凝らす。
「モードレット。粗相はいけないわね。女の子ならもっとお淑やかにしてほしいわね」
ギネヴィアは傷一つついていなかった。誇りさえ被ってない。なんだこれ?え?彼女の目の前まで地面はえぐれている。だけどなんだ。どういうことだ?キャンセルされた?あの宝具の解放の光が?
「……はぁ?なんだよ?え?あり得ない……父上だって殺した剣だぞ?どうして?っえぇ……」
モードレットはがくがく震えている。円卓の騎士の宝具開放をまともに喰らって無傷。それはいくらなんでもあり得るのか?
「先輩。今の結果。なにかおかしいです。まるで世界が許可しなかった。そんな歪みが走ったように見えたんです」
「因果律の否定?世界が直接修正をかけるような宝具?なんだそれ?え?なんだんだ……」
マシュも僕も驚き以上に戸惑いが大きい。なにが起きているのかわからない。いや、何も起きなかったからこそ驚きなのだ。
「ふん。いぬっころがよく吠える。借り物の剣で王妃を傷つけれるはずもないだろうに」
ギルガメッシュは何か知ってるっぽいな。どうせ教えてくれないんだろうけど。
「騎士が王妃に牙を剥く?法治国家じゃないんですね、ブリテンってところは。やれやれ」
ハンムラビが肩を竦めている。
「クマは早く話が聞きたいクマ!マーリンってやつは何をしたクマ?!聞かせてくれクマ!」
「はい。では気を取り直して」
「やあ。そのマーリンお兄さんだよ。ギネヴィア。いくらなんでも悪趣味じゃないかな?」
マーリンが苛立ちを隠さずにギネヴィアに近づく。
「なんで?夫の御伽噺を妻が聞いちゃいけないの?アーサー王の死は名作よ。何度でも読める素晴らしい小説だわ」
「今君がここにいて、アーサーたちがいる。もう物語ではなく、ここはブリテンの神話の続きだよ。君はそろそろ騎士たちの苦悩や理想を裏切ったことへのなにか言葉が必要なんじゃないのか?」
核心に迫ってる。ギネヴィアは最初からテンション高い陽キャだけど、あのアーサー王伝説の登場人物の一人だ。何かしら後悔や悔恨はあるだろう。恨みつらみだってあってもいい。
「君だって後悔はあるはずだ。ギネヴィア。怒らないからいってごらんよ。皆に聞かせて欲しい。君の物語を」
マーリンは冷たい顔でギネヴィアを見下ろしている。
「くくく。虫ケラ風情が粋がるのは滑稽だな。くくく」
ギルガメッシュがニヤニヤ笑っている。相変わらず酒を美味しそうに飲んでやがる。
「物語?それは後から人が語るものよ。マーリン。外側にいすぎてそんなことも忘れてしまったの?」
「君の減らず口など聞いてはいないよ」
「そうね。ええ。後悔ならある。だって人生を駆け抜けたから。ないわけがない。後悔がない人生なんて生きてないのと同じよ。マーリン。あなたにはわからないでしょうけど」
それは皮肉にも聞こえる。だけどギネヴィアはマーリンに何の感情も向けていないように見えた。見えていない。視界にも入っていない。そしてギネヴィアはこちらを見た。アーサーとアルトリアを。
「もしも私が後悔することがあるとすれば……そう。謝らなきゃいけないことがある。ごめんねアーサー、アルトリア」
それを聞いてどこか円卓の騎士とアーサーとアルトリアたちにホッとしたような空気が流れた。マシュもそうだった。それはだって人間らしいじゃないか。
「あなたを王様にしてごめんなさい……」
声が出ない。なんだよそれ。僕はアーサーとアルトリアの方を向いた。二人の顔は凍りついていた。円卓の騎士たちも声が出せないようだった。
「くはははははっはははははあーーはははははは!!」
ギルガメッシュだけが笑っている。本当に面白そうに笑っていた。
「ふざけているのか?君は?!君はブリテンの王をなんだと思っている!!思い上がりもたいがいにしろぉ!!」
マーリンがギネヴィアの胸倉をつかんで声を震わせて怒り狂う。こんな姿を見るのははじめてだ。どんなときだって道化のようにふざけたおす彼が。花の魔術師が我を忘れるほどに、ギネヴィアの謝罪はおかしなものだったから。
「マーリン。放してちょうだい」
「君はアーサーとアルトリアの物語を台無しにしたんだぞ!!なのになんでそんなに軽薄なんだ!なんでそんな顔ができる!?」
「マーリン。もう終わった物語でしょう。アーサー王は死んだ。なのになんで怒るの?物語の外側に追いやられたあなたがなんで私たちの人生の総括をしようとするの?理解できないわね」
「このぉお!!」
「そこまでにしておけ。王妃に手を挙げるとは妖精ごときが不敬である」
イデールの剣がマーリンの首筋につきつけられた。早すぎる。気がつかないうちにマーリンへの奇襲を成功させるなんてなんのスキルだ?!マーリンはすぐにギネヴィアから手を離して距離を取る。
「はぁ。せっかくのお茶会が台無し。ギルガメッシュ王、ハンムラビ、クマトリア。また会いましょう。今度はちゃんと招待させていただくからぜひ来てね」
そして彼女の周りに花を巻き込む風が吹いて、一瞬にしてギネヴィアたちは姿を消した。
「興覚めだな。まあよい。花の魔術師の失態が見れただけでも良しとしよう」
ギルガメッシュは立ち上がり、ハンムラビもクマトリアも立ち上がる。
「お前のせいで御伽噺が聞けなかったクマ!ハンムラビ法典違反!制裁クマ!」
そういってクマトリアはマーリンをぶん殴った。マーリンは花畑の上に倒れる。
「くそ!なんなんだ!あの女は!」
マーリンが打ちのめされてる。花畑の中で倒れたまま起き上がってこない。あまりのも後味の悪い遭遇になってしまった。謎ばかりを残して。