FGO 異端特異点 B.C.12000 人類統一王権 ギョベクリ・テペ 円卓の女王   作:笑嘲嗤

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第8話 選定の剣の源流

 相変わらずギネヴィアの追跡には失敗している。だけど神殿と呼ばれる場所にはどんどんと近づいている。

 

「神殿ってどんなとこなの?ハンムラビ」

 

「質素ですがなかなかいいところですよ。丘の上にあって周りを見渡せる素晴らしい光景が広がっています。ここら辺一帯の葬儀場や宴会や合議の会場になっていますね。神官団がなかなかうまく仕切ってます。いい統治をしている」

 

 ハンムラビ的にはその神殿とやらは合格らしい。王様の目にかなっているっていうのはなかなかすごいことだと思う。

 

「ここは僕がいたバビロニアにも近いんですよね。あの神殿はうちの神話体系のげんりゅうなのかもしれません。かすかに神々の息吹を感じましたよ。まだどうやら幼いようですが」

 

「幼い?神様が?」

 

「ええ。私の生きた時代はすでにギルガメッシュ様が神代を終わらせていましたから神霊の干渉は限定的でした。まだこの時代は神代に入るか否か。その境にあるように感じます。この時代、あなた方の未来でもまだよくわかってないのでは?」

 

「うん。たしかにそうだな。まだ農耕が始まる前って言うのは聞いてるけど」

 

「メソポタミアでは王権の象徴は剣ではなく尺なんですよ?なんでだかわかりますか?」

 

「え?王権のシンボルって武器とかじゃないの?」

 

「それはもっと後世の話ですね。メソポタミアでは定期的に氾濫がおきます。そのたびに土地は水浸しになります。そこを計測しなおして人民に配ります。配る力が尺にあるから、王は尺を持つのです」

 

「へぇそれはなかなか興味深いね。うん?王権のシンボルの話したね?」

 

 僕がそういうとハンムラビは微笑んだ。何かを気づかせようとしているような感じだ。

 

「先輩。じゃあ選定の剣って何を象徴しているんでしょうか?」

 

「やっぱりそこに話が飛ぶよね……」

 

 マシュが疑問を持ったのと同じく僕もそこに行き当たった。ギネヴィアは言った。「王様に選んでごめんなさい」と。どっちだ?どっちが本当なんだ?選定の剣が王を選んだ?ギネヴィアが王を選んだ?

 

「マシュ」

 

「なんですか先輩」

 

「仮に僕が選定の剣を抜いたとしてね」

 

「はい」

 

「君は僕をブリテンの王だと認めるかい?」

 

「……それは……」

 

 ハンムラビがにっこりしていた。どうやら核心に一歩迫ったように見える。ずっと伝説や神話と戯れていて、常識を忘れていた。なんで剣を岩から抜いたからって王になるんだよ。それははっきり言っておかしい。神話のテンプレじゃない。常識に反しているんだ。

 

「なあマシュ。もう一つ質問だよ。かりにギネヴィアが王を選ぶものだったとするね。じゃあね。ランスロットとの不倫がバレたよね。その瞬間、アーサーとランスロット。どっちを王だと君は思う?」

 

「……あ!ああ?!そういうことなんですか?!」

 

「うん。そういうことだね」

 

「円卓が割れたのはアーサーとランスロット、どっちがギネヴィアに愛されているか!!それで周りの騎士たちが王がどっちなのか見極めていたんですね!!」

 

「うん。この仮説なら神話の意味がすんなり通るんだよ。ギネヴィアが愛している方が王だって仮定するなら、不倫バレして騎士たちが真っ二つに分かれるのもわかる。夫のアーサーか、愛人のランスロットか。どっちがいま愛されているのかわからない。愛されている方が王様のはず。だから騎士たちは判断に迷ったんだよ」

 

「そんなぁ……ブリテンの崩壊って……一人の女の愛で決まるものだったんですか?それなら選定の剣に何の意味があるんですか?」

 

「うん。だからここで謎が深まる。選定の剣とギネヴィア。神話の状況証拠から見ればどう考えってもギネヴィアの愛の方が王権に近いんだ。ギネヴィアに愛された男が王になる。そのルールと選定の剣。どっちが先なんだろうね?」

 

『さすがはマスターだね。人理を修復する偉業を成し遂げてきただけはあるよね。君こそやはり最高のマスターだよ』

 

 ダビンチから通信が入った。

 

「ダ・ヴィンチ。教えてくれ。選定の剣。その原点は?カラドボルグじゃないね?」

 

 マシュが目を細める。

 

『選定の剣の原典。それは……スキタイだよ』

 

「スキタイ?騎馬民族で知ったっけ?」

 

『ああ。スキタイ人はアーレスを信仰してんただけどね。そのご神体は剣だったそうだ。剣を祭壇に祀って生贄を捧げていたそうだ。そしてそのスキタイ人の一派であるアラン人は剥き身の剣を地面に突き立ててそれを神と見立てて信仰していたそうだよ』

 

「スキタイの剣の信仰……その変奏が選定の剣?」

 

『おそらくはそうだと思う。まあ神話って言うのは入り組んでるからどこでどうつながるのかはなかなか何とも言えないよね。ブリテンはローマの勢力圏でスキタイ人はローマとも密接な関係にあったからね。それらの要素が流れてきたとしても不思議ではないよ』

 

「騎士の信仰する神としては剣は大いにシンボルになり得るね。でも神話の挙動はギネヴィアが主だ。……ダ・ヴィンチ」

 

『核心に近づいてそうだね。なにかな?』

 

「ギネヴィアがメイブを吸収したよね。メイブの近くにギネヴィアの所縁の人物はいる?」

 

『……いるよ。メイブの娘、フィンダヴィル』

 

「フィンダヴィル?どんな関係なのかな?」

 

『ギネヴィアのアイルランド語表記だよ』

 

「はぁ?え?うそ?はぁ?!」

 

『アーサー王の王妃ギネヴィアとアイルランドのメイブ女王の娘フィンダヴィルは同名なんだ』

 

「それって……うそだろ。じゃあまさか」

 

「同じ人ってことなんですか?」

 

 僕の代わりに言いづらいことをマシュが言ってくれた。

 

『偶然の一致と捨てるにはあまりにも出来過ぎてるよね』

 

「マジかよ……」

 

 この事実をどう受けて止めたらいいのかひどく悩ましい。ただ言えることは、ギネヴィアは僕らが想定していた以上に強大な神話的バックボーンを持っているということだけだった。

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