忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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必殺技完成、そして北陽戦開幕です。
主人公………当初は少しサッカーが上手いクソボケって感じにしようとしたらこんな色んな意味でモンスターになってしまったの何故なんだ?

来夏ちゃんに、その是非を問います。



後アンケの結果、彼の者はボッシュートになります。


必殺の刃は2つにて

フットボールフロンティア九州予選2回戦目、北陽戦までの日程は近づきつつある。

 

チーム全体の防御を上げつつ連携必殺技の春雷………と、その裏で小太刀先輩のあの必殺技を会得が急がれる状況だ。

 

今日にでもどちらか完成して欲しいものだが………そんな期待を込めながら今日も俺はチームの練習を手伝う。

 

しかし春雷は余計な手助けをせずあの二人だけで完成するべきだと思い、俺はなるべく関わらないようにしている、今やる事はチーム防御力の底上げと先輩の技完成が俺の役割だ。

 

そーいうわけで今日も…………。

 

 

 

「サッカーやろうぜー」

 

「クソッタレが!!!」

 

星は今日も元気だなぁ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ちょ、柳生そっち行ってる!」

 

「ずっとこっち来てなかったろ黒景テメェ!おいこら俺の体使って隠れんな!?」

 

「柳生なるべく抑えろ!皆囲め!!」

 

「今行き、いや来たァ!?」

 

「ごめん四川堂君!打たれる!」

 

「もう少し持たせ無いのかい!?」

 

 

 

 

 

「……今日も荒れそうだな、あそこは」

 

「だね……」

 

「ではお2人も続けてください、息を合わせて完成を目指しましょう」

 

「はーい」

 

「……なんかテンション低くねーか、忍原?」

 

「別に、さぁ頑張ろ?」

 

再び流の蹂躙が始まった横目に私達もまた春雷の特訓を再開する。

やるべき事は形になってるし、後はそれを成功させるだけなんだけどどうにも上手くいかない……ちゃんと桜咲が打ちやすいように調整して撃って、桜咲もそれをシュート出来てんのに上手くいかない………なんでだろ、まだステータスが足りてないとかじゃないよね?

 

流なら、何か分かるのかな。

聞いて………いや、今は無理だし………何より春雷の完成には関わら無いって言ったし。

確かに流に頼りっぱなしは良くない、分かってるんだけだ……気持ちはどうにも踏ん切りがつかない。

頼れない辛さと見てくれない寂しさが、心に募っていく。

 

「(……あぁもう、なんで流の事になると私は、こんなにも面倒臭くなるの)」

 

自覚はずっとあった。

彼と関わりのないところではなんて事なく本心で振る舞えるが、近くに居たり少し離れてたりしてると意識してしまえばこうだ。

ダメだと思ってるけど、制御が効かない。

こんな気持ち、大事な技を作る時まで出てるなんて…………こんな事で足を引っ張りたくなんかないのに!

 

「さぁ来い!忍原!」

 

「……うんっ!!」

 

桜咲の呼び掛けと同時にボールに回転を加えて打ち上げる。

今は何も考えるな、完成させるために動け。

 

今は流じゃなくて、チームの為に動け!

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「………なんだか、昨日より手応えを感じるわね」

 

皆がそれぞれの特訓をしている中、ウチは今日もあの必殺技の練習を重ねていた。

昨日の経験を元に動画を自分なりに研究して、頭の中に叩き込んだ後繰り返し撃ち込むが、不思議と昨日よりも輪郭が見えてきたような気がする。

 

現に、ボールを撃った後に地面の切り傷が深くなっている。

あと少し、もう一歩の力が必要と言うことか。

 

「よし………いける………」

 

ボールを定位置に置いて、目を閉じて再び構える。

余計な力は要らない、振り抜く時に全てを注げ。

感覚を研ぎ澄ませ、今ウチは………一振の刀。

 

「……ッ!!」

 

目を開きボールに大きく振りかぶり、シュートを放つ。

ボールには淡く斬撃のようなオーラが纏っている、そのままゴールへ直撃したが………まだだ、こんなんもんじゃ無かった。

 

基本はやはり出来ている、足りないのは本当に……今の自分のステータスってところか……恐らくこのままやり続けてもダメだ、まずはウチのレベルをあげてからじゃ変わらない。

 

「よし、なら一旦止めて……」

 

「先輩、お疲れ様っす」

 

「え?」

 

必殺技の練習を1度止めてトレーニングしようかと思ったら、後ろから黒景君が呼びかけてきていた。

驚きながら振り返る、今はまだ訓練の相手をしていた筈だけど……。

 

「黒景君?チーム防御力アップの特訓は?」

 

「あーさっきボール取られました、伊勢谷が無数に立てたパターンの中に嵌められて、その勢いのままって感じで、昨日から扱かれてたんで笹波からもOKって」

 

「そうなのね、それで……ウチに何か?」

 

「いやいや、進捗どうかなーって、昨日も聞きそびれてたんで」

 

「そう……輪郭はようやく見せてきたって感じよ、でもイメージと自分の能力がまだ合致してないから、これから足りない能力値を補おうとトレーニングをやろうとしてたの」

 

「なるほど………」

 

ウチの話を聞いた黒景君はグラウンドに目を向ける、恐らくシュートの際に生じた地面の切り傷を見ているのだろう。

 

「小太刀先輩に必要なのはキック力っすね、先輩には剣道で培った踏み込む力がある、そこに更なる脚の力を鍛えて加えることが出来れば一気に完成へ近づく筈っす、他の要素は既に揃ってるんで」

 

「なるほど分かったわ、ありがとう」

 

「………んじゃ、俺も協力するんで」

 

「え?君も?」

 

「この技の完成も勝率に関わるかもだし………何より先輩が頑張ってるなら、応援すんのが後輩ってもんですよ」

 

はは、と彼はウチに笑って見せてくれた。

………出会った時からそう、何気なく人の助けが欲しい所に何も言わずに手を差し出してくれる。

全く無自覚なんだろうけど………そういう所が人を惹きつけるんでしょうね。

多分忍原さんもこういう所にも惹かれたのでしょう。

彼がこうして手を貸してくれてる、尚更完成させなきゃ。

 

「……ありがとう黒景君、最後まで付き合ってね?」

 

「もちろん」

 

不思議と、先程までの疲れを感じなくなっていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「行けぇっ!!………チッ、これもダメか」

 

「なんでだろ、息は合ってるのにな……?」

 

空中で桜咲が私のボールを蹴るが、そこから放たれたのは普通のシュートと何ら変わらないものだった。

これで何度目の失敗か、全然完成まで漕ぎ着けてない………。

 

「うーん、2人の息は合ってるのに、まだ何か足りないのかな……」

 

「俺も忍原が出したボールは完全に当ててるんだがな……俺のパワーが足りねぇとかか?」

 

「いえ、過剰な力はかえって必殺技の威力を殺しかねない、何か案を入れなきゃダメかな……」

 

2人の話を聞きながら私も考える。

雲明君の筋書き通りにやっているけど出来ないのは、私にも何か足りないものがあるのかな。

ちゃんと桜咲が蹴りやすいような回転を掛けて打ちやすいボールを蹴ってるんだけど、それでもダメならどうすれば良いのかな………。

 

「………流なら、わかるかな………あっ」

 

ダメだ、行き詰まると直ぐにアイツを求めちゃう。

一々聞きに行くなんてうっとおしいに決まってる……ていうか、春雷には関わらないって言ってたじゃん、何回思い出せばいいのさ。

 

………多分意地悪とかじゃなくて、自分の力で作ってみせろって意味も兼ねてるんだろうな。

……………でももしかしたら、いい加減ウザかったりするのかな。

流石に、面倒くさかったりするのかな?

 

もうしそうなら、そうだったら。

私……っ。

 

「(ああっ!もう………練習中なんだよ、こんな考えしてどうするの……)」

 

嫌な考えを振りほどき、何となく辺り一面を見渡す。

同じグラウンドでは木曽路達がそれぞれの練習をしている、ふとその上で私はそれを見掛けた………見かけてしまった。

 

「……え」

 

それは流と………小太刀先輩が、一緒にランニングをしている光景だった。

…………そう言えば、小太刀先輩にはいざって時の必殺技を習得させるって言ってたっけ、もしかしてその手伝い……。

 

2人、だけで?

私じゃなくて、小太刀先輩の………?

 

私じゃないの、なんで?なんで?

なんで私じゃなくて小太刀先輩なの?

 

「…………ッ」

 

なんか、先輩………楽しそうだし、嬉しそうだ。

一緒に、二人でいるから?

 

流の顔は見えないけど…………見えなくなっちゃった。

 

「(…………あぁ)」

 

なにこれ、苦しい。

あれは………きっとただ一緒に練習をしているだけなんだ、勝つ為に必要な事なんだって分かるけど………分かってるけど。

 

なんで流の隣に居るんだ、なんでそんな近くに居るんだ。

そこは私の、私の………。

 

「……忍原?」

 

「忍原先輩、どうしました?」

 

そんな時、2人に名前を呼ばれてハッとした。

 

「えっ、あ、えっと、どうしたの?」

 

「いえ、遠くを見つめてたので疲れてるのかなと」

 

「あー、いや大丈夫だよ、私もどうすればいいかなーって考えてただけ!」

 

「……そうですか、とにかくもう一度やってみて下さい、そこからまた考えましょう」

 

「分かった、やるぞ忍原」

 

「う、うん」

 

そう言ってボールを傍らに抱えて再びゴール前まで戻る。

………ダメだ、さっきから心がモヤモヤする。

 

これは、あの時の………初めて小太刀先輩と流が一緒に居る時に……僅かに芽生えてた気持ちだ。

………嫉妬、してる。

 

ダメだ、抑えが効かない、こんなとこで関係ないのに。

なんて面倒臭い女なの私は、私以外の女の子と流が居るなんて当たり前なのに。

………違う、小太刀先輩はきっと、私と同じで………同じ、なんだ。

やっぱりそうだ、あの人は……!!

 

「ではお願いします!」

 

「行くぞ忍原!」

 

「ッ!!!」

 

それは衝動的だった。

思わず嫉妬に駆られて流が傍に居ない恐怖で手加減することを忘れ、そのボールに掛かった回転は強烈だった。

 

「……ぁっ、やっちゃった!?」

 

「ちょ待て!コレに合わせろってのか!?」

 

桜咲は今までにないボールに戸惑いながらも高く跳躍し、空中で捻れ動くボールを見据える。

 

「─────そこか!うぉらぁぁあっ!!」

 

ボールの軌道を読み取り、渾身の力を入れた蹴りをそのボールに撃ち込み……シュートは地面へ撃ち込まれ、大きな音を立てながら砂塵を大きく巻き上げた。

 

「……これは……!?」

 

「な、なんだなんだ?」

 

「オイオイ、何も見えねぇぞ」

 

他の練習していたチームメイト達も何事かと集まる、私たちも砂塵が舞い上がる場所をただじっと見つめていた。

………もしかして、やっぱり失敗?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った時………。

 

砂煙の中から紫の光が蠢き…………ボールに纏いながらゴールへ瞬く間に迸ってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

構えていたはずの四川堂君は何が起きたか分からない表情で立ち尽くしており、ボールは既にゴールネットを揺らしていた。

 

「な、なんだ今の………すげぇ………」

 

「……なんという威力だ」

 

「は、入った………っつーことは……!」

 

「うん、出来た……春雷、完成だ!!」

 

私のミスキックでやっぱり失敗かと思ったけど、結果的には春雷は完成した。

ようやくの達成感で飛んで喜んだ、ここまで長かったぁ……!

 

「ねじまきの様なスクリュー回転をして、地面スレスレの軌道でゴールを狙う……巻き上げられた粉塵で敵は攪乱されて止めることが出来ない………南雲原の連携必殺シュート、春雷完成です」

 

「か、かっこいい………でもずっと成功してなかったのに、どうしていきなり決まったのかな」

 

「………忍原はずっと桜咲に合わせようとスピンシュートを撃っていたが、逆に手加減なしのシュートの方が合わせやすかったのだろう、現に完成時に撃った時のシュートは強烈な回転が掛かっていたからな」

 

「なるほどな……手加減してたってのは信じられんが」

 

「うっさい!」

 

「ま、まぁいいじゃないか、これでようやくグラビティデザートを突破出来る武器が出来たんだ」

 

桜咲の心外な一言に突っかかるが四川堂君に宥められる。

これであの技から点を取れる、私達の責任は重大だ…………でも、完成したのはいいけど。

 

「(………流にも見て欲しかったな、出来た所)」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

どうやらようやく、春雷は完成したそうだ。

完成時の場面は見られなかったがグラウンドは大盛り上がりだったそうだ、これで勝ちの目は見えてきたな。

 

そして………こちらもようやっと完成の目が見えてきた。

小太刀先輩にもうひとつ足りなかったキック力を鍛える為、走り込みをしたり、ボールに対して正確なミート力を上げたりと色んなことをさせた。

 

少々厳しめに行ったけど小太刀先輩は強い目を曇らせることも無いまま食らいつき、自分を鍛え上げていった。

 

クールな人だけど、やっぱなんやかんやでスポ根なんだよなー。

 

そして暫くのトレーニングを続け、もうすぐ今日ののサッカー部の活動が終わり掛けている。

………まだ足りない、あと少しで小太刀先輩があの必殺技を撃てるところまで行けるはずだ。

 

とりあえず居残ることに決めて、小太刀先輩もそれに承諾した。

 

 

 

「ねぇ流、そろそろ今日の部活動終わるけど……」

 

「悪い、小太刀先輩の新しい必殺技が出来るまで今日は付き合うんだ、先に上がっててくれ、多分遅くなる」

 

「……………そ、そっか、頑張ってね」

 

 

 

来夏には先に帰ってもらった。

少し悪い事をしたか?まぁ何時も一緒に帰ってるけど大丈夫だろ。

 

そういうことで小太刀先輩と引き続き必殺技完成まで訓練を続けた、互いに頑張った。

 

そして……日は沈みかけている時刻になった。

かなりギリギリを詰めてしまったが、とりあえず今日ここで出来たかどうかを確認したい。

 

グラウンドのゴール前ですっかりボロボロな小太刀先輩がボールを前に置く、俺はその近くで先輩を静かに見守っていた。

 

「………すぅ………ふぅ」

 

先輩が深呼吸し、決意を決めたと言わんばかりに目を開く。

そして静かに………構えをとった。

 

 

「──────いざ」

 

 

右脚を大きく後ろへ上げる、そして徐々に力のオーラが刃の形を形成させて脚に宿る。

そして大きくボールへ振りかぶりシュートする、ボールはまるで斬撃のようなエフェクトを纏いながらゴールへ勢いよく直進し………ネットを大きく揺らした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………」

 

先輩も感じているだろう、今までに無いほどの手応えと、今のシュートの威力を。

地面にはずっと深い切り傷が遺されている………あの動画と遜色ない威力だ。

 

「く、黒景君……!」

 

「………あぁ、完成です!」

 

「ッ………!!良かったぁ………」

 

喜びと共に気が抜けたのか、先輩はその場にへたりこんだ。

今日もかなり無茶をしたからな、疲れが溜まっていたのは無理もないだろう。

座り込んでいる小太刀先輩に駆け寄る。

 

「頑張りましたね、この技はグラビティデザートに効果覿面なのは勿論っすけど、かつて化身が跋扈していた環境でもゴールを奪い続けたシュートです、全国にも通用する事間違いなしっす」

 

「そう………やっぱり、あの時この技に感じていたものは間違いじゃなかったのね」

 

「はい、流石先輩です」

 

「……ありがとう、黒景君」

 

手を差し出して小太刀先輩を立ち上がらせる、これで春雷とは別ルートでゴールを奪える、後は北陽学園の戦術を抑えるだけ………。

笹波と伊勢谷の手腕にも期待しよう。

 

「………すっかり暗くなるっすね、早いとこ着替えて帰りましょうか」

 

「そうね、どうせなら一緒に何か食べていかない?ラーメンとか」

 

「良いっすね、俺も腹減りまくってたので」

 

「………皆をいじめてたからかしら?」

 

「いやいじめるって、特訓っすよアレ」

 

「冗談よ、皆からしたら変わりないんだろうけど」

 

「えぇ」

 

「………この技、絶対使いこなしてみせるわ、ウチの事……これからも見ててね、黒景君」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

………今日は北陽学園戦の前日、春雷も完成した、チーム全体の防御力も雲明君の求めていた値まで強化された。

そして………小太刀先輩の春雷とは別の必殺技も完成したらしい………流の手助けによって。

準備は万全だ、後は試合で特訓の成果を出し切るだけ…………。

 

「…………痛っ」

 

時刻は既に夕暮れ時、皆は既に帰って行ったが私だけ居残りすると言って残った。

だが今は、ベンチに座って右脚の調子を見ていた。

 

「……大丈夫、だよね」

 

今日の練習中、ずっと右脚には痛みがついていた。

きっと春雷や他の練習で無理が祟ったのだろう、プレーに支障が出るようなものじゃないと思うけど………いざって時に壊れでもしたら、どうしよう。

 

…………怖い、あれだけ練習して、本番の時に壊れて、折角編み出した春雷が使えなくなったら…………でも、その時は小太刀先輩の必殺技がある、けど…………けど。

 

「………………」

 

こんな時にでも、彼女への嫉妬が心の中で渦巻いていた。

ダメだ、こんな私情を入れて負ければチームの皆に合わせる顔がない。

……………あぁ、自分が嫌になる。

 

小太刀先輩の必殺技は流が協力して完成したそうだ………私ではなく、小太刀先輩を選んだんだ。

 

それが悔しくて、羨ましかった。

…………今日に至るまで、流は私とはあまり練習に関わっていなかった。

満遍なく小太刀先輩に限らず皆のレベルアップに付き合っていた。

 

正しいことなのはわかってる………でも、でもやっぱり………私の事、もっと見て欲しかったな。

 

サッカーの練習以外で話さなくなった訳じゃない、でもこれじゃ………いつまでもこんなのじゃダメだって分かるのに、流に振り回されっぱなしじゃいけないのに。

 

「(…………変わらなきゃ、ダメなのに)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来夏」

 

「えっ?」

 

そんな事を考えていると、流の声が聞こえて顔をあげる。

まだ………帰ってなかったんだ。

 

「………な、なに?」

 

「何っていうか………俺も今から帰るとこだったんだけど、やっぱり脚痛んでるんだな」

 

「………やっぱりって、なんで」

 

「隠してたつもりだろーけど、お前昨日から右脚でプレーする時顔顰めてただろ?それですぐに分かったよ」

 

「………そう、なんだ」

 

練習中、最近私には何も話さなかったのに………こういう所は、見ててくれたんだ。

 

「……脚見せろよ、診てみるからさ」

 

「えっ?いや、別に大丈夫………」

 

「明日何かあったらどーすんだよ、起きてからじゃ遅いんだ、とりあえず見せてみろって、大したことないなら誰にも言わないし、ほらスパイクと靴下脱ぎな」

 

「…………うん」

 

流は近づいて座っている私に屈むようにして待つ、私は言われた通りスパイクと靴下を脱いで流に差し出す。

彼はそっと両手で触れて、異常がないか隅々まで観察し、手で優しく触れたりしてくれた。

…………なんだか、変にドキドキする…………。

 

「………ここ、痛むか?」

 

「っ………うん、ちょっと」

 

「多分骨とか、そういう大事にはならないとは思うけどさ、変にプレー中に事故ったら危ないから、気をつけとけよ?」

 

「うん、分かってる」

 

「…………後、春雷今日初めて見たけどさ、凄かったわ」

 

「えっ?」

 

…………そう言えば、結局出来たって自分の口からは話さなかった、誰か伝えてたっぽいし。

………そっか、見ててくれてたんだ。

 

「桜咲もだけど、相当お前も練習してたもんな」

 

「………うん、結構頑張ったよ」

 

「この脚見れば分かるよ、すげー頑張った事くらい」

 

「………小太刀先輩より?」

 

「え?あー………まぁ同じくらい頑張ったんじゃないの?」

 

「………そっか」

 

「………あんま好きじゃないのか?思えば話してるとこ見てないし」

 

「そーゆうのじゃない、話さないってだけ」

 

「そっか………」

 

私が彼女に対して一方的な嫉妬を抱いてるだけで、嫌ってなんか無い、先輩は私の事どう思ってるんだろ………。

 

「……よし、念の為家で湿布とか貼っておけよ?今日はもうこれ以上の練習は控えて休ませておけ」

 

「………うん、流、隣座ってくれない?」

 

「え?」

 

「少し休んで帰りたいし………その、流が嫌じゃなきゃ一緒に帰りたい」

 

「……はいよ」

 

よく分からないって顔で流は荷物を置いて立ち上がり、私の隣のベンチに座る。

……………あぁ、やっぱり君の隣は落ち着くな。

 

この頃、なんだか自分が不安定な気がしてならなくて、流の実力を近くで見せられて、きっと気のある小太刀先輩と過ごす時間が多くて。

……………なんだか、自分が思っていた以上に流という人に依存している感じがして、勝手に嫌になっていた。

 

「………お前、この頃なんだか変だぞ?大丈夫か?」

 

「………うん、ちょっと自分に対して自己嫌悪になってただけ」

 

「……何か悩んでんのか?話せよ」

 

「……………流って、私の事面倒臭いって思ってるでしょ?」

 

「え?」

 

「変に怒るし、構って欲しいし、謎に落ち込むし………」

 

「ま、マジでどうしたんだよお前………らしくないぞ?」

 

「………らしいって何、流にはいっつもこんな感じじゃん」

 

「そ、そうだけど、もう少し明るいだろ?」

 

「………普段が無理して明るく振る舞ってる訳じゃないよ、あれも素だけど………君にはなんだか、こうして飾らない自分を見せたいだけ」

 

「………来夏」

 

「最近変にナーバスになるのも、君といる時間が減ってたからだと思う………でも、私に縛られちゃ流だって嫌でしょ?流だってだから最近練習中は私に関わって来なかったんでしょ?」

 

「いやいやいやそんな事はないって、ただ単に別れた方がチームそれぞれのレベルアップになると思っただけだって、それにお前が俺と二人きりの時は面倒臭くなるのはいつもの事だし、慣れてるって」

 

「………本当に?」

 

「本当だって」

 

顔を横にして流の顔を見る。

いつもと違って困惑が顔に現れている、まぁこんな話を聞かされたら誰だってそうなるし………迷惑だよね。

でもいいや、こんな私に慣れてるなら迷惑掛けてやる。

 

「………流、いつもごめん、でも私がこうしなきゃなんだか………嫌なの」

 

「……お、おう」

 

「…………明日の私の事、よく見ててよね」

 

「もちろん、チームの事見ろって笹波からも言われてっから」

 

「私の事はもっと見て」

 

「……へいへい、お前の事はずっと見てますよ試合じゃなくても」

 

「……………うん」

 

「なんでそんななってるか正直そんな分からんけど、辛いことありゃ俺に話せって、聞くくらいしか出来ないけど」

 

「……うん」

 

「まぁ今更遠慮する仲でも無いだろ?俺に出来ることあれば言えよ」

 

「ホント?」

 

「うん?まぁ嘘じゃないけど」

 

「……………(告白も、受け入れてくれるかな)」

 

「……来夏?」

 

「……なんでもないっ、ちょっとスッキリした」

 

「そ、そうか……んじゃ帰るついでに、どっか食べるか?」

 

「うん、今日はラーメン食べたい」

 

「………昨日もラーメンだったんだけど俺」

 

「しーらないっ」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……では伊勢谷先輩、フィールドでの指揮はお願いしますね」

 

「了解した」

 

眼鏡を掛け直しキャプテンの指示を受諾する。

今日は北陽学園との対決…………今日までに必要なことは全てこなしてきた、後は勝利という回答まで進むのみ………!

 

「(しかし、どういうつもりだ?)」

 

今日という日の為に作り出した連携必殺技『春雷』

それをキャプテンの指示があるまで出すな………などと。

 

今回の指示も連携技の張本人達から抗議されたが、キャプテンはあくまでも指示だと言ってそれ以上言わなかった。

 

………小太刀先輩の技に関しては何も言われてない、つまりそれで攻めろという事か?

考えながらフィールド上へ歩を進める。

………今日は午前中まで雨が降っていた、よってフィールドは濡れている状態だ、転ばないように気をつけねば

 

「……………待て、そういう事か?」

 

湿っているフィールドを脚で擦りながらキャプテンの方へ視線を向ける。

………まさか、このまま待つつもりか?春雷を撃つ絶好の機会を。

 

しかし封じた理由は分かったが、何故それを言わない?言えば納得はする筈だが………まだなにか別の解答を用意しているというのか?

 

「………深く思案するのは後だ、今は敵の戦術に集中だ」

 

今はその疑問を置き、目の前の北陽学園へ集中する。

空宮征………封じねば!




黒景 流
幼馴染みを放って置いてその後構う、まるでDV彼氏みたいだね。
最近様子のおかしくなりつつある来夏に対してどうすればいいか困惑している。


忍原来夏
なんだかメンヘラ化の兆候が見られつつある、歳頃の不安定なメンタルによるもの?


小太刀 鞘
遂に必殺技完成、皆分かったかな?
既に心はサッカープレイヤー、主人公とやるサッカーが楽しい。
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