忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今回で北陽学園決着です。
そして今回、とりあえず爆発します。


来夏ちゃんへ万歳三唱。


常に必殺であるべきにて

「北陽学園…………聞いたんだけど、相手のキャプテンとは昔仲が良かったんだって、笹波?」

 

「はい、今となっては差が着いちゃいましたけどね」

 

「どうかね、おっそろしー監督になってるからな」

 

「失礼な」

 

フットボールフロンティア予選2回戦、南雲原VS北陽学園の日となった。

俺と笹波、香澄崎先生と百道、そして新しく入ったマネージャー兼生徒会長の千乃さんはベンチに座りながら開始を見守っていた。

今日に至るまで特訓は積んできた、多彩な戦術の核である空宮を封じる手も強化した。

そして敵の守り、グラビティデザートを破る2つの必殺技も用意できた、準備は万全………しかし、笹波は………。

 

 

 

『…………聞いて下さい、予定変更です、僕の許可が降りるまで春雷の発動は禁止します』

 

『『…………はぁ!?』』

 

 

 

なんとここに来て春雷を使うなと言ってきたのだ、その時のダブルフォワードの反応は信じられないという感じだった、まぁいきなりそんな事言われたらそうもなるわな、今日という日の為に用意した必殺技だってのに。

 

俺も理由が分からず、座って考えていた。

何か理由がある筈だが………なんとなく、南雲原の司令塔へ視線を向ける。

地面を脚で擦っていた、そういや午前中に雨降ってたっけか、地面も湿って…………。

 

 

「…………あ、そゆこと?」

 

「気付きました?」

 

「おう、んで…………これ言っちゃダメなの?」

 

「ダメですよ」

 

「へい」

 

笹波からは言うなと言われたので従う。

多分使うなって理由はこれで合ってるけど……コレなんで言わないんだ?まだなにかあるのか……?

 

うーん………。

 

「……それはそれとして、突然ですけど黒景先輩、貴方は忍原先輩の事をどう思ってるんですか?」

 

「え?」

 

 

考えていると、いきなり脈略もなく笹波がそんな質問をして来た、思わず隣の横顔を見つめてしまう。

いや……なんで来夏の事をどう思ってるかなんて聞くんだ、どういう意図が?

 

「な、何笹波?いきなりどういう質問だそれ?」

 

「とりあえず答えてください、ただの幼馴染みとかじゃなくて、本心でどう思ってるか聞かせてください、貴方は忍原来夏をどう思っているかを」

 

「…………」

 

笹波も俺の顔を見つめ返す、思わずその目にたじろいでしまう。

少しして、フィールド上の来夏に視線を移す。

 

…………なんだか、試合前だと言うのに不安そうだ。

脚の事を気にしてるのか、笹波が春雷を使うなと言われているのが引っかかっているのか………どちらにせよ、ここからのプレーが少し心配になる感じだった。

 

………普段の来夏らしくないな、昨日からなんだか様子が変だったけど。

 

「……どう思ってるか、か」

 

そう言われたら………何時もはただの幼馴染みだ、って返すのが決まりだったけど、俺は来夏の内情を昔から知っている。

その事を考えたら、ただの幼馴染みという関係って一言では片せないのかもしれない。

 

俺自身は来夏の事を大事な友達で、手は掛かるけどほっとけない奴って感じだ。

…………それだけ、なのだろうか。

来夏は俺の事をずっと追い掛けて来てるし、俺はそれを何も考えず受け入れてるけど……来夏は何故そうしたいのだろう。

 

来夏の中で、俺とはどういう存在なのだろうか。

悩みを聞く相手とかだろうか、昔からそうだったけど……。

 

「(…………思えば、俺って来夏の事あまり分かってないのか?)」

 

俺にとって意味の分からない行動も、来夏にとっては何か意味があるのだろう、俺がそれを理解してないだけで。

俺はそれをなんだろうと思って考えたけど結局分からずじまいになってる。

 

笹波はわかってんのかな…………俺は全く分からない。

あいつの構ってちゃんはずっと家の事情からなるものだと思ってたけど、違うのだろうか。

 

うーん…………その前に俺が来夏の事を、どう思ってるかか。

 

「…………手の掛かる面倒な奴だけど、不思議と目の離せない、放っておけない奴かな」

 

「なるほど、予想はしてましたけど…………嫌ってたりもしてないと」

 

「いやいやなんで嫌うんだよ、別にそんな事になる様な事してないし」

 

「貴方にとってはそうなってるんですね」

 

「……んで、なんでそんな事聞いてきたんだよ?」

 

「……‎……貴方達の関係に口は出さないつもりでしたけど、これでは不味いのでこうして話してるんです」

 

「不味い…………?どういう事だよ、笹波」

 

「貴方は忍原先輩の事を、理解していないって事です」

 

「………………」

 

俺が来夏の事を理解していない?

何を、と言いたかったが………否定する材料が無かった。

 

昔からの幼馴染みである彼女、どういう性格でどういう人か、どうすれば喜ぶかとか……そういう表面的なのは俺でも理解している。

でも…………笹波の言う通り、確かに俺は来夏の内心をよく知らないのかもしない。

今あんな顔をしているのも、昨日の様子も、俺との実力差による距離に対する恐怖も………その理由を俺はよく分かっていない。

 

その結果が今の来夏なら、原因は俺にあるって事になる。

これは………深刻な事なのだろうか、何か内に秘めているものがあると言うのなら言って欲しいのに。

 

でも、それを分かってやれない俺にも原因があるのか、ていうか何が不味いんだ?…………ダメだ分からん、思い当たる節が頭に湧かない。

 

「……笹波、そういうお前は分かってるのか?」

 

「………心当たりはあります、でもこれは自分の口から話せません、自分で気づかなきゃダメなんです」

 

「えぇ……?」

 

「ひとつ言えることは、忍原先輩にはもっと自分の気持ちを伝えた方が良いという事、ですかね」

 

「自分の気持ち?」

 

「先輩は貴方との気持ちの齟齬に不安を抱いてるんですよ、それを解消する言葉をハーフタイムにでも伝えてください」

 

「難しく考えないで下さい、貴方が忍原先輩をどう思っているか………それをハッキリ伝えればいいんです、今の忍原先輩にはそれが良い、その時には彼女の心情も少しは明らかになるかもしれませんから」

 

「……そうか」

 

笹波がそう言うのなら、そうした方が良いんだろうな。

…………自分の気持ちか、来夏に対しては本当にただの仲のいい幼馴染みなんだけど………それが嫌って訳じゃないよな、アイツ?

 

「(来夏に対する自分の気持ち、か)」

 

改めて聞かされると、なんだか複雑だ。

アイツの普段は明るくて、頑張り屋で、皆から好かれるような性格で……俺と居る時は少し大人しくなって、何かと相手になってもらいたいって感じになる奴で………俺はそれにやれやれとは思ってるけど、正直悪い気はしないんだよな。

 

自分で言うのもアレだけど、俺みたいなマイペースバカに長い事付き合ってくれてる奴なんて来夏くらいだしな。

 

俺となんやかんやで来夏と居るのは好きだしな。

 

「(…………この好きって、どれになるんだ?)」

 

掌を見つめながら考え続ける。

この気持ちは友情か、恋情か。

 

考えたことも無かった、正直今は前者の方だと思ってるけど。

来夏はどっちなのだろうか、前者なのは合っているかもだが…………後者って可能性もあるのか?

 

「(いや、ない…………って決めつけていいのかな)」

 

目を瞑って考え続ける、フィールド上の声と観客席の声が遠ざかってゆくのを感じる。

うーん俺が来夏をどう思ってるかなんて、笹波に言われなきゃ深く考える事なんて無かったなぁ…………来夏の事は好きかって言われたら好きだけど、その好きって気持ちを伝えればいいのか?いやいきなり言われんのって気持ち悪くないか?

 

でも笹波は難しく考えずに自分の気持ちを伝えればいいって言ってるし、んーーー…………でもどう言うのが正解なんだ?

来夏にはいっつもその場で言う事だけ言ってるだけで……もしかしてそれも嫌なの?だとしたら難問過ぎるだろ、伊勢谷にヒント貰いたい位なんだけど?

 

でも…………来夏は俺の事どう思ってるか、ちゃんと聞いた方がいいのかな…………そうだな、とにかく来夏から聞いてみよう、そっからでも遅くないはずだ。

俺らの中に隠す事が今の来夏の顔に出てんのなら、解消してやるのが幼馴染みとして出来ること…………のハズだ。

 

きっと、来夏なら答えてくれる。

 

「…………うし」

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

 

「……あっ」

 

自分の考えを纏め、目を開くと同時にホイッスルが鳴る。

それはゴールの合図、そして入れたのは…………。

 

「…………北陽かぁ」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……皆すまない、止めることが出来なかった」

 

「謝るな四川堂、それは俺達も同じだ」

 

ゴール前に集まり、気負う四川堂を宥める。

北陽学園との前半、俺達は抵抗虚しく先制点を決められてしまった。

キャプテン空宮征を起点に、様々な戦術を切り替えて戦うサッカー………あらゆるタクティクスをこなし、その特性を読ませない攻撃。

 

実際に喰らえば確かに強力だ、こうもあっさり決められてしまうとは………オマケにチームの1人1人のポテンシャルも出来たばかりの南雲原より上回っていると言ってもいい…………しかし、追いつけない差では無い。

 

「(とにかく今日まで練って来た戦術をぶつける、春雷はまだ使えないが………用意してきた、第2の刃がある)」

 

眼鏡に触れながら、その刃を持つ小太刀先輩を見る。

敵は彼女に対しての警戒心が薄い、そこが狙い目になる。

 

「とにかく切り替えるぞ皆、また同じ流れが来れば一人潰しを開始する、そして品乃雅士が攻撃の起点になるところを抑え………先輩にボールを回す、これを意識してくれ」

 

「まぁ俺らはまだ春雷を使うなって言われてっからな、勝つにはそれしかねぇけど…………任せていいっすよね、先輩?」

 

「えぇ、その為に会得した必殺技よ、信じて欲しい」

 

胸に手を当てて強い眼差しで俺たちを見渡す。

流石に頼もしいな………さぁまずは同点だ、追いつくぞ…………!

 

ボールをFW陣2人に手渡し、再び中心へ行き待機する。

北陽学園の戦術、見本は見せてもらった…………次は止める!

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

試合再開のホイッスルが鳴る、桜咲から忍原へボールが手渡され駆け上がる。

あの二人の春雷は使えないが、敵陣へ攻め込む為の力なら備わっている、まずは攻められる前に攻める!

 

「防御陣形!上がらせるなよ!」

 

そこに空宮は素早い指示を出し、中盤と終盤のメンバー達で強固なスクラムを築く。

早い、指示もそうだがそれを聞いて即実行に移せる統率能力、パーフェクトサッカーは伊達では無いか……!

 

「……キャプテン」

 

小さく呟きながらキャプテンに対して視線を送る、目線が合い……キャプテンは小さく頷く。

よし……行くぞ!

 

「必殺タクティクス!柳生、木曽路、妖士乃!ブロック・ザ・キーマン!!」

 

「よし!」

 

「了解っ!」

 

「OK!」

 

ならばこちらも攻められる前に封じる!

指示を出した3人が空宮の周りを囲み、徹底的に動かせないように陣形を組んだ。

動き出しも黒景のパターンに比べれば対応できない事などない、これで暫くは変幻自在のタクティクスは使用不可だ!

 

「成程、囲んで俺中心のタクティクスを封じるって算段か…………でも、北陽学園は俺だけじゃない!」

 

「(分かってるさそれ位は!)忍原!無理せず上がるなよ!回して繋げろ!」

 

「分かってる、よ!」

 

忍原は囲まれる前に桜咲へパスを…………待て、そこは悪手だ!?

 

「甘いっ!!」

 

「なっ!?」

 

北陽学園3年、ミッドフィールダーの中心人物とも言える品乃雅士が忍原のパスをカットした。

しまった、囲まれることを意識するあまり忍原のパスコースが甘かった、そこを的確に刈り取るアイツの視野も中々だ…………しかし、品乃がボールを手にしたということは…………!

 

「北陽!シナノフォーム展開!!」

 

攻撃重視戦法、シナノフォームが来るということ。

号令と共に品乃雅士を中心に陣形が組まれる、まるで三本の槍となったフォーメーション、ドリブルで駆け上がって来て瞬く間に中盤へなだれ込んで来る。

 

「うぉっ!」

 

「と、止まらない!?」

 

「(流石の突破力………誘導する予定だったとは言え、これも空宮の戦術に負けず劣らずだな…………しかし!)」

 

南雲原は中盤のメンバーで止めに入る、しかしその勢いに弾き出されて止められない………だが止められないのは、シュートを撃つ寸前………俺自身も当たって弾かれる中、品乃雅士には視線を固定して、その時を見る。

 

ゴールまでもうすぐ…………あと少し…………シュート…………そこか!!!

 

「古道飼ッ!!」

 

「……ダンシングタートルっ!!」

 

古道飼が俺の掛け声と共に、持ち前の瞬足で一気に品乃へ近づく。

そしてその勢いのまま身体全身を高速スピンさせて、竜巻を起こした。

 

「何っ!?うぉぉっ!」

 

それに巻き込まれた品乃雅士は吹き飛ばされ、ボールは古道飼の元に渡った。

 

「まさか、シナノフォームはわざと……!?」

 

空宮は解答に気づいたが、遅かったな。

シナノフォームの抵抗には古道飼は参加してなかった、というかさせなかった。

離れててもあの巨体に見合わないその瞬足であれば、一気に近づいてボールを奪取する事は容易だ。

 

そして今北陽の中盤から以降は人員を割いている為手薄、空宮もブロック・ザ・キーマンによって封じられてる、そして…………小太刀先輩は既に上がっている!!

 

「こっちだっ!!」

 

「はいっ!!」

 

直ぐさま声を掛けて前へ走る、古道飼はロングパスを出し、俺はその地点へ駆け上がる。

 

「くそっ!9番を止めろ!」

 

品乃の指示が直ぐに渡った、俺に追いつくだろうが………俺は起点だ!

 

「星!」

 

ロングパスの地点へ飛び上がり、ヘディングで星にパスが渡る。

小柄だからな、気付きにくかったろう!

 

「ナイスパスッ!そして、小太刀先輩っ!!」

 

少し前に出て更にロングパスを出す。

その人物は完全にフリーで、相手の防御陣も今は整ってない。

 

後は貴女次第だ…………小太刀先輩!!

 

「よし……!」

 

先輩はそのパスを受け取って前に出る。

敵ゴールキーパーの陣内が構えて立ちはだかっていたが、その顔には余裕が現れていた。

駆け上がってきたのは恐らくノーマークだった選手だ、並の必殺技を持っていた所であのグラビティデザートは破れないと、そう思っていることだろう。

 

普通、ならな!

 

 

先輩はゴール前へ辿り着き、キーパーと一体一の構図で対峙する。

 

「来いよ、止めてやる!」

 

空間が揺らぎ、辺り一面は砂漠とかす。

あの技が、来る……!

 

 

 

 

 

 

「───────参る」

 

キーパーは息巻いてたが、彼女はそれに反応は示さず。

静かに構え、その視線は静かに…………しかし強くゴールを見据えていた。

 

 

 

「伝」

 

 

 

右脚を大きく後ろへ上げ……

 

 

 

「来」

 

 

 

その脚から、刀のようなオーラが形成される。

 

 

 

「宝」

 

 

 

そして………彼女のその目に更なる力が宿る。

 

 

 

「刀ッ!!」

 

その力のまま右脚がボールへ振り下ろされ、まるで刃のオーラを纏ったボールはその勢いのまま敵陣ゴールへと向かう。

 

「グラビティ、デザートッ!!!」

 

陣内の掌から発生した磁力が辺り一面の砂を巻き上げ、小太刀先輩のシュートへ襲いかかる。

グラビティデザート………発生する強力な領域風圧によって、ボールの軌道を歪め抑え込む強力な必殺技。

 

 

春雷は、それを読ませない為に編み出した必殺技。

 

 

この伝来宝刀は真っ直ぐな一太刀、何にも揺らがず、ただゴールを切り裂く刃。

 

 

そしてそれは、砂の奔流だろうが……………何にも防ぐ事は出来ず、ただ真っ直ぐ切り裂く!

 

「なっ!!!?うぁぁっ!!」

 

グラビティデザートによる領域風圧を一刀両断し…………ボールは、そのままゴールへ突き刺さった。

 

それを見届けた小太刀先輩はゆっくり振り返り、ゴール前から去る。

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

同点の合図が、フィールド上に響いた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

ピッピーーーッ!!

 

ゴールの合図と共に前半終了の笛もなった。

皆はゆっくり歩く小太刀先輩へ掛け走っていた。

 

「鞘先輩流石です!!すっごくかっこよかったです!」

 

「あ、ありがとう七南さん」

 

「すげーシュートっすね!グラビティデザート一人でぶった斬りやがって、ロックすぎるぜ!」

 

小太刀先輩は困惑しながらも皆に囲まれて満更でも無い様子だった。

…………そりゃ、破れるかも分からないあの技をたった一人で着き崩せば皆舞い上がるに決まってる。

実際、私も凄いってホントに思ってる。

 

「はっ……すげーな先輩、マジで一人でぶった斬りやがった」

 

「…………うん、一人であれだけのシュート打てるなんてね」

 

「ったく、俺らも春雷使いてーのによ…………なんで使わせてくれねぇんだ雲明……?」

 

「…………」

 

折角作った春雷、試合開始前に何故か許可が降りるまで使用禁止って指示が出されていた。

もちろん何故かと抗議したけど話してくれなかった、でも………もしかして、雲明君は気づいてるのかな、私の脚の事…………。

 

流からは酷い無茶をしなければ大丈夫なんだって言われてたけど……もしかして、そんな事は無かったりするのかな。

 

だから、打っちゃダメなのかな………それじゃ作った意味ないじゃん。

でも小太刀先輩の技があるから………それにあの時、あのパス……。

 

「(結果的に作戦通りの動きを引き出せたからいいものの、最悪もう一点決められてたら………っ)」

 

……どうしよう、このままネガティブな気持ちでプレーし続けてたら脚を引っ張ってしまう。

なんでこんなに不安なんだろ………今日までずっと流が離れてたから?小太刀先輩に取られそうで不安だから?

そうだとしても…………チームの皆の迷惑になっちゃならない……これじゃダメだ、余計な事は考えないでよ私。

 

「(…………いつまで私は、流に振り回され続けるんだ)」

 

ユニフォームの胸元を強く握りながら、自分の異常を痛感する。

ただ好きな人と一緒に居られなかったから、見てくれなかったから、誰かに取られそうだから…………そう考えるだけで気持ちが沈むのを感じる。

 

………こんなにも流が、私を占めている。

最早半身みたいな感じだ。

 

あぁもうキモイって、彼だってこんなの嫌に決まってる。

勝手にこんなこと考えて、勝手に理由にして………何をやってるんだ私は。

 

「………忍原、朝っぱらから様子変だが、大丈夫か?」

 

「えっ、いや大丈夫、ちょっとプレッシャー感じてただけ!」

 

桜咲に心配されていつも通り振る舞い、一足先にベンチへ戻る。

………とりあえず、変に心配されないようにしないと。

 

…………春雷は打てるか分からない、でも小太刀先輩の必殺技があれば何とか勝てるかもしれない。

………………その時は、流も先輩の事を見るんだろうな。

 

「……ッ」

 

嫌だ、私だけ見てほしいのに。

でも…………こんな私より、あの人の方が…………流の為かな。

 

「ほれ、来夏」

 

「……えっ?」

 

段々と沈む気分になってゆく最中、ベンチに着いた私にタオルとスポドリが手渡される。

誰かと思ったけど、流だった。

 

…………渡されるのは、初めてかも。

 

「……あ、ありがと」

 

「脚、大丈夫か?」

 

「うん、傷むけど全然耐えれるよ」

 

「そっか、絶対春雷を打つタイミングは来る、後半も気合い入れろよ?」

 

「……うん」

 

汗を拭いながら飲む、こうしてるだけでもさっきまでの沈みかけの心が浮かぶのを感じる。

あぁ、やっぱ落ち着く…………でも、こんなんじゃダメだ。

 

依存と言ってもいい、自分が変わらなきゃ………これ以上、誰にも迷惑を掛けたくない………流に甘える事の無いように、ならなきゃ…………。

 

「……なぁ来夏、後半始まる前に話があるんだけど」

 

「……えっ、何突然……?」

 

「ちょっとな、少し2人だけで話したくて、いいか?」

 

「え、あ…………うん」

 

思わず頷いてしまった。

なんだろ、改まって………ていうか、ゴールを決めた先輩の所行かなくていいのかな。

…………分かんないけど、私の事優先してくれるんだ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「(やべー、やべーって、何言えばいいんだマジ……?)」

 

前半が終わり、後半が始まる前に来夏を誰もいない通路へ連れて来ていた。

笹波に言われた通り、自分の気持ちを伝えて齟齬を無くすように言われたけど…………結局何言えばいいんだよ、ヒント教えてくれよ笹波。

 

…………でも確かに前半の来夏は少し変だったし、これがこの先続く可能性があるのなら、確かにここで解決した方がいいとは思うけど…………うーん、如何せん俺の頭が貧弱すぎてどうすりゃいいんだマジ。

 

「……話って、何?」

 

「ん、あぁ……」

 

いかん、時間も無いから早くしねーと。

とりあえず最初は…………俺の事どう思ってるか聞くか。

 

「来夏、いきなりなんだけど…………俺の事どう思ってる?」

 

「……へ?」

 

「俺の事、どう考えてるか聞かせて欲しい」

 

「え、ちょ、待って待って待って待って?何言ってるの?」

 

質問されてる意味が分からないのか言葉を捲し立ててきた、心做しか顔が赤い………あれ、さっきまでそんなに疲れてたかな?

とにかく来夏の目を見つめて答えを待つ、なんかさっきまでダウナーだった来夏がソワソワしている……なんで?

 

「どうって、それは、えっと、あの、幼なじみみの、私の、はつ、はつ…………って、言えるかバカ!」

 

「えぇ?」

 

いやなんだそりゃ、分かんないんだけど。

てか何に照れてんだ?別に隠すような仲でも無いだろうに………今でも話せない事があんのかな、来夏には。

 

うーん…………こうしてみると確かに俺って来夏の事あまり理解してやれてないのかもしれん、現に何伝えようとしてるのか分からんし、ていうか言いたくなさげ?

 

…………俺も試合見ながら考えたけど、来夏に対する気持ちは今までとそんなに変わらないと思う。

でもやっぱ大事な幼馴染みだしな、それに来夏は何かと貯めやすいタイプなのかもしれない………ここで解消しろってことか、笹波。

 

自分の気持ちを伝える…………よし、やるか!

 

「来夏、聞いて欲しい」

 

「な、なに、改まって…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はお前が好きだ」

 

「………………………………………………」

 

「お前の事はずっと見てた、何を考てるかとか、朝からどんなことに不安を抱えてるとか俺には分からないけど、お前にそんな顔して欲しくない」

 

「………………………………」

 

「俺とお前はずっと一緒だったし、お前の家の事は簡単じゃないのは知ってる、その事が原因なら俺はお前の力になりたい」

 

「………………………」

 

「俺はどんな事にでも前向きで明るいお前が一番好きなんだ、だからお前には笑ってて欲しい、俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って」

 

「うん?」

 

とにかく自分の気持ちを来夏にぶつけてみるが、来夏はなんだか俯いていた。

………………あれ、流石にいきなりこんなこと言われるのはダメだったか?ていうか…………合ってるよな、笹波?

 

「…………本気?」

 

「……本気ですが」

 

「…………どういう意味で、それ言ってる?」

 

「…………大事な人(幼馴染み)として」

 

「………………私の力に、なりたいってホント?」

 

「……本心です」

 

「…………受け止めて、くれる?」

 

「………大抵は」

 

「…………嘘じゃない?」

 

「……おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…………多分、そういう意味じゃないんだろうなぁ、誰の入れ知恵だろう、雲明君かな?)」

 

「(でも………それでも本心なんだよね)」

 

「(普通、そんな事言うもんじゃないでしょバカ)」

 

「(…………あーもうほんっと)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(襲って、良いよね?)」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「おいそろそろ始まるぞ、忍原どこいった?」

 

「あっれ、トイレかな……あ、来ましたよ!」

 

「おせーぞ忍原、後半行くぞ!」

 

「うんごめん!大丈夫!」

 

 

 

 

 

「……遅かったですね、先輩」

 

「おう」

 

「結論から聞きますけど、貴方なんて言いました?」

 

「あー……………お前の事が好きだって言った」

 

「すぅぅぅぅぅぅうーーー………」

 

「…………ダメだった?」

 

「もう僕は知りません」

 

「いや、言われた通り自分の気持ち伝えたんだけど」

 

「知りません!」

 

 

 

 

 

笹波が呆れ返っている中後半が始まった、開始ボールはこちらだ。

スコアは1-1、ここから点をとったチームが試合を制する。

 

こちらの狙いは1つ、小太刀先輩の伝来宝刀で再び得点を狙う。

しかし…………やはり相手はそれを許してはくれさそうだ。

 

開始早々、2人につけられている先輩を見ながらそう考える。

 

「(まぁそうなるだろうな……)」

 

「……必殺タクティクス!再びブロック・ザ・キーマンだ!!」

 

「またかよ!?」

 

「悪いが、お前に自由は与えん!」

 

伊勢谷は再び空宮に対してブロック・ザ・キーマンを仕掛ける。

空宮中心の戦術さえ封じれば、今の北陽の持ち味は殺される。

 

そして品乃雅士のシナノフォーム…………と相手はいきたいとこだろうけど、さっきのカウンターの事もあってか早々攻めることが出来なくなっている。

 

現状小太刀先輩は封じられているとはいえ、こちらもキャプテンが抑え込まれている………状況はイーブンだ。

 

そして互いにボールを奪い合ったりシュートしたりが繰り返される、時間は経ってゆく………そして、地面から土埃が舞い上がっている。

 

「……笹波」

 

「えぇ、伊勢谷先輩も気づいてますよ、後半は彼に春雷を打たせるタイミングを委ねてます」

 

フィールド上の司令塔に目を向ける、好機と言わんばかりに眼鏡に触れていた。

 

「……桜咲、忍原!」

 

ダブルフォワードに向けて声をあげる、南雲原のメンバーはその呼びかけでどうするかを把握した。

 

直ぐさま2人は前へ上がる、北陽は戸惑っていた。

 

「……何かやべー気がする!2人を抑えろ!!」

 

元々警戒していた2人に対して北陽のメンバーは止めにゆく…………そしてその隙を、彼女は見過ごさなかった。

 

「…………今!」

 

「っ!!しまったっ!?」

 

小太刀先輩も2人を振り払って前へ出る、既に敵の壁を破る刃は揃っていた。

 

「この瞬間に勝負を決める!行くぞ南雲原!!」

 

「「「「おうっ!!」」」」

 

ブロック・ザ・キーマンを解き、中盤も上げて攻めに入る、一気に仕掛けて点をとる算段だ。

 

「小太刀先輩!」

 

ボールをキープしていた伊勢谷が名を呼びながらパスを出した、その先には小太刀先輩と…………空宮がそこにいた。

 

「なっ……!?」

 

「悪いけど、打たせないよ!!」

 

どうやら1点読みをして先輩から目を離して無かった様だ…………いや待て、あのパス……?

 

「…………引っ掛け問題だ」

 

「………なっ!?」

 

小太刀先輩に行く前に曲がり、その先には………先程の呼び掛けを餌に、誰にも気付かれずに飛び出していた来夏がそこに居た。

 

「桜咲っ!!」

 

「こい、忍原!!」

 

勝機、来夏が力の限りボールに回転をかけ…………空中に舞い上がったボール目掛けて桜咲が飛び上がる。

 

「春雷ッ!!」

 

捻れるように飛んでいたボールに正確なミートを当てて、そのシュートは地面にぶつかり、辺り一面に砂塵が舞う。

 

シュートの全容が見えず、陣内は何がどうなったのか戸惑いながらその場所を見つめていた。

 

「なんだ、これはシュート…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。

 

紫電の一撃が、ゴールを貫いていた。

 

 

「…………あ?」

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

遂に決まった、春雷が。

追い越しゴール、2点目だ。

 

「決まったぜ!これが俺達の!」

 

「春雷よ!」

 

 

 

 

 

ピッ、ピッ、ピーーーッ!!

 

 

 

 

 

 

そしてこの瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響く。

2-1…………勝った、北陽学園に。

 

 

 

「……やったな、笹波」

 

「はい……!」

 

「雲明ーーーっ!!」

 

「え?うおわぁっ!!?」

 

「おかえり雲明ーーー!!」

 

「ええっ?」

 

勝利の喜びを分かち合っていると、いきなり敵キャプテンの空宮が笹波にダイブしてきた。

仲良いとは聞いてたけど予想以上だなこりゃ、まぁそっとしておくか…………。

 

「流っ!見た!?」

 

「……おう、やっぱすげーシュートだった」

 

「うん!」

 

2人から離れていると、来夏がいつの間にかそこに居た。

後半に入ってから、前半はなんだったんだと言うくらいにパフォーマンスが飛び上がっていた、あの時の会話が効果に出てんならそれで良いんだけど…………あれで良かったんだよな?

 

後近い、すげー近い。

それはいいんだけど人前だし…………まぁすぐ側に抱きつかれてる奴居るけどさ。

 

「…………黒景君、人前なのに近すぎじゃない?」

 

「あ、小太刀先輩、いや来夏が近いんすよ」

 

「そう………それで、言う事あるんじゃない?」

 

「…………一番槍、超かっこよかったです」

 

「…………ありがと」

 

「流、私もでしょ?」

 

「ん、おうもちろん」

 

「ふっふーん」

 

「…………全く、この誑し」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてなんやかんやあったが、無事2回戦も突破した。

…………まぁ、あの時の会話のつけはこれから回ることを、俺は近いうちに思い知る事となるのだが。




黒景 流
信じられるか?あの発言like100%なんだぜ…………?


忍原来夏
襲われるって、私言ったもんね?(言ってない)


笹波雲明
もう知りません。



小太刀 鞘
習得していた必殺技は伝来宝刀、知ってたって人も多かったハズ。
正直この人にこれ以上似合う技はない気がする、原作でも強技だったのでこれからも擦り散らかします。



伊勢谷 要
監督翻訳係になりつつあるセレクトキャラ、まぁ今までもずっといたし良いよね?
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