忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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北陽学園合併……の話は次回以降で、主人公がむしゃむしゃされた時の話になります。

どうしよう、これ以上風呂敷広げたら作者死ぬかも。

来夏ちゃん助けてぇ。


常に原因は俺にて

「…………あの、来夏さん、何して…………」

 

「…………君が、悪い」

 

「え?」

 

「流が、悪いんだ」

 

「え、え?」

 

「ずっと抑えてたのに、ずっとずっと壊さないように堪えてたのに」

 

「あんな事、言ってさ…………もう我慢出来ない」

 

「受け入れてくれるんでしょ、好きなんでしょ、私の事…………」

 

「私も好きだよ、流の事…………ずっとずっと大好きだよ」

 

「だからさ、良いよね」

 

「一線は越えないからさ…………」

 

「えと、その、何する気で」

 

「フーッ、フーッ、フーッ」

 

「目がマジで怖いんですけど、とりあえずどいて話をし……」

 

「がぶっ」

 

「いでぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「…………あ゛ー、残ってんなぁ」

 

北陽学園との試合の翌日の朝。

今日は珍しく眠気が薄い、顔を洗って水を拭き取り、改めて鏡に映る眠たそうな顔…………の下の首を見る。

 

噛み跡と、まるで蚊に刺されたかの様な痕、これだけ見れば何事かと思うだろう。

昨日の、来夏の仕業なのだが。

 

「はぁ、多分俺の対応がいかんかったのか…………」

 

笹波が呆れてたのが今となってはわかるような気がする、あれ…………俺もしかしてこっから来夏と付き合わなきゃ行けないのか?

 

俺もう正直来夏の事今まで通りに見れる気しねーんだけど…………。

 

「……どーしてこうなった?」

 

痕を手で擦りながら昨日の事を思い出す。

まず、来夏が家に行きたいと言うから何も考えずに上がらせて、俺の部屋に入るや否やベッドに勢いよく押し倒された。

そんで、冒頭の経緯に至るというわけだ。

 

あの時の来夏はまるで獣の様な目つきと荒い息使いだった、あの時俺が掛けた言葉が引き金となってしまったのだろう。

ちなみに一線は超えてない、昨日はずっと俺の首を口で虐めていた。

 

しかもなんかずっと身体と手で抑えれてた、女の子とは思えない力で、ほんで例の行為のせいで力も入らなかったからされるがままだった。

 

いやぁ………痛かった。

 

まさか人間に噛まれる日が来るとは思わなんだ、猫や犬にすら噛まれたこと無いってのに。

 

………来夏は、何故こんなにも事をしたのか。

昨日、俺のことが大好きとは言ってたが……そういう事、でいいのか。

 

うーん………良いのかなぁ、このままで。

流石にこのまま関係を持つのもダメな気がするけどなぁ、まぁ原因である俺がとやかく言える立場では無いのだが。

 

「……とりあえずこれ、隠した方がいいよな、ガーゼあったっけ…………」

 

誰かに見せるようなものじゃないしな、これ…………。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

とりあえず絆創膏やガーゼで痕を隠し、その後朝食を食べて学校の支度を終えていた。

 

「ふー、行ってきやーす」

 

ドアを開けて外に出て、鍵を掛ける。

さぁ出発…………

 

「…………おはよ」

 

「あっ…………おはよう」

 

居たわ、なんとなくそんな気がしてたけど居たわ、来夏。

思わず挨拶を返す、来夏の様子は………何時もと変わらなそう?な感じだが………俺の首周りの痕を見ていた。

 

「………………ッ」

 

「え、なに、ちょ、なになになに?」

 

それをしばらく見るや、いきなり俺の何時も羽織っているジャージのチャックを掴んで締め始め、首周りの襟の所まで閉じて首を隠すようにしてきた。

 

「な、なんだ来夏?いきなり……」

 

「隠して」

 

「え?」

 

「見せないで、暫く、誰、にも」

 

視線が合う、来夏の顔は茹でたこのように赤くなっており目もぐるぐるとして、今にも恥ずかしさで爆発しそうな感じだった。

あー………家に帰って我に返ったのかな、あの時は暴走してたっぽいし…………。

 

「……いや、アンタがつけたんだぞ?」

 

「知ってる、ごめんなさい…………でも流が悪いんだから!」

 

「いや…………こればかりは俺被害者だぜ?」

 

「あんな事言うのがいけないんじゃん!私がどれだけ襲うの我慢してたと思ってんの!」

 

「え、嘘でしょ」

 

襲うのずっと堪えてたんすか、そこまでの域に達してたのお前。

えぇ………マジかい、正直ここまでとは思ってなかったよ……俺別にお前にそこまでの事した覚えないんだけど…………。

 

「………引いた?」

 

「……多少は」

 

「うぐ………ごめん、なさい」

 

未だにチャックを掴んで離さない来夏が俯いていく。

やれやれ………まぁ何度も言ってるけど、俺にも原因があったらしいし強くは言えない、てか言うつもりもないけど。

 

「…………ま、その事はおいおい考えようぜ、別にお前の事は嫌ったりしないよ」

 

「……ホント?」

 

「おう」

 

「…………そーゆーとこだよ、もう」

 

「あー、確かに甘やかしすぎか…………やめとくか?」

 

「…………………………やめて?」

 

「一瞬葛藤したなお前」

 

「うっさい」

 

そういうと、ポンと頭を俺の身体に預けてきた。

耳はまだタコのように赤かった。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「やったな?」

 

「やってないよ」

 

「やってるよね、確実に」

 

「やってないって」

 

「じゃあ首見せろよ、やってねぇなら」

 

「…………やってませんよ」

 

「桜咲、抑えろ」

 

「待て待て待て待て待て待て」

 

クラスの教室に入り、俺をじっと見つめる伊勢谷と妖士乃と桜咲が俺にそんな事を尋ねてきやがった。

俺はとりあえず隠し通そうとするが、伊勢谷が桜咲に実力行使を掛けて来やがった、卑怯だぞこの野郎。

 

「聞け、ていうかなんで俺を見るなりそんな事聞くんだ!」

 

「普段はジャージの前を開けていると言うのに、今日だけなぜしっかり締め切ってる?そして昨日のお前と忍原の距離、そういう回答に結びつくのは自然だと思うが?」

 

「だとしても触れないのが優しさでしょーが!ていうかやってない!噛まれただけだ!」

 

「いや、それでも普通に謎だよ黒景君……?」

 

「来夏に聞け!俺は笹波に言われて来夏の蟠り解消して来いって言われてさ、そんで自分の気持ちをしっかり伝えろって言われたらあーなったんだよ!」

 

「…………お前なんて言ったんだ?」

 

「え?…………お前の事が好きだって」

 

「はぁぁぁぁぁ………」

 

「あーあ…………」

 

「…………バカかよ」

 

「だって、ホントだし…………」

 

「もっとこう……あるだろう、最適な解答が」

 

「え、そうなの?」

 

「もう知らん、俺達の前では控えろと忍原には伝えておけよ」

 

3人は既に呆れ果てている感じだった…………いやだって、俺にそんなこと言われても分からなかったし…………まさか来夏が俺の事そんな風に思ってたなんて夢にも思わなかったんだよ。

そう考えれば今までの行動もなんとなく理解出来るような、気がするけどさ………まぁいいや、少しづつ考えれば。

 

「(………実際、どうしようか)」

 

席に座りながら考える。

経緯はどうあれ、来夏の俺に対する気持ちはなんとなく理解出来た。

俺にそこまでの事をする程の価値があるのかは知らないけど、少なくとも来夏にとってはそうなのかもしれない。

 

後は…………俺が来夏をどう受け止めるかだけ。

あんな事された後ではあるけど、俺はやっぱり来夏を嫌ったりはしてない。

ていうか……嫌ったらなんだか、壊れそうな気がしてならないし。

 

ていうかあそこまで追い詰めたのが俺だとするなら、やっぱ責任は取るべきなのかなぁ………分からん。

如何せん俺自身がそういった恋愛関係に興味が無さすぎて知識が終わっている、てか中学生の身分で付き合うとか良いのかな。

 

「(……マジでどうしよ)」

 

誰かこんな俺にアドバイスをくれる人は居ないのか………朝のホームルームが始まるまで、俺は唸っていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

時刻は昼休み、皆ご飯を食べたりして各々の時間を過ごしていることだろうけど………私は1人、トイレの中で縮こまっていた。

別にぼっち飯とかではない、ご飯ならもう済ませた。

 

ただ………こんな姿を誰にも見られたくないだけであって。

 

「………ぅぅううっ、ぁぁーああっ」

 

ダメだ、ダメだった、我慢出来なかった、やってしまった。

恥ずかしさで頭が変になる、死ぬ、もう無理、マジで本当にバカか私はァァ!?

 

確かに流のあの言葉が引き金になって今まで繋ぎ止めてた線がブチ切れたけどさぁ、幾らなんでもあれは馬鹿でしょ!!!何さ首に噛み付いたりキスしたり!?それ以外はしなかったけど何!?マーキングでもしたかったの!?

 

「……………しのうかな、だめ、しにそう」

 

朝起きた時も、改めて流の首周りの痕見た時も、授業中も、休み時間も隙があれば昨日の自分の所業がフラッシュバックして悶えてしまう。

我慢出来なかった、その一言に尽きる。

 

何度も何度も流の言葉と仕草に心が掻き毟られてぐちゃぐちゃにされる度に何度も心の中で、内なる衝動が狂いだしていた。

 

昨日、自分の心境が不安定だった時に、流にあんな事言われてしまえば壊れもする………でも、受け入れてくれると言ったとしても私は流に、酷いことをしてしまった。

 

罪悪感と羞恥心で爆発しそう………あぁ、私のバカ………。

 

「………でも」

 

でも、思っちゃいけないことだけど。

噛んで、キスして、跡がつく度に、興奮した。

 

私のだって証がして、昂った。

 

「………………あは」

 

ダメだ、最低なのに、馬鹿みたいな事したのに、笑ってる。

壊れてる、いや、壊れたんだ。

 

あの時、あの言葉のせいでタガが外れた。

受け入れるなんて、好きだなんて、そんな事言われたら堪んなくなるじゃん。

 

………………あーもう、どうしよう、もう普通の関係で居られなくなる、ていうかもう戻れないんじゃないかな。

………サッカー部の迷惑になるような事は避けたいな。

 

「……………とりあえず、当面は抑えよう、頑張れ私………」

 

そう、折角2回戦も突破して………なんかよく知らないけど北陽学園の人達が南雲原にやってくるなんて話もあるくらいだ、今は自分の衝動を抑えなきなゃいけない。

 

あの行為のおかげかもしれない、今まで溜まりに溜まったモノが一時的に発散できたからというのもある。

………そのやり方は自分でもドン引きするのはそうなのだけどさ。

 

……………………何度も言うけど、好きな人から真っ向から好きだなんて言われたら、我慢なんて出来ないじゃん。

その好きも多分私とは違うんだけどさ。

 

もう………でも、やっぱ私も好きだよ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

時刻は飛んで放課後、今日は造船所後で練習をするのだが………それとは別にサッカー部全員で作戦会議が行われていた。

3回戦の相手………じゃなくて、2回戦で勝利した北陽学園の事だ。

 

なんでも………南雲原と合併するとかなんとか。

昨今の事情が云々があるらしく、解体される北陽の生徒が南雲原に流れ込むとの事で、そして互いのサッカー部も1つになるらしい。

 

そして大半が北陽の部員がレギュラー総取りになる可能性が高いらしい、勝ったのこちらなんだがな………。

しかも監督枠も北陽の下鶴改という人が就任するとか、笹波じゃなくなるのは嫌だな………まぁこちらの表向きの監督は素人の香澄崎先生だから、そうなるのも自然かもだけど。

 

「………黒景、お前も南雲原の監督はキャプテンでないとだろう?」

 

「………ん?んー、まぁ俺は笹波のサッカーに惹かれた口だからね」

 

これまでの経緯を振り返っていると、伊勢谷から監督に関しての話を持ち掛けられ、俺の素直な気持ちを話す。

上記の通り、笹波の元でサッカーがやりたいのに別の奴らに乗っ取られるのは流石に抵抗がある、その為に今頑張ってんだから。

 

「同意だがよ、学校側は下鶴監督が一流のサッカー監督であること知っている………あちらに香澄崎先生と雲明に監督を任せるという判断は、無いと思うぜ」

 

「うーん………何か良い手はないかなぁ」

 

「下鶴監督か………キャプテンか、ね」

 

来夏と小太刀先輩の言葉の後に皆が唸る。

現状流されて笹波が監督から外され、オマケにレギュラーまであちらに取られかねないとかいう状況だ。

北陽のキャプテン空宮が言うには公平な人だからレギュラーに関しては何人か残りそうだけど………どーすっかなぁ。

 

……………まぁこんな時は。

 

「練習すっか」

 

「え?」

 

「今悩んでもいい考えなんてないだろ?とりあえず身体動かそう」

 

「えぇっ、んなあっさり……」

 

「………でも正論ですね、僕も現状何か思いつくとは思えませんから」

 

「だろ?」

 

「偶にはいい事言いますね、先輩」

 

「……まるで俺が普段アホな事言ってるみたいじゃん」

 

「違いますか?」

 

「………へい」

 

とてつもなく冷めた目で見られてもうた、段々俺に対する扱いが雑になってるのは気の所為だよな………ていうか誰か抗議してくれよ。

 

「とにかくです……レギュラー争いの可能性があるのなら、僕らも今レベルアップしておくべきですね、この話はここで終わりにして練習を始めましょう」

 

「……だな、忍原付き合えよ」

 

「分かった、春雷のレベルアップしなきゃね」

 

「じゃー俺らはシュートコントロール頑張りますか」

 

「キーパーだけど、僕も偶にはシュートをやってみようかな」

 

笹波の言葉を皮切りに皆がそれぞれの練習に励み始めようとしていた。

俺は………ま、適当なとこで頑張りゃいいか。

てかずっと首周り苦しいんだけど、ずっとジャージのチャック首まで締め切ってるからな…………よし、誰にも見えない所に行くか。

 

ボールを抱えて皆が集中している所から離れる、適当に離れで良いよな。

暫く歩いていい感じの場所が見つかった、ここならいいか。

 

「……ふぃー、苦しかったぁ」

 

ジャージのチャックを開けて息苦しさから解放される、あー開放感。

思わず首周りを摩る、ったく来夏のせいなのにさぁ………また噛み付くとかないよな?俺が対応とか間違わなければ。

 

………結局今まで通りに付き合っていくのが良いのかなぁ、この時期に異性として、なんてしてもサッカー部の迷惑になるだけだよな…………来夏もそこは分かってるから今まで我慢してたハズ。

 

とはいえ仮にサッカー部じゃなくても、今の来夏とそのまま付き合ったって良いのか………うーん、分からん。

………………正直、俺は今まで通りの関係が一番だったんだけどな………俺がそうした原因でもあるけど、避けられなかったのかなぁ。

 

………あー難しいな全く、頭働かせるのは得意じゃないってのに。

 

「ふー………」

 

「黒景君」

 

「うおっ?」

 

思い悩んでいると、いつの間にか小太刀先輩が隣に立っていた。

少しビビった………まさかここに来るとは思わなんだ。

 

ていうかさっきからじっと見つめられてんだけど……………あっ。

 

「………もう隠しても遅いわよ?」

 

「いや違うんすよこれは決して不純なアレじゃなくてですねそうせざるを得なかった傷というかですね」

 

「猫にでもじゃれつかれたの、激しく?」

 

「いやいやいや………そうなんすよ」

 

「バカね………忍原さんでしょ、遂にしてしまったと」

 

「一線は越えてません、首周り謎に虐められただけです!」

 

「本当に謎ね………そこまでしておいて、最後に躊躇いがあったのかしら」

 

冷めた目で見られてしまう、無表情だから笹波以上に刺さるんだけど………てか恥ずいな、ふつーにバレてるし。

 

「………傷むの?」

 

「いや、今は特に……」

 

「酷いことするわね、自分のモノだって言いたいのかしら」

 

「ど、どうなんすかね………俺はアイツのことよく分かってやれなかったっぽくて、どうすりゃ良いかずっと考えてるんすよ」

 

「その口振りだと、気持ちには気づいてるのね」

 

「………多少は」

 

「そう………そこに座って」

 

「え?なんでっすか」

 

「座りなさい」

 

「……へい」

 

適当な段差がある所を指さされて、圧力も掛けられたので大人しく従うことにする。

その場所へ座ると、小太刀先輩は手を伸ばしてきて俺の首に周りにつけていたガーゼを剥がした。

 

「えっ、何して」

 

「診るだけよ、感染とかしたら大変でしょ」

 

「は、はい……」

 

傷に優しく手を添えられて顔が至近距離で近づいてくる。

気を遣われてんのかな………あんま気にしなくても良いとおもうんだけどな、俺らの問題だし………。

 

「噛まれた時、血は出たの?」

 

「出てた、かな…………そこまで思いっきりって感じでもなかったんで」

 

「そう、刺された様な跡は………ファーストキスも取られたの?」

 

「えっ、いや、まだ」

 

「………こんな事しておいて、最後には躊躇してたのね」

 

「……先輩、その、あんま気にしなくても大丈夫っすけど」

 

「気にするわよ、後輩の事なんだから」

 

「………ども」

 

「………それにしても、結構はしたないのね、忍原さんって」

 

「あー……」

 

いかん、否定出来ん。

経緯はともかくこんな事をするなんて俺も夢にも思わなかったしな…………何も知らない人からすれば、確かに異常に見えるかもしれんけど………俺は来夏の事をそんな目では見れないかな……。

 

「思えば昨日から何か様子が変だったとは思ってたけど、後半始まる前に彼女と何処か行ってたけど、そこで何かあったの?」

 

「いや、笹波から来夏とは気持ちの齟齬があるから解消して来いって言われて、その……………好きだって言いました」

 

「……………うん、キミも悪い」

 

「うっ」

 

声が、冷たい………素直に伝えるとこの何がいけないというのだ。

すると一通り見終わったのか、1度剥がしたガーゼを絆創膏を貼ってくれた。

 

「……見た所消毒もしてたっぽいし、大丈夫そうね」

 

「あーはい、気遣って貰ってすんません」

 

「良いわよ、それで………キミはどうするの?」

 

「どうってのは……?」

 

「忍原さん、付き合うの?」

 

しゃがんだ体制のまま、若干俺を見上げながらじっと見つめて来て尋ねる。

やっぱ気になるのかな………でも、どうするか…………なんて言おうか。

 

「………まだ、そんな気は無いっすかね、多分あいつもそれを分かってると思います、でもこのままにしておくつもりもないんで」

 

「それが正しいわ、仮に今のキミ達がそういう関係になれば、キミ達が壊れかねないから」

 

「壊れるって」

 

「……現に、今までの幼馴染みって関係が壊れかけてるんじゃない?」

 

「………それは」

 

何も、言えない。

確かに……今まで通りとはいかない、来夏だってそれを分かってたからいままで我慢してたんだ。

それでもやったのは、そういう覚悟もあったって事………歯止めが効かなくなったってのが1番の理由かもだけどさ。

 

………でも俺は、壊したくない。

あいつの事はどうあれ、好きだと思ってるから。

 

「………でも俺は、アイツから目を離さないと思います、心配なんで」

 

「そんなことされても?」

 

「まぁ………今まで察してやれなかった俺も悪いんで」

 

「………そう、甘すぎるのは毒よ」

 

「正直そこまでの事をしたとは思ってないんすけどね」

 

「………してるわよ」

 

「え?」

 

「何も言わず静かに寄り添う、それだけで救われる人が居る、それが忍原さんもって事でしょ?」

 

少し微笑んで、先輩は俺にそう言ってくれた。

………確かに、来夏は昔から何かと嫌な思いはしてたから、それにただ話を聞いやってただけなんだけど、それで良かった………のかな。

………いいよな、どうあれ間違いでは無いんだから、ここから俺がどうするべきか、だよな。

 

………とりあえず女心、少しでも分かるかぁ。

 

「ありがとうございました、先輩、とりあえず俺なりにやってみますわ」

 

「そう、頑張って」

 

「前は俺が聞く側だったのに、今回は先輩が聞く側でしたね」

 

「確かに………少し晴れたなら良かったわ」

 

「先輩も、なんやかんやで面倒見良いっすよね」

 

「そう?剣道部じゃ七南さん以外には畏れられてたのだけれど」

 

「まぁ、先輩の活躍は同じ剣道部からすれば近寄り難しって感じなんじゃ無いんすか?」

 

「………君にとって、ウチはどう見えてるの?」

 

「え?まぁ………頼れる先輩っすね」

 

「当たり障りのない言葉ね」

 

「……なんか他が良いんすか?」

 

「そうね………」

 

そう言うと先輩は傍に置いてあった鞄とサッカーボールを手に持ち立ち上がり、俺を見下ろして……少し微笑む。

 

「好きな先輩、とか」

 

「……え?いや………好きですけど」

 

「そういう所よ……それじゃ、また明日」

 

最後に呆れたような笑みを浮かべて、先輩はその場を去っていった。

ていうかもう帰るのか………早くね?

 

「………さて、俺も頑張りますか、色々」

 

手始めに来夏とはどうしようか………やべ、先輩に教えてもらえば良かった。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

静かに歩く、街の喧騒を抜けて海沿いの公園へ辿り着く。

今日は早く上がった、特に疲れとかが大きいわけでもなかったのだけれど………あの場は帰った方が、良い気がしたから。

 

「…………」

 

鞄を適当な所に置いて、ボールを傍らに浜辺まで足速に歩く。

海を目の前にして、砂浜にボールを静かに置いた。

 

「──────すぅ……」

 

目を瞑り、静かに息を吸う、憤りを、抑えろ。

 

それでも暗く閉ざされた目には………あの姿が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛々しく残された、彼の、首の………。

 

 

「───────ッ!!!!!」

 

 

目を開き、衝動のまま伝来宝刀を海に向けて放つ。

未だかつて無いレベルの威力で放たれたその技は、轟音を響かせて海の波を大きく切り裂き、ボールは遥か遠くへ行ってしまった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

顔から汗が一気に吹き出る。

ずっと、ずっと堪えてた。

 

あの首の傷を見てから、ずっと怒りを内心に抑えていた。

自分の無表情と冷静さに、今日程有難みを感じた日はなかった。

 

分かっている、ウチにそんな権利はない。

あれは2人の問題だ、昔馴染みの2人だけの、そこにウチのような部外者が介入する言われはない。

 

 

でも、それでもだ。

 

 

確かに彼にも多少の非はあるかもしれない、元々の鈍さが招いた結果かもしれない。

 

 

………………だと、しても。

 

 

「傷なんて、つけるものじゃないでしょうっ………!」

 

 

なんで、平然として居られる。

抵抗は覚えてても、彼女自体を否定はしてなかった。

 

………そういう所だ、彼は真剣かもしれないけど、そこまで深刻には考えてない。

言った筈だ、甘すぎるのも毒だと。

 

「……………やっぱり、分からないわ、貴女の事」

 

甘えている、そして彼もどうこう言っても受け入れている。

そこに、結果的にはつけ込んでいる………好きな人を、傷付ける、なんて。

 

「……………」

 

キミには、自覚が無いのでしょうけど、

ウチも、君の態度には救われてた。

 

周りの声に何もかも嫌になっていたから、君の言葉が心地よかった。

 

………そして自覚してしまった、自分の気持ちに。

 

「………あぁ」

 

こんなにも…………自分の心を剥き出しにしたのは初めてだ。




黒景 流
物理的に喰われたけど生きてます、どうしたものかと悪戦苦闘してるがとりあえず来夏の事は嫌うつもりなし。


忍原来夏
耐えきれず襲ったけど何とか一線は耐えた、自分の異常さに悩みつつも痕を遺したことに恍惚を覚える。


小太刀 鞘
なんというか常識人、主人公と来夏の関係の歪さに怒りを覚える。
ちなみに怒りで伝来宝刀・改になりました。
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