忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
すげー筆が乗りました。
フットボールフロンティア予選3回戦の相手、東風異国館……準決勝の相手にして、九州地区予選最強の相手と言っていい。
敵のキャプテン以外は殆ど外国人留学生で構成されたチーム、選手一人一人が外国人由来のフィジカルとセンスで中学生のレベルを越えている………そしてその高すぎる基本スペック故に戦術を必要とせず、単純なスペックのゴリ押しで勝ち進んで来た厄介なチーム。
戦術がないと聞くとただの脳筋集団と思われがちだが、それは間違い………戦術が無いということは、対策が立てづらいという事。
それでこれまで勝ってきて、U-15杯でもベスト4という結果を残しているのだ。
そんな相手に僕らが勝つには、タクティクスという手段で立ち向かう他ない。
幸い北陽メンバーの加入と新たなる戦術の増加により、この南雲原は大きく成長が出来る……後はこれを限界まで伸ばして、試合に備えるしかない。
そしてこれが成功しチームが進化すれば、ようやく………。
その為にも先ずは勝つ、そしてそのキーマン達には一層の活躍をして貰わなければ。
忍原先輩と小太刀先輩、本人達にとっては心外かもしれないが………プレーの相性自体は抜群なのだ。
東風異国館の選手から繰り出されるフィジカルコンタクトを避けて、優れた俊敏性で駆け抜けてゴールを決める………敵キーパー、マルティオ・レオーネのアウターワールドは、小太刀先輩の伝来宝刀を強化すれば突破出来る可能性もある。
しかしそこまで行くには、何より2人の連携が重要になる。
前々からこの2人を合わせたプレーは有効的だと思ってたし、事情も相まっていい機会とは思ってる。
だからこそ期待を込めている、本当に頑張って欲しい。
欲しいの、だけど。
「忍原さん!貴女何回パスミスするのよ!?」
「小太刀先輩こそなんでさっきからタイミングズレてるんですか!?わざとですか!?」
「貴女が指示したタイミングで向かってるのに一向に合わないからでしょ!どう考えてもそちらの不手際よ!」
「小太刀先輩は必殺技無しでも抜けられるから言ってるだけですー!フツーに先輩の調子がわるいだけでしょ!?」
「押し付けないでくれる!?そんなだから黒景君から一生そっぽ向けられてるんでしょ!?」
「あー言った!?言っちゃいけないこと言った!!小太刀先輩こそ一切何も気づかれてない癖に!!」
「余計なお世話!!幼馴染みは負けヒロインとはよく言ったものね!?」
「なんですかこのーーっ!!」
「何よ!!?」
ギャーギャーギャーギャー!!
「「「「……………………………」」」」
フィールド上の桜咲先輩、柳生先輩、品乃先輩、キーパーの四川堂先輩が言い合いを繰り広げるキーマン2人をとても不安そうな目で見つめる。
僕はあの二人に言葉を失い、隣にいる伊勢谷先輩はズレた眼鏡をかけ直し僕を見つめる。
「……………………キャプテン、確認するが」
「………はい」
「……………ほんっとーに、これで行くのか?」
「……………行きます!!」
「回答に一瞬躊躇いが見えたぞ!?」
うるさいです行くしかないんです!色んな意味で!!
◾︎◾︎◾︎◾︎
東風異国館との試合まで後数日、目下のトレーニングメニューは何時もの物よりより一層ハードなものにした。
先ずは体力、敵の並外れたフィジカルに対抗するにはそれ相応の体力が必要となる、当たり負けはやむを得ないが、こちらのタクティクスを実行するだけの身体作りは必然だ。
次に忍原先輩と小太刀先輩の連携特訓、これが何より重要。
チーム内で比較的体格のいい桜咲先輩、柳生先輩、品乃先輩で陣形を組み2人で何処まで行けるかを測るトレーニング。
阿吽の呼吸とまでは行かなくていい、並より上のコンビネーションさえ可能となれば勝率はグンと上がるのに…………。
「「…………」」ムスー
現実はこれだ、休憩中話し合うことも無く互いに拗ねてそっぽを向いている。
なんでこうなる………いやこうなること自体は予想してたけども、ここまで酷いとは思わなかった……。
小太刀先輩があんな大声を叫ぶ所なんて初めて見たよ、何時もの無表情はどうした?キャラ崩壊起きてますよ?
………思っていた以上に互いの溝は深いようだ、あーもう………。
「上手くいってた場面はある、けどそれ以上に2人の仲が最悪だ、とても試合で活躍なんて望めないぞ?」
「わかってますよ、それでもあの2人でなきゃ勝率が下がるんですよ伊勢谷先輩………」
「キャプテンの言ってた戦法は確かに正しいかもしれないが、この調子が当日まで行けば最悪なんてものじゃない、手はあるのか?」
「無いことは無いですよ、無いことはね………」
偶々休憩がてら様子を見に来ていた伊勢谷先輩に苦し紛れの言葉を出す。
あるにはある、でもあの2人があんな仲じゃどれだけの効果を望めるか…………はぁ、これは難航しそうだ。
………因みに最近入ってきた元北陽のメンバー以外は、忍原先輩と小太刀先輩が黒景先輩に対しての好意には皆気づいている。
だからこそ何故あの二人が合わないのかの理由は察している………小太刀先輩は忍原先輩程ベタベタじゃないけど、そこはかとなくアピールしてるからな………。
「………とにかくこちらは気にしないでください、あの二人の面倒は僕がしっかり見ます、それにこの状況は決してマイナスばかりを産むわけではありませんから」
「何?どういうことだキャプテン………また何か狙いが?」
「後々に気づきますよ、それより伊勢谷先輩………あの二人は一旦置いておいて、新しく入った北陽の皆さんを入れたチームのゲームメイクは上手く行きそうですか?」
「ん………そうだな、スタメンで入るのは空宮と品乃先輩の二人とはいえ何時もとは勝手が違ってくるからな、更にフォワードはあの二人だ………また新しい解答を用意せねばならないな」
伊勢谷先輩は手癖でまた眼鏡に触れる、気合いは十分な様だ。
チームメンバーは変わるが彼には変わらずこのチームの司令塔を任せてある、北陽の皆も彼の活躍は実感しているから異議申し立ては無かった。
この人は決して身体能力は特別優れているわけではない、けど優れた視野と敵の内心を見破る観察眼はサッカーに置いて、ゲームメイカーという素質に他ならない。
その点に関して言えばかつての僕と似ている、だからこそ始めて間も無い彼に司令塔を任せたのだ。
そして今も尚ゲームメイカーとして成長をしている………彼もまた、南雲原の更なる進化に一役買ってくれる。
「先輩は試合中、常にどんな事を考えて動いてますか?」
「……………言語化が難しいが、とにかくこちら側に不都合な解答をしらみ潰しに消して、最終的には有利に運ぶ答えを導く為のプレーを心掛けている、と言った所か」
「なるほど、しかしこの先ではそれが通用しなくなる可能性が高いですね」
「何?」
「簡単に言えばその答えを導く時間を削減すれば良いんです、余計な問題を避けて本当にこちらにとって厄介な問題を解けば、今までのゲームメイクより断然早い決断が出来ます」
「………理屈は分かるが、簡単にそれが解れば苦労はしないぞ?」
「そうですね、ですが手本なら既に居ますよ?」
「…………まさか、黒景の事を言ってるのか?」
そう……黒景先輩の強みの1つは、深く思考せずとも最適解の行動を繰り出す能力………言わば条件反射。
馬鹿みたいなスーパーロングシュートも、敵に一切触れさせないドリブルも、先輩が無意識にこれで相手を壊せると結論付け、即実行に移す。
それが超直感的にプレーする根幹でもある、深く考えずに行動してそれが成功という結果に結実するのだから………全く馬鹿げた話だ、流石はサッカーモンスターと言ったところか。
「確かにあれはキャプテンの言ってた理論に基づいてるが、あんなのは常人に出来ることでは………」
「もちろん出来ません、彼の様な馬鹿げた条件反射は狙って会得する様なものじゃありません………伊勢谷先輩が学ぶべきなのはその仕組みです」
「仕組み?」
「黒景先輩自身に備わった物自体をモノにするのは不可能です、ですが常人には常人なりのやり方がある……条件反射の能力もそうです、あれは黒景先輩と言うプレイヤーが一人で壊す為に行うものですが、伊勢谷先輩の場合は僕が先程言った通り、即座に戦況を把握し……チームが優勢になるような最前の解答を反射的に導く為の能力です」
「それは確かに難易度は高いですが、決して不可能では無い筈です」
「………!!」
「何故そんな事をするのか?何故そうしたらそうなるのか?何故相手はそうやってプレーするのか………それらを即座に解析し、適応し、そして勝つ為に有効な結果を見出す………これが伊勢谷先輩が必要な、ゲームメイカーとしての条件反射の能力です」
「俺なりの、条件反射の能力………」
「どうですか?これは視野が広く、相手の内心を見破るメンタリストである伊勢谷先輩になら可能だと、僕は思っていますが」
僕がそう区切ると、先輩は顎に手を当てて思考する。
その目に戸惑いはない………先輩は深く深く、僕の言葉に対する解答を探っている様子だった。
「……………キャプテン、感謝する………俺は、やはりサッカーをやっててよかったと思うよ………これ程心躍る難問はそうない………」
「………それは良かったです」
「………試合までに、俺は俺なりの理論を作る………」
伊勢谷先輩はそう言うとその場を後にした、先輩ならきっと大丈夫、南雲原のゲームメイカーとして更なる進化を遂げてくれるはずだ。
………さて、腕を組んで未だに座りこんでいるキーマン2人に視線を移す。
初日からこれはいただけない、とにかく今日ここで意思疎通を図ってもらわなきゃ………完全に仲良くとまではいかなくていい、互いがどう思って何を感じているか理解し合って貰わなければ。
「………よし」
意を決し、あの二人の元へ歩み寄るのであった。
◾︎◾︎◾︎◾︎
……………今日はなんて1日だ。
なんでこんな事になっているのだろうか。
東風異国館に向けての特訓は今日始まったばかりだと言うのに、既にウチは満身創痍と言っていい。
今日の昼休み………あの忍原さんからランチを誘われて、戸惑いながらもそれを受けたのはいい………でもその後が最悪だった。
会話もない、しようとすれば被る、空気はまた悪くなる……その繰り返し。
果てには様子を見かねた星さんと七南さんもやってきて、2人もあの地獄のランチに巻き込む形になって罪悪感も重なってしまうし………。
そして今回の戦術発表、何故か忍原さんとウチがトップフォワードとして起用される事が決まるし………その為の連携を今日初めて行った結果………噛み合わ無さすぎてストレスが溜まり、連続失敗した後互いに馬鹿みたいな言い合いが発生して特訓どころじゃ無くなるし。
偶に成功したのは良いが、ほんっとーに偶々だから成長も何もない。
……………キャプテンの考えも分からなくもないが、ここまで酷いと別のプランを考えて欲しいものだ。
こうも、彼女とウチは相性が悪いとは思わなかった………ひとえに、ウチが忍原さんをよく思ってないのが原因なのだが。
「……………」
チラリと横目で彼女の顔を見る。
不貞腐れてはいるが、何処か反省の色が見える顔色だった………流石に彼女もあれはどうかと思ってたらしい。
……………分かってる、互いに何故こうも上手くいかないのか位。
理由はどうしようもなく恥ずかしくて、私的だ………同じ男の人を、好きになってるから。
互いの存在が………どうしても邪魔に思えてならない、それに加えウチは……忍原さんが黒景君にやったあの傷の件を許せる気がしない。
理解が出来ないもの、好きな人に何故あんな事が出来るの?
自分ならしようなんて思わない、何を思ったか知る由もないけど………そこから彼女の印象は落ちた。
……………彼女の方はウチの事をどう思っているだろうか、少なくとも好印象じゃない事だけは確かだ。
「(………あぁもう、だとしてもこれじゃ………チームの足を引っ張るだけでしょう)」
どんな理由があるにせよ、それはチームの勝利の邪魔になる事には変わりない。
互いに私情が強く混入している、これではただただ迷惑を掛けているだけなのだから救いようがない。
更に最悪なのが、キャプテンはウチ達を今回の試合のキーマンにしている事だ………恐らく、変えるつもりはない筈だ。
故にここから少しでもまともな連携をしなくてはならないのに、今はその兆しすら見えてこない。
……………分かってる、少しでも彼女の事を知らなければならないことくらい。
分かってる、正しい選択だと分かってるのに………心が、その選択を頑なに拒んでしまう。
「(………ウチって、こんな人間だったの?)」
自己嫌悪に陥ってしまいそうだ。
こんなにもわがままだったのか自分は?たかが痴情のもつれでチームの足を引っ張る結果になっている………その事は恐らく、忍原さんだって承知の上だろうに。
彼女の方は何を思っているのだろう…………如何せんまともな会話をした事がない………さっきのあれは会話の内には入らない、ただの子供じみた論争だ。
……………どうした、ものか、このままではいけないのに……………。
「……………大丈夫ですか、お二人とも?」
すると私達の前に誰かが…………いや考えるまでもない………キャプテンだ。
顔を見上げ、呆れた表情でキャプテンはウチ達を見つめていた。
「………大丈夫に見える?」
「まるで試合に負けたかのようにボロボロですよ」
乾いた笑いを浮かべて忍原さんがそう言う、全く大丈夫じゃないのはそうだ………説教をされるのだろうか、そうされても可笑しくないのだが。
「………キャプテン、一応聞くけど戦術の変更は」
「しません、これが一番勝率の高いやり方です、一向に上手くいかないのは貴女方の事情が強く介入してるからですよ」
「………仰る通りね」
九分九厘反論の余地もない、ほんっとーに上手くいないのはウチたちの仲という傍から見れば何してるんだと、言われるものだからだ。
ウチらはどうにも反りが合わない………そう、思っているからだろうか。
「………忍原先輩、小太刀先輩、何故二人がこんなにも上手くいかないのか、分かってますよね?」
「………仲良くないから」
「それは思い込みです………互いの事を、何も理解してないからです……今日までに貴女達は相互理解を何一つとして行おうとしてませんでした、今日の昼だってね」
「見てたのキャプテン……………待って、もしかして忍原さんが誘ってきたのは……!?」
「はい、僕がそう指示したからです」
「あ、言うんだ……」
ど、道理で………よくよく考えたら忍原さんが何の理由も無しにウチへ近づく訳ないわ………なんで、そんな事を。
……………いや、理由は何となく、察せるけど。
「……その様子ですと、理由は察してますね?」
「………ウチ達が南雲原の中で唯一、交流が無かったから?」
「はい、今や北陽と1つなった南雲原中……北陽との関係はここからですが、貴女達は黎明期からのチームメンバーだと言うのに一切関わろうとしてない者たちです……その理由は明らかですけどね、恥ずかしい原因ですけど」
「「ぅっ……」」
「なんですか好きな人が被ってるからって、こちらからすれば知ったこっちゃないんですよ、そのせいで今日の特訓だってあんなボロカスだったんでしょ?理由が理由だから呆れてものも言えませんよ、ていうか小太刀先輩………貴女そんな私情とか普段入れるような人じゃないですよね?忍原先輩もそりゃ目の前であんなベタベタしてたら良い印象なんて与えられませんよ、理由がそれぞれあるのは理解しますがお互いチームメイトなんですから、今からすぐ急接近しろなんて言いませんけど、とにかくさっきみたいな醜い言い争いは二度としないでください、良いですね?」
「「…………はい」」
結構長い事愚痴を交えた説教を貰い、ウチ達は素直に受け止める。
………確かにウチ達の事情にチームまで巻き込むのは違う、当たり前のことなのにそれが頭に入って無かった………自分が恥ずかしい。
……………こんなにも忍原さんのことが受け入れられないのは、確かに彼女の事を理解してないせいなのだろう。
なら今日の昼にでも僅かながら聞けばよかったのに、それがまた出来ない………全く、厄介な話だ。
「………はぁ、今の貴女達に必要なのは本当に相互理解の時間ですね………これを」
「うん……?」
ため息を着きながらキャプテンは自分のポケットから、何かの紙切れをウチ達に差し出す。
それを受け取って見てみると、そこに書いてあったのは喫茶タンクのコーヒー&ケーキセットの半額券だった。
「お二人とも今日はもう上がってください、今から喫茶タンクに向かってお茶をしながらお互いの事を話してください、そしてゼロの状態から1だけでも増やして、チームメイトとして……そして互いにどう向かい合うべきか、それを決めてください………では、お疲れ様です」
ペコリと一礼すると、キャプテンはそそくさとその場を去っていく。
思わずその後ろ姿をウチ達は眺めてしまう、そして受け取ったクーポンを一瞥し……隣の忍原さんに目を向ける………目が、あってしまった。
「………とりあえず、着替えましょうか」
「……そうですね」
ここまでされたら、従うしかない………珍しく心の中で意見があったと思う。
◾︎◾︎◾︎◾︎
雲明君から手渡されたクーポンを手に、私と小太刀先輩は喫茶タンクに到着した。
………ここまで着くのに当然会話は無い………けど心做しか、小太刀先輩から視線を何回か感じた、私も何か話した方がいいのかと思い先輩の方へチラチラ視線を送ってた、結局声は掛けられなかったけど。
席に座る、幸いこの時間帯は私達以外のお客さんは居なかった。
「この時間に来るなんて珍しいじゃないか、部活は良いのかい?」
「あ、はい、今日は少しお休みって事で……それと、これを」
「ん?………ありゃ、珍しいもん持ってるね」
「……珍しい?」
「これ結構前に思いつきで作って赤字出しちゃってね、それ以来出さなかったクーポンなんだよ、最近これ使う人全然居なかったし……何処で貰ったんだい?」
思わず対面に座っている先輩と目が合う、受け取っただけだから何も知らない………そう言われるとそのクーポンは少し古ぼけてる気がした。
「えっとキャプ………笹波君からです、期限とかは……」
「いいよいいよ、多分そんなもん書いてないしね、んで何にする?」
「私はミルクティーとショートケーキで」
「ウチは……アイスコーヒーと、ショートケーキで」
「あいよ」
注文を受け取ったマスターさんが向こうに行くのを見届ける………ケーキ、同じなんだ。
小太刀先輩は視線を下に向けて、姿勢よく座っている。
……………改めて見ると、やっぱ綺麗な人だな。
地毛だろうかあの金髪は………家の事は何も知らないけど、片方の親は外国人だったりするかな?
………流は意外と、こういう人が好みだったりするのかな。
………今日から彼とは3回戦が終わるまで関われない、正直寂しさでどうかなりそうだ。
でも耐えなきゃいけない、そして自分は変わらなきゃ行けない。
その為にも恋敵であるこの人を知ることが、改善に繋がると雲明君は言ってた。
敵……か、確かに私はこの人を心底嫌ってたりはしないけど、雲明君の言う通り敵だと思ってたのかもしれない。
その証拠に今日の練習………本当にダメダメの連携だった、今回私たち二人が重要なポジションだと言うのに。
……………ボロボロになって、仲間達の心底心配するような視線、我が身を省みるのには十分過ぎた。
あんなのが続いて皆に迷惑を掛けるなら、ここでその原因を解消しなきゃ行けなくなると考えるのは自然だ………雲明君は、ここまで考えてたのかな。
「………ふぅ」
軽く深呼吸をする、とりあえず今は………互いを知る時だ。
勇気を出せ忍原来夏、自分の為に………!
「「あのっ」」
「「……………」」
「(……やばい!あのランチを思い出す!?)」
また被った、被ってしまった。
思わず地獄のランチが脳裏をフラッシュバックしてしまい羞恥心と罪悪感で心がもう壊れそう。
顔を下に向けて、視線だけ小太刀先輩の方へ向ける。
……………彼女は顔に手を当てて横に向いてた、多分一緒に思い出して悶えている。
ていうか何でまた被るのさ!わざとじゃないよね!?
「……なーにしてんのお二人とも?」
そんなコントを繰り広げてると、マスターが注文の品を持ってきた。
………変な私たちの様子に眉を顰めながら。
「あ、いえ……黒歴史を……」
「?まぁいいさ、とりあえずこれ注文のミルクティー、アイスコーヒー、ショートケーキ2つね」
「あ、ありがとうございます……」
調子が可笑しくなりつつも注文の品を受け取る……美味しそう。
「………ショートケーキが、好きなの?」
「えっ………はい」
「そう………」
そこからまた、会話が途切れる。
……………暫く、また顔を伏せて時間が流れる。
「………小太刀先輩は、流が好きなんですよね」
私はミルクティーを飲みながら、意を決して言葉を紡いだ。
まずは確認したかった、先輩は流をどう思っているのかを。
先輩は少し驚いた様子だったが、目を一度瞑って………開いて私に語り始める。
「……えぇ、好きよ」
「………どうして、好きになったんですか?」
「……………ウチが剣道部だったのは知ってるわよね?」
「はい、話だけ聞いてました、1年の頃からあらゆる剣道の大会で結果を残し続けた凄い人だって……」
「………1年の頃はまだ良かったわ、ただひたすらに目標を追い掛けて頑張って、才能に恵まれたのも相まって周りもウチに期待してた、それに応えようとしてた」
「………目標を、追いかける………」
なんだか、ダンスをしてた時の私に似てる………?
雲明君は私と小太刀先輩には共通点があると言った、それがもしかしてこれ……?
「そして何度も優勝した、何度も頂上の景色を眺めた、最初は達成感に満ち溢れてた………けど次第に、感動も薄れた………周りはそんなウチを讃えてくれた、その内の一部はウチを妬んでたけど」
小太刀先輩のティーカップに手を添える手が少し強まり、表情は少し自嘲する様な感じになる。
………私が優勝した時は、妬みの声とかは聞いた事ないけど………小太刀先輩程の人なら、そうなってしまうのかな。
「それでもウチには剣道しかないと思って、2年生の時もやり続けて大会には結果を残し続けた………皆は讃えて、妬みの視線も増えて………それでも尚辿り着いた頂上の景色は、ウチにとってはありふれたもので………ウチはもう、剣道に打ち込む理由が、あの時はもう思いつかなかった」
「……………」
「そんな時だった、黒景君と出会ったのは」
「……!」
流の名前が出て、私は思わず背筋が強ばった。
「その日ウチは周りの期待と嫉妬に押し潰されそうになって、初めて剣道の部活に顔を出さなかった、今日はどうしようかと宛もなく学校を歩いていた時に………彼とぶつかった」
「ただの前方不注意だった、力も入ってなかったから私は尻もちを着いてしまった…………その相手が当時1年生の彼だった」
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『あ、すんません、大丈夫っすか』
『………ご、ごめんなさい、前を見てなくて………』
『いやこっちも、寝惚けてました……………えっと、小太刀 鞘先輩っすよね?』
『………知ってるの?』
『まぁはい、意外と有名人なんで………剣道行ってんじゃないんすか?』
『………ッ』
『クラスでもみんなすげーすげーって言ってたんで、部活には欠かさず行ってたんすよね?』
『………………てよ』
『え?』
『やめてよっ!!!!』
『……えっ』
『もう押し付けないでよ!!勝手に期待して勝手に羨んで!!!ただ好きでやってただけなのに!!!誰も彼も!勝手なこと言って!!!』
『………………………』
『………ぁ、あ、そ、ご、ごめん、なさい、ウチ……………』
『……あ、いや、その、こっちもすんません、勝手にベラベラと………』
『えっと、俺でよけりゃ聞きますよ………?』
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「馴れ初めがそれだった、顔も名前も初めて知った人にウチは自分の内心を聞いてもらった」
「……彼にとってはなんて事ないつもりだったんでしょうけど、何も知らない人に意味の分からない罵声を貰ったあとに、あれだけ耳を傾けてくれるのは……当時のウチにとっては、それが一番だった」
「その日から彼とはばったり会うようになってたわ、お詫びの印としてここにも誘った、何回か会話もして………誰かに何かを打ち明ける事が、当時のウチとしては一番の救いになってたの」
「………………」
「………それから今年、剣道部に顔を出してはいたけど以前ほどの熱はなかった、もう消えたと言っていいわ……そんな時にウチはサッカー部と野球部の対決を観戦してた、彼がサッカーを好きだって事は聞かされてたし、ウチも少なからず興味があったから」
「………いいゲームだった、ウチの事を慕ってくれた七南さんの後押しもあってウチは剣道部と袂を分かれてサッカー部に入った」
「………………そして、貴女と黒景君の関係を見た」
下げてた視線を彼女に合わせる、彼女は私の事を強く見据えていた。
「幼馴染みということは知ってたわ、彼の口から何回か話題に上がってたから………でもウチは何故か、その度に心が締められるような感覚になってた」
「それが何なのかあの時は分からなかったけど、今なら分かる……………散々嫌だった嫉妬の念を、私は貴女に抱いてる」
「……………忍原さん、ここではっきり言わせて貰うわ」
「ウチは、貴女が嫌いよ」
忍原来夏
遂に小太刀 鞘と向き合うことを決意、彼女の独白に何を思うのだろうか。
小太刀 鞘
主人公にどしたん話聞こかされた過去あり、出会い頭相手にとって意味不な罵声を浴びせられたのにも関わらず自分を心配してくれた後輩に心を奪われる。
笹波雲明
キーマン2人の仲の悪さに頭痛を覚えるが、互いのことを知れば後は大丈夫だろうと確信を抱いてる。
伊勢谷 要
おや?何故かバラバラになってきたぞ?
主人公は何属性と思いますか?(既に決まってます)
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風属性
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林属性
-
火属性
-
山属性