忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
今回は初めて実況・解説を入れてみようと思います、さーて上手くできるか、そしてモチベ止まんねぇ。
それと今回のフォーメーションを画像として貼ります。
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ベンチ
陣内
友部
星
古手打
黒景(出場不可)
「………………つかれた…………………」
部室でベンチに座りながら、これまでにない疲労感を感じならがため息混じりに呟いた。
フットボールフロンティア予選3回戦の相手、東風異国館との試合は明日にまで迫り、今日までやれることとやらねばならない事の板挟みで……今までにないくらい僕は動き続けた。
今までの南雲原イレヴンに合併により追加された北陽メンバーのチーム加入により、衝突を避けて互いの理解を深め合う個人技選手権、そして忍原先輩の悪癖を何とかすべく、前々から考えてた小太刀先輩とのコンビプレーの為に二人の仲を進展させる作戦、更にフィジカル強者の多い敵チームに対するタクティクスの遂行する為の身体作りのトレーニングメニューの開発、その他諸々…………ほんっとーに、忙しかった………。
オマケに黒景先輩の背後を追うものまで居る始末………最初はまさか3人目……!?なんて戦いてたけど、どうにも違うらしい……男性だったし。
差し押さえて所持品を見てみると、サッカー部の練習の様子を撮影していたらしい、千乃会長は悪質な行為と見なし長期間の謹慎をそのものに行った。
………でもそんなのどうでも良くなるくらい、今回のキーマン2人が暴れ馬すぎた。
練習自体はしっかりやってくれてた、連携の精度はみるみる研ぎ澄まされてた、あれ程のレベルになれば僕の理想以上の活躍を望める。
それは自体はいい、チームの勝利に繋がるのだから。
ただ、それを仮に差し置くとしても…………。
『鞘先輩!?今の伝来宝刀かんっぜんに私ごとぶった斬るつもりでしたよね!?』
『貴女がウチのコースに居るのがいけないんでしょ、ていうか来夏さんの速さならすぐに退けた』
『ならもう少し待てば良いでしょ!悪意しか感じませんよ!?』
『遅れてシュートコース消えたら元も子も無いわ、次から気をつけてね』
『(もうアンタなんかにパス出したくないんだけど!………だったら、ぐるぐるシュートよりも上のシュート技作ってやる!)………っべーー!』
2人の仲が、絶望的に終わってた。
同じスタメン同士の仲じゃない、いつ取っ組み合いになってもおかしくなかった。
……………でも連携は本当に抜群なのだ、前々からポジションが違うだけで同じタイプの選手だと思ってたから………黒景先輩関連の事情が無ければ、いいコンビにはなってたのだろうか………はぁ。
……………ただ、この現象がマイナスを産んでいた訳ではない。
九死に一生と言うべきか、これを見た南雲原と元北陽のメンバーが……。
『………ねぇ、桜咲』
『……なんだ空宮』
『せめて俺達は、仲良くしよう?』
『……だな』
まさに反面教師の例、互いの戦術は理解し合っても深いところで繋がりきれずにいた彼らが、彼女達を見て我が身を省み、あんな風になっては行けないと警鐘を鳴らして更に理解を深めあった……懸念していた問題が自然と解消されて、1つのチームに纏まりつつあった。
そしてこれは試合の事情とはまた別なのだが、忍原先輩の黒景先輩に対する依存が目に見えて軽減されていた。
当初は無意識に彼を探していたが、今となっては自分のやるべきことに集中し、小太刀先輩への悪意で練習時は黒景先輩の事を忘れていた。
外でもどうやら関わってないらしい、彼の事を考える時間はありつつも耐えているとの事だ、これなら今後の部活でも控えてくれると信じよう。
………それ以外はもう知らない、もう誰かの恋愛事情に首を突っ込むのは懲り懲りだ。
それ以外ではチームの更なる体力アップと連携の確認、必殺技の強化と新しい必殺技の開発、そして………南雲原のゲームメイカー伊勢谷先輩のプレイスタイルのバージョンアップ。
やるべき事はしっかりやった、正直これ以上の形で試合に望むことはそうないだろう。
そして今回の結果次第で、ようやく…………。
「雲明」
僕が考えていると、誰かが声を掛けてきた。
座りながらゆっくりと顔をあげる、そこには首元のマフラーを掴みながら語りかける1人の同年代の………本来は、こんなところに居ない少年が立っていた。
「………ハル」
「こんな遅くまで東風異国館との試合準備お疲れ様、今回もバッチリみたいだね」
「……バッチリどころじゃないさ、大きなアクシデントさえ無ければ……絶対に勝てる、今の南雲原は」
「へぇ……君がそこまで言い切るとはね」
その少年の名は円堂ハル。
王者雷門に属する、サッカーモンスターと恐れられる現時点の日本の中学サッカープレイヤーの中で頂点に経つ者。
そんな奴が何故ここに居るのか、厳密に言えば彼は円堂ハル本人では無い。
幻覚………本人が言うには、サッカーそのもの……らしい。
サッカーから逃げ続けてた僕が、改めて今のサッカーに向き合った瞬間に現れた幻の存在。
これまでも僕の前に現れて、これまでの試合全ての対策を共にしてきた………今となっては、既に受け入れている存在だ。
「雲明、今の君なら乗りこなせるんじゃないか?もう1人のサッカーモンスター………黒景流を」
「………いや、僕一人じゃ無理さ………だからこそ待ったんだ、南雲原が更なる進化を遂げる日を、そして明日にそれが来る可能性がある」
「と、言うと?」
「明日の結果次第で……………ようやく完成する事が出来る、南雲原のサッカーモンスターに喰われないチームが」
最初はどう足掻いても、使いこなせる気がしなかった………正直今でも無理なんじゃないかと思ってる僕が居る。
それでも僕は望んだ、望んでしまった………あれだけの強い選手とどれだけ先に行けるのか、どんな進化が待っているのか………あの円堂ハルに、勝てるのか。
そう思ったら引けてなんか居られない、皆と一緒に強くなって………最後には黒景先輩を加えた南雲原で………てっぺんを取りたい。
「………サッカー勇者になるのに、凶悪なモンスターを使役するのも変な話しかもだけど………今の円堂ハルはそういう奴を望んでいるんだ」
「ライバル……ってこと?」
「簡単に言えばね、彼なら適任だと思うよ…………そして雲明」
「何?」
「今日、ここでお別れだ」
「……えっ?」
その言葉で思わず立ち上がる。
そして何処か寂しげなハルの瞳を見つめる、彼は微笑みながら話を続けた。
「君も分かってるだろ?俺は君だ………君が作り出したサッカーへの思い、もう一度サッカーと向き合うために俺は存在していたんだ」
「ハル………」
………そう、彼は本当の円堂ハルなんかじゃない、サッカーそのもの………それは即ち、僕の中にあったサッカーへの思いが幻となって形になった存在………それがいま目の前に居るハルの事だった。
「君はもう歩いて行ける………仲間と一緒に先へ進める、ここから君の本当のサッカーが始まるんだ」
「…………うん」
「仲間達と進め、君達のヴィクトリーロードを………そして倒せ、雷門のサッカーモンスターを!」
「……うん!」
「………さよなら、雲明」
そう言って微笑むと、ハルは光となって消えた………そして残った残光が、僕にゆっくりやってきて、ひとつになった。
「……ありがとう」
元から僕しか居なかったこの場所で、目を瞑り、感謝の言葉を残した。
◾︎◾︎◾︎◾︎
フットボールフロンティア、3回戦の日。
まさに試合日和と言った快晴の天気、俺達南雲原はサッカー部は博多にやってきた。
今回のスタジアムは福岡・博多ベイスタジアム、2回戦までやってたスタジアムよりも大きく整備されてるばしょ、観客席もでけぇし人も多い。
皆を見つめながらそんなことを考える、なんだか来夏の姿見るの久々な気がする。
今回は来夏と小太刀先輩のツートップフォーメーション、野郎共は基本敵の守りに撤する事になってる。
……………にしてもよ。
「でっかいなぁ」
ベンチから敵チームの選手達を眺めて、当たり障りのない感想が口から漏れる。
キャプテンの山之内以外はほぼ外国人の選手達とは聞いてたけど、体格差やべーなおい、九州最難関と言われる所以がよく分かる。
そんな相手のフィジカルコンタクトを避ける為に、スピードの高い2人を主軸に攻める戦法、本当に今回のキーパーソンだな。
にしても………強そうだな…………うーん。
「出しませんよ」
「何も言ってないよキャプテン」
「目は口ほどに物を言うです、何度言えば分かるんですか」
「分かってるよ、出れないのは承知の上っす……それに」
「それに?」
「みんな、強いからな」
「………わかってるなら、座って見守って下さい」
見てわかる、今までの南雲原より段違いのレベルアップを果たしている。
北陽とひとつになっただけじゃない、一人一人が強くなっている証拠だ。
よっぽど扱かれたんだなぁと実感する、まぁ俺は例のストーカーから遠ざける為に家に留められて、その間あのギャルゲーずっとやってたからな。
何とか全員攻略出来たけど、むずかったー………選択肢とフラグ間違えたら包丁で刺されるのは最早日常だし、自殺心中焼殺謀殺テクノブレイクと死因のデパートだったし。
好きなのにあんな事するかね?知らんけど。
それにあんま恋愛詳しくなった気しないし、それを笹波に伝えると……。
『最初から恋愛に詳しくなる事を期待してません、ていうかそれならもっと別の方法を用意してます』
『えぇ?じゃなんでやらしたんだよ』
『先輩にいざと言う時の選択肢の見本を与えるのと、もしかしなくとも訪れかねない貴方の未来を示唆したんですよ』
『…………いやいや無いでしょ流石に、ゲームだよこれ』
『刺されるのは、現実でもありますよ?』
『……かもだけど、もしかしてお前来夏がやりかねないとか言わないよな?』
『……………』
『…………あの、無言はやめて?心配そうな目を向けながら何も言わないのはやめて?嘘でしょ、ねぇ?』
『…………気をつけて下さいね、黒景先輩』
『ちょっと?え?』
「(無いよ、な?)」
確かに来夏はなんだか最近様子おかしいのは知ってるし、それを軽減させるために3回戦の間は外でも一切関わらなかったけど。
………噛み付いたりするのは、えっと………え?無いよな?来夏に限って刺してきたりなんてしないよな?
「………ようやく悩み始めましたね、先輩」
「………俺は来夏を信じます………」
「それは結構ですけど………ところで先輩、聞いていいですか?」
「……うん?」
「忍原先輩と会えない期間は、どうでした?」
「え?あー、まぁ慣れなかったな、ほぼ一緒の時多いし」
「………寂しかった、でいいんですか?」
「まぁうん」
「ぜんっぜん見えませんけどね」
「えぇ?」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「(遂に、3回戦だ)」
グラウンドの上で敵陣を見つめながら、改めて気合いを引き締める。
東風異国館………言われた通り体格やばいな、私と雲泥の差じゃん、あっちにいる女の子もなんだか心做しかデカいし。
………今日は私と鞘先輩のツートップを中心にして攻める戦略、私達は責任重大だ。
今日まで………イライラしなかった時を数える方が簡単な気がする。
視線だけ隣のポジションに居る鞘先輩の横顔を見る、相変わらず顔がいい……憎たらしいくらいに。
居るだけでほんっとーにウザイ、今すぐ敵チームに入って欲しい、金髪だし。
大嫌いな人とコンビネーション合わせなきゃいけないし、流には一切関われないし、その癖私のやりたい事と彼女とのサッカーは今までやってきた中で超しっくりくる、気持ち悪いくらいに、なんでよ………勝てるなら良いけどさ。
基本は鞘先輩が強化した伝来宝刀で敵キーパーの技を破る寸法だが、そうはいかない………強くなった春雷には及ばないかもだけど、この日の為に完成した私の新しいシュートを見せてやる………!!
「ヒューっ、見ろよお相手!キュートなお嬢さんがツートップらしいぜ?」
「ん?」
そんなことを考えていると、敵からの野次が聞こえてきた。
私達を見ているらしい………相手のフォワードとミッドフィールダー………確か警戒していた、カイ・吉崎だっけ。
「おぉ良いね!うっかり触ったら壊れちまいそうだ」
「日本の女はちっこいからね、ハニートラップとかにかかるなよあんたら?」
「そいつは願ったりかもだな!ハハハハッ!」
「………」イラッ
なんだアイツら、舐められてる………明らかに相手にならないって顔と態度だ。
ただでさえ今回は鞘先輩とやらなきゃ行けないってのに、これ以上のストレス増やすなよ脳筋共め………!
「舐められてるわよ、来夏さん」
「お嬢さんツートップって聞こえませんでした鞘先輩?纏めてバカにされたんですよ」
「………貴女と纏められるなんて怖気が走るわ」
「なら言わないで黙って下さいよ、そしてイラついてるなら………とりあえず、アイツら仲良くぶっ倒しましょうか?」
「仲良くは願い下げだけど、倒すのは同意ね」
「おい仲良し共、頼むから試合中に喧嘩はやめろよ?」
「「誰がっ!!?」」
「……仲良しじゃん」
私達を心配したのか、桜咲と空宮がやってきて心外な事を口にした。
こいつと仲良くなんてしないんだけど!?
私達が練習で啀み合ってる時、いつの間にかみんなから『仲良し』なんて皮肉のタッグ名をつけられてしまった。
何処が仲良くしてんのよ!こんな一々私に対してネチネチ陰口言う陰湿女と!!!
「その辺にしておけ仲良し共、そろそろ試合が始まる」
目線で抗議してると、伊勢谷君が近づいてきて私達を戒めてきた。
………まぁこれから始まるし、流石に試合中は私情なしでやるけどさ………仲良しだけはマジ勘弁して欲しいんだけど。
「キャプテンから前半の指示は覚えてるな?攻撃は基本お前達二人で、残りのメンバーは敵の攻撃に備える、後半敵の消耗と同時に更なるアタックを仕掛ける………良いな?」
「分かってるよ、私たち責任重大だもんね」
「さっき舐められまくったからね、目に物見せてやりましょう」
「えぇ………」
「俺も新しい自分を試したい、これで何処まで通用するか……」
「今日も頼むぜ、司令塔?」
「無論だ」
そう言って全員それぞれのポジションへ戻っていく。
………チラリと、流のいるベンチへ目を向ける。
敵陣をじっと見つめていた、やっぱり何時もみたいに眠たそうだ。
………私と居なかった時何してたんだろ、練習の時も全然姿見えなかったし。
何時もみたいに1人サッカーでもしてたのかな、ボールさえあれば君はどこでもするからね。
……………雲明君から接近禁止を言い渡された時は、もう終わったと思った。
あの時の私にはそんな事何よりも惨くて考えられなくて、それでもまた流を傷つけるのなら耐えなきゃと感じてたけど。
その結果、小太刀先輩と無理矢理接近させられて…………彼女の事を知る事が私の依存を軽減させる方法とか、敵じゃなく仲間だと思えとか、そんな事言われたっけ?
「(……冗談じゃない、敵に決まってるだろ)」
仲良く?仲間?ふざけるな、そんなのこっちだって願い下げだ。
何も知らないくせに私を糾弾して、彼を横から取ろうとする憎い奴………どれだけプレーの相性が良くても、同じ人を好きになって狂ってる以上、未来永劫分かり合うことなんてない。
私は、彼女に嫌われて当然だから。
「(………あの日、直接言われて………自分の歪みにようやく直視できた)」
恋敵に言われて、ようやくだ。
そんな自分が情けなくて、気持ち悪くて、あの人の前で泣いた。
羨ましかった、私のような執着じゃなくて……ただただ普通の恋をもつ彼女が。
鞘先輩からすれば私は本当に気持ち悪くて、彼に傷をつけた私を一生許すことはないだろう………だから嫌われるのはいい、別にいい。
そのおかげだろうか、自分を流に対する依存が少しだけ和らいだような、自分で咎められるような気がしてるんだ。
でも…………。
「(それを、恋敵である貴女に自覚させられたことがムカつく)」
横から取ろうとする事にムカつく、清廉潔白みたいに振舞ってその実嫉妬深いのがムカつく。
…………それ以上に、流は極論他人なのに……自分の事の様に怒れるのが、ムカつく。
貴女とやるサッカーが、一番私を強くしそうで………楽しんでしまうのがムカつく。
貴女のせいで、自分を抑えられそうでムカつく。
…………でもそんな自分の内心を話してなんかやらない、結局………貴女は私の敵なんだから。
◾︎◾︎◾︎◾︎
『さぁ間もなく開始となります3回戦!数々の難所を突破してきた南雲原中と、その圧倒的なフィジカルで軽々と薙ぎ倒し進む東風異国館!この試合どう見ますか、角馬さん?』
『はいそうですね、東風異国館は先程も申された通りやはり大きなフィジカルというのはスポーツにおいて強力な武器です、それに個々の個人技もレベルが高いですからね、やはり復活したばかりの南雲原中は苦戦を強いられると思いますが彼らも──────』
実況と解説の会話を聴きながら、試合開始の時をウチは待つ。
やれることはやった、勝つ為の特訓も、彼女とのコンビネーションも鍛えてきた。
……………これが一番勝てる方法だとは思う、今日までの特訓でそれを痛感した。
今のウチを強くさせるのは彼女だ、不本意ながら…………。
「(…………あぁ、やっぱりイライラする)」
この戦いが終われば、その時点で彼女は彼に飛びつくのだろう。
何をするのだろうか、慰めてとか褒めてとか、何時もの反動でベタベタでもするのだろうか。
あぁ気持ち悪い、反吐が出る、そうしたらウチが感情を押し殺してまで共に練習した意味がほぼ皆無だろう。
嫌いだ、やっぱりどう足掻いても大嫌いだ。
そんな事、ウチに言う資格なんて無いのに。
「(…………そんな事が、あったとは)」
試合当日の数日前、ウチはどうにも気になっていた。
そもそも彼女は何故、彼にあぁも依存しているのか、理由がある筈だと。
それをキャプテンに聞いてしまった、彼は悩んだ末………誰にも口外しない事を条件に話してくれた。
彼女の家は忍びの末裔、その家で彼女は常に落ちこぼれと、忍びとしては最低とか、幼い頃から言われ続け傷ついてたらしい。
そんな時に彼と出会い、ただ話を聞いて寄り添ってくれて、その傷は癒えていたと。
そしてダンスで日本一を取ったにも関わらずそれでも認めて貰えなかった所を彼がまた無意識に慰めて、そこから恋をしたと言う。
…………経緯は兎も角、ウチと惚れた理由がそっくりだ。
それがキャプテンの推察だった、恐らくほぼ正解だろう。
そういう経緯も相まって、彼女の世界は彼中心になりつつあったのだろう………そして、気付いた。
彼女の歪みに拍車を掛けたのが、ウチの存在だ。
ウチという恋敵が、奪われるかもと彼女にそう思わせた、そうして彼女を間接的に歪めさせたのだろう。
…………知ったことでは無い、と言い切れたら良かったのだが。
ウチはそこまで狂えなかった。
彼女の言う通り、ウチは何も知らずに己のエゴのまま暴言を吐いた。
…………そして、あの傷の件も結局許せそうになかったから。
冷静になった頭で相反する様な気持ちが飛び交う………でも好きになれないのは事実だ。
ならこれでいい、このままでいい。
彼女がウチの事を嫌って、自分の歪みを抑えられるなら……彼がこれ以上傷つかずにすむなら、なんだかんだ言って自分も諦める気は無いんだから。
「(…………人のこと、言えないわね)」
結局自分本位の考えで動いてる………そんなウチも彼女に負けず劣らず、歪んでるのかもしれない。
「(イライラする………本当に)」
彼女にも、自分にも。
面倒なこの気持ちをどう整理つければいいのか分からない。
でも今確かなことは、目の前の相手を倒す事………今は何もかも忘れて、勝利を掴み取らなければ。
………ふと、隣の来夏さんを見る………偶然にも、視線があってしまった。
「………しくじらないで下さいね」
「………そっちこそ」
………不思議な話だ、こんなにも分かり合えないのに。
貴女となら、負ける気がしないのは。
『さぁフットボールフロンティア九州予選準決勝!南雲原ボールで、キックオフです!!』
ピーーーッ!!
試合開始のホイッスルが鳴り響く。
観客席からも大きな声援が轟く。
ウチから来夏さんへボールを渡す。
同時に敵陣はこちらに駆け上がる………巨躯に見合わず素早い、このままじゃ取られかねない……なら貴女がやる事は。
「お願い、司令塔さん!」
敵が来ると同時に、背後へバックパスを出す。
そしてボールが彼女の足から離れた瞬間、ウチ達はすかさず……前へと駆け出した。
「なに!?」
「ボールを後ろに置いて……!?」
敵が戸惑う間にどんどん前へ出る、ミッドフィルダー陣までもうすぐ………そしてもうすぐ来る………!
「そこか、ベストアンサー」
伊勢谷君のロングパスが、放たれる!
目の前の着地点にそれが来ると信じ、ひた走る。
ウチと来夏さん、同時にそのパスの地点へ同時に向かう。
「な、おい、これ……(どっちだよ、取るのは……!?)」
ほぼ同タイミングで到着する事を敵は悟り、どちらを防ぐべきか困惑している。
ここで取るのは……ウチ!!
「ふっ!」
「よしっ!」
「な、何してる!?止めろ!!」
敵のディフェンス陣がこちらを止めに来る、やはりでかいのに速い、でもウチと来夏さんはそれを避け続けた。
『な、なんという電光石火!忍原選手と小太刀選手が俊敏な動きで敵陣に切り込み!阿吽の呼吸でパスを回しています!!』
『見事なコンビプレーですね……!以心伝心してなければ出来ない芸当です!』
「「(誰がっ!!)」」
心の中で解説に異議申し立てる間にも、ゴール前……敵ディフェンダーは2人。
ボールはウチが保持しているが、ここでスパークエッジ……いやダメだ、発動させる前に取られる距離だ。
ここは後方の来夏さんにバックパスし、それを受け取れたことを確認するとすかさず敵ディフェンスが居ない方向へ移動し………!
「もう、出しませんよ」
「え?」
すると来夏さんは受け取ったボールを中に浮かせて左足で強烈なスピンを掛け、点火するが如くボールに獄炎が纏う。
「……くっ!?」
今ウチの目の前には巨大なディフェンダー居るから、恐らく敵キーパーからちょうど隠れてる……!ということはこのまま!?
そう思う前に横へ移動する、そして………その炎を纏ったボールが来夏さんから放たれる!!
「ヘル!ファイアッ!!」
ウチはそのシュート軌道から離れ、敵ディフェンダーはまさか撃つとは思わず呆気にとられて、そのままそのシュートを諸に受けてしまった。
「ぐぁぁっ!!?」
「なっ……アウター……!ぁぁあっ!!」
キーパーもそれに反応出来ず、技を発動出来ずそのままシュートをくらい……ゴールネットをボールが揺らした。
ピーーーッ!!
『ゴーーール!!なんということでしょうか!開始一分にも関わらず、東風異国館2人の連携に前に為す術なくゴールを許してしまった!南雲原中先制点だ!!』
『こ、これはすごい!予想外の展開です!』
「………あんなの、使えるようになったのね」
「お陰様で、ね」
………あーもう。
やっぱ……嫌いだ。
忍原来夏/小太刀 鞘
嫌いなのは本心でも来夏はこの調子だと直したかった自分の依存がどうにかマシになりそうだし、小太刀先輩も来夏の歪みの要因となってた事と何も知らずに糾弾してた事を後悔してる。
既に大嫌いと啖呵を切ってしまい、互いに後に引けなくなる。
この2人は似た者同士で同族嫌悪でも……やはりコンビプレーは随一なのだ。
ヘルファイアは怒りで覚えました。
伊勢谷 要
反射でベストアンサー、だいぶ魔改造されてます。
次回で終わらせます!必ず!!
どの話が見てみたいですか?(幾つかはやる予定)
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帝国のかいぶつ
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普通に来夏とイチャイチャ
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ヤンデレEND(夢オチ)
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雷門IFルート