忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今度こそフットボールフロンティア予選編終了になります。
長かったァ………いや、長引かせたのは自分ですが。


それでもやっぱりにて

『さぁ前半も残り時間僅か!しかしこの展開を予想した人は少なかったのでは無いでしょうか!?』

 

『そうですね、個人技とフィジカルに勝る東風異国館に南雲原中の選手達は、互いの協力でその攻撃を防いでます……南雲原はこのまま無失点で逃げ切れるのでしょうか………!』

 

「(くそっ……なんでだ、何故こうなってる!?)」

 

東風異国館のキャプテン、山之内東洋は焦りを隠せずにいた。

相手は最近出来たばかりにも関わらず、ここまで勝ち進んできた南雲原中という無名の敵。

準決勝まで来たからにはそれなりの実力だと想像はしてたが、結局は今回も外国人留学生達の圧倒的な個人技によって勝ち進むと、そう思っていた。

 

実際これまでの敵もそれで難なく倒した、敵もそれぞれの力は付けてあるものの個人間で見ればこちらの足元にも及ばない。

どんな戦術が来ようと、結局こちらはフィジカルでそれを薙ぎ払う………懸念してたのは相手の怪我くらいなものだった………。

 

しかし、目の前の現実はどうか。

キックオフから速攻で攻め込まれて、その結果先制点を許してしまった。

 

そこから切り替えて、攻めるまでは良かったが………俺達の攻撃はどれもこれも得点まで繋がらなかった。

まずその理由は、フォワードとして上がっている女子二人を除いて殆どの敵選手達が防御に回っているからだ。

 

こちらのパターンも頭に入っているのかもしれない、あの中で比較的体格のある桜咲、柳生、品乃がプレスに入り、横から他の選手がボールを弾くか奪うか、その繰り返し。

 

そこからあの二人に繋げられたら、外から見たら試合中に言い合いをするくらいに仲の悪そうな感じだが、プレー中はそれを感じさせない阿吽の呼吸と言えるコンビプレーで瞬く間に敵陣を抜き去ってゆく。

 

攻められてシュートはされているが、幸い必殺技を放つ隙なく防いではいるからまだ追加点はない………だとしても、東風異国館側もせめて一点を取らなければ意味が無い。

 

「……よし、カイ!せめて1点くらい取れ!!」

 

そして来たようやくのチャンス、東洋に渡ったボールをすかさず前線に上がるカイにパスする。

ゴールまでもうすぐ、アイツのチートブラスターの威力なら現時点の相手キーパー技を難なく突破出来るはず、撃たせたらこっちのものだと確信を持っていた。

 

「ようやくのチャンス、行くぜ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬるいッ!」

 

チートブラスターを撃つ直前………ボールを浮かす前に、ある選手がそれをカイの視覚外から奪い取る。

東洋もカイも、完全に意識外だった為驚きを隠せずにいた。

 

「な、てめぇっ!?」

 

「どれだけの威力があろうが、撃てないシュートに価値はない!」

 

「(くそっ、またお前か……9番!!)」

 

そして得点が入らない2つ目の要因………伊勢谷 要の存在が大きかった。

あの中でも見るからに平均的な選手に見えたが、厄介なのはその眼だとようやく気づく。

 

視野の広さと、まるで心を見透かしているかのような観察眼。

東風異国館は確かに個々の選手の力は中学離れしているのは違いない、しかし言い換えれば己の力を過信し、単純なパワープレイをしているに過ぎない。

 

そこをアイツは読み取り、自分で奪ったり仲間に指示したりしてとにかく最適解を潰している………だが、伊勢谷が最もイカれてるのは……。

 

「(なんなんだよさっきからアイツ!?常に頭働かせてるのか!?判断が一々早すぎる!!)」

 

そう、その思考してから実行する頭の回転の速さ。

どれだけプレーの最適解を導いても、彼が先回りして潰してくる。

 

東洋が見た感じ体力もプレーも並程度なのに、何もさせて貰えてなかった。

 

『おおっと伊勢谷選手!またもやナイスカット!!前半で何度目でしょうか!?』

 

『視野の広さはこれまでの試合でも見せてもらってましたが、今回は更にキレッキレですね!』

 

「速攻ッ!」

 

奪ってすぐ彼は遠くへパスを出した、もしかしなくてもまたあの女子二人に渡るのか、東風異国館もそう思い彼女ら2人を警戒していた。

 

…………しかし、パスの地点はその手前………渡ったのは。

 

「残念!こちらさ!」

 

背番号5の妖士乃、意表をつかれてしまった。

手薄な所へボールが渡り、東風異国館の選手はフォワード2人を警戒しすぎていた。

 

………そして、一瞬だけ持っていかれた意識の外、そこが決定機となってしまった。

 

「……ふっ!」

 

「っ!!」

 

「なっ、バカお前ら!!?」

 

2人はその隙を見逃さず、持ち前のスピードを活かして巨躯の間を走り抜けて行った。

妖士乃もドリブルで駆け上がっており、既に2人へのパス圏内だ。

 

「追加点!決めろっ!!」

 

ゴール前へとパスが出され、受け取るのは10番の忍原……はそれを飛び越してボールを通り過ぎさせて……渡ったのは、34番の小太刀。

 

「そ、そっちかよ!?」

 

「クソッ!!止めろマルティオ!!」

 

先制点を決めた忍原を警戒しすぎてその片割れにまで意識が向かれてなった、既にキーパーとは一対一……マルティオ・レオーネのアウターワールドは簡単に突破出来ないと信頼はしていたが、既に彼らには一抹の不安が胸に渦巻いていた。

 

「─────参る………〈真〉」

 

小太刀 鞘は構える。

………そこには、凛としていながら威風堂々とした立住まい、まるで侍のような威圧があった。

 

「伝、来、宝、刀ッ!!!」

 

勢いよくボールへ振り抜き、黄金色の刃がゴールを襲う。

 

「止める……アウターワールドッ!!」

 

マルティオ・レオーネの周りにサイバースペースが展開され、そこら放たれるグリッドが必殺シュートを覆い威力を殺そうと抵抗する。

 

しかし、彼らは見誤っていた。

その刃は既に………如何なる技も切り裂く力を宿していたことを。

 

「くっ………うぅっ!?とまら、な、……うわぁぁっ!!」

 

手加減はしなかった、これ以上の失点を許すわけにはいかなった。

その上で、小太刀 鞘の技を……キーパーは止めれなかった。

 

 

ピーーーッ!!

 

 

『南雲原中!2点目ゴーーールッ!!小太刀選手の伝来宝刀炸裂!見事な必殺シュートに観客席の声がこちらにまで届います!!』

 

『2回戦の時より更に切れ味を増してますね、あの技の元祖錦選手に同等となるのも夢では無い………!』

 

 

ピッ、ピッーーー!!

 

 

『そして同時に前半終了!当初の予想は覆されて2-0で南雲原中リード!東風異国館側は苦しい前半戦となってしまいました!!』

 

『彼らにとっては初めての展開となるでしょう、後半はどう動くか注目ですね!』

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………まじ、かよ……」

 

彼らに慢心があったのは否定出来ない、しかしそれを差し置いてもこの結果は予想出来なかった。

この時の東風異国館は初めて……相手が自分より巨大に見えていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ナイスゴール!流石仲良し!」

 

「やるじゃねぇか仲良し共!」

 

「息ぴったりじゃねぇか仲良し!」

 

「見事だね仲良し」

 

「ロックだったぜ仲良しコンビ!」

 

「「……ぅ、ぐ、ぅっ………!!」」

 

皮肉と純粋な賞賛が来夏と小太刀先輩を襲う、2人は何も言わず怒りと恥ずかしさで顔を赤くして震えていた。

いやぁスゲーなホント、今日初めてあの二人の連携見たけどめちゃくちゃ強いじゃん、俺も前々から合うんだろーなとは思ってたけどここまでとはな……流石笹波。

 

「伊勢谷君も凄かったぜ、マジ冴えてた!」

 

「あぁ、あの動きは北陽のサッカーも混じえているのだろう?見てすぐわかったよ」

 

「ありがとうございます、お陰で俺も強くなれましたから」

 

伊勢谷は空宮と品乃先輩に褒められてた、アイツもなんか化けてるよな………ていうかあの動き、なんか見覚えのあると思ったら北陽のパーフェクトサッカーを取り入れてたのか、確かに個人技選手権でも直ぐに北陽の戦術に適応してたな、ゲームメイカーとして指示もしっかりしてたし……て言うかなんか試合中口悪くなってね?

 

「つーか2点先取で無失点、超いいスタートじゃん」

 

「はい、流石に相手選手1人1人の差はありますけど、それぞれ力を合わせた結果が前半です、このチームはまだまだ強くなれますよ」

 

「そりゃいい、この調子なら俺ももしかして入れんの?」

 

「それは、今日の結果次第ですね」

 

「……え、まじ?」

 

「直ぐにとは行きませんけどね」

 

そう言うと笹波はベンチから立ち上がり、手を数回叩いて注目を集めた。

 

「皆聞いて、前半お疲れ様、僕の想定していた以上に用意していた戦術が刺さってる………小太刀先輩と忍原先輩のコンビプレーもそうだけど、皆が伊勢谷先輩の反射的な指示に追いつけてるのも要因だ、体力は大丈夫?」

 

「なんとかな、前半の指示通り俺らはディフェンスに徹底してたからな」

 

「でも伊勢谷先輩マジでいきなり過ぎるから、心の準備を常にしておかなきゃいけないよな〜」

 

「む、すまない……皆なら追いつけると思っての指示だったんだ」

 

「そこら辺は各々調整してください、そして後半からはフォワード二人だけではなくミッドフィルダー陣も攻撃に加わってください、敵も恐らく僕らの想定している以上に消耗しているハズ、この調子なら後半15分前にピークが来ると思います」

 

「とにかく攻めあるのみ!この調子を後半も維持してください」

 

「「「「「おうっ!」」」」」

 

笹波の声に気合いの入った返事か帰ってくる。

…………東風異国館の奴らは確かに中学の選手としては中々で個人技も大したもんだけど、その力を余り活かしきれてない感じがする。

なんか勿体ねぇな、自分の力をより深く理解していれば尚強い相手になってたのに………。

 

そんな惜しい気持ちを感じながら、俺はふと来夏と小太刀先輩の後ろ姿を眺める。

会話はないが、隣同士で座り休憩している………言い合うくらい仲が悪いらしい、あの2人がな…………うーん。

 

「(………本心なのか、それ)」

 

俺は二人をそれなりに知ってる、好き嫌いの境界はあれどそこまで誰かを拒絶したりするのは………なんか違和感だ。

まぁ、俺が原因っぽいけど…………何でだっけか。

 

心当たりが全くねぇ………あの首の傷、小太刀先輩はかなり嫌悪を示してた、それも要因だと思うけど。

まぁ………これからも一緒にプレーするのに、このままなのは流石に色々と不都合も多いハズ、どうにかしねーとなぁ………でもどーしよ。

 

「……何悩んでるんですか、先輩?」

 

俺が思い耽てると笹波が再び俺の隣に座る、こういう時はこいつに聞くのが1番だな。

 

「いや、あの仲良し二人なんだけどさ………プレーの面は置いておいて、お前はどう見る?」

 

「どうも何も、仲悪いなとしか言えません………けど」

 

「けど?」

 

「………僕はどうにも、お互い素直になれてない感じを受けます」

 

「……お前もか」

 

笹波が言うなら間違いない、まだなにかを抱えている……恐らく2人とも。

ならその抱えてる何かを打ち明ければまた変わるのだろうか、いやしかしどうやって言わせる?それもあの二人が面と向かって………今の2人を見たら、それをやらせんのは至難の業っぽいけど。

 

「俺あの二人はさ、誰かを嫌い続けるのは結構内心キツイタイプだと思ってんだよな、それにお前が言ってた通り素直になれてない感じするし、正面から腹を割って話せばまた変わるかな?」

 

「無理だと思いますよ、言ってることに関しては概ね同意ですけど……今の2人はそんな事出来ないかと、寧ろ更に悪化させる可能性が高い」

 

「そっかー………何か良い手ないかな、自分の気持ちを相手にすっと話させる方法」

 

「そんなものがあれば苦労はしませんよ、ていうか結論……貴方の撒いた種ですよ?」

 

「わかってますやい、だから悩んでんの」

 

2人を眺めながら考える、何か良い方法を。

うーん……素直に話させる………俺の前なら多分話してくれるんだよ来夏……小太刀先輩も多分俺と2人ならいける………けど俺を経由して伝えても多分薄い………直接聞かなきゃだろうな………聞く状況を作るとか……………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

「どうしました、先輩?」

 

「……お前が渡したギャルゲから選択肢出てきたわ」

 

「……不安なので、一応聞かせてください」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『……さぁ後半戦も残り15分を切りました!東風異国館は未だにゴールがありません!先程までフォワード陣を中心とした攻撃体制だった南雲原中、ミッドフィルダー陣を攻撃に加えて猛攻を仕掛けてます!』

 

『東風異国館はこれまでの傾向からして、ここから得点力が下がってますからね、ここでの失点は更に苦しくなるでしょう』

 

「…………ふぅ」

 

眼鏡を掛け直し、状況把握を開始する。

先程の実況・解説の言う通りここから東風異国館は得点力が下がる、加えて無得点という状況も相まって精神的、肉体的に消耗が激しいはずだ。

 

後半開始と同時に敵は攻めてきた、それを見越してフォワード含めた全員でそれを迎え撃った。

今日という日の為に作り上げた反射の思考を活かし、敵の最適解を見出し自分か仲間でそれを潰し続けて時間は過ぎた。

 

そして今日と言う日まで全力で戦ったことがないと見た、自分達の想定以上の消耗に戸惑う姿が見える。

そして………今この状況で、更なる追加点を取れば……勝利は目の前!

 

今は忍原と小太刀先輩だけではなく全体的に攻撃を仕掛けてある、今なら崩せる!

 

「行っちゃって下さい仲良し先輩達!」

 

「だからぁっ!!」

 

「やめなさいって!!」

 

木曽路のパスが忍原へ繋がり、文句を垂れながら一気に敵陣へ駆け上がる。

俺達ミッドフィルダー陣もその攻撃に加わる、ここでの得点は勝ちへ繋がる、何としても取る!!

 

「止めろ!!絶対に撃たせるな!!」

 

敵陣のキャプテンが鬼気迫る指示を出す、相手も消耗の状態ながらも奮闘している。

………こちらは今日までキャプテンの地獄のような体力作りをされ続けてたんだ、既に限界値は更新してあるのさ!

 

2人はまたパスを回して進んでいるが、流石にパターンが読まれているな、敵が対応している………なら最適解は、これか!

 

「小太刀先輩!こちらへ!!」

 

走るスピードを早めて先輩の後ろへ近づく、俺の声に気づいた小太刀先輩は直ぐさまバックパスを俺に繰り出した。

 

「お前にボールは渡さねぇぞ、メガネ!!」

 

すると後ろからカイ・吉崎が迫ってくる、予想の範囲内だ脳筋!!

 

「安心しろ、触るのは一瞬だ」

 

「なっ……!?」

 

後方のカイを見ながらボールがこちらに届くと同時に、横へすぐ弾く。

そこには既に、柳生と空宮が並行して走ってきており、ボールは柳生へと渡った。

 

「ナイスパスだぜ!!」

 

「っしゃドフリー!決めるぞ柳生君!!」

 

「おうっ!」

 

決めろ新技、これで勝利だ!

 

空宮が先にゴールへ駆け上がり、柳生はそのボールに力を込めたキラーパスを放つ、雷を纏ったボールが先陣を切ってた空宮に追いつき、そのボールを勢いよく蹴り飛ばす!

 

「「サンダービーストッ!!」」

 

荒野を掛ける野獣の如きシュートが敵ゴールへ放たれる、かつてのイナズマジャパンが使用した必殺技、それをかつては敵同士だったもの達が協力して習得したのだ。

 

「アウターワールドッ!………ぐ、ぐぅ、がぁっ!!」

 

アウターワールドを再び使用したが、想定以上のパワーにより、その青い閃光は敵ゴールを貫いた。

 

 

ピーーーッ!!

 

 

『南雲原中3点目だァァ!東風異国館魂の攻防虚しく、更なる失点を許してしまった!!』

 

『南雲原は見事な連携で再びゴールを奪いましたね、ここでの失点はかなり応えますよ……!』

 

 

「っしゃぁっ!!」

 

「やりぃっ!!」

 

柳生は背中に抱きついてきた空宮を背負い喜びを分かち合い、その姿に仲間達は集まった。

最早南雲原も北陽も無い、1つのチームとしての姿がそこにあった。

 

これで3得点、残り時間も既に10分を切ろうといている。

そして敵の消耗は既に限界値へ近い、つまりは………勝ちは決まった。

 

項垂れならがら俺を睨むカイ・吉崎の方へ向き直る。

今回俺はこいつをより警戒していたから、他の敵選手よりもしつこくボールを横から掻っ攫っていったからこんな目を向けられるのは当然ではある。

 

「くっそ……!どんな目をしてやがる、お前……!!」

 

「見ての通り、この眼だ」

 

適当な返しをして背を向ける、そう………俺はこの眼しか武器が無い。

 

だからこそ視野を更に広げ、敵の内心を見破る観察眼を鍛え、そこから導き出される結論を反射的に思考する能力を手に入れた。

俺は東風異国館の奴らと比べると、フィジカルなど並も並………この眼が無ければ選手としては平凡過ぎる。

 

次の予選決勝、そして勝てば本戦………そこでも俺にやれる事はせいぜい思考し続ける事くらいだ。

 

「(ならばとことん研ぎ澄ますだけだ、俺は黒景の様なかいぶつになどなれないが………皆を使って勝つ事なら出来る)」

 

意を決するように眼鏡に触れる、チームを使って勝つ……それがゲームメイカーだ、俺はまだ進化せねばならない………チームの為にも。

能力を集約し研ぎ澄ませ、この眼でフィールドを支配し続けろ。

 

「さぁ南雲原!このまま終わらせるぞ!最後まで気を緩めるなよ!!」

 

「「「「「おぉっ!!」」」」」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「春雷、改ッ!!!」

 

 

ピーーーッ!!

 

 

 

『4点目のゴール炸裂ゥゥッ!南雲原中、試合終了間際でダメ押しの追加点を決めたぁぁ!!』

 

 

 

ピッ、ピッ、ピーーー!!

 

 

 

『そして試合終了のホイッスル!今試合苦戦必死と思われていた南雲原中!その予想は大きくひっくり返され、試合結果は4-0の圧勝!東風異国館の選手達は呆然と立ち尽くしています!』

 

『いきなり化けましたね南雲原中………!これは一気に九州予選の台風の目になってますよ、更に目が離せなくなりました!』

 

 

 

 

 

 

「すっげぇ、圧勝じゃんか」

 

「はい、期待以上の結果です」

 

俺と笹波以外のベンチメンバーがグラウンドの仲間に駆け寄る姿を眺めながら、今回の結果に感嘆の声を漏らす。

九州予選の本命と言われた東風異国館に無失点で4点差………こりゃすごい、皆ほんとーに強い。

 

て言うか来夏と小太刀先輩の2人がすげー、後半は流石に息切れしてたけど周りのアシストを念頭に入れたセットプレーがチームの強さを加速させてた、て言うか………。

 

「なぁ笹波」

 

「はい」

 

「なんか、すげー攻撃的なチームになってんな、南雲原?」

 

「えぇ、全員………とまでは行きませんけど、チーム一丸となって攻めて守る戦術、あの二人を今回フォワードとして起用したのも、この理想が現実になるか否かを見極めたかったんです」

 

「なるほど………んで、もしかして俺入れんの?」

 

「はい、これでようやく土台が出来ました」

 

「おぉっ」

 

「でもまだ土台です、ここから予選決勝を勝利して………更にチームのレベルアップをする、それでようやくです」

 

「そっか、楽しみだ………ようやく俺も………」

 

握り拳を作り力が入る、心の内からメラメラと燃える感情をひしひしと感じる。

俺も早く試合に出たい、あのチームで暴れたい………サッカーが、したい。

 

「……………ところで笹波、もう来夏には話し掛けていいのか?」

 

「……そうですね、良いですよ」

 

「うし」

 

お許しを得たという事で立上り、ベンチに歩み寄ってくる2人に近づく。

 

どちらも結構疲労しているな、まぁ試合中あれだけ走り回ったらそうもなるか。

 

「お疲れさん、お二人とも」

 

「………流?」

 

「………黒景君」

 

「2人とも大活躍じゃないのさ、凄かった」

 

素直な気持ちを二人に伝える、小太刀先輩とは練習の期間も何回か話してたけど、来夏はかなり久々な気がする。

まぁそれほど期間があった訳でもないけど、何せ四六時中一緒だったから俺も少し長く感じていた。

 

来夏は何も言わず、俺の顔をじっと見つめていた、小太刀先輩はそんな来夏を隣で静かに見ていた。

 

「………うんっ」

 

心做しか目が潤んでるが、はにかんで笑みを浮かべてくれた。

これは………笹波の言ってた事が成功したのか?確かに以前の来夏を感じるけど………まぁ俺は別に、どの来夏でも拒絶したりしないけど………いや、また極端に甘やかすと笹波に大目玉喰らうか。

 

「小太刀先輩も伝来宝刀また進化させてますね、流石っす」

 

「………キミと一緒に習得した必殺技だからね」

 

「………………」

 

「ていうか………2人とも、やっぱ仲良しじゃないっすか?」

 

「………仲良く」

 

「………ない」

 

覇気のない拒絶をすると、2人は黙ってベンチに戻っていく。

俺はその後ろ姿を見て、鼻で溜息をつき………ベンチの笹波を見る。

 

視線が合うと彼は黙って頷く、よし………やりますか。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

3回戦、まさかの圧勝だった。

綿密に戦術を立てて、その為の特訓と体力作り、そして鞘先輩とのコンビネーション………全てを万全にして挑んだ結果がこれだった。

 

正直驚いていた、ここまでやれるなんて夢にも思わなかった。

私と鞘先輩だけじゃない、伊勢谷君のいつにも増して的確で素早い指示、それを実行するチームの皆、フィジカルで大きく勝る東風異国館の選手達を抑え、無失点という成果に収めた。

 

 

……………そして私は、また強くなれた気がする。

ボールに回転を掛けるのが得意な私、あのヘルファイアは海外の選手の技を見よう見まねで特訓し、なんとか会得出来た必殺技だ。

 

そして何より、鞘先輩の存在が大きい。

一々言葉にしなくてもプレーが通じる、どうすればいいか………どうやったら勝てるか、それが思考レベルでリンクしていた。

 

嫌いなのに、それなのに……………あの人とのサッカーが、とても楽しく感じるのを否定できない。

強くなれるのはいい、良いんだけど………よりによって流ではなく、鞘先輩と………か。

 

………恋敵で、泥棒猫で、陰湿女。

 

好きになんて、なれる訳ない、嫌いだ。

あの人だって私を嫌ってる、嫌ってる者同士だ。

 

……………私は、嫌われて当然のことをしてるけどさ。

別にこのままでいい、良い………。

 

「………流、何の用だろ」

 

試合終了して制服に着替えていると、スマホのトークアプリに流のメッセージが送られていた。

 

 

指定の時刻に、サッカー部部室に来て欲しいと。

 

 

断る理由なんて無かったし、久々に流と話したかったから。

そうこうしてると部室に辿り着き、扉を開けた。

 

「……お、来夏」

 

彼は既に席に座ってた………試合の後久々に話しかけて貰えて少し泣きかけたけど、流石に今は泣くとかできないし………でもやば、やっと話せて嬉しすぎ………。

 

「うん、待たせてごめん……話って何?」

 

「ま、とりあえず座れよ」

 

「うん」

 

言われた通り私は座った………彼の隣に。

肩が触れ合う距離感だけど、良いよね別に………あー、落ち着く。

 

「………うん、そんな気はしてた」

 

「やっぱり?」

 

「……………なんか、こうすんのも久々な気がするな」

 

「うん………ずっと寂しかった、流は?」

 

「まぁ俺も」

 

「………絶対嘘だ、やっぱ私は要らないんだ」

 

「なんでそーなる?治ってなくね?」

 

「そんな事ない、流が鞘先輩の事構ってもざわつか無かったから」

 

「えぇ…………まぁとにかく色々お疲れさん」

 

「…………うん」

 

肩に頭を載せて、より近くに触れ合う為に身体を寄せる。

………頑張ったんだから、これくらい良いよね。

 

「………1つ、聞いていいか?」

 

「うん?」

 

「お前、小太刀先輩の事どう思ってる?」

 

「………もしかして、それを聞く為に?」

 

「おう」

 

「………大嫌いな人だけど」

 

「そうじゃなくて、本心はどうなのかって話」

 

「本心だし」

 

「嘘だな」

 

流はそれを即座に否定する、私は何も言わずに黙った。

 

「試合中お前達のこと見てたけどさ、息ぴったりだったし強かったし………何より、笑ってこそ無かったけどどっちも楽しげだったぜ」

 

「………………」

 

「多分嫌いなのは嘘じゃないけど、それだけじゃないだろ?話せよ、俺は誰にも言わないからさ」

 

「………お見通し、か」

 

「お前とどれだけ居ると思ってんだ、それにこうしてお前の話聞くのも昔からだしさ……どうなんだ?」

 

流が聞き出すけど、私はまた何も言わずに静かにする。

流の体温を隣で感じながら、わたしは考えた。

 

 

……………嫌いな人、嫌いな人。

どう足掻いても好きになれる要素なんてない、流の隣をかすめ取ろうとする奴、嫌な奴。

 

 

 

 

 

でも……………それでも少しだけ。

 

 

 

 

 

 

「……………鞘先輩は、正しい」

 

「……………」

 

「君に対する想いも、私に対する怒りも、許せる訳ない」

 

「それをあの人は私に真っ直ぐ言った……………だからこそ、私はなんだか、これ以上流に対しての気持ち悪い想いを、少し抑えられそうな気がしてる」

 

「ずっと強くなりたいと思ってて、それもあの人と一緒ならできそうな気がして………だから、その、少しだけ、ほんの少しだけ……………」

 

「……………」

 

「………感謝、してるかも」

 

そうだ、ほんの、少しだけ。

結局流の事が絡んでいる以上、分かり合うことは不可能だ。

 

でも………こうして久々に会えた流に私がこれ以上の事を望んでいない、それが証明になっていた。

 

……………だから少しだけ、本心から嫌いとは、言えてない。

あっちは完全に、嫌ってるけど。

 

「………そっか、お前別に誰かをはっきり拒絶するような奴じゃ無いからな、そんなことだろうと思ってたよ」

 

「………わかった様なこと言って」

 

「分かるよ、そういう関係だろ俺ら?」

 

「……ていうか、誰のせいでこんな事になってると思ってんのさ」

 

「………俺も悪かった、お前の気持ちにはすぐ答えられないけどさ、俺も考えるから、好きなのは変わらんからな」

 

「そーゆーとこっ………ほんと、そーゆーとこ………バカ」

 

あーもう、はっきりとまた言う………私の好きとは違うくせに、軽々しく言ってムカつく……………でも、そんな言葉に飛び上がるくらい嬉しくなってる私も軽い………うぅ。

 

……………あぁダメだ、悪癖に関してはどうにかなりそうだけど………また気持ちが、暴走しそうだ。

私だけ、私だけ、見て欲しい………もっと、ずっと近くの場所で君といたい。

 

「………流、私も、好きだよ」

 

「……知ってる」

 

「………もっと、知ってよ」

 

「これから頑張る事にする、とりあえず………お前は小太刀先輩の事を心から嫌ってる訳じゃない、でいいんだよな?」

 

「………嫌いなのは、変わらないけど」

 

「………そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「との事らしいです先輩」

 

 

ガチャ

 

「……………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぁえ?」

 

時が、私の思考が止まった。

何か言ったかと思えば、目の前のロッカーから鞘先輩が気まずそうに、息苦しそうに、少し赤くなって出てきた。

 

 

……は?

え?

な、え。

なんで、なんぇ?

え?

えええ?

え、ちょ、は?

は?は?は?は?は?は?

 

 

 

 

 

「聞きましたよね先輩?ね?」

 

「………………聞いた、けど」

 

「よしっ」

 

 

 

 

 

流は何も驚かず、鞘先輩が聞いたという事実を肯定すると満足気に頷いた。

は?知ってた………いや待って、状況が、読めないんだけど、なにしてんのまじでほんと?

 

「んじゃこっからはお二人で話してくださいな」

 

「え」

 

「え」

 

「ごゆっくりー」

 

そういうと流は立ち上がり、足速に部室から去って行き………今部室は、私と鞘先輩の2人だけになってしまった。

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

なんで、なんでこうなってる?

2人だけだと思ってたのに、鞘先輩………え、何時から、何時からいたの?

後で入ってきてはない……………という、ことは、まさか、嘘でしょ………………最初、からぁ?

 

という、ことは……………私の話、全部………………えええええ?

 

「……………あの、来夏、さん」

 

「……ひゃい?」

 

「………今の、本当?」

 

顔を逸らしながら、私に聞いてくる。

今のとは……………私が流に対して言った話の事に違いない。

………嘘、とはいえない………ていうか、今更そんな事言えるわけない………ずっと、隠そうと思ってたのに……………なんで、こんなことに………?

 

「………………嘘じゃ、ないですけど」

 

「……………ウチの事、嫌いじゃないの?」

 

「………嫌い、ですよ、流の事が絡んでる以上………」

 

「………そう」

 

「………でも」

 

「………?」

 

「……………………………大嫌いでは、ない、かも」

 

あの時、勢い余ってお互いに大嫌いだと罵ったけど、今は心の底から憎めずにいる。

好きにはならない、仲良くなんてしない、したくない。

面倒だと思う、でも……………今日も共にサッカーをして、私は、この人を心のどこかで認めていたのかもしれない。

 

……………不本意だけど。

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が、流れる。

気まずく、静かで、何も言わずに。

ただただ時間がすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………来夏さん」

 

すると、先輩の方から口を開き………私は俯いていた顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「………ウチは、貴女が彼にしたことを許さない」

 

「………はい」

 

「……………でも他は、ただウチが貴女を羨んでいただけだった」

 

「……………」

 

「だから、ウチには貴女をそこまで言う権利はなかった………だから、ごめんなさい」

 

「………先輩」

 

「………………ウチも、嫌いよ、来夏さんのことは」

 

「………私も嫌いです、鞘先輩」

 

「………ウチ達はもう、これでいい」

 

「……………はい、でも………先に取られても、恨みっこ無しですよ?」

 

「………そうね」

 

薄く微笑む小太刀先輩に、私も静かに笑った。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……………お、出てきたぞ笹波」

 

「ようやくですか…………一緒に出てきてはいますけど、どうですかね」

 

「……そっぽ向きあってるけど、険悪ではなくね?」

 

「……まぁ確かに、互いの気持ちは向き合えたようですね」

 

「少しは仲良くなるかね?」

 

「どうでしょう、どの道後は彼女らの問題ですよ」

 

「だな」

 

すっかり日も暮れた校舎、俺と笹波は遠くで彼女らが歩いていくのを見守っていた。

どうやら作戦は幸をそうした様だ。

 

笹波の言う通り後は彼女らの問題だろう、でもあの様子だとこれ以上の心配は要らないみたいだ。

 

「いやそれにしてもよく効いたなー、あの作戦」

 

「まさか僕が与えたゲームの中から発想するとは思いませんでしたよ」

 

「意外なとこで役立ったな」

 

そう、今回の作戦………まず小太刀先輩を呼び出し無理矢理ロッカーの中で待機させ、そこから来夏を遅れて呼び出し、小太刀先輩が居るにも関わらず2人きりと錯覚させる、そして来夏の内なる気持ちを俺に話させて、その結果小太刀先輩もそれを知る事になり、後は二人で話し合わざるを得ない状況を作る。

 

これは全部あのギャルゲーの中であった作戦だった、険悪だった2人のヒロインの複雑な気持ちを無理矢理確かめ合わせ、仲を取り持つというイベントだった、あれは意外と簡単だったなー。

 

 

 

 

……………まぁその後、別のヒロインの好感度が何故か上がって、その2人に襲われて腹上死するというアホみたいなバッドエンド喰らったけど。

 

 

 

 

「忍原先輩の悪癖は改善され、2人もこれからはマシな関係になり、チーム全体もレベルアップを遂げた………結果的にはいい所に落ち着けて安心しました」

 

「お疲れさん、キャプテン」

 

「ほんっとに今回は疲れました………何か奢ってくださいよ、先輩」

 

「わーったよ………………ところでさ、1つ聞いてい?」

 

「なんです?」

 

「あの二人………結局なんであんな仲悪かったの?」

 

「……………………くたばれば分かるんじゃないですか?」

 

「え?」

 

「ていうか早くくたばってください、もう僕は知りません」

 

「いやいやなんでよ、教えてよ笹波ー」

 

「知りません!!!」

 

何故か呆れて怒る笹波を俺は追いかける。

なんだってんだい……………しかしまぁ、なんだろ。、

 

……………不思議と、心当たりがなくも無い、かもしれない。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「………は?円堂ハルが………再起不能?」

 

「………なにそれ、つまんない」

 

「あーあー、なんやかんやで………楽しみのひとつだったんだけど」

 

「………神さまは、ボクにいつも厳しいな」

 

手を伸ばす、宵闇の夜の中に輝く星に。

届くはずのない距離に、煩わしさを覚える。

 

そしてボクは希う。

どうか、ボクに。

 

かいぶつの出会いを、ください。




忍原来夏/小太刀 鞘
Q 仲良しですよね?
A 仲良く、無い


黒景流/笹波雲明
Q 教えてよ笹波ー。
A クソボケがーーーっ!!!(ハリセンを勢いよく叩く)


伊勢屋 要
魔王様とミキシトランスしかけてる。

















帝国のかいぶつ
寄越せよ、かいぶつ。
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