忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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はい、今回で予選編終了になります。

とりあえずこっからは、色々と考えねば。


憎しみ余って愛しさ百倍にて

「ふぃー………」

 

木曽路と帰りの飯を食べて、家に帰り風呂に入って、俺はベッドに寝そべってた。

今日は中々濃い一日だった、決勝を戦わずして全国確定して、俺の本戦での試合が決まって、円堂ハルに出会って、木曽路とめちゃくちゃ特訓して………。

 

「………でも、やっとこの時が来たんだな」

 

南雲原の全国出場、俺の初試合。

胸が高鳴るのを感じる、どれだけ待ち望んだことか………今からが楽しみでしょうがない。

笹波のサッカーに惹かれて、俺は待った。

そして俺自身のルーツを見つめ直して、それで俺のサッカーに対する気持ちも改めた。

 

強くなった南雲原で、俺のサッカーは始まる………早くやりたい、全国の奴らとサッカーを……!

 

「………見てくれるかな、あの人」

 

俺のサッカーの起源となった、あの憧れの人は………フットボールフロンティアを見てくれるだろうか………というか俺の事、覚えててくれてるだろうか。

 

あの時は互いに名乗らなかったし、覚えてたとしても俺を一目見ただけでは多分分からないんだろうなぁ………。

 

………いや、信じるって言ってたんだ、俺も信じよう。

あの日みたいにきっと、いつかまた会えると。

 

………それはそれとして、ひとつ考えなきゃ行けないことが俺にはある。

 

来夏の事だ。

 

笹波や木曽路に色々言われて、自分がまたやらかしてしまったらしく………今後、どう接するのか改めて考えようと思っている。

思うんだけど、大事な事なんだけだ……………如何せん、なぁ。

 

「………キスとかしちまったけど、やっぱ俺にとっちゃただの幼馴染みなんだよなぁ………」

 

気持ちは何となく理解した、何となくだけど。

俺の好きと彼女の好きは全く違う、来夏の方が俺より数倍重く、強い。

 

それが原因で一時期笹波から部活中は接近禁止令まで出されたくらいだ、ひとえに俺の原因であるのが強いけど。

俺も来夏が悲しんだりするのは見てられないし、来夏程じゃないかもだけど俺だって大切な人とは思っている。

 

しかし俺と彼女とはどうしても価値観の違いというか、気持ちの致命的なズレが生じている。

 

そして俺がどう足掻いても恋愛って奴に絶望的に合ってない気がする、笹波と木曽路の反応を含めて。

どうにもなんかなぁ、俺が興味無さすぎるってのもあるけど、それ抜きにしても本当に、なんつーか………分からないんだよなー。

 

そう言う関係になっても絶対後々トラブル起きそうで不安だし、そもそもそう言うのは互いが異性的好意を持ってなきゃ成立もしないと思ってる。

 

………来夏に対して、これから俺は本当に好きなんだって思いながら言えるかな、少なくとも想像は出来ない………。

 

なら、あんなキスやっぱりするべきじゃなかったんだろうなぁ……………あの時の来夏は、何を思ってたんだろ。

 

 

 

『普通に考えてキスして好きなの知っててしてやっぱさよならー……とか、最低以外の何者でもないっすよ先輩?』

 

 

部活中に木曽路に言われた言葉が脳裏に過ぎる。

たしかにそれだけ聞いたら本当にただのクズだ、それに俺がなり掛けてる事実に頭が痛くなっちまう。

………しっかり向き合ってことか、いや向き合ってつもりだけど思わぬ方向へ行ってしまってるって感じか………何してんだ俺。

 

「今度、来夏としっかり話してみるか………」

 

そうしなきゃ今の危うい関係で、今後どんなことになるのか予想も出来ないし………笹波からまた大目玉喰らいそうだし、また相談してみるかなぁ………すげー嫌そうな顔されると思うけど。

 

「………ん」

 

ふと、寝そべりながら窓の景色を見る。

ゴロゴロと空から鳴っている………真っ暗闇な外で今にも雨が降りそうだ、しかも予報によればかなりの大雨が降るらしい、明日までに止むかな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

そんなことを考えていると、家のインターホンが鳴った。

まだ深夜とは言えないけど、こんな時間にだ。

 

 

……………誰だ?配達とかじゃないハズ、変な奴とかじゃ無いだろうな?

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

また鳴った。

………俺はゆっくり起き上がり、部屋から出る。

なるべく足音を立てずにドアまで近づき、ゆっくりと覗き穴からその人物を確認する。

 

そこに、居たのは………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……来夏………?」

 

訪問してたのは………制服姿の、顔を俯かせていた、来夏だった。

 

 

そして………外は、大雨が降り始めた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

何時もより暗い夜道を一人歩く。

空はゴロゴロと鳴っており、今にも大雨が振りそうな雰囲気だった。

 

傘なんて持ってきてない、けれど目的地はもうすぐだ。

 

「………………」

 

勝手に伝わってると思ってた。

彼なりに努力して、私のこのどうしようもない気持ちに戒めをつけて、そうすれば何時かは通じ合えると………私の気持ちを理解してくれると、思ってた。

 

あのキスも、恥ずかしくて、いきなりでどうにかなりそうで、そんな事を軽くするくらい彼の気持ちは軽いんだって少しショックだったけど、結局………喜びが勝っていた。

 

 

初めて………だった、それを流から奪われた。

 

 

家で何度も悶えた、またあの日のように襲ってしまいたいとあの悪癖が再発しそうなのを必死に抑えた。

今日の学校も一緒に登校しなかったし、目が会う度にあのキスを思い出して顔を逸らして、会話もゼロだった。

 

あんな後でまともに顔なんて見られるわけない、流は………いつも通り過ぎて流石にイラッと来たけど。

…………でもあんなことする位なら、もう……そういう関係でいいんじゃないか、なんて考えてた。

 

落ち着いたら改めて、流と話そうと思ってもいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ………反応見る限り違うとは思いますけど、下手すれば嫌われてましたよ先輩?』

 

『そっかー…………まぁ、俺はそれでもいいかな』

 

『はい?またなんでそんな……?』

 

『なんか………あぁなってしまったのは俺のせいっぽいし、俺が来夏の事歪めてるなら、やっぱ離れた方が良いかなー………なんて思ってたりする』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、流と木曽路の会話を聞いてしまった。

嫌われても、いい?また、離れるの?

なんで、なんで、そんなこというの?

 

知ってて、知っててキスした癖に、そんなことかんがえて、るの?

 

なんで?なんで?なんで?なんで?

知ってるくせに、もう分かってるくせに、歪めたのは、君のせいなのに。

 

なんで?そんなこと言うんだよ、なにも、わかってなかった。

逃げようとするなんて、ゆるせない。

 

どれだけ君の気持ちで苦しんでたのか、なにも知らない癖に、何も分かってないくせに。

これだけ気持ちをぶつけても、何も感じてないんだ?

 

好きだって、好きだって何度も伝えてるのに、何も響いてないんだ。

 

ゆるせない、許せないよ、好きなのに…………こんなにも、好きなのに………君以外考えられないのに、そんなこと言うなんて、ふざけないでよ…………君の中じゃ私はまだ、だだの幼馴染みなんだ。

 

「………っ、う………」

 

歩きながら唇を噛み締める、また目から涙が溢れる。

…………君が悪い、流が全部悪い。

 

あそこまでしておいて、そんなこと言うなら、もうゆるさない。

…………全部、今日、壊してやる、幼馴染みなんて関係が、私達を引き裂くなら…………終わらせてやる、君がどうなっても関係ない…………全部、私のものにすればいいんだ。

 

そうだよ、最初からこうすれば良かったんだ。

分からないなら、存分にわからせたら良かったんだ。

 

もうサッカー部も鞘先輩も関係ない……………もう壊してやる、全部全部………壊してやる。

 

もう良いよね、それに君なら、全部受け止めてくれるもんね?

好きだって………伝えてくれたんだからさ。

 

「………はは、はははは」

 

マンションに入って、自分でも気味が悪いと思える笑いが零れてしまう。

私だけこんなに苦しい思いするなんて、不公平だ。

 

だから………同じ苦しみを与えてやらなきゃ、そうしなきゃ………もう自分が更に歪んで、壊れてしまいそうだ。

 

「………許さないから、流…………」

 

あのキスの答えがあんなのなんて認めない、責任………取らせてやる。

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

 

そしてようやく辿り着き、インターホンを鳴らす。

…………出てこない、まだ寝る時間じゃないはず。

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

2度目を鳴らす………静かだけど、微かに奥から足音が聞こえて来た。

そして私の後ろに大雨が降り注ぐ音が聞こえ始めた、風も激しく吹いている。

 

…………居るのは、もう分かってるんだから。

出てきてよ、出ないなら………こっちから開けるよ?

 

何か言ってるのかな、大雨と風で何も聞こえない。

 

そして、ようやく………ドアが開けられた。

流は、ようやく私に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらー、来夏ちゃん、こんばんわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………へっ?」

 

 

 

出てきたのは、流………じゃなかった。

黒髪の、糸目でおっとりとした喋り………久しく会ってなかったけど、なんで、なんで………え?

 

 

 

 

 

 

 

「流の、お母さん……!?」

 

「どうしたんですか?こんな夜に、雨も降ってますよ?」

 

「え、あ、いや、えっと、え、あれ!?お仕事じゃ……!?」

 

完全に予想外すぎて言葉がテンパってて会話にならない、なんで!?お母さんの仕事って結構忙しいから家にいること結構少ないって、夜も遅いって聞いてたのに、あれ!?ええぇ!?

 

「今日は色々あって早く帰れたんですよ、小一時間前には居ましたけど………流、何か約束でも?」

 

「え、いやー、何も無いはず、だよな?」

 

お母さんの背後から流がひょっこりと現れた、心当たりがないって顔だ………あー、やば、さっきまで消えてた怒りが湧き出そうだ。

 

でも、どうしよう………お母さんが居る所でヤれる訳無いし………どうしよ、なんて言い訳しよう……居るなんて思いもしなかった………うぅ、やば……!

 

「……………」

 

私が言い訳を考えていると、お母さんは私の顔をじーっと見つめていることに気づく。

そして………ドアを支えながら、片手で私の顔に手を添えてきた。

 

「え、えっと、何を」

 

「………来夏ちゃん」

 

「は、はい」

 

「泣かされましたね?目尻が腫れてますよ?」

 

「え、あ、えっと」

 

「誰に?また家の人にですか?」

 

「いや、その、えっと………」

 

「………あーーー…………なるほど………流」

 

「……へい?」

 

「心当たりは、あるのですか?」

 

「……………………えーっと………あー」

 

「なるほど………来夏ちゃん、後でお話は聞きますので、もう少し外で待ってもらっていいですか?」

 

「あ………はい」

 

おっとりとした雰囲気から一変、黒いオーラを出しながら優しい口調で語りかけるもんだから頷くしかない。

静かに家のドアが閉じられて、鍵が掛けられた音がする。

 

 

 

 

 

「母さん、何して………え、あの、なんか、何故のような顔をされてぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?」

 

 

 

 

 

 

ドア越しから、未だかつて聞いた事のない流の絶叫がこちらへ届いてきた…………何されてるの、流。

 

…………なんか、さっきまでのどす黒い感情が薄れてしまった。

まぁ、でも………。

 

「………ざまーみろ、バーカ」

 

ちょっとは、晴れたかな。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

色々語る前に………俺の母さんについて少し、話そうと思う。

仕事は簡単に言えばIT系であり、母さんの経歴はそれなりに高いキャリアウーマンって人だ。

昔から多忙な人で、家から少し離れた企業に勤めてるため家にいないことが多い………それも相まって俺は一人の時間が多かった。

 

かと言って俺は嫌ってなんかない、そういうもんだって受け入れてたし母さんは父さんが居ない家庭事情でも俺の事を優先してくれることが多いし、ありがたいと思うことが大半な故に嫌う理由なんてどこにもない。

 

まぁ、一つ捻り出すことと言えば…………普段は俺に似てマイペースな人なのに、怒ると穏やかな顔のまま超キレるもんだから、すげーー怖い。

 

よほどの事がない限り怒らないから、そうなった時は高確率で手が出る………例えば、アイアンクローとかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいねー来夏ちゃん、うちの愚息がそんな酷いことを………早く言ってくれれば絞めてたのに……」ナデナデ

 

「いや、その、大丈夫です、私も流に酷いことしたし………ていうかさっきされてたし………今もされてるし」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁっ」

 

母さんは片手で椅子に座っている来夏を撫でながら、もう片手で俺の頭をがっちりアイアンクローしているという器用な事をしている。

相変わらず片手だけなのに力加減やべーって、いや待て死ぬ、死ぬって痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い砕ける砕ける!!!!!

 

さっき絞められたばかりだってのに、来夏からこれまでの経緯を伝えられた途端にこれだよ、いや確かに全面的に俺が悪いのは認めるけどしぬ、死ぬって、勘弁してくれまじでぇ!!!

 

「貴方って子は、ほんとーにあの人の悪いところばっかり受け継いで………年頃の女の子にキスなんて、教えた覚えはありませんよ?」

 

「いえ違うんです良かれと思っただけなんです他意はないんです離してぁぁぁぁぁあ」

 

「他意が無いキスなんて最低の極みですね、全く、こんな一途な子に酷い仕打ち、地獄にいる父さんが泣きますよ?」

 

「て、天国じゃないんだ………」

 

「突っ込んでないで助けぇ、ぁがぁぁあが!」

 

「無理」

 

来夏はぷいっとそっぽを向いてしもうた、クソ!味方がいねぇ!!

 

「………では流、今から私と来夏ちゃんは小一時間程お話をしようと思いますので、出てください」

 

「へ、へい、部屋に戻らせて……」

 

「いえ、外に出てサッカーしてきてください」

 

「へい?」

 

「え?」

 

がっちり掴んでる片手の力を緩めて、ようやく許されたかと思えば頓珍漢なこと言ってきたぞこの母親。

は?サッカー?今から?もう夜ですよ?外見えないんですか?

 

「あの母さん、夜な上に天気荒れまくってますけど」

 

「そうですね、貴方のお気に入りの海沿いの公園とかどうですか?」

 

「いえ、あの、危ないなんてもんじゃないんすけど」

 

「貴方なら大丈夫でしょう?雨も着込むレインコートがあればなんとかなるでしょう、行きなさい」

 

「え、え?本戦あるんであんま体調とか崩したくないんすけど」

 

「風邪の回数なんて片手で数えられる程度でしょう?行きなさい」

 

「いや鬼すか?ちょっとま」

 

「行きなさい」

 

「え、あの「い、き、な、さ、い」

 

「……………………………………へい、うべっ」

 

もう許される未来が見えなかった為、母さんの鬼畜の指示を素直に受け取った途端、宙に浮いていた俺の頭から手を離し、俺はそのまま床に落ちて倒れてしまった。

 

いてぇ………頭砕けそう………久々喰らった………なんでちょっとパワーアップしてんだよ、現役狙えるだろこれ………。

 

「だ、大丈夫?」

 

「なわけないでしょ………これから大雨とサッカーだぞ………」

 

「う、うん………頑張って?」

 

椅子から降りて俺の頭を摩る来夏の優しさに涙が溢れそうだ、何しに来たのか分からんけど………多分、なんか俺にまた噛み付くような事なんだろうなと勝手に想像してるけど……………まぁ、正直母さんにしてやられた事は、当然の報いとは思ってる。

 

未だに痛む頭に手を当てながら、よろけて立ち上がる。

うぅ、特訓の疲れも少し残ってんのに………畜生……また風呂に入る羽目になるじゃんか………。

 

………………とりあえず、行く前に。

 

 

 

「……………来夏」

 

「なに?………んっ」

 

「ごめんな」

 

しゃがんでいる来夏の頭に手を載せて、謝っておく。

やっぱりキスなんて軽々しくするもんじゃなかったと後悔している、そのせいで来夏は泣いていたんだろう、泣かせてしまったことに関してはすげー後悔してる。

 

とりあえず前代未聞な状況下のサッカーやりながらで色々考えますか………。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

流がレインコートを着てサッカーボールを抱えて外に出て暫くすると、流のお母さんはコーヒーを持ってきて、片方に持っている方を私の前に置いてくれた。

 

………いやぁ、片手で頭を持ち上げるなんてどんな怪力なんだろこの人………流は別に力持ちって訳じゃないけど、こういう飛び抜けた性質は親繋がりなのかな………この人もなんやかんやでマイペースだし。

 

「………改めてごめんなさいね、貴女の気持ちは前々から察してたけど、そんな事になってるとは思いも寄りませんでした」

 

「いえそんな、気にしないでください………私の暴走も原因の一つなので」

 

流が最初に絞められた後、私達はテーブルでこれまでの経緯を話した。

私の気持ちの自覚、大きな力の差で離れてしまう恐怖、恋敵の存在による悪癖、流に噛み付くなどの暴走………突然のキス、ありのままを全て伝えて、流はアイアンクローでまたしばかれてた。

 

「失礼なこと聞きますけど、本当に流で良いのですか?恋愛面に関わらず本心ばっか明かして勘違いさせるような子で、軽々しくファーストキス奪うような子ですよ?」

 

「………………それでもこの気持ちは嘘じゃないんです、彼がいるから今の私が居る、確かに色々ムカついたりしてますけど……………大好きなんです、流の事が」

 

色々考えて、悩まされて苦しんで、一周まわって憎んだりした時もあるけど…………結局それは、流の事が好きなんだって事の裏返しだった。

さっきも頭を撫でられただけで、許してしまいそうになっちゃう………私ってかなりちょろかったりするのかな。

 

ていうか全部話した後で今さらだけど………好きな人の親にこう言うのって凄く恥ずかしいな、顔が熱くなってきた………。

 

「本当に一途でいい子ですねー、流にはもったいないくらい………それに、他にも惚れさせてる子が居るのでしょう?」

 

「はい、私と似たような理由でして……」

 

「全く、血は争わないと言いますけど、そんなとこまで似なくても良いのに………」

 

「……さっきあの人の悪いところばっかりって言ってましたけど、それって……お父さんの、事ですよね?」

 

既に亡くなっている流のお父さんのことはよく知らない、流と同じでサッカーをしていたってことくらい。

悪いところばっかりと言ってるけど………まさか………まさか?

 

「えぇそう、あの人も貴女達頃の歳で無意識に女の人を引っ掛けてたのですよ……この調子だとまた別の誰かを落としそうで心配ですね………」

 

「そ、そうだったんですか!?」

 

「えぇ………あの人は私含めて10人は落としてましたね……」

 

「えぇぇっ!!?」

 

「ふふふ、びっくりしました?」

 

少し意地悪な笑みを浮かべるお母さんに、私は開いた口が塞がらなかった………いや、10人って!嘘でしょ!?じゃあ最悪流もこのままだとお父さんくらい私や鞘先輩以外の女の子落としかね無いってこと!?色々最悪すぎじゃない!?

 

それで………流のお父さんの惚れさせた10人の中にお母さんが居るってことは、その中で選ばれたってことで、いいのかな?

 

「お、お母さんは、どうやってその泣かせから選ばれたんですか?」

 

「んー、選ばれたっていうか………選ばせた、が正しいですかね?」

 

「………と言うのは?」

 

「えっと………ふふ」

 

少し困った顔をして、お母さんは唇に手を当てて開いてるか分からなかった瞳を開いて笑みを浮かべる。

 

「来夏ちゃんに教えるのは、2年後ですかね?」

 

「っ………」

 

艶のある声と表情に思わずドキッとしてしまった、つ、つ、つまりは、えっと、そういう事!?

や、やっぱ強硬手段に出たんだ、ていうか………今日お母さん居なかったら私も最悪………!?

 

「来夏ちゃん………ちなみに聞きますけど、私が居なかったらどうする気でした?」

 

「うぇっ!?いやその、その!そういうんじゃなくてですね!?」

 

「うーん流石に早すぎますね………流は貴女にならあげてもいいんですけど」

 

「ううううっ」

 

見透かされた様で顔が真っ赤に熱くなるのを感じる………うぅ、ていうか私色々限界来てたとはいえ、流石にヤバすぎたって………もう恥ずかしすぎだってば……!!

 

………でも、それで振り向いてくれたけど………でも。

 

「………あの、それで選んでくれたんですよね?」

 

「えぇ」

 

「………残りの9人は、どうなりました?」

 

「……………そうですね、暈して話すなら………あの人は一度刺されて生死の境を彷徨いましたね」

 

「えぇ嘘………やっぱそう言うのあるんですね………」

 

「惚れた弱みというか、代償というか………一度恋に生きてしまえば、残された人の失恋という痛みをその人に与えてしまいたくなりかねないのかもしれませんね、私が言えた言葉ではありませんが」

 

「………そうですか」

 

その話を聞いてコーヒーを一口飲む。

……………仮に、仮に私が今日ここでそういう事をしたら、どうなってたんだろう………きっと色々と取り返しがつかなくなってたかもしれない………いやなってた、確実に。

 

………あーもう、冷静になれば私とんでもないじゃん………。

 

「………あの、失礼な事を聞きますけど………後悔は、ありませんでした?」

 

「…………ありますよ、私が行った行為は最終的にあの人には受け入れられましたけど、殆どの人達にはこれ以上ないくらい憎まれました、それも覚悟の上での行動でしたけど………今思えば、後悔が残らない様な選択もあったのかもしれませんけど、若気の至りというものですね」

 

「………………」

 

「でも、今の私には流が居て……………貴女の様な可愛い義理の娘候補も居ますからね」

 

「ぎ、義理っ!?」

 

「あら、嫌ですか?」

 

「いや、いやいや、嫌ではないけど早いです!!」

 

「今日私が居なかったらもしかして……………なのに?」

 

「ごめんなさい!言わないでください!私も若気の至りでした!!!」

 

「ふふふ、それを言うのも早いですよ」

 

うううううダメだ、別に張り合ってる訳ではないけど勝てそうにないこの人には………でも、やっぱりそういう事をしたのは後悔してるんだ。

 

………………私もきっと後悔してた、もう何も変わらないなら壊してしまおうかと思ってた。

お母さんの場合は9人もライバルが居たのか………何者だよ流のお父さん、外から見たら最悪の女誑しじゃん。

 

流は……………私を選んでくれるだろうか、多分………まだ幼馴染みって関係が強くて、私をまだそういう目で見てはくれないんだろうなぁ。

その間に鞘先輩に盗られたら、私は………どうなるんだろ。

 

 

泣いて、怒って、狂って………また、傷つけるのかな。

 

 

………そんなの、嫌だな。

流には………やっぱり、私を選んで欲しい。

 

「………来夏ちゃん、おばさんのお節介ですけど………どうかそんな手段は使わないで、普通に恋をしてください、今回はあの子が問題ありすぎですけど………そんな所もひっくるめて愛するのが、きっと1番です」

 

「………普通に………そうですよね、それが良いですよね」

 

「私も流の恋愛観は調き………矯正するのに一役買いますから、来夏ちゃんも頑張ってください、応援してますから」

 

「……はいっ!ありがとうございます!」

 

なんだか………今なら流のバカみたいなクソボケっぷりも、少しだけ受け入れられそうな気がする。

鞘先輩の問題もあるけど………お母さんの話していた事にならないように、これからはもっと頑張ろう………結局、私の恋はこういうものなんだ。

 

「さて………外の雨は全然止みませんね?」

 

「確かに、これは朝まで続くのかも」

 

「そろそろいい時間ですし、このまま帰るのは危険過ぎますね?」

 

「そうかもですけど………え、お母さん?」

 

「ふふっ」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「た、だ、ただ、いま……………ぁぁ゛っ」

 

レインコートを着ていたというのに汗と雨水でぐしょぐしょになりながら、俺は一向に弱まらない大雨の中1時間弱のサッカーを終えて、俺は帰宅して玄関に倒れた。

 

もう無理、動かねぇ、あんな環境でサッカーなんかするもんじゃない、今回はされたに近いけど。

こんなにくたくたになるのは久々だ、風邪とか引かねぇよな?まじで………!

 

「おかえりなさい、流」

 

「おかえりー、どんなサッカーしてたの?」

 

「大雨とやべー風をあの人に見立ててサッカーしてた……………」

 

「いや誰?」

 

母さんと来夏の声を倒れながら聞く、辺りも濡れているがそんな事気にする余裕なんて今の俺にはない、起き上がれねぇ………。

 

「流、来夏ちゃんに言うことありますよね?」

 

「………………まじで、ごめんなさい、泣かせて、すんません………」

 

「………二度と私から嫌われるとか、離れるとか言わないでね」

 

「はい………誠心誠意、向き合わせていただきます………」

 

色々どうするか考えたが、やはりこれしか思い浮かばかった。

俺がどうこうするじゃなくて、結局は最後まで来夏の事を見てなければならない………もう逃げるとかそう言うのは一切しないと………当たり前のことだがな。

 

「………今日のところはよろしい、早くシャワー浴びてきてね」

 

「へい………つーかお前………この雨の中帰れんの?」

 

「無理すれば行けるけど、今回はお義母さんの言葉に甘えることにしました」

 

「……どゆこと?」

 

ようやく顔を上げて、来夏の方へ視線を向ける。

するとあの制服姿ではなく、髪を解いてなんか見た事のある寝巻き姿で俺を座って見下ろしてた。

 

「え、それ………母さんのじゃね………?」

 

「えぇ、今日来夏ちゃんはお泊まりすることになりましたから」

 

「………まじすか」

 

「さ、何時までも倒れてないで早くお風呂に行って、湯船にも使って温まりなさい?」

 

「……へい………」

 

まぁ確かに今帰らせんのは酷か………全然止む気配ねぇし、とりあえずとっとと風呂入って寝よう………疲れた………来夏の事は、明日また考えるか………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰って風呂に入り、さっぱりした後部屋に戻った。

もう疲れで眠気が凄まじい、とっとと寝ようとするが………なんで。

 

「………あの、来夏さん」

 

「なに?」

 

「えっと………ここで寝るんすか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「布団が見当たりませんが」

 

「あるじゃん、ベッド」

 

「……俺のなんすけど」

 

「うん、だからそういうことじゃん」

 

「………1人用だから狭いよ?」

 

「……むしろ良い」

 

「えぇ……?」

 

「ていうか口答えするなっ、私から離れようとした卑怯者め」

 

「うっ………分かったよもう」

 

なんと………来夏は俺の部屋で、しかも俺と同じベッドで寝ようとしてやがる………しかもそれ言われたら何も言えねぇし、ったく………ま、昔も泊まって同じ寝床で寝た事もあるし、良いか。

 

「ふぁぁ………私も疲れちゃった、早く寝よ?」

 

「へいへい………」

 

俺も疲れた………風邪とか引かんよな?

そう思いながら俺から先にベットに入り、来夏も後から入ってきた………狭い………!

 

「流っ、もう少し壁に寄せてよ」

 

「寄せてますよこれでも」

 

「………じゃあ右腕挙げて」

 

「……………こう?」

 

「そうそう………えいっ」

 

「ぬぉっ」

 

言われた通りにすると、来夏はより身体を寄せてきて、俺の右腕は来夏を抱き寄せるような形になってしまった……………ダイレクトに体温と身体の感触が伝わると、流石に意識するんすけど。

 

「………風呂上がりだから、シャンプーの匂いする」

 

「そうですね………落とすぞ」

 

「うん」

 

リモコンで天井の灯りを消して、部屋は真っ暗になる。

外は相変わらず雨の音が凄まじい、風もビュービュー吹いてる。

 

でも眠気は勢いを増してやがる………ていうか、来夏の匂いがなんつーか………安心を覚えるな………より眠くなるわ………。

 

「……………流」

 

「………ん」

 

「………何回も言うけど、ほんとにショックだったんだからね」

 

「………ごめんて」

 

「………許さない」

 

「えぇ………」

 

「墓まで、持って行く……………逃げないでね?」

 

「……………おう」

 

「………………流」

 

「………眠いんだけど………」

 

「………………愛してる」

 

「……っ」

 

「……………本気だよ?」

 

「……………わかった」

 

「………ふふっ……………離さないよっ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………やっぱ、面倒臭い構ってちゃんだな……………でもなんだかな。

 

こいつはなんやかんやで………俺が1人でサッカーしてる時も、そばに居てくれたからな。




黒景 流
過去の発言を心から反省、もう逃げるとか言いません。
そして来夏に対する意識も少しづつ変わりつつある、それが恋に繋がるかはまだ分からず。


忍原 来夏
暴走一歩手前だったが、黒景母の存在によりストップする。
彼女の言葉も相まって焦らず流を振り向かせる決意を固めるが………ここから先、新たな波乱がある事を知るのはまだ先。


黒景 凛
主人公の母親、父のハーレム状態から抜け駆けした強かな女。
とはいえその過程に後悔もあり、そうならないように似た境遇になりつつある来夏に経験談を交えた警告をする。
ちなみにかつてサッカーもしてたが………とりあえず、当時のFFIが女子参加可能なら確実に入ってた。





はい、今回で予選編は終了になって………次回から本戦編に入ろうかと思います。

本戦ではサッカーの方に力を入れるかもしれないです。
思いの外来夏ちゃん以外でも、主人公のサッカーでの活躍を期待する声も大きいというのもあります、サッカー描写薄くなるとはなんだったのか………?

またタイトル詐欺になりかねないかもしれませんが、それでも見てくだされば幸いです………また一悶着ありますからね。
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