忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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はい、今回より本戦編になります。
さぁここからサッカーに力入れますか………来夏ちゃんも出しますよ!

そして少しネタバレですが、本戦終了しても本編はまだ続く予定です。
やっぱまぁ、来夏ちゃんメインなのでね。


怪物どものグレートロード
新たなる戦いへの序章


 

『……こんばんは、黒景 流先輩』

 

『……笹波、雲明』

 

 

俺のサッカーはあの日…………笹波が見つけてくれたことで始まった。

笹波雲明を筆頭に南雲原中サッカー部は復活し、あらゆる壁を乗り越えてここまで来た。

 

俺は未熟なチームの中に入ることは出来ず、その傍らでアイツらの頑張りを見続けて、手助けを繰り返してきた。

それとは別に俺のバカのせいで色々とやらかしたりしてたが、まぁ今となってはいい反面教師の例が出来たと思っておこう。

 

そして南雲原中サッカー部は、ようやく全国への切符を掴み取った。

そして俺も、全国の舞台で初試合だ。

 

…………この時の為に、俺はサッカーをし続けてたのかもしれない。

笹波が歩く勝利の路を辿るために。

 

俺も、皆と一緒に…………サッカーのてっぺんの景色を見るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それだけじゃ、無いだろ?』

 

何時しかの声が聞こえる、その声自体は俺の憧れの人の声。

しかし本人では無い、俺の中にあるサッカーの起源として居続ける俺の隠れた本性。

 

 

サッカーに生きる…………俺のかいぶつの声。

 

 

『忘れてないよな?お前はみんなとのサッカーを選んでいるが、お前の根底にあるのは強い奴とのサッカーだ、どちらとも選んだのは良いが…………俺に呑まれるなよ?』

 

 

………………もちろん、忘れてなんかない。

 

 

俺の中にあるエゴと一緒に、迷わず歩きたい。

優勝を、勝利を、皆のために勝ち取る為に。

 

『…………ま、自分に従えばいいだけだがな、もう一度言うが、せいぜい忘れるな?』

 

わかってるよ…………ていうか、お前まだ居たのか、ひとつになって消えたもんかと思ってたよ。

 

『ばーか、お前は俺だ、お前がかいぶつであることを認識する限り、俺は消えねぇよ』

 

そっか…………まぁ、俺であることには変わらないか。

これからどんな試合が待ってるのか、どんなサッカーが出来るのか。

 

 

本当に、楽しみだ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「…………流…………流!もう着いたよっ」

 

「…………後、10分……」

 

「…………ふんっ!」パシンッ

 

「いだっ!」

 

俺は微睡んでいたが、目元に痛みと衝撃が走りそのまま起き上がる。

つけていたアイマスクをずらして、瞳に飛び出してきた明るさに一度目が閉じかけて、次第になれて開いていく。

 

……………見慣れない場所、ていうか小一時間前に乗り込んだ電車の中で眠っていたっけか…………あ、みんな降りようとしてるわ。

 

「…………あー、着いたのか」

 

「さっきから言ってんじゃん寝坊助、遂に来たよ」

 

「おおそっか、んじゃ行きますか」

 

呆れた様な笑みを浮かべる来夏から荷物を受け取り、次々と降りる乗客に紛れて電車を降りる。

 

降りて笹波の元へ集合し、南雲原中サッカー部が全員揃っていることを確認したら…………みんなで駅から出た。

 

俺達の目の前に広がるのは、都会の景色。

サッカーをするものであれば皆が憧れる聖地、お台場サッカーガーデン。

 

関東以外のフットボールフロンティア予選優勝校が、本戦の間に根城とする場所、サッカーファンの間でも観光地として親しみのある人気のスポットだ。

 

「ここがお台場サッカーガーデン………!」

 

「遂に来たな、聖地に」

 

「ここってそんなに凄いところなんですか?」

 

「サッカーをやっている者であれば、誰もが憧れる場所さ」

 

笹波の感嘆の声に続いて、それぞれの仲間達がこの場所に来られた感動を吐露する。

かく言う俺も胸の高鳴りが抑えられない、1度来てみたいと思ってたけどこういう形で来られるとは、感激だ。

 

「素敵な場所だねー……流も感動してたりする?」

 

「まーな…………それに、俺もようやくサッカー出来るしな」

 

「うんっ、ようやく私達と同じジャージ着てるもんね」

 

そう…………何時もの黒ジャージではなく、ちゃんと南雲原のジャージを着てここにいる、笹波からいい加減皆と同じにしてくださいと注意を受けたためだ。

 

「いよいよだな、どんな難問が待ち構えているか……」

 

「いや難敵だろーがクイズオタクめ」

 

「うーんワクワク止まりませんね鞘先輩!」

 

「そうね、ここからまた更に熾烈な試合が繰り広げられることでしょうから」

 

「さぁ、どんなイリュージョンが見られるかな」

 

他の仲間たちもそれぞれの期待と興奮が溢れており、自分の思いを共有しあっていた。

来夏も桜咲達と会話しており、俺は1人景色を眺めている笹波の隣へ歩み寄り、話し掛けた。

 

「いよいよ、ここまでやって来たな笹波?」

 

「えぇ、本当に色々ありましたね…………貴方のせいで」

 

「ごめんて、でもこれからまた大変だぜ?どーんなサッカーが待ち構えているか、今から楽しみ過ぎるわ」

 

「サッカーバカですね」

 

「おいおい、笹波もだろ?」

 

「否定はしませんが…………………………先輩」

 

「ん?」

 

「…………絶対勝ち取りましょう、みんなと一緒に」

 

「……おう」

 

隣の笹波の気合いの入った眼差しを受け止めて、改めて目の前の戦いの舞台へ視線を向ける、それと同時に風が俺たちの間に吹き抜ける。

まるであの人が吹かせた様なそよ風が…………もしも見ててくれるなら、これ以上の喜びはない。

 

 

 

 

 

さぁ、ここから始まる…………俺のサッカーが。

 

 

 

 

「(待ってろ、全国…………!)」

 

 

 

内なる闘志を燃やし、拳を握り締め、新たなる戦いに期待を抑えられなない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イナズマイレブン

 

怪物どものグレートロード

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

《雷門中 サッカーグラウンド》

 

日本中学サッカーの名門、雷門中。

特別出場枠でフットボールフロンティア本戦に参加する俺達は、全国からやってくる強敵達との試合に備えてそれぞれ特訓をこなしている。

 

…………皆、ハルの事は心配していてるけど……これからはそんな心配をする余裕はあまりない。

俺達は王者としての戦いをしなくてはならない、彼が居ないからと言って腑抜けたサッカーは出来ないからな………とはいえ、キャプテンである俺がハルを気に掛け過ぎなのは、少し問題かな。

 

「ふぅ………」

 

タオルで汗を拭って、水分補給もする。

そして数日前のハルの通話内容を思い出していた。

 

 

 

 

 

『蓮さん、俺しばらくサッカー部というか……雷門中休みます、母さまにはもう伝えてます』

 

『なんだって?そんなまた急に……?』

 

『またサッカーをする為に長期的なリハビリに集中したいんです、本戦中には必ず戻ります、約束です』

 

『お前………笹波雲明に会ったんだろ?何を言われたんだ?つまんないって言ってたお前が………』

 

『…………怪我をして気付かされたダサい話ですけど、俺は彼らの言葉に火を付けられたんですよ………俺やっぱ、サッカーがしたいんです』

 

『………ハル………』

 

『だからどうか待っててください、俺は必ず戻りますから…………それじゃ』

 

 

 

 

 

あのハルが………再びサッカーに対しての熱を取り戻していた。

何があったのかは分からないが…………どうやら、笹波雲明との出会いがきっかけになったのは間違いないだろう。

感謝の言葉を伝えたいところだが、これから敵として立ちはだかる以上そんな事今は伝えられないな。

 

それと………彼らと、ハルは言ってたな。

 

笹波雲明と、もう一人に何か言われたと推測できるが…………その一人は、もしかして………?

 

「ふー、今日も監督のメニューはハードですねーキャプテン!」

 

「……あぁ星村、お疲れ」

 

俺が考えていると、同じスタメンのミッドフィールダー星村ナオが俺と同じくタオルを首に掛けてやって来た。

彼女はハルのファン一号だから、俺と同じくらいにハルの事を心配していたが………今は大丈夫そうだな。

 

「いよいよ始まりますね全国大会、キャプテンは今回どの対戦校が手強いと思ってますか?」

 

「そうだな………質問を返すようだが、星村はどう思う?」

 

「うーん!今の京前嵐山中は珍しい化身使いが居ますから、私達には居ない以上要注意かもですね、後やっぱり帝国!周知の事実ですけど手強いですから」

 

「だな」

 

「キャプテンはどうです?今私が言った以外の所で何か無いですか?」

 

「……………」

 

もう一度スポドリを飲んで考える………伝えていいのかな、これ。

 

「………九州の、南雲原かな」

 

「南雲原………あ、以前帰属校の助っ人の時に試合して、下げられちゃった時に相手した所ですよね?」

 

「あぁ、俺はその後も彼らの予選を見てきたが、出来たばかりとは思えないレベルで戦術が確立されている、台風の目になるかもだ」

 

「なるほどー、私も九州予選準決勝の試合は見ました、まさか4-0で勝つとは思いませんでした!しかも決勝は相手の事情による棄権で無しになってそのまま全国!ラッキー過ぎますよね」

 

「まぁ、そうだな」

 

「………でも、私は正直ラッキー過ぎるだけな気がするんですよ、キャプテン達が試合した時もそのチームの監督さんの指示のせいですし、決勝の件も相手が変わってただけだし………今回初の全国大会なら、けっこー厳しいと思いますけど?」

 

星村はスラスラと忌憚のない意見を述べる、まぁ………その言葉は正しい、彼らの実力は確かにあるがラッキーな部分が目立っているのも否めない。

 

……………しかし、俺にはどうしても一つ、気になって止まない要素があるんだ。

 

「………星村の意見は正しいけど、俺はそれだけじゃ無いと思うんだ」

 

「と、言いますと?」

 

「…………その、ここからは俺の予想の話でしかないんだ、出来ればここだけの話にしてくれたら助かる」

 

「??分かりました……?」

 

星村なら多分大丈夫だろう、誰かに俺の南雲原に対する考えを誰かに聞いてもらいたかったのもあるからな。

意を決して、戸惑う星村に俺は伝える事にした。

 

「俺達が帰属校の助っ人として試合に参加し、前半で3点取ったのはお前も知っての通りだが………ハルは試合後な、ある奴に目を向けてたんだ」

 

「ある奴?」

 

「ベンチに居た南雲原の選手…………名前を、黒景 流」

 

「くろかげ………聞いた事ないなぁ」

 

「俺もだ、公式の試合にはそういう名前は残されてなかった謎の男だ」

 

「そんな奴が、なんだって言うんです?」

 

「…………あの試合、確かにあの監督の指示で俺達はベンチに下げられた、でも試合後………ハルは言ってたんだ」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

「……………仮に、その男が前半に出ていたら………俺は後半下がらない可能性があったって」

 

 

 

 

 

「ええええっ!!!?ハル君がぁ!!?」

 

「バカ!声がデカイぞ!」

 

星村は俺の言葉に大きく驚いてしまい、その声でグラウンドで練習をしていた仲間達がこちらへ視線を集める形になってしまった。

 

「なんや大きな声だして!?何があったん!ハルって聞こえたんやがて……?」

 

「あ、いやなんでもない!こちらの話だ!邪魔してすまない!トレーニング続けてくれ!」

 

「お、おぉ………?」

 

暖冬屋が代表して何事かと聞いてきたが、俺は勢いではぐらかした。

皆は怪訝な顔になりながらも、それぞれのトレーニングを再開させた。

 

俺は一息ついて、口を両手で抑えている星村に向き直った。

 

「星村、お前な……」

 

「ご、ごめんなさいキャプテン………なんか、信じられなくて」

 

「まぁ、あの時のハルを知ってるなら無理もないがな………俺も驚いたよ、サッカーに対して冷めていたハルが、ベンチの選手に目を向けてたからな」

 

「その人何者なんですか?ハル君が目をつけたって言うのなら、それ程の選手って事ですか?」

 

「単純に考えるならな…………しかし探りを入れても、過去に何処かで試合をした記録が何処にも無いんだ、未だに予選にも出られて無い………まさしく謎の存在だ」

 

そう、謎の存在………その一言に尽きる。

もしもそれ程強いのなら予選に出さない理由が分からない………考えられるのは、強すぎる為出来たばかりのチームでは扱えない……等の理由かもしれない、推測に過ぎないが。

 

「とりあえずその、黒景って人のせいで………南雲原がダークホースになるかもしれないって、キャプテンは思ってるんですか?」

 

「あぁ、良くも悪くも未知数だ…………南雲原が本戦まで来た以上、そいつもようやく試合に来る可能性がある」

 

「南雲原かぁ………正直、考えすぎってこともありますよね?」

 

「あぁ………何にせよ、注目はしたいな」

 

俺は晴天の空を見上げながら………予感していた。

今年のフットボールフロンティアは………より一層、荒れるのかもしれないと。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ふーー………やる気出ない………やばー………」

 

何時もお昼でランチの場所になっているお気に入りの所で、ボクは一人寝そべっていた。

 

帝国は今日は休みだけど、サッカー部は全国に向けて練習に励んでいた。

今年はどうだろうなぁ………雷門のサッカーモンスターが居ない以上、ワンチャンあるんだろうなぁ………ボクはもうその戦いにすら興味無くなってるけど………はぁ………。

 

「もう世界にしか居ないのかなぁ、かいぶつ………」

 

海の向こうには強いサッカープレイヤーが居るとは聞いている、少なくともボクが心躍る様なやばいかいぶつが跋扈しているんだろう、想像するだけでテンション上がるなぁ…………ま、色々勉強とかいるけど。

 

「………お金は瞳子おばさんに頼んだらいけるかな?あとヒロトおじさんとかにも………いや流石に無理あるかな………」

 

『なーにを一人ブツブツ言ってんだヒカリ?』

 

「………え?」

 

頭の中で海外進出計画を立てていると、甲高い声が僕の耳に入ってくる。

少し驚いたな………彼らがここに来る事は初めてだからさ。

 

起き上がって、声のした方へ視線を向けた。

 

「………学園は休みで練習には来ないくせに、ここには来るんだねヒカリ」

 

「まぁお気に入りのとこだし、ていうかアリス達が来るの珍しくない?」

 

『てめーの様子を見に来てやったんだよ!』

 

今のボクと同じくらい気怠そうな顔と姿勢、そして何より右手につけてあるうさぎのパペットが初めて会う人には気になってしょうがないだろう。

 

彼の名は不破アリス、ボクと年は離れてないけど………帝国サッカー部、ファーストチームを纏める天才少年監督だ。

そして右手のパペットはうさぎ………彼いわくブラザーらしい。

 

アリスの事は結構面白い人だと思ってる、何かと気が合うし………うさぎ君は初対面の時は流石に面食らったけど。

まさか彼らまで来るなんてなぁ………あー、キャプテン以外からお説教食らうのめんどくさー………。

 

「んで何?アリスまで練習来いって言うの?」

 

「………女子がスカートで胡座をかくなはしたない………俺がそんな非効率な事をする人間と思うかい?」

 

『一応てめーのやる気を確認しに来たんだよ天邪鬼!』

 

「じゃあ見ての通りだよー、今の帝国なら勝てるでしょ…………ていうか、帝国の敵になれば良かったかも」

 

『不吉なこと言うんじゃねぇバカが!!』

 

「というか、君が別の学校に行ったところで……こうしてやる気は失われてる結果になるのは変わらないだろうね」

 

「そりゃそーか………で、話は終わり?」

 

『……おいアリス、今更だけどマジで話すのか?確証なーんもねぇぞ?』

 

「分かってるよブラザー………でも、これしかないだろう?」

 

「??」

 

1人芝居……おっといけない、2人の会話に首を傾げる。

何?何を伝えに来たのこの2人……いや1人と1匹か。

 

何か話し合って、アリスは意を決してかのようにボクの顔を真っ直ぐ見据えた。

 

「ヒカリ、単刀直入に言おう」

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が言うかいぶつが…………九州の南雲原に居る可能性がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アリス」

 

「なんだい」

 

「気休めとか、そういうの……ボク大っ嫌いなんだよね」

 

「信じられないかい?」

 

「南雲原は前に見たよ、キーコからさ………雑魚しか居なかったけど」

 

自分でも驚くくらい冷え切った声をアリスに向ける、キーコや真凜がここに居なくて良かった………ドン引きされそうだし。

同情なんて要らないんだよ、慰めなんて反吐が出る。

 

 

アリスは……そんな奴じゃ無いと思ってたのに………!!!

 

 

「今出ている予選にそいつは居ない、今はベンチに居るとの情報だったからね」

 

「ベンチって、いよいよバカにしてる?」

 

「君は俺を分かってないねヒカリ……俺は不確定要素を嫌う、確かな情報とシナリオで勝つのが美学だ、そんな君に俺は……こんな不確定要素を君に直接伝えているんだ」

 

「……………………」

 

「これはかつて俺が南雲原に送り込ませていた住人の情報さ、今は謹慎を食らって帰ってきてるけどね………いつもなら俺はこんな戯言信じてないさ、でも今回に限っては前例があるからね」

 

「………前例?」

 

『お前だよ!お、ま、え!』

 

「ボク……?」

 

「君は突然この帝国学園にやってきた、まるで彗星のようにね………どこからともなく現れた突然変異のかいぶつ、サッカーモンスター……円堂ハルは生まれた時の環境で、必然的にそうなった天才だが、君はその境遇で円堂ハルに引けを取らないかいぶつになった、言わば化生のような存在だ」

 

「そういう前触れもなく現れる、君のような存在………俺が伝えてる南雲原のかいぶつは、そういう奴だと思っているよ」

 

「………化生………前触れのないかいぶつ………」

 

「情報によれば1回戦は南雲原と京前嵐山の試合……京前嵐山は化身使いを擁している、これに相対する事が出来るのは化身だが…………もしもこの戯言が本当なら、現れる筈さ」

 

「……………だとしても、そんなの簡単に信じられないな」

 

「あぁ、だから一つ賭けをしないか?」

 

「賭け?」

 

「フットボールフロンティア本戦1回戦を共に観戦して、君の眼鏡に叶う選手が本当に居たら、今度こそ俺達とサッカーをしてもらう……そして何も無かったら……今後俺達は君に何も言わないことを誓おう、退部も止めない」

 

「………本気?」

 

「あぁ」

 

どうやらまじで言ってるらしい、そんなデタラメ………と、言いたいところだけど……ボクの存在がそのデタラメを確立させてるのなら、それを確かめなきゃいけないかもしれない。

それに、かいぶつを求めているのは本心だ………はぁ、まぁ……こうしてダラダラするのも飽きてた所だし、乗ってやるか。

 

「………そこまで言うならわかったよ、忘れないでよ」

 

『よっしゃ!おめーも忘れんなよー?』

 

「……で、そいつの名前は知ってるの?」

 

「あぁ、黒景 流だ」

 

「………くろかげ、りゅう………ねぇ」

 

それなら拝んでやろうじゃないか……円堂ハル以外のかいぶつが………本当に居るのか。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

俺達南雲原中サッカー部はサッカーガーデンを一回り見て、宿舎コテージに集合し次に戦う一回戦の相手……京前嵐山中の作戦会議を行っていた。

 

つーかすげーいいとこだな、この宿も綺麗だし設備めちゃくちゃ整ってるし少年サッカー様々ってな………おっと、笹波の話に集中しないと。

 

「京前嵐山の最大の特徴……それは〈化身〉です」

 

「化身か……」

 

化身、それは必殺技とはまた違うサッカーの大技。

使用者の気のパワーを具現化し、サポートをする魔人を作り出すもの……かつてフットボールフロンティアがホーリーロードと呼ばれた時代は、この化身を使用する化身使いが跋扈していた魔境も過去にあった。

 

しかし……現在化身使いはかなり少なくなっている。

理由は単純、強力な分体力をめちゃくちゃ消費するからだ。

 

最近ではそのリスクを重く見て化身を使用するチームは年々減っている、シンプルに必殺技やらタクティクスやらで戦略を練った方が簡単だからかな……しかし、そんな昨今に京前嵐山は化身メインの戦術を敢えて使っている為、どの学校も対策に苦労しているそうだ。

 

「(化身かぁ………あの人も化身使いだよなー)」

 

化身と聞くとあの人の事を真っ先に思い出す。

ていうかさっき言ったホーリーロードで革命を起こした人だからなぁ、化身かー………ヤるの楽しみだなぁ。

 

「雲明、化身ってのは確かに強力だけどよ……その分リスクだって大きいはずだろ?それだけで強敵なのか?」

 

「京前嵐山が強いのは、化身同士を連携させる〈化身共鳴〉……このシステムが絶対的な戦術ラインを生み出しているからです」

 

「フォワード、西條リルの化身〈魔槍剣聖クララバニー〉……ディフェンダー、屋代統の化身〈城壁巨兵ウォーボーグ〉……強力なこの2つの化身が、相手選手のプレイ介入をシャットアウトしてきます、そして化身を化身なしで破るのは相当な能力差が無ければ不可能です…………が」

 

笹波はそう区切ると、俺の顔を見つめてきて……周り奴らも、何も言わず立っている俺に視線を集める。

 

この流れ………もしや?

 

「皆さんに、この試合の重要なポイントを告げます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「京前嵐山の化身には、こちらのサッカーモンスターで迎え撃つ!」

 

「黒景 流を、この試合に出します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………俺の、出番か」

 

「初試合で、黒景先輩には化身使い2人を相手してもらいます、京前嵐山は2つの化身を攻撃と防御の要としており、この絶対的戦術ラインを断ち切らなきゃ勝てません………よって、そのホットラインを貴方には断ち切って貰います」

 

「おー……責任重大だな、俺」

 

「不安ですか?」

 

「………不安?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最っ高の初陣じゃないのさ」

 

「……えぇ、そうでしょうね」

 

 

俺と笹波の会話で皆の士気が静かに上がるのを感じる。

初試合、それも化身使い2人………贅沢なんてもんじゃないなオイ。

 

相手にとって不足なし、思い切り暴れてやるよ。

 

…………それにしても、化身は化身でしかやれないのなら……あれ、木曽路のは?

 

「それはそれとして、木曽「んっんんっ!!皆さんも、異存はありませんね?」

 

「ねぇよ、ようやく俺らの切り札お披露目だな」

 

「あぁ、テンション上がるな黒景!」

 

「お、おう、もちろん」

 

「頼りにするわよ、流君」

 

「流!あの嫌味ったらしい鼻先ぶち折ってね!」

 

「へ、へい」

 

皆からも期待されている、応えなくてはな………それと来夏はアイツらの態度が相当お気に召さなかったのか………まぁ、あそこで会った時のアイツら確かにいい印象は持てなかったけどなぁ。

 

「黒景先輩をスタメンに組み込むことで、我ら南雲原中サッカー部はようやく全国の強豪と渡り合える力を持てると言えますが、何度も言ってるように黒景先輩のワンマンではなく、皆の力を合わせて勝ち取るチームにします」

 

「切り札を携えて、決勝大会という舞台の為に培ってきた努力を持って、この試合………必ず勝ちましょう!!」

 

「「「「「「おおおっ!!!」」」」」」

 

「では明日から早速、黒景先輩を組み込んだチームの練習を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めません!」

 

 

 

 

 

「「「「「んがっ!!」」」」」

 

勢いに乗って笹波の言葉で盛り上がってたが、いきなりそんなことを言うもんだから皆ずっこけてしまった。

いや、え?俺入れてようやくチーム練習じゃないの?ここへ来てまでお預けなんすかキャプテン?

 

「ちょ、ちょっとなんでよキャプテン?さっきまで流君を起用する気満々だったじゃない」

 

「使いますよ、だからこそです」

 

「また難解な事言ってんな……雲明翻訳係!」

 

「誰が翻訳係だ、意図は掴めてるが」

 

桜咲の呼び名に突っ込みつつも、眼鏡を光らせて伊勢谷が前に出る。

だってお前何も言わなくても笹波の意図殆ど理解するじゃん、そりゃ翻訳係呼びもやむ無しだよ。

 

「黒景の強さを俺達はよく知っている………しかし、敵はまだ黒景を知らない、それを試合当日まで隠しておくのが、キャプテンの狙いだろう?」

 

「その通りです、黒景先輩は南雲原中の時にも馬鹿みたいなプレーをしており、その話題は南雲原の学生専用SNS中では知られてますが、広く使われてるSNSではその話題は乗せられてません」

 

「しかしここは全国の舞台……誰かが僕らの練習を見て、万一にも黒景先輩の存在がバレてしまえば対策を施されてしまう危険がある………よって、先輩はまだここで練習をさせるわけには行かないんです、切り札を完全に切り札として使う為に」

 

「なるほど、奇襲の意味も兼ねてるわけだね?」

 

「はい、どうせなら派手にお披露目と行きたいじゃないですか」

 

そういう意図ね……よし、そういうことなら文句は無い、ボールめちゃくちゃ蹴りたいけど。

 

「はい!お話も纏まりましたので、本日の所は長旅の疲れを休ませて、明日改めて頑張りましょう!」

 

「はい、今日は特訓なしで」

 

「特訓なし!?やった、色々見て回れる!」

 

「まじか……明日槍でも降るの雲明?」

 

「何?そんなに僕の特訓が恋しい?」

 

「余計な事言うな空宮!ほら行こうぜ!」

 

柳生が失言している空宮を連れてゆき、皆もそこから流れるように……基い逃げるようにコテージから外へ出ていった。

 

残ったのは俺と、笹波と……腕を掴まれてる木曽路と、来夏と、鞘さんだった。

 

「………流君、この後ショッピングモール見て回らない?」

 

「ちょっ!?」

 

「あー………すんません、その前に笹波と話がしたいんで、待ってもらって良いっすか?」

 

「そう、なら外で待つわ」

 

「こんのっ……!」

 

「来夏も後でなー、ほら行った行った」

 

「わ、わかったよ……まてこの抜け駆け女ーー!!」

 

澄まし顔で外に出る鞘さんに、来夏は怒りながら抗議に出た。

いよいよこのコテージに残ったのは、俺と笹波と木曽路の3人だけだ。

 

でも笹波は木曽路を逃がさないと言わんばかりに腕を掴んでる………やっぱこの試合には木曽路の化身も使うのか……まだ見てないけどさ。

 

「な、なんだよ雲明……俺に何かさせる気?」

 

「わかってて言ってるよね、木曽路」

 

「け、化身の事?」

 

「うん、黒景先輩1人の奇襲でも確かに効果は見込めるけどさ、念には念を押したい………木曽路も試合当日には、化身を出してもらうよ」

 

「いいじゃん、俺と木曽路のダブルキーマン」

 

「えええっ?良いんすか先輩、俺なんかと……!?」

 

「別になんかじゃないだろ、今日までの1ヶ月間共に特訓した仲だろ?」

 

「そ、そりゃそうっすけど…………でも、言われた通り体力も作ったし、毎朝登校する生徒達の気の流れをキャッチ出来たりしたんすけど、まだなんか……化身って感じの力は感じれなくて……」

 

木曽路が自信なさげに、これまでの経緯を話す。

言っている通りまだ化身らしき力は感じれない……ただ俺は、今の木曽路からなーんか出たがってモノを感じてるんだけどなー……まだなにか足りないのか……?

 

「それなら木曽路にはもっと人の気が集まる場所で、その流れを読み取る特訓をしてもらおうかな」

 

「え?そんな所あるのか?」

 

「渋谷、スクランブル交差点ですよ先輩」

 

「えええっ!?」

 

渋谷、あー聞いた事だけあるな……ハロウィンに滅茶苦茶パリピな人達が居る所だろ?(偏見)

確かにあそこなら登校中の生徒の数なんてアホらしくなるくらいの人が集まるから、より多く気の流れを読み取る特訓が出来そうだな……流石笹波。

 

「明日にでもその特訓を…………………」

 

「……何、笹波」

 

明日にでもやらせる、と言うはずが言葉を止めて俺と木曽路を交互に見つめていた。

思わず木曽路と俺は目を合わせた……なんだ、俺になにかさせるきなのか?

 

「………先輩はどうせ皆との練習は出来ませんからね、先輩」

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日、木曽路と一緒に渋谷へ行ってきてください、特訓と息抜きを兼ねてね」




黒景 流
本戦一回戦から出場が確定、化身使い2人を相手にするがオラわくわくすっぞ状態。
そして前回のアンケートで二つ名は〈予測不能最終兵器〉になりました………主人公の二つ名か、これが?


月影 蓮
ハルが気に掛けた主人公の存在を知りたくて堪らない模様、しかし雲明と一緒にハルの熱を灯してくれたことには感謝してる。


天河 ヒカリ
アリスの言葉に憤ったりするが、心のどこかで信じたいと願って1回戦を観戦する。
ここから、己のサッカーが始まることを……まだ知らない。



木曽路 兵太
主人公と渋谷デートだよ、やったね!!

来夏/鞘「は?」
  1. 目次
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