忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今回は帝国のサッカーモンスター、南雲原のサッカーモンスター邂逅になります。

帝国学園編はかなり長くなる予定です。


コズミックホラーラビット

「南雲原が5点差で圧勝……とんでもない試合でしたね、キャプテン」

 

「あぁ、黒景流……想像以上のかいぶつだった」

 

「あんなんが新参のチームに居るやなんて、それもハル並……下手すりゃそれ以上なんちゃうか?」

 

「有り得るな、いずれにせよとんだダークホースだ」

 

冷や汗をかく暖冬屋と野神の会話を聞きながら、大きな歓声が行き交う観客席の中で試合終了したグラウンドを見つめる。

フットボールフロンティア全国大会初戦、南雲原VS京前嵐山。

 

俺たちの試合は最後の方で行われる為、敵情視察も兼ねて試合観戦をしていた………それに今回の試合、南雲原はハルが気にとめていた黒景流を出すかもしれないと予想していた。

 

京前嵐山は昨今のサッカーでは珍しく化身使いを中心とした戦術を使っており、マイノリティなサッカーでどの対戦校も対策に苦労しているそうだ。

 

南雲原には当初化身使いが居るという情報は聞いてなく………もしかすれば、ここで黒景流を出場させると予想してたが、的中しスタメンにいて初めて彼のサッカーを見ることが出来た。

 

 

 

しかしその力は俺達の予想を大きく、遥かに裏切る結果になった。

 

 

 

元来化身は化身でしか倒せない、使わずに対抗するにしても相当の実力差が無ければ不可能だったのだが………寧ろ実力が足りてなかったのは化身の方だと言ってもいいくらい、圧倒的だった。

 

その結果、前半のみにも関わらず個人で4点ゴール………雷門の仲間も、事情を知っていた俺と星村でさえ目を疑った、正しくハルに次ぐかいぶつ、南雲原のサッカーモンスターだ。

 

さらに南雲原の動きは予選の時より更に洗練されており、この試合で化身使いまで存在している事が判明した。

ここからまた強くなると考えれば………いずれ俺達雷門と試合をする時、覚悟しなければならないのかもしれない。

 

「こんなこと言いたくないんですけど……今の私達じゃ、黒景流を止めることなんて出来ませんよね?」

 

「………そうだな、ある程度対策を施すにしても、あのドリブルは驚異的だ…………しかし、どこかで見たことがある様な…………?」

 

まるで風のような超高速ドリブル、何か既視感を覚えるが思いつかない………今はそんな事考えても仕方ない、この調子でいけば南雲原は必ず決勝まで辿り着くだろう。

 

その時までにハルが戻って来てくれればいいのだが…………仮にそれが無かったら、俺達も覚悟を決めるしかない。

 

「…………次は帝国学園と英愛学園ですね、流石に帝国が優勢でしょうか」

 

「だね茉莉ちゃん、ファーストチームの監督不破アリスは曲者だから、英愛学園は一筋縄じゃいかないかも」

 

2人の会話を聴きながら顎に手を当て、視線を下に向けて考える。

帝国学園…………昔から雷門とはライバル関係にあたる強豪校だ、この試合後にはアイツらの試合が待っている。

星村の言う通り順当にいけば帝国学園は勝つだろう、しかしその後の準決勝の相手はあの南雲原だ。

 

例え帝国といえど厳しいかもしれない、多岐に渡る戦術で戦う彼らは確かに強敵だが………帝国の中には、黒景流の様なかいぶつは存在してない。

 

京前嵐山も後半は化身共鳴の更なる形で対抗したが、結局は完全に止め切れて無かった、帝国はどうやって南雲原を対策するんだ?

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ、なんかグラウンド変だよ?」

 

「あ?変ってなんや紫雨…………誰か乱入しとらんか?」

 

「あの緑のジャージって帝国の………………………キャプテン、キャプテン!?」

 

「な、なんだ星村!?」

 

思考していると隣の星村が勢いよく肩を掴んで揺らしてきて何事かと思ったら、その顔はグラウンドに向けられて信じられないモノを見ている様だった。

 

勢いよく指を指して俺はその方向へ視線を向ける。

 

 

 

「……………………な…………!?」

 

 

 

 

 

何故そうなったのか分からない、何故こんなことになっているのか分からない。

 

けど、頭は今グラウンドの上で起きている事を次第に理解し始める。

 

先程まで圧倒的な力を示した南雲原のサッカーモンスター、黒景流。

 

 

 

 

 

その黒景流と、帝国のジャージを着ている白髪の少女が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互角のバトルを繰り広げていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

流の初試合、私はずっと見てたけど…………やっぱり強い、とんでもなく強かった。

化身をまるで相手にしてなかった、サッカーモンスターなんて言われてしまうのも納得な、そんなじつりょく。

 

私はほぼ何も出来なかった、追いつけなかった。

始まる前から何となくわかってはいたけど…………こうして見せつけられると、最早悔しさすら湧かないかも。

 

…………以前の私なら色々とまた面倒な事になってたかもしれないけど、今は素直にこの現状を受け入れていると思う。

 

焦らなくていい、今は無理でもみんなと強くなって……今度こそ並んで戦えればいいって思える。

 

いずれ戦う雷門にはまだ円堂ハルは帰ってきてない、その時までにレベルアップしてれば、きっと頂上へ行けると信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど。

 

けれども。

 

今、目の前で起きてる、これは何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………見間違い、ですか?」

 

「…………いえ、現実よ……誰か知らないけど…………流君と……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははっ!ハジメてボール取られちゃった!!」

 

「くっ、速っ!?」

 

 

 

「互角に、渡り合ってる…………!!」

 

今グラウンドの中心で、流と白髪を後ろに束ねた女の子がボールを奪い合っているのだが…………先程流はどこからとも無く放たれたシュートをトラップして、いつの間にか近く来ていたあの子となし崩しでデュエルをしていた。

 

そしてさっき………流からあの子はボールを奪ってみせたのだ。

 

私達があれだけ苦心しても触れることすら出来なかった流のキープボールを、とんでもないスピードで奪ってみせたんだ。

そこからまたマッチアップが繰り広げられ、一瞬の隙を着いて流はデスサイズで彼女からボールを奪ったのだが、それの何が嬉しいのか…………彼女はこれ以上ない猟奇的な笑顔を浮かべて流に追い縋った。

 

「うそだろ、なんだよあの子!?黒景先輩と互角!?」

 

「これはどんなイリュージョンだい………何者なんだ……!?」

 

「速ぇ…………体格差もあるのに、当たり負けしてねぇ!?」

 

「い、一体何が起きて…………!」

 

仲間達も2人の戦いをただ戸惑いながら見守るしか無かった、止めようとしても邪魔になると無意識に考えていた、どうしようもないと本能が叫んでいた。

 

流はサッカーモンスターって言われてる程の実力を持つ、そしてそんな彼に互角以上のバトルを繰り広げるあの子は…………まさか、あの子も……。

 

「サッカー、モンスター……?」

 

「黒景先輩っ!あれは、帝国学園のジャージ……!?」

 

いつの間にか雲明君がベンチからここまで来ていた、彼もまた信じられない様子だった。

そして彼らの戦いは激しさを増し、彼女の脚がボールに触れて弾かれ、高く宙に舞った。

 

「っ!!」

 

「てりゃっ!!」

 

二人のかいぶつは同時に跳躍し、ボールを間に介して見つめ合う。

あの子は楽しくてたまらないと言わんばかりの笑顔を浮かべ、彼は未だに戸惑いながらも……笑っていた。

 

同等の存在が、熱くしてくれる敵が、目の前に居たから。

 

「流…………」

 

「うぉぉっ!!」

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

そして空中のボールに2人の右脚がぶつかり合い、競り合いが始まる。

強い衝撃がボールを介して迸る、両者の力は拮抗していた。

 

「おま、えは…………誰だ!?」

 

「分かるでしょ貴方なら!同じ、かいぶつだよ!!」

 

「ッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザ・フォート!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

「え、キャプテン!?」

 

 

 

 

両者の激しい鍔迫り合いを見ていると、奥からいつの間にか巨大な砲撃要塞が現れており…………そこから砲弾が雨のように2人へ放たれる、

 

流と彼女はボールから離れ、砲弾を避けているけど…………え、ちょっとこれ!?

 

「俺らにも来てねぇか!?」

 

「やべっ逃げろっ!!」

 

巻き添えをくらいかねないと気付き、私たちは蜘蛛の子を散らすように逃げる、雲明君は桜咲が抱えている。

 

雨のような砲撃が降り注ぎ……暫くすると音は鳴りやんだ。

煙が晴れて…………奥から、流がしゃがんでそこに居た。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「黒景先輩!」

 

「流っ!!」

 

無事を確認し彼の元へ皆が走り出す、流の視線の向こうには……先程まで戦っていたあの子が座ってむくれていた。

 

「もー、いいとこだったのにー」

 

彼女は砲撃要塞のあった場所を睨む、そこには派手な髪色とファンキーな髪型をしてマスクをつけてある男の人と、彼女と似たような白髪の肌が黒い男性、目付きがこれでもかってほど悪い金髪の男がそこにいた。

 

いずれも緑色のユニフォームを着ている……そして、真ん中のマスクの男性があの子に青筋を浮かばせて睨んでいた。

 

「あぁ、まぁ、がぁ、わぁぁぁッ!!!」

 

「はっはは!バカみてぇな登場してバカみてぇなバトルしてたな!初めて見たぜ天河のあんな顔!」

 

「頭と身体どうなってんだバカモンスターが………!!」

 

「どーせ次は帝国なんだからいいじゃ「バカヒカリーーッ!!!」

 

「うぎゃっ!!!?」

 

「こんのバカ!クソバカ!食いしん坊のいやしん坊の能天気サッカーバカ!!!ほんっとバカー!!!!」

 

「いででででで!!!痛い痛い痛い痛い固めないでよキーコなぁぁっ!!」

 

「ごめんなさい!ほんっとーにごめんなさい!!よく言い聞かせますのでごめんなさい!!!」

 

 

 

「お、おぉ…………」

 

最初に3人の男たちがそれぞれの反応を見せたかと思いきや、1人の小柄な女の子が白髪の子にラリアットをかましてプロレス技で関節をキメて、後から来た身長の高い女の子がまるでダメな母親のようにこちらへ頭をペコペコさせてた。

 

なんというか…………カオスだった。

さっきまでの雰囲気が一気に吹き飛び、私たち南雲原のみんなは呆気に取られていた。

 

「……黒景先輩、大丈夫ですか?」

 

「え?あぁうん………アイツら、帝国だよな?」

 

「はい、僕らの次の試合の人達です………そして、あの子も」

 

雲明君が胡座で座っている流の隣に立ち、カオスが極めている彼らを見据える。

帝国学園………聞いた事がある、雷門に負けず劣らずの名門校、そして高確率で私達南雲原と準決勝で試合をする強敵。

 

あの子もきっと帝国の一員なんだ…………あんなのが、まだ円堂ハルや流以外にも居たなんて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やれやれだ、まさか観客席から降りてグラウンドに突っ込むとは思わなかったなアリス?』

 

「全くだねブラザー、あんなにも生き生きとしていたヒカリは初めてで読めなかったよ」

 

途端に、甲高い声とどこか気怠げな声が私達に聞こえてきた。

そして彼らの奥から、右手にうさぎのパペットをつけている猫背で軍服を着崩して着ているような男の人がゆっくりと……後ろの帝国学園の人達を引き連れてこちらに歩いてくる。

 

その様は、まるで軍隊だった。

 

そして雲明君と流の前に、その人は立った。

 

「初めまして南雲原中サッカー部………俺は帝国学園サッカー部、ファーストチームの監督不破アリスだ、勝利の余韻の時にうちの天邪鬼が割り込んでしまってすまない、預かるものとして謝罪させてもらう」

 

『ごめんなー』

 

そう言うとうさぎのパペットと共に頭を下げた、えっと………なんか色々とツッコミを入れたいんだけど、なんか面倒くさそうだから何も言わずに黙って見ていよう。

雲明君も流もポカーンとしてるし。

 

「そして…………黒景流、君に感謝を」

 

「ん?俺?」

 

彼が顔を上げると、座っている流に視線を向けていきなり感謝の言葉を向けられて、彼も困惑している…………なんで?

と思っていると、さっきのキャプテンと呼ばれた男の人があの子…………天河と呼ばれた子の首根っこを掴んで不破アリスの隣に落とした、まるで猫か何かだね……?

 

「うぎゃっ……ん?」

 

「君という存在が我ら帝国のサッカーモンスター……天河ヒカリを長い眠りから覚醒させてくれたからね」

 

表情は変わらないけど、どこか弾んだ声で話しながらその子の頭を手に乗せた………帝国の、サッカーモンスターって………!

 

「帝国の……サッカーモンスターですか?」

 

「先程見たはずだよ笹波雲明………君のところのかいぶつと、俺のところのかいぶつが互角の戦いを繰り広げていた、それが証拠さ」

 

「…………」

 

雲明君は冷や汗を書きながら天河ヒカリに目を向けて、彼女は目をぱちくりさせている、若干涙目だ。

…………そう、信じられないけど見せつけられた、向かうとこ敵なしと思っていた流は、その子と対等にぶつかっていたのだから。

 

あの時はまるで獲物を捉えた獣のようだったのに、ペタンと座り込んで不破アリスにその頭に手を乗せられてる姿は本当に小動物みたいで、同じ女の子なのに可愛らしさすら感じてしまう。

 

『こいつの実力の一端はさっきの通りだけどよ、こいつのモチベはつえーやつとのサッカーで、最初は円堂ハルがお目当てだったんだけど知っての通り大怪我で再起不能とか抜かして、それを聞いたヒカリはすっかりやる気を失っちまって幽霊部員も同然だったんだよ』

 

「そんな時に、黒景流という新しいサッカーモンスターの誕生によって、ヒカリは再びサッカーへの熱を取り戻してくれた………我々としてもこの子の才能を使わない手なんて無かったからね、いずれ敵になるとはいえ黒景流には感謝してるよ」

 

「…………そうなのか、えーっと、天河?」

 

「そうだよ、流先輩っ」

 

「……え、流先輩?」

 

「1年上でしょ?だから流先輩って呼ぶね?ボクの事もヒカリって呼んでよ!」

 

「お、おぉ…………」

 

「(ちょ、いきなり馴れ馴れしすぎ!?)」

 

距離感が近いのか、あの子は流に屈託のない笑顔を向けてそんな事を言ってきたんですけど!?なんかいきなり違う意味で危機感を覚えてきたんですけど!?

 

隣の鞘先輩も私と同じ感想なのか、冷や汗を垂らしていた。

 

 

 

「…………あの君達、良いかな?」

 

 

 

そんなやり取りをしてると、審判の人達がこちらにやってきた。

そして奥には青いユニフォームを着ている…………えっと、確か英愛学園の人達だっけ?なんか困ったような顔でこちらを見ている。

 

「これから試合をする帝国学園のみなさんは兎も角、南雲原の人達はそろそろ退場をお願いしたいのですが…………」

 

「……あっ!すみません!すぐ出ますので!」

 

それを言われた雲明君と私達はハッとしてしまった、そうだよ忘れてたけど試合終わった後じゃん!どんだけ居たの私たち!

 

「ふむ、引き留めてすまないね、我々もすぐに試合の準備をするとしよう、君もベンチに座るんだ」

 

「はーい…………流先輩っ!」

 

「お?」

 

「久々に思い切りサッカー出来て楽しかった!ほんっと強かったよ!」

 

「そ、そっか…………お前も強かったよ、ヒカリ」

 

「うん!試合が楽しみだね!」

 

「……いや、まだ決まってるわけじゃ無いだろ?」

 

『いーや、決まってるのさ』

 

流の言葉を、あのうさぎが即座に否定した…………いや、言ってるの多分監督さんだよね?なんで後ろの帝国のみんなは何も言わないの?慣れてるのこれ?

 

『アイツらは俺らの足元にも及ばない、覚醒したサッカーモンスターを入れた帝国は最強さ、そして今や雷門もかの円堂ハルは不在だ………俺たちが真に警戒すべき相手は既にひとつだよな、アリス?』

 

「その通りさブラザー…………笹波雲明」

 

「……不破、アリス君」

 

「次の準決勝、お互い楽しむとしよう………かいぶつを組み入れたチーム同士の試合をね」

 

『それじゃ、お前ら風呂入れよー』

 

その言葉を皮切りに帝国のみんなは私たちを躱すように向こうのベンチへ向かい始める、不破アリスと天河ヒカリも………彼女は笑顔で流に手をヒラヒラさせて。

 

強豪帝国学園、そして3人目のサッカーモンスター……天河ヒカリ。

 

「………やべーことになったな、笹波?」

 

「ええ、全く………間違いなく次の試合は、僕ら南雲原サッカー部史上最大級の戦いになる」

 

「だな…………ふぅ」

 

「その時まで我慢出来ますか、先輩?」

 

「…………以前の俺なら無理だったかもね」

 

「今も無理でしょ」

 

「信頼の無さよ…………本当さ」

 

彼は立ち上がり手のひらを見つめて、握り締める。

その目は確かに、強い闘志を秘めていて…………静かに心を燃やしていた。

 

「天河ヒカリ…………俺と同じかいぶつ………お前みたいなのを待っていた…………!!!」

 

その姿を見て私は…………いや、私達南雲原中サッカー部は心の中で確信を抱いた。

 

キャプテンの言う通り、史上最大級の試合になる予感を。

私達が、より強く進化せねばならないと。

 

 

 

2人のかいぶつに、呑み込まれないように。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ふーっ、久々に楽しかったー」

 

「楽しかったじゃ、ないっ!!!」

 

「いだぁっ!いきなりチョップは酷くないキャプテン!?」

 

「逆にチョップだけで済んで有難く思え!お前の行為は最悪俺達が反則負けになる可能性だってあったんだぞ!」

 

「うぇーマジか」

 

ベンチに座り余韻に浸っていると、キャプテンが脳天にチョップをかましてきた、凄く痛い。

だってしょうがないじゃん、あれだけの力を見せられてお預けなんてあんまりだ、溜まりに溜まったフラストレーション解消したかったし。

 

それにしても………本当に強かったな、流先輩。

初めてボクのボールを奪っちゃって、興奮したなぁ。

 

でも試合終了直後だったから少し疲れてたのかな、まだまだあんなのじゃないもんね。

ふふっ、あー早く準決勝にならないかなぁ。

 

やっと、やっとサッカーが出来る。

ボクと同じかいぶつとのサッカー、どれだけこの瞬間を待ち望んだか。

 

サッカー始めて強くなって、最初はただプレーするだけで満足してた…………けど、次第に味方も敵もボクに追いつけなくて、次第にそいつらとのサッカーがつまんなくなって。

 

かつてのチームはボクの強さにあやかるだけ、いつか強い奴が来るよ、それまで俺達とサッカーしてくれ、お前は俺達とサッカーしようとか、ゴミみたいな同情と仲間意識を向けられて、ホントにムカついてた。

 

お前らだって、ボクに全然追いつけてない癖に。

お前らは勝てて楽しいだろうが、ボク一人の活躍だけの癖に、自分から強くなりたいとか全然思ってない癖に、ボクがチームを離れたら勝手に失望しやがって。

 

「(……あーダメダメ、いらん事思い出しちゃった)」

 

嫌な気持ちを振りほどき、準備を進めるチームメイトを見つめる…………その点、この帝国学園サッカー部は居心地がいい。

 

みんなふつーに強いし、仲間の信頼関係以上に互いの強さを第一に求め合うだけのドライな関係がボクにはドンピシャで性に合っていた。

ボクの事を強さだけ見てるのは一緒かもだけど、このチームは元々そういう方針らしいし受け入れている、紹介してくれたヒロトおじさんに感謝だな。

 

『ヒカリよ、お前今日ちゃんとユニフォーム下に着てるよな?』

 

「うん?まぁ一応」

 

『よし』

 

「?」

 

突然視界を遮って話しかけてきたうさぎに返答して、首を傾げているとうさぎは離れて…………いつの間にか、スタメン全員がボクを囲んで見つめてきた……何、なんかの儀式?

 

そして目の前のアリスか口を開いた。

 

「帝国学園サッカー部1年、FW天河ヒカリ………今日から正式に、君はスタメンに入りサッカーをして貰う」

 

「…………えっ?いきなり?」

 

『この日南雲原にマジでかいぶつが居たら、お前に今日ここで俺達とサッカーをしてもらおうと、事前に決めてたんだよ』

 

「えー?聞いてないよー」

 

「言ってないからね、前もって言えば来ない可能性が高いだろう君は?」

 

「それは、まぁ」

 

「散々君の我儘を聞いてきたんだ、ここからは俺の我儘も聞いてもらおうか」

 

「むぅ……」

 

それを言われたら何も言えない、確かに気分乗らないで練習サボることが殆どだったけど………でも相手そんな大したことないんでしょ、出なくてもいいと思うんだけどなぁ。

 

『じゃあこう考えろ!お前の本当のプレーを観戦してるであろう黒景流にみせるってのは?』

 

「流先輩に?」

 

「君は既に彼のプレーを見ている、なら君のプレーも彼に見せれば、次の試合フェアな対決が出来るんじゃないか?」

 

「あー、それはありかも……」

 

『そしてこの試合の前半、お前もアイツと同じ様に4点連続でとれ!その動きをこちらのデータとして組み込み、お前は黒景流に自分をアピール出来る!お互い得のあるやり方だぜー?』

 

「おぉーっ」

 

思わず目を輝かせてしまった。

そう考えると悪くないかも、相手が雑魚な事を目を瞑れば。

 

 

…………しゃーないな、さっきも少しだけ不燃焼だったし、アリスに従うかな。

 

 

「天河さん、スパイクはここに置いておきます」

 

「はいはーい」

 

靴を脱いでジャージの下を脱ぎ、スパイクを履く。

ベンチから立ち上がりつま先を叩いて上のジャージのチャックを下ろして、上着を脱ぎ捨てる。

 

真凜みたいにユニフォームの襟を立てて、ボクは準備を終える。

 

「へへっ、帝国のサッカーモンスターちゃんデビュー戦だな霊道?」

 

「今から引き立て役にされる英愛学園が不憫でならねぇなぁ…………」

 

「引き立てるだけですめばいいですけどね、ヒカリ容赦しないし」

 

「遂にこの日が来ましたね、キャプテン」

 

「あぁ……散々振り回されて来たが、今度こそ俺達の力になってもらうぞ、かいぶつ」

 

「りょ、ですっ」

 

軽く敬礼して、ご期待に応えましょう。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『さぁ初戦の興奮冷めやらぬ中、2回戦目が開始されようとしてます!帝国学園対英愛学園!帝国学園側は此度も華麗なる戦術による勝利を手にするのか見物ですが、先程の試合後によるアクシデントの張本人が居ますからね!どう見ますか角馬さん?』

 

『えぇ、先程の主役とも言える黒景選手と互角の戦いを繰り広げた謎の人物、背番号0の天河ヒカリ選手ですね、フォワード陣でもトップに置いていますね、先程も突然にサッカーモンスターが現れましたから、今度も同じことが起きてしまいかねないか心配ですね!』

 

『えぇ全く!さぁ開始準備が整ったようです!フットボールフロンティア2回戦目、キックオフです!』

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

試合開始のホイッスルが鳴り響くと同時に観客席から声援が響き渡る。

開始ボールは帝国学園、星見沢から天河ヒカリにボールが渡される。

 

「さぁアリスからの指示だ、好きにやってみな?」

 

「はーい」

 

前試合終了後にグラウンドへ突撃し、南雲原のサッカーモンスターと渡り合った彼女を英愛学園の選手は警戒する。

 

彼女は敵全体を見渡して、軽くため息を吐きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボールを蹴って、歩き出した。

 

 

 

 

 

「な…………なにを?」

 

「はしら、ない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、と」

 

「存分にアピールしちゃうぞ?」

 

 

 




《コズミックホラーラビット》
天河 ヒカリ 背番号0 FW 林属性
お前らに、こいつを理解出来るかな。
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