忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
「………帝国学園が無失点10点差圧勝って、やばすぎだろ」
「あれが天河ヒカリの実力か、本当に黒景と互角かもしれないな……」
「不味いね、僕たちが試合した化身が可愛く見えるよ」
「………帝国の、サッカーモンスター」
僕ら南雲原は試合終了したフィールドを見て、戦慄を隠せずにいた。
フットボールフロンティア全国大会2戦目、帝国学園対英愛学園の試合は帝国の圧勝で終わった。
天河ヒカリの超人的なプレーと帝国の完璧とも言える戦術、この2つはまだ完全に調和してると言えないが………それでもこの破壊力、この時点でこれなら完成した時は一体どうなる事やら。
サッカーモンスター、天河ヒカリ。
僕と同じ中学生でありながら監督を担う、不破アリス。
少しだけ僕と黒景先輩に似ている2人………次の試合は、やはり今大会最難関と言い切っていい。
今雷門にはサッカーモンスターであるハルが居ない、よってチームの実力の総合値として現在は帝国学園がトップに違いない。
僕達にできることは、今まで通り作戦を立てて特訓を積んで、今度も強敵に挑むしかない、また大変な特訓期間になりそうだ。
「(………でも………)」
でもなんだろう、この違和感は。
天河ヒカリのプレーを見る度に感じるこの違和感はなんだろうか?
確かに彼女のプレーは超人的で常識外れで、同い年で女の子とは思えないとてつもないフィジカル。
才能という観点だけ見れば、黒景先輩以上のものを感じる………感じているのだが。
「うーん………うーん?」
「……どうしました?忍原先輩?」
「え、あーいや………なんて言ったらいいんだろ……」
「もしかして、天河ヒカリの事で唸ってるんですか?」
「………もしかして雲明君も?」
僕から上の席で観戦していた忍原先輩が何か唸っていたのを聞いて振り向く、どうやら僕と同じで天河ヒカリに関して何か感じることがあるそうだ。
仲間達は忍原先輩に注目し、古道飼君が恐る恐る尋ね始める。
「どうしたんですか、来夏さん?あの帝国のかいぶつさんに何か感じることが?」
「いや、ね?………変なこと言うかもだけど、いい?」
「はい、言ってみてください」
「……みんなどう思った?彼女のプレー見ててさ」
「どうってそりゃ………やべぇとしか言いようが無いだろ、天河のプレーは普通の人間が出来ることじゃねぇ」
「あぁ、とんでもねーフィジカルから繰り出されたプレーはどれも驚異的に感じるぜ」
「なんつーか感性もやばくないっすか、もしかしたら黒景先輩以上にイカれてるんじゃ………?」
「だよね、流と同じくらいやばそうだけど………けど、さ………」
「………けど何?来夏さん」
「………なんか、言っちゃえばそれまでじゃない?」
「あぁ?イカれたプレー見すぎてイカれたのか忍原?」
「違うよ星!そりゃ私と彼女が一対一やっても絶対勝てる気しないけどさ……でもさ、流があの子に負けるイメージが湧かないって言うか……あの子って本当に流と互角なのかな、雲明君?」
忍原先輩の言葉を受けて、僕は考える。
………そうか、僕の感じた違和感はこれかもしれない………天河ヒカリ、確かにその才能は飛び抜けているが、それだけだ。
彼女がゴールに繋げたプレーは、いずれもその能力を使った行動………それは確かに強力かもしれない、でも言い換えればスペックのゴリ押しが目立っていた、ていうかそれしか見てない気がする。
そうか、彼女は自分の能力をフルに活かせてないのかもしれない。
その点黒景先輩は才能のみならず長年の鍛錬によって培ってきた経験と、自分のサッカーの根幹となったかの人物をルーツとしており、結果現時点中学サッカーにおいて右に出るものがいないレベルのドリブルとシュート力を得ている。
不破アリスはおそらく天河ヒカリのプレーについて気づいているのかもしれない、そしてそれが改善されてないとすると………そのやり方がまだ分かっていないのか?
だとしたらまだチャンスはある、黒景先輩には当然彼女の相手をしてもらうが、高確率で先輩は勝てる。
途中で成長したりするのかもしれないが、その時点で追いつけないくらいの点差を決めれば………!
まだ未確定要素が多いが、これが一番今の帝国に勝てる戦術なのかもしれない。
「黒景先輩、天河ヒカリの事は改めてどう……………あれ?」
隣に………居たはずの黒景先輩の姿がどこにもない、そういえばさっきからずっと静かだと思ってたけど居なかったのか………え、何処に行ったんだ?
「あ?俺も今気づいたが黒景居ねぇな、忍原?」
「私も今気づいたんだけど………トイレかな?」
「そうなんすかね………てか、そう言えば黒景先輩試合中なんだかずっと静かじゃなかった?」
木曽路の言葉で思い返すと、確かに試合開始前は何処から浮き足立って居たが………試合時間が過ぎるにつれて、なんだか大人しくなった気がする。
黒景先輩は天河ヒカリのプレーの違和感に先に気づいてたのかな………それでもなんで居ないんだろう………何時から消えていた?
「とりあえず連絡してみるね、一言くらい言ってもいいのにー」
「試合中とかだったんじゃね?でもあいつが同じ強さの選手を前にして消えるとか有り得ねぇかもだが」
「確かに……………待てよ…………まさか」
「どうしたんだ、伊勢谷君?」
何かに気づき始めたのか、伊勢谷先輩は冷や汗を少し垂らして眼鏡に触れた………あれ、なんだか僕も汗が………。
「………キャプテン、仮に黒景がだ、先に天河ヒカリの違和感に気づいていたとする」
「………はい」
「その上であいつが俺達に何も言わず席から離れている………まさかとは、思うが………?」
「……………………………………」
………嘘でしょ、いや、流石にそんな事しないよね、あの人。
でも、円堂ハルの時も………でも、それでも彼女は強いことに違い無い。
その上で、まさか、まさか。
「皆さん!!黒景先輩を今すぐに探して下さい!!」
「えっ、ど、どうしたのキャプテン?」
「猛烈に………嫌な予感がします!!」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「流先輩、なんかさっきから電話鳴ってない?」
「ん?あー…………大丈夫、電源落とすから気にしなさんな」
「ふーん」
先輩がそう言うなら気にしない。
ボクらは今スタジアムから出て一緒に歩いていた、まさか流先輩から話しかけられるなんて思わなかったなー、ボクも丁度この人の話聞いてみたかったし!
サッカーの話だから、ボクのサッカー関連の話を聞きたいのかな?特に面白いことないよ?逆に先輩のは超気になるけど。
それにしても……………。
「おい、なんかサッカーモンスター2人並んでんだけど」
「うわマジだすっげ」
「もう仲良くなってんのかな………」
「……帝国の子、めっちゃ可愛い」
「黒い髪の人は南雲原だよね?ちょっと気になるかも……」
………なんか周りの人達の視線と声がうざい、なんなの?
「……なんか視線集まってんな、お前見られてんじゃない?」
「ボク?先輩じゃないの?」
「俺見てーな能面気にする奴いないって、お前普通に見た目良いし」
「えー口説かれてるー?」
「な訳」
ニヤニヤしながら隣の先輩を見上げる、みんなボクの事そう言うけどそうかなー、自分で言うのもあれだけど白いだけだよ?
まぁなんか先輩にそう言われるのは嫌じゃないかも………でもここで話をするにしても、集中出来ないかも………よしっ。
「ねぇ先輩、ここじゃなくて別の所行かない?ちょっと電車に乗る距離だけど」
「電車か……まぁいいよ」
「よし、じゃあ案内するねっ」
この時間ならあの河川敷は空いてると思うし、余計な邪魔も入らないからサッカーの話するにはピッタリの場所でしょ。
昔イナズマイレブンと呼ばれた雷門の人達がよく使ってた歴史ある場所だし、先輩も連れて行ったら喜ぶんじゃないかな?
あ、でも………。
「その場所に行く前に少し食べない?ボクお腹空いててさ」
「そう?良いけど何処で食べんの?」
「雷雷軒!それも本店のね」
「うぉまじか、一度行ってみたいとは思ってたんだよなー」
「でしょ?」
なーんか最初に会った時からこの人とはサッカー以外でも合うって予感はしてたんだよなー、同じかいぶつ同士感じるものがあるのかな。
先輩のプレーを初めて見た時の衝撃は今でも思い出せる、まるで風のようなドリブルとシュート、一人でフィールドを横断するその姿に僕は心を奪われた。
円堂ハルのプレーを見た時も凄いとは思ったけどそれだけだった、この人が与えた衝撃と比べられない。
………でも、流先輩がボクのプレーを見て感じた事はボクとは異なるらしい。
凄かったけど、それだけ。
認められてはいるのかな?曖昧な言葉だから分からない………こうして一緒に居るからには教えてくれるよね………ボクのサッカー見られてあんな事言われたのは初めてだったから、自分でも気持ちがよく分からないや。
まぁ今はいいや、先輩の事色々教えてもらお。
「先輩って今までどんなサッカーしてたの?ボクと同じで周りが弱すぎてうんざりしてたとか?」
「別にうんざりはしてないけどな、確かに昔から俺は周りとは合って無かったけど気にせずボール蹴ってたし、どっかのチームにも入らずに今年まで一人でサッカーやってたしな、ちゃんとした試合は今日が初めてだし」
「えぇっそうなの?すごっ、ボクも公式戦は今日が初めてだけど、野試合は昔何回かやってたよ?」
「へー、俺は無いな………お前がサッカーやり始めたきっかけって何?」
「周りの子達がやってたから興味湧いて、一度やったらもう夢中になっちゃって、みるみる孤児院の中じゃボクに追いつける子は居なくなったよ?」
「ほー流石に…………………待て、孤児院?」
「ん?」
「いやお前、孤児院って」
「………あー、言ってなかったね、ボク孤児なの」
「っ……マジ?」
いきなり立ち止まってどうしたかと思ったけど、ボクが孤児院出身なのに驚いてたらしい。
この反応も慣れた、この人もするんだなー……確かに他の人達に比べたらボクみたいな奴は不幸かもしれないけど、親の顔とか知らないしどうでもいい、多分捨てられたと思うし。
「うん、気づいた時にはお日さま園っていう孤児院で暮らしてた、おばさん曰く誰かが赤ん坊だった頃のボクを門の前に置いてたらしいの、薄情だよねー」
「…………笑い事じゃ無くね?」
「笑うしかなくない?自分の子供棄てるとか、まぁ顔も知らないしどうでもいいけど」
自分を棄てた親なんて別にどうでもいい、無論好きになんてならないけど恨んだりもしてない、ひたすら興味なんて湧かない。
お日さま園の子達も似たような境遇の子達ばっか、だから今も仲が良いし家族みたいな存在だから寂しくもない、度々来てくれるお日さま園出身のおじさんやおばさん、お兄さんやお姉さんも優しいし。
「先輩はどう思った?ボクの事聞いて?」
少し意地悪な質問をしてみる、このかいぶつも同情したりするのだろうか、可哀想とか言うのだろうか。
ぶっちゃけお節介だし、そういうのはウザイ。
本当の親と暮らしてて、生温くて安い同情をする奴なんかただの偽善者だ、理解出来るわけない。
先輩はどうだろうか、なんて言うんだろう。
この人まで僕のことを哀れんで…………?
「うーん…………まぁ分からん」
「え?」
「俺も実は父さんが物心つく前に亡くなってるけどさ、母さんが居るからお前の気持ちはわからん、ていうかそれはお前の事情だし口を出すことじゃねぇな」
「…………」
「てかそんな過去より、俺はサッカーについてのお前が知りたいし」
「………………」
あっけらかんと、そう言い切った。
「……アハッ、アハハハ!そう言われたの先輩で2人目!」
「えっ、そうなの?」
「うん、初めて会った時のアリスにさ『君の過去はここでは重要じゃない、俺はサッカーに置ける君を見よう』ってキッパリ言われてさ、新鮮だったし安い同情より気持ち良かった!先輩も同じっ!」
「お、おー……そっか、そりゃ良かった」
「小6まで居たサッカークラブもボクの実力にあやかるヤツらばっかだし可哀想とか毎度言われてウザかったし、そしていざ離れたら色々言うしサイテーだったんだよホント」
「そりゃ確かにひでぇな、そんで帝国に来たってわけ?」
「落ち込んでた時にヒロトおじさんが紹介してくれてさ、帝国はみんな強くて実力主義だから居心地いいんだよねー」
「ほー、てかヒロトおじさんって……円堂守世代のイナズマジャパンに居た基山ヒロトさんか!?」
「うん、てかなんかボクの話より反応強くない?」
「あ、悪い、つい……」
「別にいいよっ、それより今度は流先輩の話聞かせてよ」
それから電車に着くまでボクたちは話を続けた………なんだろ、今までにない気持ちだ。
彼の強さに興味があったのに、今じゃそれ以外の事も知りたくなっている。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「先輩、本当にどこに行ったんだ……スタジアムにはもう居ないのかな、というか電話全然出ないし……!!」
「…………」
「来夏さん、もう電話掛けても出ないんじゃない?多分電源落ちてるかも」
「……そうじゃ、なくて……これ」
「どうしたんですか忍原先輩…………え」
「え、SNSで流君と天河さんが一緒に歩いてるところ撮られてるわね……ていうかやっぱり彼女の元へ行ってるじゃない……!?」
「……デートて………もう付き合ってるって………こいつら………」
「せ、先輩それはネットの声です!真に受けないでください!ていうか第一先輩がそんな邪な気持ちで近づくなんて有り得ませんよ!?」
「……私、流に誘われたことなんて無いのに………これもう寝取られじゃん……」
「寝てから言いなさいバカ、キャプテンこのままだと闇堕ちするわよこの子」
「私は(本来の意味で)寝たし……」
「は?」
「………ぅあああっもうっ!!」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「着いたよ先輩、ここ」
「おーこれが雷雷軒の本店か……意外と人少ない感じ?」
「この時間帯はねー、それじゃ入ろ?」
電車に乗ること数分、俺はヒカリにあの稲妻町に連れてこられた。
この町の近くにはあの雷門中がある、一目見てみたい気持ちもあるが時間も時間だし迷惑だろう。
……それと俺、軽くあの人が居た場所を巡ってんのかな?ヒカリの話によると有名な河川敷のグラウンドに連れていこうとしてるし、東京来てよかったー。
そう考えているとヒカリが雷雷軒の扉をガラガラと開ける。
店内は少し年季が入ってる感じだと思ってたけど、思いの外綺麗めだな……お客さんは一応今日は平日休みだから少なくは無いが思ってたより多くもないって感じ、まぁ混んでないなら有難い。
「らっしゃ……うぉ、大食らいのお嬢さんが来ましたよ店長!」
「あぁ?いまフットボールフロンティアじゃ………お?」
店員の1人がヒカリを見るや大食らいのお嬢さんと言ってなんか驚いている感じだった、お前そんなに食うのか?
そして店長と言われた男の人が俺達を見る、ヒカリは手をヒラヒラとしてるが俺は思わず固まった。
あの人は………記憶が正しければ、かつての日本代表の……!?
「……とりあえず座ってくれお客さん、お嬢さんは何時もの奴で良いな?」
「うん、ほら先輩」
「お、おぉ」
ヒカリに促されてカウンター席に座る、俺達以外のお客さんは学生だったりサラリーマンだったり家族連れだったり……あれ、あそこにいるの雷門中サッカー部じゃね?
思わずじっと見つめてしまう、その人達も俺達に気づいたのかメニューで顔を隠した、おっと……失礼だったかなと思い直ぐに目を逸らした。
「お、おいなんでや!?なんであのかいぶつ2人が並んでここに来とるんや野神!?」
「知るか俺が聞きたいくらいだ……!なんでわざわざ稲妻町に……!?」
「……二人並んで、雷門襲撃とか?」
「恐ろしいこと言うなや紫雨……!」
「?」
「先輩注文しないと、これとかオススメだよ?」
「ん、あーわり………えーっとチャーシューメンセットお願いします、硬麺で」
「あいよ!」
ヒカリが勧めてきたセットを注文する、なんか俺達の事で話してた声が聞こえてきたけど……ま、気の所為だよな。
「お前よくここに来るのか?」
「偶にだけどね、帝国学園とは距離もあるし、美味しいし量もあるから」
「へー……お前大食らいのお嬢さんとか言われてるけど、そんなに食うのか?」
「うん、なーんかお腹すきやすいんだよねボク、円堂ハルと試合出来ないと思ってた時期はより食べてたなー」
「へ、へぇ……サッカープレイヤーが悪食は良くないぞ?」
「ボク太らないしー、お腹も崩したことないしー……でも、先輩みたいなかいぶつが居るなら悪食も無くなるかもね」
「なんで?」
「やっと楽しいサッカーが出来るから!」
隣のヒカリは屈託のない笑顔で俺にそう言った、円堂ハルにもそういう事を望んでたのか……楽しい、サッカーか……それは確かに大事だけどな。
お前には他に大事な事あるのに………やっぱ勿体ねぇな。
「はーいお嬢さんおまちどー!」
「お、どんなの頼んで……」
「チャーシューメンチャーシュの麺倍と雷雷丼餃子2人前です!!」
「きたきたっ」
「……っぁが…………」
華奢な少女の前に出されたのは、通常の2倍ほどありうるチャーシューメンとそのトッピング、オマケに丼サイズのご飯物と20個はある餃子………は?嘘だろ?これここに来る度毎度頼んでんのお前?え?なんで?嘘だろ!?
「先に食べちゃうね先輩、いただきまーす」
「…………はや…………」
行儀よく高速で麺とスープとチャーシューを食べて、丼物と餃子も食べあげてる……お前フードファイター目指せるだろマジで………。
「はいチャーシューメンセットお待ち!」
「おっとありがとうございます、いただきまーす………うんめ」
ヒカリの食いっぷりに目を奪われていると、俺の注文したチャーシューメンとミニ雷雷丼がやってきて、それを受け取り早速ラーメンを食べる。
美味いなぁ、なんか心做しか長崎の雷雷軒よりも美味く感じる……流石本店って言ったところかな?
この雷雷丼は長崎には無かったな…………美味い!普通のチャーハンよりラーメンに合うぞこれ、雷門中の奴ら帰りにこれ毎度食えるとか羨ましいなぁ……。
「……ふぅっ、美味しいでしょ先輩?」
「うん美味い、これ毎度食える雷門中が羨ましいよ」
「そうだねー……すみません、替え玉バリカタで!」
「嘘だろお前……!?」
いつの間にか麺を食い切ってる、てか餃子も食い切ってるし丼も半分以下!?そして替え玉とか胃袋どうなってんだ、お前がよっぽどモンスターじゃん!?
「はい替え玉!少々お待ちを!」
「………はい、ミニ餃子お待ち」
「ん?」
隣のフードファイターに唖然としながら食べてると、俺の前に半人前の焼き餃子が置かれた、いや俺頼んでないと思い顔をあげると……差し出して来たのは店主さんだった。
「えっ、と……これは」
「サービスだ、昼の試合で面白いモン見せてくれたからな」
「フットボールフロンティア、見てたんですか?」
「あぁ、すげードリブルとシュートだったよ、まだお前みたいなのが日本に居るなんて驚きだ」
「あ、ありがとうございます」
やべぇ、元日本代表の人にこんなこと言われるとかやべぇ……コテージ戻ったら自慢しよ。
そう思いながら餃子にタレを掛けて食べる。
「……美味いです」
「おう、あんがとな」
「店長ボクには?ボクも初試合だったよー」
「お前は食いすぎたチビ」
「お客さんなんですけどー!?」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「ご馳走様でした、次は南雲原のみんな連れてきます」
「おう、何時でもどうぞ」
「んじゃご馳走様ー」
「あざっしたー!」
「……いやーまさかお嬢さんが今トレンドのサッカーモンスター連れてくるなんて思いませんでしたね店長?」
「だな、つーかあのチビも引っ張りだこだろ?次はアイツらが居る学校との試合……今からが楽しみだ」
「うーん目が離せませんね本当!どっちが勝つか分かりませんよ」
「どうかね」
「え?」
「見た感じ、チビとあの黒景と言う男には差がある………そしてそれは、黒景流に軍杯が上がっている、チビはそれに気づけてない」
「そうなんですか?俺には試合後のアレ見た感じ互角としか……」
「………………」
「(黒景流………お前の事はなんにも知らねぇが…………天河ヒカリ以上の飢えがあるとみた)」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「ふー!食べたねー先輩」
「食いすぎだよお前、どんな腹してんだマジで」
「………見る?」
「捲らんでいいわ」
冗談でお腹を見せようとしたが止められた、毎回言われるけど全然大丈夫なのに、腹八分目と言ったところ。
雷雷軒でお腹を満たしたボク達は目的地の河川敷まで歩き進めている、ここに来るまで流先輩の話を聞いたけどどれも面白かった。
特に先輩の起源となった憧れの人とのサッカーは心が躍った、そんな強い人とサッカー出来たなんて、ボクも会ってみたいな。
その人の事を語る流先輩は本当に感慨深そうに語っていた、ボクにはそう言った事がないから完全に共感できないけど……。
「……お、着いたよ先輩、ここだよ」
「おーこれが例の河川敷とそのグラウンド、テレビで見たまんまだな」
「まぁ見ての通りただのグラウンドだよ、その他に特別なの無いし」
ボクが時々使っている有名な河川敷グラウンドに到着する、この時間は使う人誰も居ないから気ままにボールを蹴りたい時は訪れている。
先輩と一緒にグラウンド近くまで階段から降りて、荷物を適当な所に置いてグラウンドの中に入る。
先輩はボールを片手に持ってる、もしかして……………。
「先輩、もしかしてここでボクとサッカーするの?」
「あぁ、腹も満たしたし体力も回復したしな、あの時の続きと行こうか」
「やった!今度はボクが」
「ヒカリ」
ボクの言葉を遮り、流先輩はボクの前に出る。
ボールを片手にボクを見据える、その姿を見て……何故か、背筋が強ばった。
無表情な顔から放たれる、その鋭い視線に。
「……せ、先輩?」
「………お前は、俺となら楽しいサッカーが出来るって言ったよな?」
「うん」
「お前にとって楽しいサッカーって何?」
「それは…………それ、は………?」
…………あれ。
ボクにとって、楽しい………サッカー………それって、ボクと同じ、かいぶつと、やること?
ボクは……ただ対等な相手とのサッカーが、したくて………でも、昔からそんなやつ居なかったから………ボクと同じやつを求め続けて……。
「……ヒカリ、話を聞く感じお前は昔からサッカーやってて勝ってたんだろ?」
「……う、うん」
「まぁお前のような奴に勝てる相手なんてそうそう居ないから仕方ない部分もあるけどさ………それって、勝って当たり前のサッカーばかりしてたんだろ?」
「…………え」
「お前の試合を見てて、つまんなさそうにしてたからそう思った、まぁ俺も似たような感じのサッカーやってたから分かるけどさ」
勝って、当たり前のサッカー。
そう言われたそうかもしれない、ボクは一度も負けたことがない、ボクと同じ強さのかいぶつが何処にも居なかったから、いつの間にかサッカーがつまんなくなって、今日になるまでそんなつまらないサッカーばかりしてた気がする。
それを言う為に、ボクに会いに……?
「ヒカリ、お前は確かに強いよ……才能って点は俺を越えている……だからもったいない、このまま試合したって不完全燃焼で終わる」
夕焼けに照らされてながら後頭部をかき、流先輩はボールを地面に落として右足で抑える。
「どういう、意味?」
「お前には足りないものがある、それを俺が今から教えてやる」
「足りないって……先輩とボクに差なんて」
「あるよ、決定的なモノがお前にはない」
「それって、何?」
「教えるって言ってんの、構えろ」
先輩はジャージのチャックを降ろして、ボクを強く見据えた。
ゾクりと、背筋にかつて感じたことの無い緊張が走る。
なにこれ、しらない、こんなのしらない。
目の前にいるこの人は確かにかいぶつで、同じサッカーモンスターの筈なのに……ボクは………本当に、この人と同じなのか。
「俺が、今から……お前のサッカーを壊す」
黒景流/天河ヒカリ
かいぶつ同士で軽く聖地巡礼デート、次の回で関係発展。
笹波雲明
主人公を探すが来夏のカミングアウトで修羅場、大変だね。
雷雷軒の店主
真空魔一本で世界と戦い抜いた男。
サッカーモンスターコンビに感じるものがある模様。