忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今回は野球部決着と、来夏の内なる衝動の話になります。
最近マジで見てくれる人が多くて嬉しい限りです、これからも頑張らせて頂きます。

今日も来夏ちゃんに感謝。


サッカー部誕生にて

1人潰しの必殺タクティクス

《ブロック・ザ・キーマン》

 

俺があの5人相手に対応出来ないような動きをし続け、最初は抜かれまくっていたけど回数を重ねる事に俺のプレーに着いてくるようになった。

 

最終的には来夏が俺からボールを奪い取り、タクティクスの形にはなったという事で特訓は無事終了した。

笹波は最初から来夏達が俺に追いつけないことは察していたらしく、試行回数を続けて身体に覚えさせ、俺の動きを見本として相手の動きを潰す意識を皆に植え付けるのが狙いだったそうだ。

 

よく考えてんなー………俺なんかずっと考え無しにボール蹴ってるだけだし。

………思えば誰かにあぁしてこうしてサッカーしろって言われたのは初めてだな、海カモメのチビ達の相手は何となく分かるし。

中々新鮮な気持ちで楽しめた、明日の決闘も心配無いし……今からのサッカー部が楽しみだ。

 

………それで特訓後、うどん屋のおばちゃんがうどんを強く勧めてきたので、それぞれ腹も空いていたのでご馳走様になった。

腹も脹れて皆明日に備えて解散し、今俺と来夏は同じ帰路に着いている……………んだけど。

 

「…………」

 

「…………」

 

先程から、会話がない。

何時もなら何かしら雑談を繰り広げるのだが、来夏がこうも何も言わない事は余りない、うどん屋でも静かに食べてたし。

 

それと心做しか距離が近い、物理的な意味で。

いつもならもう少し離れてた気がするが、目に見えて近い。

 

そんでもって、来夏は口を開かない…………やべぇ、どうすりゃいいの。

 

「(…………そういや、あの時も様子おかしかったな)」

 

ふと、特訓の最終局面の状況が脳裏に過ぎった。

あの時急プレスを仕掛けてきた来夏の表情、鬼気迫るように……追い縋るかの様な………今まで、見たことの無い顔だった。

あの時はプレーに集中して深く考えてなかったけど、今思えば何かおかしかった。

 

………ダンスに打ち込んでいた時も、多分あれだけの顔をした事は無い………来夏本人に、何か変化が起きたのか?

サッカー短期間にやりすぎて、人格変わった?

 

「……ねぇ、流」

 

「……ん?」

 

俺がアホな事を考えていると、唐突に来夏が口を開き始めた。

なんか、似合わずしおらしいな………。

 

「……今日の私、どうだった?」

 

「どう、ってのは?」

 

「サッカーをやり始めた私は、どうだった?」

 

「ん……?」

 

……なんだ、俺の理解力が無いせいか質問の意図が読めんぞ。

サッカーしている来夏を見て、どう思うか………………まぁ、そりゃ。

 

「上手かったぞ?」

 

「……嫌味だ」

 

「なんでよ」

 

「私含めた5人をあれだけ蹴散らしといて、しかも手加減した上で上手かったーなんて、お世辞ヘタクソ」

 

「えー、本心なんすけど……」

 

「ふん」

 

そっぽ向いて不貞腐れる来夏、何だってんだい聞いておいて…………てか、コイツ………。

 

「………悔しいんだな」

 

「……別に」

 

「気にすんなよ、てか俺とお前じゃ歴が違うし」

 

「違うって言ってんじゃん、バカ」

 

「………はは」

 

「何笑ってんの!」

 

「いや、なんつーか嬉しくてさ」

 

「……え?」

 

「ボロボロにされて、そんなに悔しがるくらいサッカーの事、好きになってんだなって」

 

俺がそう言うと照れ臭そうにする来夏、どうやら図星らしい。

まぁ元々上昇志向の強い奴だからな、ダンスの時もひたむきに頑張っていたし………やっぱ何かしらの目標がある時が1番頑張れるのだろう。

 

「………悔しいよ、サッカーの腕はまだまだなのは仕方ないけど…………それよりも、君との差が大きすぎる事が悔しいの」

 

「俺?そりゃ歴が違うし、当然の事じゃないのか?」

 

「それもあると思うけど………それ以上に、君はサッカーじゃ特別なんだと思う」

 

「特別?」

 

「うん、ざっくり言えば天才って奴、素人の私でも分かるくらい」

 

「………天才、ね」

 

正直ピンと来ない。

確かにそれなりに上手い自覚はある、でも自分が特別だとか、天才だとかどうでもいい、俺はただサッカーが出来ればそれでいい。

………まぁそれなら南雲原に入る前にサッカー部がある学校行けって話だが。

 

大会とかそこまで拘ってないし、行く学校も無かったし………ま、今からサッカー部出来るから結果オーライだ。

 

「………どうでもいいかな、そういうのは」

 

「そーゆーと思った、流は人目気にしないしね」

 

「分かってんじゃん」

 

「どれだけの付き合いだと思ってんの、マイペースな不思議君」

 

「何言ってんの、お前だって俺と2人きりだと面倒くさい構ってちゃんだろうに」

 

「……………うっさい」

 

「あ、否定しないのね」

 

「うっさい!」

 

顔を赤くして噛み付く来夏、いつの間にか何時もの来夏に戻ってるな。

さっきも言った通り、来夏は昔から何かと俺に近づこうとしてくる、なんでだろ………付き合いが長いから、でいいのかな。

 

それで人前では明るいが、俺と二人きりだと少しだけその明るさが鳴りを潜めてる気がする。

表と裏の顔があるという訳ではない、とりあえず俺の近くだと何故かそうなるのだ。

 

もしかしたら過去の事や家内の事情も相まって、本質的には甘えたがりなのかもしれない。

 

「………とりあえず、なんか元気無さそうと思ってたけど大丈夫か?」

 

「ん、まぁ……心配したんだ?」

 

「最後にボール取られた時のアレ思い出しててな、あんな顔見るの初めてだったし」

 

「……………うん、あの時はちょっと焦ってただけ」

 

「(焦ってた、か)」

 

俺にはよく分からんが、そういうものだろうか。

何分俺だって誰かとまともにサッカーをしたことが無い、同じ実力を持った奴とも会ったことも無い。

 

自分で言うのもなんだが、確かに俺と来夏の差はかなり開いていると思う。

才能がどうかはともかく、やってきた時間が長いというのがまず大きい………一朝一夕で俺に追いつくことはまず無い。

 

でも、まぁ…………。

 

 

 

「あんま、考えすぎんなって」

 

来夏の頭に手を乗せる。

唐突な事だった為、来夏はふと立ち止まり驚いた様子で俺を見る。

 

「り、流……」

 

「これから俺らサッカーし続けるんだ、今すぐ追いつけなくたって良いだろ?強くなりたいなら俺だって協力するって、それにお前ならすぐ俺みたいになれる、自信持て」

 

来夏がどこまで考えているのか分からないけど、俺は来夏を信じる。

そこまで考えているってことはそれほどサッカーに対して真剣に考えてるってことだ、来夏に秘めてある元々の身体能力と上昇志向のマインドが合わさればすぐに化けるだろう。

 

「………頑張るけど、こういうの恥ずかしくならない?頭とか撫でてさ………」

 

「そうか?昔何回かしてたと思うんだけど」

 

「も、もう私中2だよ?ちょっと、照れるし」

 

「あー、だから顔赤いのか」

 

「………うるさい」

 

「可愛いヤツめ」

 

「ぅ、ぅぐ……」

 

顔を赤くして睨みつける来夏を見てなんか面白くなり、手を動かして撫でてみる。

来夏はされるがままで抵抗しない、なんか段々猫に見えてきたぞ?

 

「も、もういいでしょ!爆発しそうだからやめて!」

 

「おぉ悪い、なんか面白くてな」

 

「こんの…………私が何かしても反応しない癖にっ……!!

 

「ん?なんか言った?」

 

「別に!それじゃまた明日!ちゃんと見てよね!!」

 

顔を赤くしたまま来夏は足速にその場から走り去っていった。

ありゃ、からかい過ぎたかな………ま、大丈夫だろ。

 

「ふぁ〜………眠、俺もとっとと帰ろ………」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「はぁ………」

 

あの後自分でも驚きのスピードで家に到着し、すかさず自分の部屋に戻ってベッドに倒れていた。

明日は早い、決闘の時刻は放課後だけど朝に集合して念には念をという事で皆雲明君の招集に応じる予定だ。

 

………でも、私はもう暫く寝れそうにない。

顔が熱い、胸が苦しい、走ってきたからというわけじゃない………全部、全部流のせいだ。

 

「…………っ」

 

卑怯だ、ホントにズルい、不公平だ。

私か彼に何しても何処吹く風だと言うのに、撫でられて、あんな事言われるだけでもうこれだ、あんまりだ。

 

 

『これから俺ら、サッカーし続けるんだ』

 

『自信持て』

 

 

「〜〜〜〜ッ!!」

 

 

堪らず傍にあった枕に顔を埋めて声にならない声をあげる。

ダメだ、思い出すだけでさっきより熱と鼓動が酷くなっている、どうにかなりそうだ。

 

なんで、何時も、そうやって………そうやって優しくして………昔からそうだ、落ち込んでる時は慰めて、私の心の中ぐちゃぐちゃにして、本人はそれだけで他は何も考えていない。

 

撫でられるなんて家族にもしてもらった事なんてない、慰められるなんて私にはしてくれない。

でも流はしてくれる、私を見てくれる。

 

ずっと、ずっと隣で……………。

 

「…………流」

 

やっぱり、私はおかしくなってる。

この気持ちを自覚したあの日から、ずっと彼に振り回され続けてる。

 

今日の恐怖を感じて、心が乱された後だと言うのに………また、私は。

 

「絶対、ゆるさない、から」

 

息を荒くして、胸元部分の制服を強く握りながら、そんな事を言ってしまう。

そうだ、絶対許さない。

私をこんなにしておいて、自分は何食わぬ顔で私を見る流を。

 

あれだけの事して、あれだけの言葉を掛けて置いて!

あれだけ優しくして………もう、我慢出来ない。

 

でも、今はダメだ、堪えろ。

今この衝動に従ってしまえば、皆の迷惑になる。

 

だから耐えろ、耐え抜け。

想いを伝えるのは、まだ先だ。

 

「流、流……!」

 

愛しさ余って憎さ百倍って、こういう事なのかな。

これだけ苦しんでるのに、きっとアイツの中で私の存在はただの幼馴染みだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼馴染みなんかで終わらせてやらないから。

絶対、逃がさない。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

南雲原中学校、放課後。

この時間帯になれば帰宅する生徒、部活に励む生徒、居残る生徒と別れるのだが………今日に限っては居残る生徒が大多数だった。

 

それもその筈、今日は一躍時の人となった笹波雲明率いるサッカー部と、南雲原の花形……柳生率いる野球部とのサッカーバトルが始まるからだ。

 

既にその戦いを観戦するために、校舎から覗く生徒、グラウンドで近くに来る生徒と大所帯だ。

そのど真ん中にはサッカー部と野球部が軽く事前運動を行っており、今か今かと開戦が待たれてる状態だ。

 

「………どーなるかね」

 

勿論俺も見に来ている、グラウンド全体を見渡せる場所に行き適当な所で座っていた。

どーなるかね、とは言ってるが………勝敗自体は既に決まってるようなものだ。

昨日のサッカー部はいい動きをしていた、柳生もサッカー経験があるとはいえブランクも大きい筈、野球部で鍛えられてるかもしれないが、それでもだろう。

 

そもそも笹波雲明はこの戦いの勝敗を重要視してない、狙いはあくまでも柳生本人………万一ってこともあるが、その辺ひっくるめてあいつらには頑張って貰いたい。

 

……そうこう言っていると、どうやら始まるみたいだ。

周りの野次馬達も期待で声が漏れていた、この中でサッカー部を応援しているのはどれだけ居るだろうか。

南雲原におけるサッカーへの偏見は既に解かれた状態だ、前よりかは多分多いはずだ。

 

「忍原先輩頑張ってー!!」

 

「忍原先輩こっち見てー!!」

 

あーでも来夏の応援の方が多そうだ………アイドルも楽じゃない。

 

「サッカー部の応援は少数派かね………」

 

「そうでもないわよ、ウチの後輩もサッカー部に興味津々だったから」

 

「あーそっか、流石に増えて………ん?」

 

俺の呟きに自然と会話として話すもんだから、そのまま返事をしてしまった………ていうか、いつの間にか俺の隣に?

 

「いや、見に来てたんすか小太刀先輩」

 

「これだけ話題に上がればね、サッカーも一目見ておこうかと」

 

その人はいつの間にか、当然のように俺の隣に座ってきた。

剣道部3年、数多の剣道大会で数多くの優勝と経歴を残した、来夏に負けず劣らずの才女………小太刀 鞘。

 

金髪の後頭部の大きな三つ編みが特徴的で、何処かミステリアスな雰囲気のある人だ。

この人とは本来接点が無いのだが、去年ひょんな事から知り合い仲良くなっているのだ………その事に関しては長くなるので、機会があれば話そう。

 

「この南雲原で、小規模とは言えサッカーをやる所を見るのは初めてね………キミは関与していないの?サッカーやりたがってたでしょ?」

 

「俺はあの戦いに加わらないだけで協力はしたっすよ、昨日特訓相手になったんで」

 

「そう…………どうやら、サッカー部は負けなさそうね」

 

「………相変わらず察し良いっすね」

 

「相手の内心を読みこむのは戦いにおいて必須よ、キミはちょっと分かりずらいけどね」

 

「(いや、人の事言えないでしょアンタ)」

 

「あら、失礼ね」

 

「また読まれてるし……」

 

澄んでいる様な青い眼で俺を見据える………相変わらず来夏に負けず劣らずに顔がいい……。

南雲原は来夏がアイドル的な人気があるが、小太刀先輩はその裏で負けず劣らず生徒達から隠れた人気がある、本人は全く気に掛けてないけど。

 

だがまぁ無表情だ、俺も無表情寄りだけどこの人のは比じゃない。

如何なる時も自分の姿勢は揺るがない、武士道精神って奴だろうか?この人も俺に負けず劣らずのマイペースって感じだ……そこら辺で俺もシンパシーを感じているのかも。

 

後、彼女自身少しお茶目だったりする。

 

「この試合、サッカー部が勝てばこの南雲原にも正式なサッカー部ができるって事で良いのよね?」

 

「まぁ、皆そう思ってますよね」

 

「………何か、別の目的が?」

 

「とりあえずもう始まるんで、ゆっくり見ましょう」

 

そんな雑談を繰り広げてると、グラウンドでは両チーム配置に着いており開始寸前。

………ていうかアイツら、学校のジャージじゃなくて制服のままなのね、古道飼リュック降ろそうぜ?

対する相手野球部は普通に野球のユニフォーム………うーん違和感。

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

 

審判役の生徒が笛を鳴らし、遂に決闘が開始された。

周りの生徒達も声を上げて盛り上がっている。

開始ボールは野球部、取り巻きが柳生にボールを回してそのままサッカー部チームへ突っ込んでいく。

 

柳生の強みはなんと言ってもその体格だ。

同じ中二の同年代とは思えない程の恵体、並のボディタッチじゃそうそう止めることは出来ない。

直ぐに桜咲と来夏が止めに入るが、他の野球部チームの2人が妨害を阻止し、後方にいた木曽路と古道飼も難なく突破した。

 

「(やるなー……かなり強引だけど、フツーに上手い)」

 

伊達にサッカーをやっていた訳じゃないと言うことか、そして開始間もなくして四川堂と一騎打ち、野球部はいきなりゴールチャンスだ。

 

「まず1点、貰ったぜ!!」

 

柳生がそう勢いよく啖呵を切りながら勢い良くシュートする、右中への真っ直ぐな速いシュート、悪くねぇけど………。

 

「………そこかっ!!」

 

それに直ぐに反応した四川堂はそのコースに飛び込み、真正面でボールをがっしりキャッチした。

 

「なっ!?」

 

 

 

「おぉ!副会長取ったぞ!?」

 

「ゴールキーパー初めてじゃないのかよ!?」

 

「副会長素敵ー!!!」

 

 

 

誰もが野球部初得点と思った事だろうがその予想は裏切られ、四川堂の良いセーブで得点ならずで終わった。

柳生含めた野球部は驚いており、サッカー部は信じていたと言う表情だ。

 

「四川堂なら、あれくらい問題無いよな」

 

「キミの言う昨日の特訓が実を結んでるという事ね?」

 

「そっすね、まぁ30本打って最終的に止めたのは5本だけっすけど」

 

「………………とりあえず、キミと比較したら大したこと無い、と思ってるのね副会長さん」

 

「いや、普通に四川堂が上手いだけじゃないっすか?」

 

「……………そういう事にしておきましょう」

 

眉を顰めて俺を見る先輩、なんで?

 

「………みんな!始めてください!」

 

四川堂のセーブにすかさず、笹波が指示を下す。

という事は来るか、1人潰し。

 

その指示と同時に四川堂が前線の桜咲へロングパスを出す、柳生はそれを奪おうと駆け出す…………事は出来ず、3人に動きを封じられていた。

 

来夏、木曽路、古道飼の3人で柳生の進行、パスカット全てを遮断され、今柳生はフィールド上で孤立していた。

………来夏、すげー悪い顔になってんな………確かに面白がってやりそうだけど。

 

「……これは、柳生君を封じている?」

 

「これが昨日の特訓の成果っす、とにかく一個人を機能させない、今まで通り、思い通りのプレーを許さない1人潰しの必殺タクティクス、ブロック・ザ・キーマン……俺の動きをサンプルとしているから、恐らく柳生はこの戦術を簡単には突破出来ないっすよ」

 

「成程、野球部チームの中心は間違いなく柳生君1人、チームの皆は最初から彼にボールを集めて得点を決めてもらおうかと思っていたけどそれはもうほぼ不可能………現に、ボールが繋がらなくなって機能しなくなってるわね」

 

柳生が動けないとようやく気づくが、桜咲はそんな遅れた対応で止められるほど甘くない。

直ぐに突破されて今度はサッカー部側のチャンス。

 

笹波からお墨付きを貰っているその脚力からシュートが放たれる。

それは柳生の打ったシュートよりもずっと早く、鋭く………野球部のキーパーはそれを止められず、ボールはゴールネットに突き刺さった。

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

得点の合図が鳴り響き、周りの生徒達の大きな歓声が沸き上がる。

サッカー部側の先制点、アウェーな雰囲気なるかと思ったがそんな事は全然無さそうだ。

 

てか……………やーっぱいいモン持ってるなー桜咲、あんな良いシュート見せられたらテンション上がるわ。

 

「楽しんでるわね、黒景君?」

 

「だって良いシュートでしょアレ?これから磨きゃもっと光りますよ」

 

「確かに鋭い一撃だった………サッカーも、中々良いわね」

 

スコアは1-0、しかし時間はまだ余っている……こっから野球部側の反撃次第で結果はまだ分からない。

 

再び野球部ボールで試合再開、さっきと同じ様に柳生にボールが回されるが………再び桜咲以外のフィールドプレイヤー3人が、柳生を即取り囲んだ。

 

 

「なっ!?てめぇらまた!?」

 

「いやーすんません、これは雲明様からの指示なもので!」

 

「お、思い通りにさせないっていう作戦ですから、その、恨まないでくださいね?」

 

「柳生くーん、そこで止まっちゃダメでしょっ!」

 

戸惑う柳生、しかしボールを抱えているものが簡単に止まっては行けない、どーぞあげますと言っている様なもの………来夏はそれに反応してすぐ様ボールを奪った。

 

「再開して即囲んだ………本当に徹底しているわね」

 

「ええ、正直やられたくない戦術っすね………多分サッカー部全員、柳生の動きの癖とかプレースタイルは頭に入れてある、そんな奴らが挙って来るなんて、面倒な事この上ないでしょう」

 

「……………それにしても、少しやり過ぎじゃない?サッカーに関してウチは素人だけど、サッカー部側の動きはどれもいいモノを持っている様に見える、1人潰しに拘らないでプレーしてもいい結果は出せると思うのだけれど」

 

顎に手を当ててフィールドをじっと見据える小太刀先輩の横顔を見る、まぁ………アンタ程の人なら簡単に見抜けるか。

 

「小太刀先輩の言ってることは正しいっす、てか昨日も笹波は普通にやってれば勝てるって言ってたし」

 

「やっぱり………それでもこの1人潰しを継続させる理由は何?知っているのでしょう?」

 

「柳生に、ホントのスポーツを………サッカーをさせる為です」

 

「どういう、意味?」

 

そこから俺は手短に柳生の過去、笹波の本当の目的を話した。

サッカーでも野球でも常に虚しいチャンスを回され、それに応えるしか出来なくなり楽しむ事を忘れた柳生………今奴は初めて、そのチャンスが訪れない状況になっている。

そしてこっからは、アイツが今から本当にサッカーをするか、どうかだ。

 

「……彼も、苦労してたのね」

 

「そっすね」

 

プレー中だか3人に取り囲まれたまま場外の笹波と対談する柳生を見つめる、何を話しているのだろうか………でもよく見たら涙を流していた。

 

そして……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせろ、サッカーを……………」

 

「いや!誰がなんと言おうと俺はやる!!!うぉぉおおおおーッ!!!」

 

 

 

雄叫びをあげ柳生は3人から抜け出し、ボールを持っている桜咲と対面する……………良い顔じゃんか。

 

 

 

 

「お前ら俺ばかりにボールを回すな!!自由にやれ!!」

 

「え、柳生さん?」

 

「このままじゃ負ける!俺ばかりに構うな!勝つぞ!!」

 

「柳生………分かったよ、勝つぞ!」

 

「っしゃぁ!!」

 

 

 

周りも柳生の接待をやめて、各々のプレーに集中し始めた。

これならもうブロック・ザ・キーマンはほぼ機能しない、ここからはシンプルなプレーのぶつかり合いだ。

 

さぁ、面白くなって来たぞ。

 

「なんだか、皆楽しそうね」

 

「実際楽しんでますよ、周りの奴らも含めて」

 

「………成程、笹波君の狙いは今のこの状況を作る為だった、という事かしら?」

 

「かも知れないっすね、これならもう………この南雲原でサッカーが窮屈な思いをする事はもうない」

 

「策士ね………キミもやりたそうな顔ね」

 

「そりゃもう、混ざりたいっすね」

 

「………サッカーか、今の剣道より、楽しめそうね」

 

「………なんか言いました?」

 

「いえ何も」

 

………心做しか、笑ってる気がするけど。

まぁいいか………お、来夏が決めた、すげーシュート………え?

 

「………黒景君、見た?」

 

「………遠くのとこから、ロング曲がる(カーブ)シュート決めましたね」

 

「参考までに聞くけど、あれって初心者の子が出来るもの?」

 

「あー………俺は出来ました」

 

「参考にならないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、サッカー部と野球部との決闘は終了した。

スコアは3-0で、サッカー部の勝利となった。

そのうち2点は来夏のものだった。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「おーっす、お疲れ」

 

既に夕暮れに染まりつつある南雲原。

野球部とのサッカー対決も終わり、俺はグラウンドで休んでいる笹波雲明率いるサッカー部の元へ歩み寄っていた。

 

「お、黒景先輩!俺達無事勝利っす!」

 

「昨日の特訓が良く効きました……黒景先輩の動きを思い出せば全然対応出来て」

 

「そりゃ良かった、四川堂も無失点とかやるじゃん」

 

「正直、君のシュートに比べたら全然追いつけたよ」

 

「どーも、これでようやく……この南雲原にもサッカー部が復活か」

 

「いやまだだよ、部活申請書はまだ出されてないから仮の状態さ」

 

「あらそうなの」

 

てっきりもう出来てるもんかと、まぁいいや。

俺も早く南雲原でサッカーしてーな、んじゃとりあえず………。

 

「………笹波、改めて………俺もこのサッカー部の一員に入れてくれ」

 

「勿論、これからも頼りにさせて貰いますよ」

 

「おう」

 

「黒景、とりあえずお前のポジションはミッドフィールダーだ、フォワードは俺と忍原で埋まってるからな」

 

「まぁゴールキーパー以外なら何でもいいわ、でもモタモタしてっと俺が取っちまうぞ?」

 

「上等だ」

 

軽口を飛ばし合いながら笑う。

こっからどんなサッカーが出来るんだろうか………今からが本当に楽しみだ。

………ていうか、さっきから来夏話してなくね?疲れんのかな。

 

「よっし!じゃあ喫茶タンクで打ち上げといこーぜ!」

 

「あぁ?腹減ったからうどん食いてぇんだが」

 

「昨日も食べましたよね……?」

 

「だが打ち上げには賛成だ、黒景君もどうだい?」

 

「お、良いの?ていうかタンク知ってるんだな」

 

「黒景先輩も行ったことあるんですか?」

 

「大分前からちょいちょい通ってるんだよ、先輩に連れてこられてさ」

 

「じゃあちょうどいいっすね、とりあえず荷物取ってくるんで待っててください!」

 

そう言って笹波達はぞろぞろと校舎へ向かっていった、何食うかなー……ホットサンド辺りでも食うかなー。

 

「ねぇ、流」

 

そんなことを考えていると、来夏から声を掛けられた。

あれ、まだ居たのか………ていうかやっと口を開いたけど、なんかトーンが低くね?

そう思いながら来夏の方へ顔を向ける………睨んでる?なんで?

 

「小太刀先輩と、一緒に観てたよね?」

 

「え、あぁ………まぁ、あの人が隣に来てただけだけど(試合中見えてたのか?まぁまぁ距離あった筈なんだが……?)」

 

「仲良いの?」

 

「まぁそれなりかな、会ったら結構話すし」

 

「……………タンク、先輩に連れてこられたって言ってたけど、それってまさか」

 

「………うん、小太刀先輩」

 

「……………………………そう」

 

……………え、何?何でそんな事聞くんだ?

なんかこえーんだけど、どうしたマジで?

 

「………ど、どうした?」

 

「……………流」

 

「あ、はい」

 

「簡単に、私にした事他の子にしないでよね」

 

来夏はそう言うと、校舎の方へ足速に向かっていった。

 

「……………え?」

 

何が、言いたかったんだ?

俺………やっぱ理解力無いのかな?

 

 




黒景 流
クソスケコマシ野郎、来夏にやる事は全て良かれと思ってるだけなので下心一切無し。
そして心情を察する気配も無し、いつか刺されます。


忍原来夏
多分サッカーやって無かったら襲ってる。


小太刀 鞘
作者が推してるスカウトキャラ。
今回の話でどうなるのかは察する人も多い筈、しかしゲーム内ではモブキャラの枠を出ないので、色々と妄想を交えながら描こうと思ってます。

セレクトキャラは何を選びましたか?(グループC)

  • 古手打 七南
  • 妖士乃 銀狼
  • 濱南 暁海
  • 鉄野 ケルビン
  • 弁天 丸郎丸
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