忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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長い前置きを経て、今回の話で開戦になります。
結構気合い入れますが、短くなるか長くなるかは作者も分かりません(分かっておけよ……)

それと今日までなんやかんやで毎日投稿みたいな感じになってましたけど、試合展開と描写で四苦八苦するかもしれないのでもしかしたら少しだけ投稿が遅れるかも……それでも待っていただければ幸いです。


一・蹴・即・発!

帝国学園との試合まで、残り2日。

南雲原に帰ってきてからの合宿は、かなりつめつめで滅茶苦茶キツかった…………。

 

相手はデータを重んじて戦術を練るチーム、雲明君と似たような方針だ、その計算を狂わせるために選手間の更なるレベルアップと、新しい必殺技の開発を進めていた。

 

それぞれ新技は開発出来ていた、流も流なりにチームプレーに馴染めるように努力していた、私と鞘先輩のようなペアを木曽路と組んで南雲原流のプレーの形になっている。

 

かく言う私は新技自体はできた、ディフェンス技だけど。

…………でも私はこれだけで帝国に…………あの、天河ヒカリに勝てる気がしない。

 

勝つには帝国の戦術以上に、帝国のサッカーモンスターである彼女を塞き止めなければならない。

それは流に基本的に一任されてる、だから私が過度に気にする事は無いけど…………どうにも、心がそれを簡単に容認しない。

 

 

 

だって負けたら流は帝国に行ってしまう、それは天河ヒカリの口約束をそのまま彼が受け取ってしまったからだ。

 

 

 

即ちこの南雲原から…………私の前から姿を消すという事。

考えただけで身震いがする、嫌だ、そんなの嫌だ。

 

だから勝たなきゃ、この試合は負けたくない、死んでも勝ちたい。

 

仮に負けて、彼が消えたら……自分がどうなるか分かったもんじゃない。

 

…………この、離れたくない黒い気持ちは。

以前の酷い悪癖が、再発しかけてる証拠だ。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…………はぁっ」

 

夕暮れの陽射しが刺すグラウンドで、私は1人シュートを撃っていた。

この合宿が始まってからはずっとこうしてる気がする、疲れてるけどそんなの気にしてられない。

 

汗をユニフォームで拭う、私は一応フォワードではあるけど、私のキックはシュート力というより回転を掛ける力で撃つ感じだ。

桜咲や柳生みたいなパワーは私にはない、それでも強いシュートを撃つために回転の力が不可欠なヘルファイアを覚えたけど………それだけじゃきっと、帝国のゴールは奪えない。

 

鞘先輩の伝来宝刀のような相性抜群の必殺技じゃない、ぐるぐるシュートは絶対に通用しない、どうすれば………次の試合で私は勝てる?

 

………ダメだ、何も思いつかない。

 

こんなひたすらにボールを蹴ってるのに強くなれてる気がしない、せいぜい私は春雷を撃つ為のピースだ。

 

こんなんじゃ力になれる訳ない、少しでも勝つ確率を上げたいのに………流に、追いつきたいのに………強くなれる自分が思い描けない。

 

「…………くそっ…………」

 

初戦の流、その後天河ヒカリと対決した流を見た時はやっぱり遠いな……位しか感じなかったのに、物理的に遠くなりそうな危険がある今、私に余裕なんて二文字は皆無に等しかった。

 

強くならなきゃ、少しでも強くなりたい。

流を……………あんなかいぶつに渡したくない。

 

「……はぁっ…………っ!?」

 

呼吸を整えて目の前のボールを蹴ろうとしたが、何者かがその前でボールに足を置いていたから蹴れず、顔を上げてその正体を見る。

 

その人は何時もの澄まし顔に呆れた表情を浮かべて、右手にはタオルを、左手にスポドリを持っていた…………鞘先輩だった。

 

「……貴女ね、何時までシュート練してるのよ、膝小僧笑ってるわよ」

 

「邪魔、しないでうぶっ!?」

 

「邪魔じゃなくて親切よ、準決勝前に壊されたら迷惑よ」

 

邪魔と言い切る前に握っていたタオルが私の顔に投げつけられてしまった、そのせいで後ろに倒れて尻もちを着いてしまった。

 

「何するんですか!」

 

「タオルぶつけられて倒れるくらい疲れてるじゃない、熱心なのはいいけど休みなさい、何度も言うけど壊れるわよ」

 

そう言って私を見下ろしながらスポドリを投げ渡してきて、それを慌ててキャッチする。

むぅっと睨みながら差し出されたスポドリを飲む…………悔しいけど疲れてたのは確かだ、無理して壊れてしまえばそれこそ足を引っ張る結果になるのは分かってたけどさ…………よりによってこの人に気付かされたんだけど、ムカつく。

 

「…………何一人で焦ってるのよ、連れていかれたくない気持ちは分かるけど、無理してもしょうがないでしょ?」

 

「………無理でもしなきゃ、少しも距離を詰められないし」

 

「無理よ、ウチや貴女……そして南雲原の仲間でさえも、あのかいぶつ2人に追いつける訳ないじゃない」

 

「…………」

 

「あれは普通の人間が才能とか努力を携えてもたどり着けない境地に居る、それに入るなんて天地がひっくり返っても有り得ないわ」

 

「……分かってますよそんなこと」

 

「ならなんでこんな無茶するのよ、合宿始まってからずっとでしょ?」

 

「……………」

 

ムカつくけど正論だ、私なんかが流のいる所まで追いつける訳ない、そんなことは受け入れてた筈なのに、それなのに…………なんでこんな事してるんだろ、私。

 

このもどかしさはずっと、私が勝手に抱いてるものなのかな。

…………そうかもしれない、ずっと隣にいた幼馴染みが、初恋が…………消えてしまう可能性があると認識したら、こうもなるんだ。

 

そうなったのは天河ヒカリのせいかもしれないけど、流だって原因の一端なんだ…………なんで、結局離れてしまう様なことにしたのかな、私の事………やっぱりどうでもいいのかな。

 

…………悔しい、彼の中にいる私は、そんなにも小さいのかと思ったら、悔しくて仕方がない。

 

「…………悔しい、だけですよ」

 

「……?」

 

「……彼の中心にあるのはサッカーの事だけ、だから負けたら帝国に行くなんて口約束軽々しく出来てしまうんだ、私から逃げないって言ってくれたのに、結局こんなことになってるのが、悔しくて……流にとって、私ってなんだろうって」

 

「…………」

 

「バカみたいですよね、独りでこんな事考えて………流が別に私の事どうでもいいとか思ってないのは分かってるけど………どうしても、あはは………なに、してるんだろ……ばか、で…………」

 

「……来夏さん……?」

 

あれ?グラウンドの芝生がなんか見えないや。

目が熱くて、涙が止まらない。

 

 

…………泣くくらい、悔しいんだ、私。

 

 

 

自分の弱さが情けなくて、こんなにも悔しくなれるんだ、私。

 

 

 

 

「………今回の事に関しては、確かに流君が悪いと言えるけど、貴女………ひとつ思い違いをしてるんじゃない?」

 

「…………ぇ?」

 

思い違い、その言葉に反応して私は鞘先輩を見上げる。

彼女は夕日を眺めながら話を続けていた。

 

「彼が何故わざわざ天河ヒカリを覚醒させて、その上で負けたら帝国に行くなんて約束をしたのか……それは彼女により本気になってもらうって理由もあるだろうけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多分、それ以上にウチ達を信じてるんじゃない?」

 

「…………信じる?」

 

「南雲原の皆となら勝てるって、そう信じたからじゃないの?」

 

「……え」

 

「だってわざわざ敵を強くさせるなんて、普通じゃなくても仲間にとってはバカな事をしてるけどね、それでもそんな強い相手を楽しみながら、みんなとなら勝てると強く信じたから…………だと、勝手に思ってるわ」

 

「…………」

 

「黒景流はかいぶつで、生粋のサッカーモンスターでサッカーバカで…………理由なくそう信じれる男の人だって、貴女はそう考えなかったの?」

 

「……………………」

 

 

 

 

…………そうかも、しれない。

憶測だけど、彼ならきっとそう考える……流はずっと、私が強くなれるって信じてくれてた、それはきっと仲間達にもそう感じてるはずだ。

 

忘れてたわけじゃないのかな、でも…………流は長い付き合いの私でも分からない行動を取る奴だ、鞘先輩の言葉は本当にそう思ってるだけなのかもしれない。

 

けど………それは確かに流が考えそうなことだ。

 

「……後、貴女だけよ?流君が負けてしまえば帝国に行ってしまうなんて先に考える軟弱者は」

 

「……な、軟弱って」

 

「そうでしょ、こんな無茶な特訓して冷静になったら泣いて…………負けたら、なんて先に考えてるの南雲原じゃ貴女だけよ?」

 

「ぅっ……」

 

「みんな死ぬ気で勝つために練習してるのよ、1人で先に追い詰められながらしてるのは貴女だけよ、メンヘラ女」

 

「だ、誰がメンヘラですか!?」

 

「そうでしょ?止めたあの日も、首に傷をつけた日も、ひとりで勝手に拗れてた日も情緒不安定になって、何が明るいアイドルよ?自分の恋心を制御できずに暴走してるメンヘラじゃないの」

 

「しっつれいですねさっきから!?一人でボロカスに言って!?」

 

「一人で帝国と天河ヒカリにどうやって勝とうなんて考えてたおバカさんとは違うのよ、来夏さんと違ってウチはノーマルだから、キスとか添い寝とか素面で出来ないし…………それは正式に付き合ってからするものでしょ、普通…………」

 

「最後の方だけ普通に乙女しないでくれません!?後キスしてきたのは流ですよ!!」

 

立ち上がって鞘先輩に抗議する。

説教して私のこと言いたい放題したかと思えば、最後は何故か頬を染めて照れながら私の事遠回しに糾弾してるし!なんなの!?

 

「……ま、とりあえずウチだって残り少ない中学生活で彼がいなくなって欲しくないのよ……そういう意味では、ウチと貴女の利害は一致してるでしょ?」

 

「………そりゃ次の試合も協力しますけど、何か別の目的でも?」

 

「ウチの伝来宝刀は更に進化したけど、流石に1人では限界があると思うの、今では桜咲君と柳生君、伊勢谷君と妖士乃君が協力して強力な新必殺シュートを編み出している…………」

 

「……まさか、先輩」

 

「言いたいこと、ここまで言ったら分かるわよね?」

 

…………タオルとスポドリを遠くに置いて、鞘先輩を見据える。

……そうだね、どうせ独りで限界があるなら……これしかない。

 

 

 

 

 

「もう休憩は済んだなら、無茶な特訓の続きをやりましょう……ウチを交えてね」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……なんとか、大丈夫かな」

 

「あり、まだあの仲良し練習してるの?」

 

「貴方のせいでね、また僕がケアする羽目になったんですから………まぁ今回は小太刀先輩が何とかしてくれましたけど」

 

グラウンドで練習をする仲良し二人を眺めていると、黒景先輩が僕の隣にやってきた。

最近忍原先輩が無茶な居残りをやっていると聞き、そこに小太刀先輩を向かわせた…………結果結局練習はしてるが、あれは恐らく新しい連携技の特訓だろう、後2日しか無いけど……まぁ、あの二人なら何とかなるはずだ。

 

ていうか今回の勝敗の結果で忍原先輩はまた以前の悪癖が再発しかけてるかもしれない………そこで抑止剤となった小太刀先輩を向かわせたのは、やはり正解だった。

 

「忍原先輩、貴方のせいでまた追い詰められてたんですからね?少しは彼女事考えてくださいよ」

 

「まじかい、そりゃ悪いことしたな………忘れてる訳じゃないんだけど」

 

「嘘ですね、サッカーの事しか頭にない癖に」

 

「そりゃ笹波だって同じだろ?」

 

「うるさいですよ、それよりさっきまで陣内先輩の新技特訓に付き合ってましたよね?どうですか?」

 

そう、最近の黒景先輩は陣内先輩の新技の開発に付き合っていたのだ。

古道飼君の新技にも関わってたから、自分で陣内先輩に付き合ってあげてたらしい……その経過を聞くと、先輩は少し笑っていた。

 

「完成したよ、中々の技だった」

 

「威力はどんな感じですか?」

 

「‪いやー……ゴッドウィンドが少し止められかけた」

 

「っ!!?」

 

「連続で撃って疲れてたけどさ、威力は保証するよ……ただあれだけの技の連発は少しキツイかも」

 

「………なるほど、分かりました」

 

まさか、それ程の技になるとは思ってなかった…………頼もしいキーパーが増えて何よりだ。

帝国学園との試合は残り2日、しかし明日の昼までには再びサッカーガーデンへと向かわなければならない、そこで練習をしたらデータを取られる危険性があるから、練習は朝までギリギリを詰めるしかない。

 

 

サッカーモンスターを入れたチーム同士の試合、果たしてどうなるのか。

 

 

「もうすぐだな、笹波」

 

「誰かさんのせいでより厳しい試合になりましたがね」

 

「誰だろなー」

 

「今から百目階段1000回やりますか?」

 

「ごめんなさいでした」

 

「全く………天河ヒカリ、どれだけ強くなったのでしょうね」

 

「さぁな、ぶっちゃけ才能はあの子が上だろうし…………だから面白いんだけどな」

 

「そう思えてしまう辺りかいぶつですね、本当………帝国だって手強いチームですよ?」

 

「それもいい、みんななら勝てると信じてるし………それはお前だってそうだろ?」

 

「………当然です、僕はキャプテンですから」

 

「だろ?勝とうぜ、笹波」

 

「もちろん」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

帝国学園との試合まで、残り1日…………いよいよ本番は明日だ。

南雲原に帰還してからの合宿はこれで終わり、朝まで練習と戦術の見直しを進めて……僕達はスカイクラフトに乗り、再び東京のサッカーガーデンへ訪れた。

 

時刻は昼過ぎ、流石に当日まで南雲原に居るのは無理がある為、サッカーガーデンでの練習は禁止し、コテージ内でやれることをやる事にした。

 

…………そして色々考えてたら到着した、今更だけどこうして軽々と関東と九州を行き来出来るなんて凄いよな……。

 

「ふー戻ってきましたなーサッカーガーデン!」

 

「飛行機乗って来るだけでもなーんか疲れんだよな、旅疲れってやつか?」

 

「厳密には違うがそういう心理もあるのかもな、そういう疲れもあって当日まで南雲原に居るのは無茶という事だ」

 

「疲れてるの、普通に朝から練習してたからと思うけど……」

 

みんながそれぞれボヤきながらぞろぞろと荷物を携えて降りる、帝国はデータを元に戦うのだから、ここで軽々しく練習出来ないなら仕方ないんだよ。

 

皆が降りた事を確認すると、元いたコテージまで引き連れて歩き始める。

いよいよ明日だ………間違いなく難関試合、ここを越えたら王者雷門だ。

 

しかし、今の雷門にはハルが居ない…………今頃どうしてるのかな、サッカーに対する熱は戻っているのは確かだ、何処かでリハビリをしてるのかな…………。

 

僕は彼のサッカーを見て、自分のサッカーに対する思いがハルを象ってたほどに心打たれ、サッカーモンスターを倒すべくここまで来た………その前に、別のサッカーモンスターが立ち塞がるとは夢にも思わかなったけど。

 

本当にこの世代はどうなってるんだ?こうもかいぶつが集まるなんて正直信じられないぞ、流石にもう日本には居ないよな…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりー南雲原」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

僕が考え事をしてる最中、コテージの前まで到着した途端……女の子声が耳に入り立ち止まる。

同時に後ろのみんなも止まり、その声の方向へ目を向けた。

 

扉の前の階段に座り、脚と脚の間にサッカーボールを挟みながら僕らを笑みを浮かべて見据えているその子は…………帝国のサッカーモンスター、天河ヒカリその人だった。

 

「は?天河、ヒカリ!?」

 

「なんでここに……!?」

 

「まさか九州に戻ってまでデータ収集を徹底阻止するなんて思わなかったよー、お陰でアリス少しイラついてるよ?同時に燃えてるけどねー」

 

「いや待て、なんでお前がここにいる?来るのが分かってたのか?」

 

「うーん、勘!」

 

伊勢谷先輩の問いにふざけてるのか、もしくは本当なのか分からない返事を返す天河ヒカリを見据えながら僕は考える。

仮に僕らの帰還が悟られていたのなら、不破アリスが彼女を送り出したのか?目的はもしや………黒景先輩のデータを少しでも集めさせる為か!?

 

「それより流先輩はー?居るんでしょ?」

 

「………待ち切れなかったのか、ヒカリ?」

 

「あっ、先輩!もーなんで何も言わず行っちゃうのさー、寂しかったんだからねっ!」

 

「いやいや、俺ら敵なんだからさ」

 

「むーっ…………そんな先輩は」

 

すると天河ヒカリは座った体勢のまま、脚で挟んでいたボールをそのまま宙に浮かせて………少し前に落ちてきたそのボールを…………。

 

 

 

 

 

座ったたまま、片脚を曲げて。

 

 

 

 

 

「こうだっ」

 

 

 

 

押し出すようなキックでシュートを放ち、黒景先輩に向かった。

 

 

 

 

「ッ!?」

 

先輩は警戒していたのも相まってすぐに反応し、荷物を手放してそのシュートを脚で受け止めるが……少し後退りし、ボールはそのまま上へ弾かれて、天河ヒカリの元へ戻り彼女はボールを両手でキャッチした。

 

「流石っ!適当なシュートだけどしっかり受け止めてるっ!」

 

「…………な、なんだ今の、片脚のシュートであの速度と威力……!?」

 

「ていうかあんな体勢で撃てるのかよ、パワーもろくに入らないだろ……!」

 

「うん、今初めてやってみた、全然力込められなかったー」

 

あははーと眉を顰めながら脚をパタパタさせね愛想笑いをする彼女を見て、僕は戦慄を覚えた。

 

今のシュート……いやシュートと言っていいのか?あのキックはまるで自分の脚を抑えたバネのようにして放っていた。

木曽路の言う通りあれじゃ力なんて入るわけない、それでもこの威力と速さ………自分の身体と才能を理解してなきゃ出来ない、この短期間の中で、やはり天河ヒカリは強くなってるのか……!!

 

「いきなりなご挨拶だなオイ、そんで本題は?」

 

「決まってるじゃん、サッカーしよ流先輩?お預け食らってた分ボクに構ってよー!」

 

「いやいや、俺らがわざわざ南雲原に戻って練習してた理由忘れたのか?」

 

「えー必殺技とか無しで良いからやろうよー、普通の練習ばかりで退屈だったしー」

 

「て、てめぇ!いきなりやってきてそんなの「邪魔なんだけど」

 

「ッ!?」

 

「ボクが話して掛けてるの、流先輩なんだけど」

 

星先輩が割り込むが、天河ヒカリは先程までの人懐っこい感じの会話から………芯から冷えるような低い声でイラつく様に吐き捨てる。

人が変わったかのような態度に、僕も思わず身震いしてしまった。

 

………………でも、ここでサッカーをさせてデータを取らせる訳には行かない、こうなったら…………黒景先輩の言う事なら聞いてくれるなら。

 

僕は天河ヒカリに敵意むき出しの忍原先輩と小太刀先輩をチラリと冷や汗をかきながら見て、黒景先輩の服をちょいちょいと引っ張る。

 

「…………ん?なんだ笹波」

 

「先輩耳を、彼女と……………………」

 

「……え、そんなんでいいの?」

 

「はい、それでこの場はやり過ごしましょう、サッカー部の為に!」

 

「……分かった」

 

「ちょっとー、ボクの事無視ですかー?」

 

僕に耳を貸していた黒景先輩は天河ヒカリに近づく、仲良し2人には悪いけど………ここは思い切って…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒカリ、デートしよう!」

 

「え?」

 

「あ?」

 

「んぁ?」

 

「はい?」

 

「えっ!流先輩とデート!?」キラキラ

 

「「は???」」

 

「(もっと暈せよ言い方ぁぁぁあぁああ!!!?)」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

サッカーガーデンに戻ったかと思ったらヒカリが俺らのコテージの前に鎮座して、俺とのサッカーをご所望だったけど笹波はデータを取らせたら不味いとの事で、本題を逸らすために俺がヒカリに何処か連れていけと言われたので、デートしようと彼女に伝え………俺らは今、ショッピングモールのスイーツの出店に来ていた。

 

一連の流れは上の通りだ、仲間は俺をやべー目で見て、笹波は頭を抱えて、仲良し2人はヒカリをやべー目で見てたけど……なんで?言われた通りにしただけだよ?

 

まぁいいや、こうやって二人で何処かに行くのは2回目か………ていうか、ヒカリ…………。

 

「…………なんっじゃそのパフェ、デカすぎねぇか?」

 

「え?1番量のあるスイーツなんですかって聞いたらこれだったから頼んだだけ、ちょうど練習後でお腹空いてたんだよね」

 

「いやいやいやいやいや、見てるだけで胸焼けするわ………何そのクリームとチョコとフルーツの量、人間が食べれるサイズじゃねぇって」

 

「ボクはいけまーす、頂きまーす…………うーん美味し」

 

量はざっくり5人前以上と言ったところか、それを大きめのスプーンでバクバク食い進めてやがる、やっぱり俺よりモンスターだよお前……。

 

「……先輩は何か食べないの、カフェオレだけで」

 

「え?いやいやそれ見てるだけでおなかいっぱいだよ」

 

「まぁそう言わずに、ほら」

 

そういうとヒカリはスプーンにクリームとチョコとスポンジケーキとフルーツを載せて差し出してきた…………機嫌を損ねたら面倒か、仕方ない。

 

「あーんっ」

 

「…………うん、美味いけどこれだけでいいや」

 

「そう?先輩って甘いの苦手?」

 

「別にそういう訳じゃないけど、昼も食ったし……」

 

「ふーん」

 

そういうとヒカリは再び食べ進める、もう半分かよ…………それにしてもさっきから視線を感じる、なんだろう…………すげーゾッとするんだけど。

 

まぁいいか、とりあえず色々聞いてみよう。

 

「ヒカリ、あれからどうだ?しっかり練習してるか?」

 

「むー?………ゴクッ、うんしてるよ、アリスにボクはどうすればいいのか聞いて、そこから自分の力を活かせる方法を模索して特訓してた、今までよりずっと動けるようになれたよっ」

 

「そっか、そりゃ良い」

 

「おかげさまでねー…………あの負けが、ボクを強くしてくれたから」

 

ヒカリは獰猛な笑みを浮かべながら食べ進める、俺を獲物のような目で見つめ、唇についたクリームを舌なめずりする様に舐めとる。

 

「あの日の敗北は今のボクには必要だった、でもそれはそれとしてあんな目に合わせた先輩は絶対に許さない、明日覚悟してよね」

 

「もちろん、その為にしたんだからな」

 

「約束も忘れないでよ、今のうちに南雲原へ別れの挨拶済ませておきなよ」

 

「必要ねぇ、勝つさ」

 

「……信じてるんだね、いいよ、ボクが壊してあげる」

 

中々物騒な事を言うな、俺のせいか?

まぁ…………でも。

 

「楽しそうだな、ヒカリ」

 

「んっ……そう?」

 

「前よりもそう見えるだけだがな、実際どうだ?」

 

「…………うんっ、凄くサッカー楽しい、今までのぼやけたサッカーから考えられないくらい、流先輩のおかげだよ」

 

「そっか、良かった」

 

「でもやっぱりあれは酷いよー、ボクの事あんなめちゃくちゃにしておいてさー」

 

「あー悪い、余りにも勿体なくてさ」

 

「ふんっ………ほら、あーん」

 

「いやもういいんだけど」

 

「あーんっ」

 

「………美味いです、はい」

 

「ふふん、ボクが勝ったら毎日餌付けしてあげるねー」

 

「ペットにでもする気なのかお前……?」

 

「お望みならそうするよ?」

 

「しねーし、てか勝つし」

 

「そっか………あーなんかここでサッカーするの勿体なくなってきた、明日にとっておこ」

 

「それがいい(よし、目論見は達成)」

 

 

 

 

 

そうしてヒカリは食べ進め、パフェは綺麗さっぱり中身が無くなってた。

席から立ち上がり、俺は帰るヒカリを軽く見送る事にした。

 

 

 

 

 

 

「ここでいいよ先輩、後は電車だし」

 

「そうか、明日また会おうぜ」

 

「うん………ねぇ、先輩」

 

「ん?」

 

夕焼けに染まる駅前で、ヒカリは俺を見据えて話を続ける。

 

「流先輩にあえてボク良かったと思えるよ、ボクより強いかいぶつと出会えて、本当に楽しいサッカーを教えて貰って………今ボクがここに居るのは先輩のおかげだよ」

 

「…………礼なら明日の試合で返してくれ、負けるつもりは無いけどな」

 

「ボクだってもう負けは要らない、勝つよ…………そして」

 

ヒカリは歩いてこちらに近づき、距離が縮まると同時に背を伸ばして顔を近づけ……胸ぐらを軽く掴み顔を寄せられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………明日、ボクにされたように…………先輩の全部ぶち壊して、ボクのモノにしてあげる、一生逃がさないから」

 

「…………やってみろヒカリ、逆に壊されても知らねぇから」

 

「あははっ……じゃ、明日」

 

猟奇的は笑みと発言をするヒカリに対して挑発的に返し、ヒカリはそれに満足したのか踵を返して駅に向かった。

 

 

 

「…………にしても、そんなにムカついたのかな、アレ」

 

まぁ確かにいきなり負かすのはやばかったかも……とりあえず、明日全力で試合しないとな、負けたらなんか色々ヤバそうだし。

 

「……とりあえず、帰るか」

 

俺も夕陽を見つめながら、コテージへ歩を進める。

明日が…………楽しみだ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ただいまー、とりあえずサッカーはしなかったぞー」

 

「お、か、え、り…………後輩とのデートは楽しかったですかぁぁ?」

 

「…………どうした来夏、笑ってるけど笑ってないよ?ていうかデートは方便だし、少し食べただけだし」

 

「パフェ食べてたよね?彼女が食べたスプーンで食べたよね???」

 

「見てたの?まぁ食べたけど、それが?」

 

「………………フフフフフフフフフ」

 

「あの、来夏さん?滅茶苦茶怖いんすけど、とりあえず何するか知らないけど明日試合あるんで咎めは受けるんでとりあえず落ち着いて?ね?ね?笹波、ちょっとこいつ抑えてよ」

 

「くたばれ」

 

「なんで!?鞘先輩助けください!」

 

「………付き合ってもないのに、間接キスとか…………」

 

「何を恥じてるんです!?」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滝の流れる音と、川のせせらぎを聞きながらスマホを片手に、おばちゃんから差し出されたおにぎりを食べてお茶で流し込む。

…………試合はまだかな、もう少しだよな。

 

「………待ち切れないって顔だね、ハル?」

 

「……アイル、うん、この試合だけはどうしても目が離せないからさ」

 

「気待ちはよく分かるよ、君と同じサッカーモンスターのいる両チームの試合だからね」

 

「…………俺は違うよ、サッカーに不誠実だった奴がそう言われるべきじゃない」

 

「今はそうじゃない、足のリハビリはもう完了してるのにまだここで修行してるんだから」

 

「それは俺の力が足りないからだ、雷門はかならず決勝に行く………それまでに俺は、俺の殻をぶち破らなきゃ………天河ヒカリか、黒景流と雲明、どちらかと試合をするまでに」

 

「………いい目だね、ギラついてるよ」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

フットボールフロンティア準決勝一試合目、南雲原VS帝国学園………その注目度は、私達の上をいく盛り上がりを見せていた。

 

「観客満席ですよね、まだ準決勝なのに盛り上がり方は決勝並………」

 

「そうもなるだろう、稀代のサッカーモンスター達がぶつかるんだからな……君は、どちらが勝つと思う?」

 

「………順当に行けば歴のある帝国学園ですが、私は南雲原に1票です」

 

「ほう……やはり、あのインタビューが印象的だったかな?」

 

「はい、黒景流もそうですが、あの笹波雲明は間違いなく不破アリスと拮抗します、この試合はどちらが勝ってもおかしくない」

 

「そうだな、さぁ……どんな試合を、見せてくれるのかな」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『さぁいよいよやってまいりました!フットボールフロンティア準決勝一回戦、南雲原VS帝国学園!両校共にサッカーモンスターを携えた者同士!初戦の圧倒的な実力を見せつけ、本日のこの対戦カードは今大会最注目と言っても過言ではありませんね、角馬さん!』

 

『そうですね!それにあの二人だけではなく、チーム自体の実力も拮抗してると言えます、どんな試合なるのやら…………開始がまちきれませんよ!』

 

『全くですね!しかし南雲原の選手達は既にグラウンドにいますが帝国学園の選手達は…………おっと!噂をすれば赤いカーペットが敷かれ帝国学園の制服を着た選手達が揃ってその道に佇み!少年監督不破アリスを筆頭に帝国学園の入場です!!』

 

『相変わらずの美しい入場、圧巻ですねぇ!』

 

 

 

 

 

「…………すげーな、あんなのありなんだ」

 

「軍隊みてーだな、これも規律のひとつか」

 

「まだ開始してねぇのに、身震い止まんねぇ……!」

 

「緊張か、木曽路?」

 

「それもありますが………やっぱワクワクっすね!」

 

「……黒景に似てきたな、お前」

 

遂にこの日が来た、帝国学園との準決勝。

軍隊のような入場に高揚しながら、帝国学園の選手達は俺達の前に並ぶ。

 

そして俺の前に…………ヒカリがやってきた。

 

何も言わず、俺の顔を見て不敵に笑う。

俺もその笑みに、静かに笑って返してやる。

 

あーやべぇ………初戦以上に興奮が収まらねぇ、早くヤりてぇ…………!!

 

 

 

その後それぞれベンチに戻り、俺達は笹波に改めて作戦の内容を仰ぐ、俺は聞きながら新しいスパイクを確かめるようにつま先を叩く。

 

「……以上が前半にて我らが行うことです、木曽路………君の新しい力が発揮出来るまで化身は絶対に使わないように、体力は温存しなければね」

 

「おう!」

 

「黒景先輩も天河ヒカリのマークはお願いします、ていうか対抗できるの貴方だけですしね」

 

「言われなくても」

 

「……この日のためにやれる事はやりました、そして我らが見据えるは…………ただ一つ!」

 

「はっ、当然だな」

 

「勝つしかねぇよな!」

 

「うん!絶対に負けられない!!」

 

「が、頑張ります!」

 

「よし…………勝ちに行くぞ!南雲原!!!」

 

「「「おおおっ!!!!」」」

 

伊勢谷の大きな掛け声に、より大きな掛け声を叫びながらグラウンドに俺達は出る、帝国の奴らもだ。

観客席の人達はその姿に大きな歓声をあげてスタジアムを揺らす、熱くなってるのはここに居るみんなか。

 

そしてポジションにつき、同じくポジションに着いた帝国学園を俺らは見据えた。

 

 

 

 

「ペンギン達が過去最高にウズウスしてやがるぜ………」

 

「俺らにぶつけんじゃねぇぞ、潰すぜ南雲原」

 

「先輩………このフィールドで潰せる…………フフフッ」

 

「暴走するなよヒカリ、アリスの指示を忘れるな」

 

「分かってるよキャプテン」

 

「初試合、気合い入れて勝つよ真凜」

 

「もちろん、一点も入れさせない………!!」

 

 

 

『あの人も見てるだろうな、南雲原はやっぱ侮れねぇって事だ』

 

「あぁ、この日のためのシナリオは組んできた………俺も柄にもなく震えてるよ、不思議な感覚だ」

 

 

 

 

 

 

「俺達とっての最難関………勝ちてぇな、桜咲」

 

「あぁ、黒景に負けねぇくらい俺も熱くなってるぜ……!!」

 

「この難問、完璧に解答してみせよう」

 

「鞘先輩っ、負けられませんねっ!」

 

「もちろんよ、七南さん」

 

「うっしゃぁっ!勝つ!!何がなんでも!!」

 

「………勝つよ流、一緒に!」

 

「……おうさ!!」

 

 

 

『さぁ帝国ボールで始まる模様です!既にスタジアムのボルテージは最高潮!!フットボールフロンティア準決勝第一試合…………』

 

『いざ、キックオフ!!!』

 

 

 

ピーーーーッ!!!




帝国学園 フォーメーション


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