忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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まだまだ前半の帝国戦です、更なる覚醒をみよ。

今回は帝国視点がメインになります。


VS帝国(前半) 熱を燃料に

「ちっ、先制点取られちった………あのキーパーあれだけの技を持ってたのかよ」

 

「データ不足効いてんなー、おまけに南雲原には俺達のスパイバレてたしな、アリスが来てからのこういう試合何気に初めてじゃね?」

 

「ごめんなさい、私がゴールを許したばかりに……」

 

「過ぎたことを悔やんでも仕方ない、まだ前半は15分前……試合が決まった訳じゃないし、こちらのプレーは間違いなく通用しているんだ、この状況の対策もある」

 

仲間達の会話を聞きながら敵陣に居る南雲原の奴らを見る、流先輩はパスを出しただけなのにやたら褒められてる、信用されてないのもしかして?

 

それにしてもやられた、まさかあんな隠し技まであるとは思わなかったよ………やっぱりテクニックに関してはまだ勝てないな、でも先輩にフィジカルコンタクトを仕掛ければこちらが優勢なのは変わらない、付かず離れずで………でも点も取らなきゃな。

 

その前にあのちょんまげ、化身使いの木曽路君だっけ。

直接のパスは1点目を決める時だけだったけど、ボクと先輩が対決してる途中も周りで伺ってたし、アリスの予測通り……彼と流先輩はペアを組んでいる可能性が高いかも。

 

彼の特徴は周りと同調し仲間のプレー繋げる調整力が高いとの事、それを活かして化身すら生み出して……今度は先輩をチームと繋げようとしている。

 

流先輩は文句なしの強さを持つけど、過去に一人でサッカーをした経歴が長すぎて、そのプレースタイルも相まって仲間と合わせるのが少し厳しくなっているらしい、それをあの木曽路君がチームと繋げようとしている……面白い事を考えるね南雲原は。

 

 

でも分かってる筈だよね、そんな形だけのチームプレーじゃ対策されやすいことくらい。

 

総合力ではまだボクらは負けてない、ここからこっちもゴールをぶんどってやる。

 

「(負けたくない、勝ちたい………)」

 

汗を拭うユニフォームを握る手に力が籠る、先輩にボールを奪われてゴールを仲間が決められて………あの日の悔しさが蘇ってくる。

負けるのなんて一度でいい、あの人に勝ちたい………絶対に勝つ、だからこそ今日まで自分の力をどうすべきかを考えて、特訓してきたんだ。

 

ボクに植え付けたこの気持ちを先輩にも味あわせてやる、ボクのサッカーを壊したように先輩のも壊してやる……負けてボクを強くさせた事を後悔させてやる………てゆーか。

 

「(………なにあの女)」

 

僕と似たような髪型をしている赤い髪の女が流先輩と話してるけど、なんか近い………それだけだけど、なんかイライラする。

 

…………さっき金髪の人とタッグを組んでたっけ……あー、確か初めて南雲原のサッカーを見た時に映ってた人か。

動きはあの時と比べて良くはなってるけど、ボクや先輩に及んでない………それだけなら気にすることないのに、なんでこんなにもイライラとモヤモヤが募るんだ。

 

先輩も、ボクに見せた事ないような優しい顔をあの人に見せてる………あーーーーなんだこれムカつく………ボクの目の前で、ボクを放っておいてそんな奴に愛想振りまいて。

 

 

 

そいつなんか、ボクらの足元にも及んでないのに。

 

 

 

「………ザコの癖に………」

 

「なにしてんのヒカリ、腹見えてるっての」

 

「……んっ、キーコ?」

 

ムカムカしていたボクの手を掴んでユニフォームを正すキーコに思わず驚く、おっとキーコにこんな顔見せられないや……忘れろボク。

 

「とりあえず引き続き黒景流はアンタがやんなきゃだから、しっかりしなよ?」

 

「分かってるよ、ボク以外一人で止められないでしょ……ていうか、キーコの新技いつ使うのさ」

 

「もうそろそろだよ、とりあえず一点先取された時のアレ、覚えてるよね?」

 

「うん、度肝を抜いてやる」

 

「よし、一緒に勝つよヒカリ」

 

「……うんっ」

 

 

『さぁ前半の試合時間は残り半分と言ったところ、先制点を決められた帝国の動きに注目したいところですね!』

 

『南雲原は流石の一言ですが、帝国がこのままで終わるわけがありませんからね…………』

 

 

実況と解説と歓声が飛び交う中、星見沢先輩がボールを携えるのを見届けながら、ボクも元いたポジションに着き、流先輩を見据える。

 

首を鳴らしながらゴールを見ていた、この人も絶対どこかでゴールを狙うつもりだ、どんな状況であっても………簡単にとらせないし、させないけどね。

 

後ろに待機しているキャプテンの居る位置へ振り返り、ボクと視線が合う………よーし、再開直後にやっちゃうぞー?

 

 

『選手達の再配置が完了しました!それでは試合再開!』

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

再開のホイッスルが鳴り響き、観客席から期待の大声が湧き上がる。

その最中星見沢先輩から、ボクへボールが飛んできて………ボクはそのボールを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後のキャプテンに即バックパスをして。

 

 

 

「はいっせーの、ばびゅん」

 

 

 

その瞬間フォワード全員と一部ミッドフィールダーは、一気に南雲原陣営へダッシュした。

 

 

 

 

「……あ!?」

 

「え、ボールを後ろにスプリント!?」

 

「……!」

 

 

南雲原はいきなりの強襲に戸惑いつつも構える、そしてボクのパスを受けたキャプテンは更に後ろへパスを出して……キャプテン、本能寺先輩、ボールを持った殿崎先輩の列で待機しており、殿崎先輩がシュートし、本能寺先輩が届いたボールに更に加速をかけて………最後にキャプテンがシュートする!!

 

 

「「「トリプルブーストッ!!」」」

 

 

『なんと帝国学園は!再開直後にシュートを放ちました!!』

 

 

3連続のストレートシュートをボールに掛け合わせて放つロングシュートが放たれる、でもこのままじゃ間違いなくゴールは決まらない………故にボクはその軌道上で走りながらシュートが追いつくのを待つ。

 

 

南雲原か困惑する最中、流先輩は……ボクじゃなくてシュートに即座に向かっていた。

恐らくそのシュートにデスサイズ・カウンターをして逆に決めようとする寸法だ、流石の即判断力だけど………。

 

 

「行かせねぇよ黒景流……!!」

 

「お前は真っ先に警戒対象だっての!!」

 

「っ!」

 

 

ボクと同時に走っていた霊道先輩と星見沢先輩は迷わず流先輩へ向かい、挟んでプレスをしていた。

留める時間は長くないけど、少しでも足止めすればこちらのものだ。

 

「やべ、黒景!」

 

「こいつら、この状況まで想定して!?」

 

そして後ろから着いてきたミッドフィールダー陣営はシュートに触れさせないように阻む可能性のある選手をマークしていた。

 

やがてトリプルブーストはボクに追いつき、そのボールをボクはトラップしてキーパーを見据えた。

南雲原のイケメンキーパーさんは既に構えている、ボクは笑みを浮かべながらボールを一回転させて宙に放つ。

 

青白い光を放ちながら留まるボール目掛けてジャンプし、ゴール目掛けてシュートを撃つ!!

 

 

 

「流星ブレードォォッ!!」

 

 

 

ボールは青き流れ星の刃となりて南雲原のゴールへ襲い掛かる、そしてキーパーは霊道先輩のシュートを止めた神の指を既に携えて待ち構えていた。

 

 

「ゴッド、フィンガーズッ!!」

 

 

ボクのシュートに5本の指が空間を切り裂くような軌跡をぶつけるが……悪いけど、そんなので止められるほどボクの必殺シュートは弱くないよ。

 

 

「くっ……ぐぅっ………がぁぁっ!!」

 

威力を殺しきれずキーパーの必殺技は崩壊し、ボクの流星ブレードがゴールネットに突き刺さった。

 

 

 

ピーーーーッ!!!

 

 

 

『同点弾炸裂ゥゥッ!!帝国学園!再開直後の超速攻で南雲原の意表を突き、帝国のサッカーモンスターのシュートが突き刺さりました!!』

 

『なんという展開の速さ!前半を半分残して振り出しの状態に戻しましたね!』

 

 

静かに着地してゴールを決めたボールとその勢いで後ろに倒れるキーパーを一瞥し、顔を振り返らせて流先輩を見る。

………この状況で笑ってるし………ふふっ、そう来なくちゃね。

 

 

「うっしゃ!ナイスゴールッ!」

 

「さっすがヒカリ!」

 

「ふっふーん、褒めろ褒めろー」

 

「まだ同点だし前半だ、調子に乗るの速ぇんだよ」

 

「霊道の言う通りだ、試合はここからだぞ」

 

「はーい」

 

 

星見沢先輩が頭に手を乗せて、キーコが駆けつけて触れてくるところを霊道先輩とキャプテンがそこまでと諌める。

これで同点、試合はこれから……後半までリードをぶんどってやる。

 

 

「次のプランだ、確実に南雲原は再開と同時に黒景流へボールを渡し、そこからもう一度我らを突き放す為に動く筈………そこを天河が防ぎ、留めたところをディフェンス陣の新必殺技で拘束するぞ」

 

「はい、監督もそれと同時に別の必殺タクティクスの指示もしてますね……こちらも一気に2点目を取りましょう」

 

アリスの居るベンチへ目を向けると、うさぎが指示を出す動きをしていた、何も知らない人からすれば意味不明だろうなー。

 

うさぎの動きを眺めながらまた元のポジションへ戻り、南雲原側も更に気を引き締めた表情で待機している。

 

 

『さぁ前半戦、怒涛の展開で目が回りそうです!この状況で2点目を取ったチームが前半の主導権を握ることは間違いなしですね!』

 

『えぇ、ここから両者どんなプレーを見せてくれるのでしょうか』

 

『では前半戦再開です!同点からリードするのはどちらでしょうか!?』

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

2度目の再開のホイッスルが鳴り、直ぐに先輩へボールが行き渡ることを確認すると、ボクはすかさず距離を縮める。

 

ボクが近づくことを確認すると……先輩は隣にやってきていた木曽路君へ直ぐパスを出した。

 

「うっし!忍原先輩!!」

 

そのボールを受け取った木曽路君はそのまま留めず忍原来夏へパスを繰り出す、ふーん………まぁボクが近くに居るし、遠くへ出すのは間違いじゃないけどさ、膨れながら先輩を睨む。

 

「先輩、ボクとヤリたいんじゃないの?」

 

「そうしたいけどよ、流石に勝ちを優先するって」

 

「ふんっ、ボクと全力でヤリたいからあんなことした癖にっ」

 

「なら俺じゃなくても……全力見せてみろっての!」

 

「ッ!!」

 

すると先輩はボクから離れようと横へ走るが、ボクはそれにすぐ反応して走る、ボールを持たないスピードだけなら互角だよ!

 

「逃がさないってのっ……ボクだけ見てなよ!!」

 

「強欲だなオイ……!」

 

何が悪い、先輩がそうさせた癖に。

先輩がボクこんなにしたのにそんな無責任なこと言うんだ。

 

同点を決める前の、あの女に見せた顔を思い出して苛立ちが蘇りはじめる、あんなザコじゃなくてボクをみろ、ボクを見てよ!!

 

「やっぱ壊してやる、ボク以外見られないくらいぐちゃぐちゃにッ!!!」

 

ボクの中で何かが再び、壊れようとしていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「(よっしボール!同点決められちゃったけど、もう一度ゴールをここで!)」

 

来夏は木曽路からボールを受け取り帝国陣営へ駆け上がる、近くには既に小太刀が並走している。

流は変わらずヒカリにマンマークされており自由に動けない、しかし宛にするばかりでは勝てない、それは来夏以外の南雲原チームがそう考えていた。

 

恐らく自分のヘルファイアではあの王家の盾を破れない、しかし試合前日で完成した小太刀と自分の連携技なら破れると確信し、敵が構えつつも果敢に攻め込んでいた。

 

「忍原さん!俺もいるよ!」

 

「空宮君、はいっ!」

 

やはり帝国は来夏と小太刀のペアを警戒しており、そこから手薄な所にいた空宮へパスを出し前線へ距離を縮める。

 

「(さぁどうする、柳生君とのサンダービーストはいけるか?帝国の新キーパー技は木曽路君と桜咲と柳生君のシュートチェインコンボでようやく破れる程の硬さ……またシュートチェインか、不発に終わった春雷か、ゴッドウィンドか、もしくは仲良しコンビの新技でなきゃ……!!)」

 

南雲原はエンパイアシールドの硬さを基準にシュートを強化したり新技を開発したが、こうなると生半可なシュートをしても突破できない、ていうか簡単に撃たせてすら貰えないんだ、チャンスはなるべく活かしたい。

 

南雲原に戻って練習をして、慣れないスパイクを履いてまで相手のデータをずらしている、データ不足の状況を今のうちに活かさないといけないと空宮は考えていた。

 

「井野辺やるぞ!」

 

「はいっ!」

 

すると油断をしていた訳では無いが、空宮は井野辺と安座に周りを駆け巡られており、いつの間にか自分を中心に水が渦巻いていた。

 

「なっ!?」

 

「「サルガッソー!!」」

 

渦巻く水流に呑み込まれ、弾き飛ばされた拍子にボールを盗られてしまう。

 

しかし……そこに来夏は駆け寄って来ており、一回転してダンスを開始する様なムーブを始めた。

 

「奪い返すよ!フレイムダンスッ!!」

 

まるで炎が踊るように来夏の周りを躍動し、最後にスピンをすると同時に炎がボールを持っていた井野辺に襲い掛かり、燃やされると同時にボールが再び南雲原の元へと行き渡った。

 

 

『忍原選手の新技が炸裂する!両者共に譲らない!!』

 

 

「鞘先輩……くっ!」

 

ボールを維持して来夏は小太刀を見るが、既にマークされておりパスを出せない、そして桜咲も同じ状況だった……帝国は動きが既にこちらへ適応しかけていたのだ。

 

「(撃つ?でも私の技じゃ破れない……チェインを狙うにしてもそんな状況も出来てない、流に出したら天河ヒカリに届く危険もあるし……!!)」

 

「忍原こっちだ!一度戻せ!!」

 

「っ!伊勢谷君!!」

 

あぐねていた来夏に伊勢谷が駆け寄りボールをパスし届く、伊勢谷も南雲原全体の動きが帝国に適応し始めてる事に警戒心を高める、とにかく王家の盾を破る決定力が足りない、小太刀の進化した伝来宝刀を破った以上それより上のシュートが必要と言うのに。

 

 

 

 

 

 

「…………伊勢谷ッ!!」

 

 

 

 

そんな時、南雲原のサッカーモンスターが伊勢谷の元へ駆け寄っていた。

 

 

「黒景!?天河ヒカリは……っ!?」

 

彼にマンマークをしていた帝国のかいぶつの姿がない、よく見ると奥で木曽路と柳生が囲んでいた。

そうして生まれた一瞬の隙を逃がさずに彼は抜け出した………天河ヒカリの危険性がこの瞬間だけでも解消された事を確認し、伊勢谷は迷わずにボールを黒景にパスした。

 

『おおっと!天河選手のマークを外れた黒景選手にボールが行き渡った!これは南雲原チャンスです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かかったね黒景流、檻に閉じ篭ってもらうよ」

 

その時、帝国の監督不破アリスは寧ろ笑みを浮かべながらうさぎと共に指示を出し、流がボールを保持した瞬間周りに井野辺、安座、江流崎が囲うように立ちはだかった。

 

この状況はあえて生み出した、南雲原のゴールから遠ざけてヒカリが追いつかない距離にいれば警戒心も少なからず薄れる……その隙が命取り。

 

「ッ!?」

 

 

 

「「「グラビティケージッ!!!」」」

 

 

 

何かに気づいた時には時すでに遅し、流は3人が生み出した黒い重力の檻の中に入ってしまい、身体全体に超高圧の重力が押しかかってしまった。

 

「ぐ、ぁ、あ、が、な」

 

「流っ!?」

 

いきなりの強襲を避けられず、流はボールを手放してしまいそれを穂村が保持することになった。

そして柳生と木曽路に挟まれてたヒカリは、待ってたと言わんばかりに抜け出していた。

 

「決めろ天河ッ!!」

 

穂村のヒカリへのロングパスが放たれる、流は未だに檻の中へ閉じ込められていた。

 

「ぐ、動、けね、ぇ」

 

『おおっと南雲原いきなりの大ピンチ!?黒景選手が封じ込まれてしまっている!そしてボールは天河選手へ届こうとしています!!』

 

「天河ヒカリを抑えろ!!ボールを渡すなー!!」

 

伊勢谷の鬼気迫る指示が響き渡り、近くにいた柳生と木曽路、そして来夏もそこへ駆け寄る。

 

「パスおっそ、そりゃっ!!」

 

まだ宙に浮いており、落ちてきている状態に待てなくなったヒカリは……その跳躍で2人のマークを引き剥がすと同時にボールを受け取って見せたのだ。

 

「は、たっか!?」

 

「ふざけんな、どんなバネしてやがるッ!?」

 

「くっ、行かせない……!!」

 

ヒカリがボールを取り着地すると同時に、来夏がその前に立ちはだかる。

来夏は冷や汗をかきながら帝国のかいぶつを見据える、それに対してヒカリは何をしているのか理解出来てない顔をしていた。

 

 

 

こんな奴が、ボクを止められるわけないのにと。

 

 

 

 

「…………怖い?」

 

「……えっ、何言って」

 

「流先輩がボクのものになるのが」

 

「……ッ!?」

 

「多分先輩の親しい人なんでしょ貴女、でもざーんねん……今日から先輩はボクのモノになるからさっ」

 

「なに、言って!?」

 

「スプリントワープ」

 

 

 

ヒカリは遮るように必殺技の初期加速で来夏を抜き差る、お前では止められないと言わんばかりに。

そして止めに入ろうとした木曽路と柳生も一緒に抜き去ってゆく。

 

 

「邪魔なんだよ、すっこんでろ」

 

 

来夏に吐き捨てるように呟き、そのまま南雲原のゴールへ直進する。

スピードは今まで以上の速度で迫る、この状況でヒカリは自分を強くしていた。

 

 

 

来夏に対する、無意識の嫉妬で。

 

 

 

『もしやと思って予想してたけどよ、やはり忍原来夏をエサにしてヒカリは自分を強めてんなアリス?』

 

「あぁ……黒景流と忍原来夏は幼馴染みという関係上、南雲原の中では1番親密な関係だろうね………ヒカリは黒景流の事を無意識に慕っている様だから、その様を見て嫉妬の気持ちからプレーを加速させてるのかな?」

 

「……えっとアリスさん、天河さんって黒景流をそう思ってたんですか?」

 

「らしいよ、俺には理解できない感情だがね」

 

 

 

 

「流星ブレード……!!」

 

 

 

「V2ッ!!!」

 

 

 

ヒカリは再び流星ブレードを放つ、その光はより強い輝きを見せながらゴールへ強襲していく。

 

「くっ!スピニングカットV2ッ!」

 

古手打は進化させたスピニングカットを放ち、青い障壁が流星ブレードを阻み……一瞬で崩された。

 

「なぁぁっ!」

 

「うわぁぁ!!」

 

技がこんなにも早く破られるとは思わなかった古手打は吹き飛ばされ、身を挺してシュートへ向かった古道飼も飛ばされてしまう。

 

そして四川堂も覚悟を決めた表情で構えていた。

 

「ゴッドフィンガーズッ!!……ッぁぁあっ!!?」

 

 

 

ピーーーーッ!!!

 

 

 

 

『天河選手2連続ゴーーールッ!!南雲原の選手を殆ど出し抜いてのゴールを決めました!!帝国学園リードです!』

 

『やはりものすごい才能です……!前半は残り3分、ここから南雲原が同点を決めるのは少し厳しいですね……!?』

 

 

「ヒカリやっば……!!」

 

「凄い、まだ私達の範疇に収まらないの……」

 

帝国イレブンは戦慄を隠せずにいるが、その後ろ姿に喜びと頼もしさを覚えていた。

ここへ来て更なる進化を魅せてくれた、そして前半終了間際でリード……後半もこのペースを維持すれば勝てると、帝国は信じていた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

一方来夏は片膝をつき、粗くなる息を整えながら先程天河ヒカリに言われた言葉を思い返していた。

 

 

 

『多分先輩の親しい人なんでしょ貴女、でもざーんねん……今日から先輩はボクのモノになるからさっ』

 

 

 

突如として放たれた自分に対する宣言、自分と流の関係性を知っているのか知らないが、彼女にそう言い切って見せたことで来夏は確信する。

 

 

彼女もまた流に狂わされた女の子なんだということを、だからこそこの試合に勝ったら、流を連れていくのだと。

 

「……ふふ、ふふふ……ッ」

 

思わず変な笑いが込み上げていた、先程も見せつけられた圧倒的な力、自分では追いつけないかいぶつの領域。

 

分かっている、自分ではそこに辿り着けない事くらい。

以前の自分ならまた何かしらの暴走をしていたかもしれない。

 

 

 

 

 

「………ふっざけんな……」

 

 

 

 

 

しかし、彼女の心に今あるものは。

 

 

 

 

「アンタなんか、怖くないっての………流は、渡さない……ッ!!」

 

 

 

恐怖等ではなく、ただ天河ヒカリに対する憤りだけだった。

力の差は既に流との日々で身に染みている、改めて見せつけられても絶望はしない。

 

 

しかし……まただ、3人目だ。

 

 

好きだという気持ちを自覚してからこれだ、どうなってるんだろうか。

やっぱ何時か襲ってやると改めて決意し、手で汗を拭う。

 

そしてふと気づいた、来夏の前に誰かの影を。

 

来夏は見上げると、目の前には小太刀 鞘が無表情で手を差し伸べていた。

 

 

「折れたのかしら?」

 

「……まさか、逆に折りたい気分ですよ」

 

 

来夏は悪い笑みを浮かべながらその手を軽く払い除けて立ち上がる、小太刀は呆れた笑みを浮かべながらその様を見届けた。

 

 

しかしそれは、何処か安心が見える表情でもあった。

 

 

そして改めて状況を確認する、前半終了まで残りたった3分……そしてスコアは1-2の1点ビハインド。

 

時間はまだあるとはいえ、ここで不利的状況のまま終わるのは痛い……。

 

「どうするよ?このまま終わるのは流石にやべぇんじゃねぇか?」

 

「かと言ってあのキーパーの技は簡単に破れないっすよ?1点決めた時のシュートチェインか、黒景先輩か春雷か仲良し2人の新技でもないと………」

 

「「仲良くないっ!」」

 

「この状況で言うなバカ!」

 

木曽路の言葉を同時に否定する仲良し達に空宮が更に突っ込む、とても不利的状況に陥っているチームの雰囲気ではなかった。

それは当然とも言うべきか……南雲原はまだ、何も諦めてないからだ。

 

 

 

 

「んー………アレやるか」

 

 

 

まだ、このかいぶつが居る限りは。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『前半残り3分で南雲原からの再開になりますが、このまま帝国リードで終わるのでしょうか?』

 

『3分ですからねー、可能性はゼロではありませんが天河選手の存在が黒景選手を封じてますからね、流石に厳しいと言わざるを得ないでしょう』

 

 

「ふー………残り、3分」

 

汗を拭いながら再開を待つ、ボクが2点目を取って1点リード……前半はなんだかんだで有利に進めたと言える。

流先輩はボクのせいで思うようにプレー出来てない、南雲原はそれ抜きにしてもいい動きをしてると思うけど、帝国には及ばない。

 

 

だったらやっぱり、帝国の方が良いよね。

 

 

まだ勝てると確信は出来ないけど、彼らに打開策が無ければ貰ったも同然だ………ボクが流先輩を封じれるプレーを出来ているのも、あの日の負けがあったからだ。

 

今頃後悔してるかな………いや、そんな人じゃないよね。

 

「(別にいい、このまま南雲原でのサッカー終わらせて………あの女から引き剥がして、ボクのモノにするまで壊すだけだからさ)」

 

先輩とどういう関係か知らないけど、とてつもなくイライラする……なんでか知らないけどさ………いや、今はとりあえず前半を終わらせることだけ考えてりゃいいや。

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

 

そして試合が再開され、流先輩に再びボールが渡される。

それを確認してボクは直ぐに駆け寄る。

 

「何度やっても変わらないよ、流先輩に………!!」

 

自由なプレーをさせないと、言い切ろうとした時に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ!!!」

 

先輩の両手から風が巻き起こり、ボクは不意をつかれて立ち止まってしまった。

 

「えっ、これって……!?」

 

「なんだ、黒景流の技かこれ!?」

 

風はまるで竜巻が横倒れになったかのように吹いており、帝国のゴールに向かっており、先輩はその中でクラウチングスタートの様な体勢を取って………。

 

 

 

 

「マッハドライブッ!!」

 

 

 

 

流先輩は爆発的ロケットスタートで、その風に乗りボク達のフィールドを横断し、風のせいでボクを含めた帝国の皆は阻害するどころか近づくこともできなかった。

 

「………えっ、もうゴール前!?」

 

『おおっとなんということか!?黒景選手がまた新しい必殺技を使用し、一気に帝国学園ゴール前まで走ってきてます!?』

 

「………ハアッ!!」

 

一気にゴール前まで近づいた流先輩はボールに力を込める。

 

真凜は呆気に取られながらも構える体勢をとるが、ボクは追いつこうとしてひた走った。

 

 

「(ダメだ!キーコ達はグラビティケージの発動が間に合わない!真凜でも、流先輩の必殺シュートは!?)」

 

 

 

 

 

「ゴッドウィンド……」

 

 

 

 

 

「改ッ!!!」

 

 

 

 

他のシュートと比較にならない程重々しいシュートが放たれ、ボクが以前に受けたゴッドウィンドよりも更に進化している必殺シュートが放たれて、真凜は冷や汗をかきつつも盾を構えた。

 

 

「王家の盾ッ…………だぁあっ!!?」

 

 

発動したまではいい、しかし……その神風を纏ったシュートに王家の盾をぶつけた瞬間、耐えきれずに崩壊し………そのシュートはゴールへと突き刺さった。

 

 

 

ピーーーーッ!!!

 

 

 

 

『ゴ、ゴーーールッ!!今度は南雲原が再開直後に!黒景選手単独でフィールドを駆け抜けて必殺シュートを決めたーーー!!土壇場で南雲原同点!同点で追いつきました!!!』

 

 

 

ピッ、ピーーーーッ!!

 

 

 

『そして前半終了のホイッスルが鳴り響きました!帝国学園リードで終わると思われた前半はまさかの同点終了!サッカーモンスター同士のチーム激突の行方はより読めなくなりました!!』

 

「黒景選手と天河選手だけでなく、両校の選手たちの動きのレベルが高いですね!後半戦が待ち遠しくなる前半戦でした!!」

 

 

 

 

 

「黒景!!それお前最初からやれよ!!?」

 

「いやいや……これ……めっちゃ体力使うんだからな?奥の手なんだよ……あーゴッドウィンドもセットだからキッツ……!」

 

「いやでもナイスまじで、何とか同点だ!」

 

 

 

 

「……嘘、まだあんなのがあったの……」

 

ボクを含めて帝国のみんなは唖然とする、油断をしていた訳じゃないのに……その想定以上のドリブル技に度肝を抜かれてしまった。

 

同点で後半戦………振り出しの状態に戻されてしまった。

 

「………くっそ………ホント………強いな」

 

悔しくなりつつも、流先輩の強さにボクは思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「なんとか前半で同点に持ち込めたのは良かったですね、皆さん体力は大丈夫ですか?」

 

「あーおう、なんとかな……」

 

「こっちも、とりあえずは……最後黒景が決めてくれたお陰で動かずに済んだし」

 

前半戦が終わり、南雲原はベンチに戻って休憩をしていた。

みんな前半戦だけでもかなりの体力を使っていた、かいぶつ2人のプレーに着いていくだけでもかなり持っていかれてたからだ。

 

天河ヒカリ……先輩のプレーに着いていくだけでも大事なのに、自分の能力をフルに活かして先輩の動きを阻害して、前半の最後以外は全く受け付けてなかった……しかも帝国もあんなディフェンス技があったなんて。

 

………でもまだまだこれからだ、こちら手は出し尽くしちゃいない。

 

「………木曽路、どう?」

 

「おう、気の流れはどうにか見えるようになったし……何よりリュカオンもそろそろ暴れたがってるよ」

 

「よし、なら後半は頼むよ、まずは何がなんでも3点目先取だ、そして柳生先輩は、妖士乃先輩と交代で下がってもらいます」

 

「……おうわかった、あと頼むぜ?」

 

「あぁ、僕も恥じないイリュージョンを見せよう」

 

「しかしだキャプテン、このまま天河ヒカリを黒景のみに任せても前半と同じような事になるぞ?」

 

………そう、伊勢谷先輩の言う通り天河ヒカリは予想以上に黒景先輩へ食いついている、これではまた同じ事の繰り返しだ。

 

 

 

 

でも前半のプレーで分かった、彼女の心情は。

 

 

 

 

ならここで打つ手は、一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どの道黒景先輩に天河ヒカリがマークされるのは変わりません、しかしその状況に変化を加えます」

 

「変化……………………まてキャプテン、まさか……」

 

「相変わらず、察しがいいですね」

 

伊勢谷先輩はどうやらわかった様だ、僕はゆっくり……忍原先輩と小太刀先輩に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……忍原先輩、小太刀先輩……黒景先輩と一緒に天河ヒカリに着いてください」

 

「要は、ブロック・ザ・キーマンです」

 

 

 

 

 

「え」

 

「「………了解」」ゴゴゴゴゴゴゴ




マッハドライブ
主人公が風穴ドライブとゼロヨンを合わせたドリブル技。
風穴ドライブの竜巻で周りの阻害を防ぎ、ゼロヨンの加速力で突破する。
竜巻による追い風もあるので一気にゴールまで距離を縮めるが、距離がある分体力の消耗も激しい。
通常は自前のドリブルで突破できるため、奥の手として運用してる。


天河ヒカリ
主人公が来夏に話す時の、自分には向けられないであろう顔を向けられて嫉妬する。
没になったけど来夏にわざとボールを渡してゾーン・オブ・ペンタグラムでボコボコにするという擬似ジャッジスルーをしようとしてました。

まだこれからですが、展開や描写はどうですか?

  • 悪くない感じ
  • もう少し頑張れ
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