忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
『さて後半戦、両者共に一度ベンチに戻りましたが…………えっと、どうしたんでしょうね?それぞれのベンチが何さら騒がしいようですが……』
『黒景選手が3点目を決めた辺りから何か様子がおかしかったですね、その黒景選手は…………なんか桜咲選手に頭を閉められてますし、天河選手は…………慰められてるのですかね、えっと……審判の報告によれば暴言等は無かったようですが』
『あーお前ら熱くなるのは良いが落ち着いて話を聞け?さっき南雲原のマネージャーから笹波雲明のメッセージが書かれた紙を貰った、先に俺たちが読ませて貰ったがとりあえず色々語弊があるから耳かっぽじれ』
「読み上げるよ…………不破アリス並び帝国学園サッカー部の皆様、今回はウチのゴミが粗相をしでかしてしまい申し訳ございません、掻い摘んで話すとウチのクソボケがそちらの天河ヒカリさんにめちゃくちゃしたというのは恐らくサッカーで負かされた話で、そういうアレではありません」
「こちらもそちらの天河さんがウチのバカに好意に近いものを寄せられてた事を察してましたので、今回はそれを利用させて頂きましたが泣かれるとは思っておりませんでした、申し訳ございません…………しかしスパイの件もあるのでこれでおあいことさせて下さい」
「ここからの後半、お互い悔いのないように力を尽くしましょう…………以上だ」
「…………うん、冷静になったらヒカリって主語抜けて話す事あるから、そんな事だろうと思ってました」
後半戦、黒景流に更なる得点を決められた後……天河ヒカリが泣きながら皆に連れてこられた。
流石に俺達も動揺した、何があったのかと困惑し理由を尋ねたが……黒景流を殺すとしか言っておらずわけが分からなかった。
ようやく状況を理解したのは先程のメッセージだ、おそらく笹波雲明は意趣返しとしてこちらの敵選手のパフォーマンスを崩す戦法を先んじて発動しヒカリのプレーを暴走させたのだ。
その際に言われたのが……ヒカリの無自覚な恋心を刺激させるような言葉だったらしく、ヒカリはサッカーで女関係で出し抜かれた悔しさで涙を流している……という事になる。
…………うん、自分で言うべきじゃないと理解しているが、敢えて言いたい。
「(南雲原……色々と外道過ぎないか?)」
こちらも盤外戦術は何度かさせて貰ってるが、南雲原はかなり一線を越えた事をしてきてるんだが………笹波雲明、敵のやり方に戦慄を覚えたのは今回が初めてだ。
というか黒景流のしでかしたことに否定はしないのか、どういう扱いをしているだあちらは。
…………まぁいい、とりあえず今は戦導に顔を埋めているヒカリの調子を取り戻さなければ、この子が居なければ確実に負けてしまう。
「……ヒカリ、とりあえず君が何故暴走したか理解した、それに関して俺は咎めないよ………後半戦は、出れるね?」
「…………うん」
「お前達も黒景流に対する憤りは理解したよ、この試合に勝ったら約束として彼は来るんだ、殺すなら勝ってから殺してくれ」
「……了解した」
「ペンギン達がアイツの頭食いちぎりてぇって叫んでるぜ………」
「とりあえず2点か………殺すしかねぇな…………」
「もう一点も入れない…………」
「ウチのかいぶつを誑かした罪は清算して貰いましょうか…………」
『…………こいつら、過去最高に気合い入ってね?』
「みたいだね……」
こんな馬鹿みたいな事でパフォーマンスを上げても本当に困るな、いや良いんだが…………はぁ、今回は本当に読めない展開でお腹いっぱいだ、しかもリードされているしな、こんな形で負けたくないぞ?
「ヒカリ、そろそろ真凜から顔離して」
「………………うん」
先程から戦導に慰めて貰ってたヒカリがようやく離れた、目尻が腫れてる……どれだけ悔しかったんだ、俺にはそういう経験が無いから理解はしてやれないが。
「…………なんか、なんでみんな怒ってるの?」
「は?」
するといきなりヒカリは意味の分からない事を言ってきて穂村が呆けた声を上げた、どうやら自分が泣かされた事に対して怒っていることに疑問を抱いてるらしい。
「だって……なんか、ボクの事で怒ってそうだから」
「そりゃ怒るでしょーよ、ウチのかいぶつちゃん泣かされたんだし」
「……てめぇもしかして、俺達が嫌ってるとでも思ってたのかよ」
「……好かれてないと思ってた」
「……全く、何を言うかと思えば…………」
彼女も彼女なりに以前のやる気がない態度に思う所があったらしく、こうして自分と対等な相手が現れた途端にサッカーを真剣にやり始めた事に関して少しだけ負い目の様なものを持っていたらしい…………思ってた以上に繊細な子だ。
穂村はため息をついて、ヒカリを見据えながら話し出す。
「確かに以前の態度には手を焼かれてたが、俺たちはそれだけお前に期待していたんだ、そしてお前の活躍は期待以上のものだった………試験で初めてお前の力を目の当たりにして、こんな凄いやつがチームに入ってくれるのかと当時は俺達も高揚していたんだからな」
「そーそー、霊道もお前見て熱くなったからオーバーヘッドペンギンを作ったんだし」
「てめぇ余計なこと言うな!!?」
「私もヒカリが何時もつまんなそーにしてた癖にサッカーは続けてたからさ、今日こうして力いっぱいプレーしてる姿見て嬉しく思ってたよ」
「私も今日が初出場だし、キーコと貴女一緒に出れて良かった、そしてこれで終わりにしたくない」
「……まぁ、そういう事だヒカリ………君は、どうしたい?」
俺が改めてヒカリに尋ねる、彼女は少しだけ頬を染めると目に残っていた涙を拭って俺を見据える。
「…………勝つ」
「それでいい」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「反省してください黒景先輩」
「なんで今回俺悪くないじゃん頭ぁぁぁぁぁぁあ」
「元はと言えば貴方が発端でしょうが、全く」
後半でリードを取ったあと少しの間ベンチに戻ることにして………まぁ今回泣かせたのは忍原先輩の言葉だけど元を辿ればこの人だし、桜咲先輩がヘッドロックでお仕置きをしている。
誤解があるからさっき百道さんに僕のメッセージを届けた、ある程度の解消はされるけど黒景先輩に対する敵意は増した筈だ…………ここからまた手強くなる、そうでなければ。
ここで勝たなきゃ、雷門に勝てるわけもなし。
「来夏さん、とりあえず試合後でいいからあの子に謝りなさい?」
「……まぁ、はい、そうですよね」
「とりあえず1点はとれたがまだ後半の時間は残ってる、気は緩められねぇよな」
「まず俺をキめてる腕を緩めてぇぁぁあ」
「……桜咲先輩」
「おう」
「…………んがっ」
また無様に倒れる黒景先輩を一瞥して、帝国のベンチを見る。
状況的にはこちらの優勢に間違いないが油断は一切出来ない、ここからまた1点を取るか、得点を防がなければならない。
…………頃合だな。
「ここからは守りに…………と見せかけて更に攻めます、攻めあるのみです、下手な守りは今の帝国には悪手ですから」
「だと思ったよ、帝国の皆黒景先輩ぶっ潰す為に躍起になってるしね」
「妖士乃先輩率いるディフェンス陣はあの必殺技で天河ヒカリを抑えてください……そして四川堂先輩、交代です」
「僕が交代……ということは」
「はい、お披露目の時間ですよ……陣内先輩」
ベンチに座ってグローブを着け、南雲原のセカンドキーパーユニフォームを着た陣内先輩はゆっくりと立ち上がった。
「待ちくたびれたぜ…………!」
好戦的な笑みを浮かべて手首を掴みながら手を開く陣内先輩、この為に作り出した新しいキーパー技を試すにはもってこいの場面だろう。
何せ、黒景先輩のゴッドウィンドを止めかけたのだから。
「陣内君、ゴールは任せたよ」
「任されたぜ四川堂」
交代の意味合いと激励を備えて南雲原のキーパー同士握り拳を合わせる、そろそろ再開の時間だ。
「流起きて、始まるよ?」
「忘れては行けませんが我らが負けたら黒景先輩は帝国に持っていかれます、最初は天河ヒカリだけの望みでしたが、今は帝国全体がそれを望んでるでしょう」
「えっと、つまり?」
古道飼君が尋ねてくる、分かりきった事だろうに………天河ヒカリは思っていた以上に帝国メンバーから信頼されている、そんな子を泣かせたクソ外道の黒景先輩を八つ裂きにしたいに決まってる。
とりあえず掻い摘んで話すと…………。
「まぁ先輩は生きて帰れないですよ、色んな意味で」
「不吉なこと言うなようべっ」
「だーれーのーせーいーだーとー思ってるんですか?」
「申し訳ございません、許してください笹波様、黒景流深く反省致しました、お赦しをどうか」
「相変わらずキャプテンには頭が上がらないな、当たり前の帰結だが」
「伊勢谷先輩、物理的に上がらなくなってますよ?」
「仕方ないわ、キャプテンにはそれだけの事をする資格があるもの」
「……あのー君達!そろそろ再開ですよー!?」
「おっといけない、皆さん行ってきてください!ほら先輩も立ち上がる!」
「退けてくれ足……!」
審判から注意されてしまった、帝国の皆も既にポジションに着いていた。
仲間たちは急いでグラウンドに戻り、立ち上がった黒景先輩もすぐに追いつこうとする。
「…………先輩!」
僕はそんな先輩に呼び掛けて、彼はすぐに立ち止まって振り返る。
「え、なに?」
「雷門を一緒に倒すんです、ここで負けたら許しませんから」
「……当然!」
静かに笑い返して今度こそグラウンドへ戻ってゆく黒景先輩の姿を見届ける、女性関係に関してはどうしようもない人だけど南雲原には欠かせないプレイヤーだ、ここで失うには余りにも惜しすぎる。
帝国はここから更に強くなる予感がする、ここを乗り越えさえすれば………雷門までもうすぐだ。
「勝ち取ってくれ、みんな…………!」
◾︎◾︎◾︎◾︎
『さぁ少しトラブルもあったようですが無事試合は再開される模様です、現在スコアは3-2で南雲原がリードとなってます、南雲原側は優勢ですがこの後の試合状況はどのようになると思いますか、角馬さん?』
『帝国側も手段が尽きた訳じゃありませんし時間もまだ20分以上とありますからね、南雲原はどう対抗するのか注目したいところです!』
『はい!それではお待たせしました!後半戦再開となります!!』
ピーーーッ!!
ボクにボールが渡り、一斉にゴールへ駆け出す。
…………不思議と気持ちが軽くなっているのを感じる、先程までの悔しさは残ってても、苦しくはない、なんでだろ。
流先輩はボクよりまだ強い、さっきもシュートを止められなかった。
あの女が憎い、あの恍惚な顔を流先輩以上に歪めたくなるとは思わなかった…………でも、それでもボクはやらかした、激情のまま先輩から離れてボールを取ろうとして…………その結果があの失点だ。
結局止められなかった事、先を越されてた事を聞かされて自分の気持ちを理解したこと……そしてボクのせいでゴールを入れられたこと、全てが悔しくて思わず泣いてしまった。
ボクのせいで帝国の足を引っ張ってしまった、この上なく怒られると思ってたのに………みんなはボクではなく、先輩の方へ怒りを向けた。
…………向けるのはどちらかといえばあの女なんだけど、発端は流先輩だから間違ってないから何も言えなかった。
アリスも怒らなかった、何時もならミスをして言う事を聞かなかった選手はジリジリと問い詰めるのに。
…………みんなは、ボクの事はあまり好きじゃないと思ってた、ボクは結構このチームの事が好きなんだけど………入ってから最近になるまでマトモに練習しなかったし、サボってて試合にも出なかったから。
自分の欲望のまま動いていたから、そうなっで当たり前だと思ってたけど、そうじゃなかった。
みんななりにボクの事を思っててくれてたんだ、そんな姿にボクは生まれ育ったおひさま園の事を思い出していた。
「(…………勝ちたい)」
ボクはかつてのチームメイトから向けられてた期待するだけして、自分では何もしないサッカーをされた経験から、チームプレーはしても一人で試合をしようとしてたかもしれない。
でもここは違う、ボクだけじゃなくて自分の力で勝利を勝ち取りたいと願う奴しか居ない。
強さこそが互いの信頼関係を築いてるけど、それでもやっぱりチームメイト信じてくれている………きっと、あの南雲原も同じなんだ。
流先輩のプレーに追いつけなくても、お互いを信じあってるからこそ帝国に勝るプレーを発揮できる、そういうサッカー。
「(勝ちたい…………!!)」
勝ちたい気持ちがどんどん溢れてくる、壊したいって気持ちからじゃなくて、流先輩に対する負かされた憎しみからじゃなくて、ただ…………ただひたすらに、帝国のみんなと南雲原に勝ちたい。
こんなボクを信じてくれた帝国で、ボクの本当のサッカーを見つけてくれた流先輩に勝ちたい、ただ負ける恐怖に怯えるな………勝つことだけ考えろ。
もっとボクを、仲間を信じろ。
今ここからボクは変わる。
ただ強い相手と戦いたいだけのかいぶつだけじゃなくて………誰かと一緒に勝つサッカープレイヤーの天河ヒカリになれ。
「……勝つ!!!」
その時、ボクは何時しか…………ヒロトおじさんに帝国まで連れてこられた日の記憶を思い出していた。
『ここだよヒカリ、君の新しいチームの居る帝国学園だ』
『…………ボクと同じくらい強いかいぶつ、居るかな?』
『正直君程のプレイヤーとなるとそう居ないさ、それに君は帝国とサッカーするんじゃなくて、帝国と一緒にサッカーするんだから』
『………ボクの事、受け入れてくれるかな?』
『それは君次第だよ、ここはかつて君の強さしか見てこなかったチームメイトとは違うと断言出来るけど、結局は君の問題なんだよ』
『え?』
『簡単な話さ、君はもっと…………誰かを信じればいい』
…………そうだね、ボクはおひさま園の人達以外をあまり信じようとしなかった、アリスと真凜とキーコ、そしてチームの皆………居て悪くないと思っても、心から信じようとしてなかったと思う。
そんな身勝手なボクを、みんなは信じてくれてた、許してくれた。
ならボクも…………ボクの心の枷を外せ、みんなと勝つために…………!
あの人を越えるために!!
「……来い!」
目の前には流先輩、その背後にも南雲原のみんなが立ちはだかっている………越えようとすればいけるけど、そろそろボクの動きも慣れてきた頃合だ、何よりさっきの暴走で体力も無駄に削ってしまった。
ここで流先輩と凌ぎ合えばまた不利になる…………。
ボクだけ、なら。
「………星見沢先輩!霊道先輩!」
ドリブルを止めて、名前を呼んで軽くボールを打ち上げて、ボクは直ぐに力を入れてゴールへ加速する、流先輩にも脇目を振らず。
「ヒカリ……!?」
「これは!?」
流先輩は直ぐにボクへついて来るが、ボールは宙に浮かんだままだ…………そしてそこに、帝国のフォワード2人が飛び込んでくる。
「「キラーフィールズッ!!」」
同時にボールを蹴り入れて、ボールに込められた反発し合う力が溢れて渦となり、集まってきてた南雲原のみんなは耐えきれず吹き飛ばされてしまった。
「ぐぅう!?」
「わぁあっ!!」
「天河ッ!!」
飛んできたボールを先輩にぶつけられながらと、体幹の強さを活かして胸でトラップし、一歩飛んで距離を取る。
「古道飼君!古手打さん!行くよ!!」
「は、はいっ!」
「了解です!!」
すると後半から入ってきたディフェンダーの人を含めた3人が流先輩の後ろからやってきた、そして普通の動きではなく………あれは間違いなく、必殺技の流れだった。
「「「無影乱舞!!」」」
「……!」
すると3人は腕を組んで揃ったかと思ったら、一気に散開して高速で影を作らず飛んで動き回りながら近づいてきた。
動きが見えない、なんて速さ……しかも流先輩まで目の前にいるから、このままだとボール取られちゃうかも。
「……でも」
なんでだろ、目の前にある壁は壊したいんじゃなくて…………今なら乗り越えたいって思える。
ボクは流先輩を勝って壊したいと思ってこの試合に望んだのに、今はそんな事全然考えてなかった。
なんか、懐かしい気分だ。
「(…………ぁ、昔も……こんなこと考えてたっけ)」
サッカーを初めて右も左も分からなかった頃、おひさま園の大人達とサッカーをしても勝てなくてもどかしかったあの頃の、高揚する気持ち。
あの時は無邪気にボールを蹴ってたから勝ち負けとか気にしてなくて、純粋に楽しんでいたあの気持ちだ。
もう一度あの気持ちを味わいたくて、でもボクは強くなっていって、周りの人達はボクに勝てなくなっていったから…………忘れてたんだ。
今こうして思い出せたのは、こうして貴方がボクの前に立ち塞がってくれるから…………そんなにも楽しそうに笑ってくれるからかな。
「…………へへっ」
あの時、グラビティケージを破ったような先輩の笑みを浮かべてしまう。
そうだよ………この気持ちがあったらボクは強くなれたんだ、それを忘れてしまったせいで色々と歪んじゃったけど…………理解出来た今、ボクもただ純粋に……楽しめばいい!
ボクを信じてくれた帝国のみんなと、勝つんだ!!!
「ブルースターダストッ!!!」
手を交差し広げ、背後に暗い夜空が浮かぶと同時に……ボクは星屑の光となりて分散し、流先輩と必殺技を放つ3人へ向かった。
「「「「ッ!!?」」」」
南雲原のみんなはスプリントワープを警戒していたかもしれない、故にボクがたった今生み出した新技に驚きを隠せずにいた。
星屑となりて抜き差るボクに対応できず、折角のボク対策の必殺技も不発に終わり………星屑は再び1つとなってボクはそのまま走り去ってゆき、ゴールは既に目の前だ。
『天河選手ここで新必殺技!!?黒景選手を含めた4人をごぼう抜きだーーーっ!!』
『凄い!まだ伸び代が見えないとは!!』
「天河、お前……!?」
「すっげぇ!」
観客席の興奮の叫びと、仲間の驚きの声が心地よく聞こえる。
そうでしょ!ボクだって驚きだよ、こんな技使えたんだって!
「(そうだ!この興奮だ!何かを壊したりぐちゃぐちゃにしたりするんじゃなくて、こうしてただサッカーを楽しみたいだけの気持ちが、ボクの全部だ!!)」
何時しか歪んでしまったこの気持ちにようやく気づけた、流先輩のようにただサッカーが大好きだって事がボクが求めてた答えだった。
「来い!流星ブレード……!」
そしてイケメンキーパーさんから交代したゴツイ人がボクの必殺技を警戒している、確かにボクのシュート技は流星ブレードだけだけどね…………!
じゃあ使ってあーげないっ!
「そりゃっ!!」
「なにっ!?」
ボクは流星ブレードの初期モーションから、空へ打ち上げるんじゃ無くてそのまま右角へシュートする。
勢いのついたシュートでいいコースだったけど、そのキーパーは直ぐに反応して食いつこうとしている、このままだと止められちゃうね。
「……よーいっ」
ボクはシュート後から着地し、脚にありったけの力を込めてバネを作り………。
「どーんっ!!」
ひとっ飛びでそのシュートに追いつき…………
「なっ……!?」
「てりゃぁっ!!」
その勢いのままの前蹴りで、ボールはゴールへ突き刺さった。
ピーーーーッ!!!
『スーーパーーーゴーーーールッ!!!再開直後の帝国フォワード陣の連携と天河選手の新必殺技!そして圧巻のシュート!早くも同点!再び振り出しとなりました!!帝国のサッカーモンスター、天に右手を掲げる姿に観客席も大興奮です!!!』
『追いつき追いつかれの繰り返し!互いに1歩も譲らない!前評判を覆す素晴らしいゲームです!!』
大歓声で揺れ動くグラウンドの中でボクは高揚する気持ちのまま、拳を力いっぱい天に掲げた。
楽しいっ、そうだ…………サッカーはこんなにも楽しい!
例えかいぶつって言われても、誰かに棄てられたりかつての仲間に見放されても、ボクはこうしてボールを蹴っていれば、それでいい!!!
「ヒカリ…………」
ボクにこの気持ちを思い出させてくれた先輩の方へ振り向く、ボクに驚いているらしいけど、もうそんな暇無いよ?
流先輩を帝国に入れたい気持ちは、まだ変わってないし!
「……流先輩っ!」
掌を先輩に突きつけて、ボクは改めて告げる。
「今のうちに、帝国へ入る準備しておいてねっ!」
「………………ヒカリ…………!!!」
最高に熱く滾らせたような笑みを浮かべる先輩を見て、ボクも笑う。
さぁ、クライマックスだ!!!
《フィールドのスターラビット》
天河ヒカリ
かつては破壊衝動とは無縁のプレイヤーだったが、強くなりすぎたが故の孤独で歪み、帝国の皆がヒカリを信じていた事に気づき、仲間を信じる気持ちとかつて純粋に楽しんでいたサッカーを取り戻して本来の心を見つけた。
誰から理解されなくても、ただサッカーをしていればそれでいいというのは……主人公と同じである。
帝国学園
天河ヒカリのプレーに全員脳を焼かれてたので、こうして試合が出来ることを素直に嬉しく思う、本人も可愛いしね。
とりあえず主人公は勝ったら殺す。
次回、帝国戦終幕。