忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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番外編除いて13話以上続いた帝国編も今回で終了です、サブタイの曲は作者がお気に入りの曲を使いました。

さぁ、帝国戦閉幕です。


VS帝国(終戦) ガンガンガガン!

「天河さんのプレーが凄いのは知ってますけど……なんか何時もより迫力があるって言うか、何時もと違く無いですか?」

 

『俺達にもわかんねぇが、ヒカリに見せたチームの反応が何かを沸き上がらせた様だな、アリス?』

 

「あぁ、ヒカリはチームプレー自体はしていたが、心のどこかで距離を置いていた、それが無くなった事による変化かもしれない……いずれにせよ、これで真に……覚醒したわけか、ヒカリ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、帝国のサッカーモンスターさん……なんか、変わりました?」

 

「……どうやら僕らが起こしたアクションによって、天河ヒカリに何かしらの変化が起きた、それも強くなる方向へ……まさかあんな必殺技を生み出して同点を決めるなんて…………しかも」

 

「…………しかも?」

 

「あの目は………黒景先輩と同じ、サッカーバカの目だ」

 

 

帝国と南雲原の監督は、天河ヒカリに変化が訪れた事を察知していた。

そのフィジカルを活かしたプレーに変わりはないが、彼女の心情が………ただ相手を倒す為でなく、自分が楽しむ為のような印象を互いに受けていた。

 

その変化が彼女の……かつての自分のサッカーを取り戻したことで、彼女は真なる覚醒を果たしたのだ。

 

そしてそのきっかけを与えた黒景流も、彼女の変化に燃えていた。

 

「ここでもう同点か、ヒカリの奴………随分楽しそうにするじゃん」

 

「楽しそうに?今までも笑ってプレーをしてなかったか?」

 

「………俺もあの子の心情は知らないけどさ、壊すとかぐちゃぐちゃにとかどこか狂気を感じたけど………今はそれを感じない、純粋にサッカーをしているって感じだ」

 

「純粋に……たしかに、なんか怖い感じの笑顔では無くなったというか、どこか爽やかさを感じますね」

 

「うん、今まであんな風に帝国のみんなとゴールを喜びあってなかったよね?」

 

ゴールを決めたヒカリは帝国のみんなに囲まれながら笑っていた、先程までは決めただけって感じで大きく喜んでは無かったが、今となっては無邪気な子供のように自分のゴールを仲間に誇っていた。

 

そして先程、再開直後にしたプレー………霊道と星見沢が必殺技を発動し、その間にゴールの距離を詰めるという、阿吽の呼吸を合わせたプレーを見せてみた。

 

「何れにしても俺達にとってはやべー事になったって事か……」

 

「あぁ……ここで同点、後半の残り時間は20分弱、また今の天河に攻められたらいよいよ追い詰められる事になる……」

 

木曽路と桜咲の言葉で南雲原チームの顔が険しくなる、実力は先程まで拮抗してると言えたが、天河ヒカリの突然の覚醒によりその均衡は崩れつつある。

 

この先変わらず彼女は黒景流を徹底してマークする筈だ、そして帝国側の士気も先程からどんどん上がっている。

 

これ以上の失点は許されず、その上でもう一度1点を取らなければならない………絶望的とまでは言わないが、ここからはミスが許されない試合になる。

 

 

 

 

 

 

 

「良いじゃん……しよーぜワクワク」

 

 

 

そんな中黒景流はゴールからボールを携えて皆に声を掛ける、彼もまた笑顔で立っており、焦燥は微塵も感じられなかった。

 

「俺のせいでヒカリは覚醒させちまったけど………ぶっちゃけ後悔はしてない、ここまで面白くなるならやって正解だったわ」

 

「後悔してないって、せめて反省しろ黒景……」

 

「お前らとなら勝てるって信じたからだよ、そしてこういう相手を乗り越えなきゃ…………その先の王者には勝てないだろ?」

 

伊勢谷が何処か呆れた顔で黒景を見るが、彼は空を見上げ………雷門のサッカーモンスターに対して想いを馳せる。

未だに帰ってきたという報告はない、しかし信じている……決勝の戦いでは必ず戻って来ると。

 

それまでに南雲原は強くならなくてはいけない、その為には強いライバルが必要不可欠………今まさに、目の前にその相手が居る。

 

「相手は強けりゃ強いほどいい……俺はずっと、こんなサッカーがお前らとしたかった」

 

「それにここから負けなんて考えるなよ、俺達が目指すのは1つだろ?」

 

「流……」

 

「………色々言いたいことはあるが、お前の言う通りだな」

 

「ですね!負けたら先輩持ってかれてしまうし!」

 

「ふふ………」

 

「……うん、絶対勝とう!」

 

「ゴールはもう決めさせねぇ!」

 

南雲原全員も改めて決意を固める、ここから試合終了まで…………どちから先に1点を決めれば勝利に近づくゲームになる。

 

そして互いのサッカーモンスター同士の戦いに飲み込まれないようにしなければならない………ここから更に死力を尽くし合うのが目に見えているからだ。

 

恐らくここから戦術は重視されない、要は…………シンプルなプレーの殴り合いになる。

 

 

 

「アリスさん、改めて何かここからの戦術は…………」

 

『いや、今そう言った細かいもんアイツらにとってノイズになる』

 

「え?」

 

「ブラザーの言う通りさ、笹波雲明は俺達の戦術を分析しつくしてるのは、先程ヒカリに行われた精神攻撃がそれを証明している、そして序盤もタクティクスにタクティクスで対抗された、解答の分かりきってる作戦を行うのは愚策だ」

 

「故にここからは、チーム間の実力勝負だ」

 

 

 

 

「本当に良いんですか?このまま普通にプレーさせて?」

 

「はい、相手は既にそのつもりでプレーをする目です………故に南雲原もそれに応えて、全力のプレーを最後までしてもらいます」

 

「この戦いを制してこそ……その先の戦いへと行けるのですから」

 

 

そして不破アリスも笹波雲明も、そのつもりでこの試合を決着へ導く事を既に決意していた。

サッカーモンスターを組み入れたチーム同士の試合、それらが巻き起こすこの戦いを………彼らチームを導く監督達は、ただ熱い視線をグラウンドのチームに向けていた。

 

 

 

「勝て、帝国……!」

 

「勝つんだ南雲原……!!」

 

 

 

『さぁ興奮冷めやらぬ中スコアは3-3ので再びの同点!そして試合時間は20分以上残されております!その状況で先に先制点を取ったチームが勝利にグッと近づけるわけですね!』

 

『はい!両者共に手の内は見えてますからね!ここからは更にデッドヒートすること間違い無しです!!』

 

 

 

「……ふーっ」

 

天河ヒカリはただ前を見据える、帝国の仲間達と南雲原を見つめて………かつて胸に抱いていた純粋な気持ちに向き合う。

 

「(………流先輩、貴方と会うまでボクのサッカーは死んでいた………いや、自分で殺していたのかもしれないけど、それでも貴方がくれたサッカーが今のボクを作ってくれた)」

 

「(ただ好きでいたかった気持ちが、最初からボクが持ちたかった答えで、貴方はそれを持っていた………だからこそボクは流先輩が欲しくて堪らなかったんだと思う、だから勝つ!ボクを信じてくれた帝国のみんなと、この試合で南雲原に………大好きな貴方に!!)」

 

 

 

「………………」

 

黒景流は目を閉じる、そしてあの日の………天河ヒカリに敗北を刻んだ時の光景が暗闇の中に映る。

 

「(あの時、今更だけど我ながらひでーことしたなって思うけどさ………それでも抑えられなかったんだ、お前の可能性に………俺が与えた悔しさがどこまでお前を強くするのか、俺があの人に貰ったような敗北じゃないけどさ)」

 

「(でもお前は本当にすげーよ、俺が今までサッカーしてきたプレイヤーの中じゃお前が2番目だ…………お前見たいなのを俺はずっと欲しかったんだ………ライバルって奴を)」

 

「(天河ヒカリ…………お前にどんな過去があろうが関係無い、俺にとって今、俺達の前に立ちはだかる壁で、俺にとって人生最初のライバルなんだ)」

 

「(お前に勝ちたい、そしてその先の円堂ハルも越えて………あの風の向こう側にいるあの人を追い越したい!!!)」

 

自分を更なる強さに導いてくれるライバルを見つけた昂りを感じながら目を開き、黒景流は天河ヒカリを見て……視線が交差する。

 

そして互いに笑顔を浮かべる、言葉はいらない………今ここにたっているグラウンドで、プレーで示せばいい!

 

『さぁここから瞬き厳禁!加速する試合を制するのは南雲原か!それとも帝国か!?』

 

 

 

『準決勝一回戦後半!試合再開ですッ! 』

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

「ぶっ飛ばすッ!!」

 

観客席とグラウンドが再び大きな歓声で揺れながら、黒景流はボールを受け取り………両手から風を起こしクラウチングスタートを取った!

 

 

「やはりあの技を撃つ気か!?」

 

「やべぇ、天河ッ!」

 

「何度もやらせるわけないでしょっ!!」

 

帝国側はその風に殆どが阻まれるが、天河ヒカリだけはそれを予見して既に風の中へ入り込んで妨害しようとする。

 

しかし、黒景流もそれを予想していたのだ。

 

 

 

「木曽路!」

 

「呼ばれましてッ!!」

 

《ウォォォォッ!!》

 

「うぇっ!?」

 

その風を翡翠の雷が切り裂き、リュカオンを発現させた木曽路が流からボールを掻っ攫い、風が鳴り止む。

 

そして南雲原の前線メンバーは既に竜巻の横を駆け抜けており、混乱している帝国陣営へ切り込んでいた。

 

「(読み切れ!味方と敵の気の流れを!ゴールを狙えそうな奴は何処だ!?)」

 

リュカオンと共に走りながら、木曽路はゴールを取れそうな仲間を探していた。

それは目ではなく、普通の人には見えない気の流れと共に探知している。

 

木曽路がリュカオンを覚醒した時、チームの気を1つに集めて化身を作るという手段を使ったが……木曽路の天性の協調性とその化身覚醒の方法が新たな力を目覚めさせた。

 

サッカープレイヤーの気の流れを読み取る擬似的な先読み能力、リュカオンが気の流れ………即ち匂いを覚える事で、化身発動状態の時のみ、その力が活性化するのだ。

 

「(空宮先輩じゃない、黒景先輩にはかいぶつがいる、桜咲先輩………じゃない、帝国はゴールを狙える要注意人物をマークしてる………なら…………!!)」

 

《……ウォォォォゥッ!!》

 

「(其処か!ゴールの匂いッ!!)」

 

木曽路ボールに回転を掛けて、翡翠の雷を纏ったロングパスを放ち、リュカオンを体力温存のために一度引っ込める。

 

そこに居たのは小太刀 鞘、近くにいた帝国の選手はそれを阻もうと立ち塞がり…………。

 

 

 

 

 

「ベストアンサーだ、木曽路!」

 

その前にパスを受け取ったのは、妖士乃と共に前線へ上がっていた伊勢谷 要だった。

 

「ちゃんと見てましたよっ!」

 

「なっ、いつの間に!?」

 

木曽路は伊勢谷がゴール近くまで居たのにも関わらずマークされてないのは、決定力が足りない選手とみなされてた事を見逃さなかった。

 

たしかに1人では突破は困難だが、その為に編み出した必殺技を彼は既に備えていた。

 

「行くぞ妖士乃!!」

 

「OK、お披露目といこう!!」

 

背中合わせになった2人、伊勢谷は…………

 

 

 

 

 

 

黄金の果実となったボールを齧り、後ろの妖士乃へ放り…………顔を上げた獰猛な表情の妖士乃は猛々しい雄叫びを上げた。

 

「ウゥァァァァァァアッ!!!」

 

その叫びを取り込んだ果実は紫に染まり、2人はそこへ強烈な蹴りを放った!!

 

 

「「スクリーム・オブ・エデンッ!!」」

 

 

 

放たれた果実は再びボールとなり、創造と破壊のオーラを纏いながら…………天空へ向かっていった。

 

「えっ、どこ狙って…………!?」

 

構えていた真凜は天空に向かったボールを見上げるように空を見る、そしてボールは雲の中へ飛んでゆき………………

 

 

 

 

 

「………………ハァッ!!」

 

突如として空が切り裂かれ、ボールは太陽のように鎮座していた。

 

そこに雲を切り裂いた空宮が跳躍し、空へ漂うボールをシュートした!

 

 

「サンシャインストォォォォムッ!!!」

 

 

太陽の名を冠する必殺技を新たに習得した空宮のシュートチェインが帝国のゴールへ向かう、威力だけなら進化する前のゴットウィンドとなんら変わりないと真凜は冷や汗をかきながらそう判断していた。

 

「決めさせない、止める…………!!」

 

王家の盾で守れるだろうか、いや、そうでなくても、この身がどうなろうとも止めなくてはならない。

それが帝国キーパーを任された自分の責任であり、ヒカリと…………帝国と共に勝ちたいと願うから。

 

「はぁぁぁぁあっ!」

 

彼女は土壇場の起点で王家の盾を右手だけに展開するのではなく、その力を全身に行き渡るようにパワーをコントロールし………背後に盾を映しながら全身が幾つものリングが浮かび、シュートチェインにより威力を増したボールを阻んだ!

 

 

「アルテミスリング!!」

 

 

王家の盾が女神の名を関する指輪の護りとなりてシュートを阻み…………最後にはボールは真凜の手に収まった。

 

 

『南雲原のシュートチェイン決まらず!!戦導選手が王家の盾を進化させた技でゴールを守りきったー!!!』

 

 

「なんだと……!?」

 

「この土壇場で技自体を進化!どんなイリュージョンだい!?」

 

「決まんないのかよッ!!」

 

「キャプテンッ!!」

 

シュートに関わった南雲原の選手達が驚きを隠せない中、真凜は思い切りボールを穂村目掛けて投げ………そのボールはそのまま自陣に待機していた帝国キャプテンに行き渡った。

 

そして前を見据える、天河ヒカリは黒景流に徹底マークしているが、フォワード陣は既に前線へ向かっている!

 

「こちらも息付く暇は与えん!本能寺!殿崎!!」

 

「はい!」

 

「了解ッ!」

 

穂村、本能寺、殿崎が1列に並び、殿崎がまずシュートし、次に本能寺が加速をかけ…………穂村が最後にまたシュートを放った!!

 

「トリプルブーストッ!!」

 

3連加速のロングシュートが放たれる、そして南雲原それがパスだと言うことを直ぐに察知し止めに向かう…………が。

 

「ようやく、俺のペンギンの出番だぜッ!!」

 

いち早く待機していた星見沢が不敵な笑みを浮かべて、手を口笛の形にした。

 

「ピューーイッ!!」

 

高らかに指笛を鳴らし、スポットライトに照らされたかのような星見沢の周りにカラフルなペンギン達が舞い、星見沢はトリプルブーストのボールにシュートを放つ!!

 

「ペンギン・ザ・パレード!V2ッ!!」

 

星見沢がシュートしたボールにペンギン達が集まり、やがてボールを咥えた王冠を携えた巨大なペンギンとなりて、小さなペンギンと共に空へ駆け上がった。

 

「ゴールじゃなくて空へ…………まさか!?」

 

「……ピュイーーーッ!!!」

 

小太刀が何かを察する時にはまた別の口笛が鳴り響き、星見沢が放ったシュートボールに六羽のペンギンが突き刺さり、高速回転をしてボールに力が込められ…………霊道はそれをオーバーヘッドキックで再びシュートする!!

 

「真!!オーバーヘッドペンギンッ!!!」

 

帝国の必殺技3連シュートチェインが放たれた、膨大な威力を携えたシュートが南雲原のキーパー、陣内に襲い掛かる。

 

『帝国学園なんと3回連続シュートチェインです!!この圧倒的な力がこもったボールを陣内選手は止められるのでしょうか!?』

 

「陣内!!」

 

涙目になった空宮の叫び声が木霊する、そんな中陣内は落ち着いてシュートを見据え、集中する。

 

「(………俺のグラビティデザートは砂の領域風圧によってシュートの軌道をねじ曲げて威力を落とす必殺技…………そしてこの新しいワザは、その領域風圧を一点に集中させて威力を一気に殺し、その上から更なるパワーで封じ込める技)」

 

「(笹波がそれを見出し、黒景は完成させるまで俺に付き合ってくれた…………そして何より雷門に雪辱を果たす為、俺たちを信じて去っていった下鶴監督の為にも!!この試合……必ず勝つ!!)」

 

「もう点はやらねぇ、おォォォォォッ!!」

 

グラビティデザートのように辺り一面が砂漠になり、陣内は腕を交差させると広がった砂漠の砂が陣内の背後に集約し………やがて巨大な魔神の姿となり、陣内は腕を広げて帝国のシュートチェインボールを砂の魔神の両手で挟み込んだ!!

 

「これが俺の!新必殺技!!!」

 

「砂神・ザ・ハンドォッ!!!」

 

砂の魔神の両手から放たれる、グラビティデザートと比較にならない程の圧力がペンギンを押し潰し………砂が崩れて落ちてきたボールを陣内は豪快に掴み取った。

 

「……フンッ!!」

 

『陣内選手スーパーセーブッ!!新たなる必殺技でピンチを切り抜けましたーーッ!!』

 

「なんという豪快なキーパー技でしょうか!?あれ程の威力を携えたシュートを難なくキャッチするとは!!」

 

「クソが………まだそんな隠し球を持ちやがってたのかよ…………ったく!!」

 

霊道は悪態を着きながらも、高揚で笑みを隠せずにいた。

そしてそれは帝国メンバーも同じ……止められたからと言って悲観はする必要は無い、決まるまで何度もシュートを決めれば良いのだから。

 

「まだまだ行ける!ボールとってシュート決めるよっ!!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「こっちも引き下がるな!!攻め潰すぞッ!!!」

 

「「「「おおおっ!!!!」」」」

 

両校のサッカーモンスターが好戦的な笑みを浮かべてチームを鼓舞する、その様に観客達のテンションも留まることを知らずに上昇してゆく。

 

「行くぞ!南雲原ァッ!!」

 

陣内はセーブしたボールを高らかに味方へ放る、この熱い時間はまだ止まらない、かいぶつ達によって選手達の力の限界は……既に何度も越えているのだから。

 

 

 

 

 

 

そして試合時間は過ぎていく、互いの高揚をぶつけ合いながら、笑顔を絶やさずサッカーは続いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

『両チーム一切勢いが衰えません!攻めて守り、守って攻めて!攻め返し守り通すシーソーゲームッ!!これが準決勝の盛り上がりなのでしょうか!?魂を削り合うこの試合に私も心臓が破裂しそうです!!!』

 

『な、なんという素晴らしい試合なのでしょうかっ…………!選手一人一人のパフォーマンスがとんでもなく高い!しかし時間は段々と過ぎ去っていきますよ!?』

 

『はい!後半残り時間は後5分を切りました!そしてボールは宙に浮かび上がり…………!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………とりゃぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

『おおっとぉッ!!天河選手が遂にボールをとったァッ!!?』

 

『黒景選手も近くに居ますが今の彼女は止められるのでしょうか!?まさしくラストプレー、勝敗を分ける最後の勝負です!!!』

 

 

試合時間残り時間5分、舞い上がったボールをヒカリがそのジャンプ力でトラップし着地する…………そして黒景流もその前に立ち塞がり、スタジアムは再び大きな声で揺れるのであった。

 

 

「はっ、はぁっ、いき、上がってるぜ、ヒカリ……!」

 

「せ、先輩こそ、よく体力、持つねっ…………!!」

 

「あぁっ…………こんなに体力持ってかれたのは、随分久々だっ…………!!」

 

 

「黒景先輩ッ!!!」

 

「行け、ヒカリッ!!」

 

笹波雲明が、不破アリスがベンチから立ち上がり互いのエースの勝利を望む、そして彼等とキーパー以外の選手達は既に体力の限界を迎えてろくに動けずにいた…………正真正銘、一対一の勝負だった。

 

 

「く、くろ、かげ…………!!」

 

「あまが、わ…………!」

 

「ヒカリっ……いけぇっ……ッ!!!」

 

「りゅ、うっ………おね、がいっ……」

 

 

 

「…………せんぱい、貴方が居たから、こんなに楽しいサッカー出来た、ボクを見てくれて、ありがとっ…………ッ!!」

 

「……俺もだ、ヒカリ…………お前のような強いライバルが居てくれて、俺も、嬉しいよっ…………」

 

「ぅんっ…………でも、勝つのはっ…………ボクたちだっ!!ブルースターダストォォッ!!!!」

 

「ッ…………!!!」

 

天河ヒカリは精一杯の力を込めて再び星屑となりて黒景流を抜き去ろうとする、対する彼はそれを止められる必殺技が出せずにいた………久々の体力の限界で、撃てずにいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まけ、るか…………勝つん、だよ…………!」

 

 

 

 

 

それでも尚立つのは、勝利への執念。

このまま終わらせたくないと、ここまで熱くなれたサッカーを負けて終わらせたくないと願う心が、彼をまだ突き動かしていた。

 

 

「勝つ…………勝って、その、先へ…………!!!」

 

 

拳を握り締める、よろける脚に力を踏みしめる。

腹の底から力を捻りだす、それは全て勝つ為に、南雲原をここで終わらせない為に…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォァァァァァァァァァァァアアアアアァッ!!!!!!」

 

 

 

 

感情の起伏が薄い黒景流からは考えられない程の叫びがグラウンドに響き渡る、そのせいでスタジアムが震えたと錯覚するくらいの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは、新たなる覚醒だったのか。

 

 

 

 

 

彼の背中から……………………

 

 

 

 

 

 

黒い影が翼となりて現れたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っぅっ、、あっ!!?」

 

そしてそこから放たれた力によって、天河ヒカリのブルースターダストは不発に終わってしまう、彼は叫び声を止めて…………翼が生えたままヒカリを見据えた。

 

「……流、先輩……」

 

「ぁっ…………け、化身…………!!?」

 

「オオオオオオッ!!!」

 

「…………つぁああっ!!」

 

「ひ、ヒカリッ!!?」

 

 

 

瞬間、目にも止まらぬ速さで黒景流はヒカリからボールを奪い帝国ゴールへ駆け上がり…………そのままシュートを放つ。

 

 

 

「ァアアァアッ!!!!」

 

獣のような叫びと共に放たれたそのシュートはまるで神風を更に荒くした嵐の一撃、真凜はボロボロになりながらも…………力を振り絞り必殺技を発動させようとした。

 

「あ、アルテミス……リングッ!!!!」

 

女神の指輪がそのシュートを一度は阻むが、それを嘲るかの如くボールに纏わりついた風で薙ぎ払われる。

 

「ま、まり、んっ…………!!」

 

「ッ!?っあぁっあっ!!!」

 

必殺技を破壊されたにも関わらず、真凜はその手でシュートを抑えようとしたが…………無慈悲にも、吹き飛ばされてしまった。

 

 

「ァアアっ、あ!」

 

 

そしてボールは…………そのまま、ゴールネットを揺らした。

 

 

 

 

ピーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

ゴールが入った時のホイッスルが鳴り響く、しかしその瞬間は誰も声を発することなくそのボールをただ見つめていた。

 

大観衆が居るとは思えない程の静寂が、スタジアムを包み込んだ。

 

そして南雲原は4点目…………これでスコアは、4-3だった。

 

 

 

黒景流はそのまま項垂れて立ち尽くす、背中に生えた翼は徐々に消えてゆく。

 

その姿を、グラウンドにいる全員が様々な感情を沸き上がらせながら見つめていた。

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーーッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

3度、ホイッスルが鳴り響く。

それは…………試合終了の合図だった。

 

南雲原中、4点。

帝国学園、3点。

 

 

 

 

 

 

勝利者は、決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして黒景流はゆっくりと顔を上げて、ゴールを見据え…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………ふぅ」

 

 

 

 

小さく、息を吐いた。




砂神・ザ・ハンド
グラビティデザートの進化技、全体に行き渡らせてた領域風圧による防御をシュート一箇所に凝縮・集約させて、最終的にはねじ伏せて止めるキーパー技。
威力はゴッドフィンガーズより数段上ではあるが、その分消耗も激しく連発は出来ない大技。


黒い翼
その翼は、新たなる覚醒の予兆か。








次回、クソボケ死す。
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