忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
ただ展開自体はゲーム準拠で淡白かも。
そして今回、南雲原の出番一切なし!!
俺達雷門は全国大会決勝戦の舞台までコマをすすめた。
前年度優勝者として、王者として、恥じない試合をしなくてはならないが……どうにも胸が騒ついてしょうがない。
ハルの事、そして決勝戦の相手……南雲原の事。
そしてそれは俺だけじゃなく、仲間達も同じ事を思っているだろう。
みんな前々からハルの事は心配していた、俺がハルはサッカーに対して考えを改め始めたと伝えているから、少しは安心しているかもしれないけど………早く顔を見せて欲しいものだ。
次に………南雲原だ。
初戦の黒景流の無法っぷり、そしてチーム自身も彼に喰われぬ強さを携えている。
その上で強豪であり、雷門とはライバル関係にある帝国学園………それもハルや黒景流と同じかいぶつである天河ヒカリを擁した状態のチームを………見事に下してみせた。
あの準決勝は俺達も観戦していた、決勝まで勝ち進めば必ずどちらかが俺たち雷門と相対する事になるからだ。
試合展開は案の定凄まじく拮抗していた、両チームのサッカーモンスターを中心に激しい攻防の応酬が繰り広げられてた。
そして後半の最終局面、天河ヒカリの動きの質が様変わりし……それに呼応するかの様に黒景流は背中に、化身らしき翼を出してみせて……帝国のゴールを最後に奪ってみせた。
あれだけの力を持っていながらまだ発展途上………本当にかいぶつとは、あぁいうモノなんだと実感した。
その上で南雲原も帝国も、かいぶつ達の衝突が生み出す波に喰らいつきながら自身達も進化を遂げていた、呑まれぬ様に、喰われぬ様に。
そして準決勝を制した南雲原は、その戦いを通して更なる強さを得た………雷門に匹敵すると言っても過言では無いだろう。
それは俺だけではなく皆も実感している事だと思う。
その証拠に…………
「おいおい嵐、何度目やシュート外すんの」
「っ、別に体調悪くはねぇんだが………なんでだ?」
「……あれっ、嵐スパイクの靴紐解けてるよ?」
「星村?……おいおいまじかよ、なんで気づかなかった?」
「しっかりせぇや全く……」
「………あの、暖冬屋君も靴紐解けてますよ」
「うぇっ!?」
「……嵐避けろ!」
「あ?ぶごふっ!」
「すまん!パス練してたらあらぬ方向に飛んでしまった!」
「……パスってかシュートになってたよ、野神さん」
「いっでぇ顔面にいった………!!」
「あー鼻血出てるし、有海崎ちゃーん!」
………ご覧の通り、練習に集中出来てないのだ。
王者たる雷門としての練習風景ではないだろう、みんなどうしてしまったのか。
どうにも皆落ち着かない様子で練習をしていた、こんな事では身に入るものなんて無いだろう。
………まぁ、かく言う俺も前述の事が頭から離れず今ベンチで座っているのだがな、俺達の準決勝後からこうなってる。
こんな事は初めてで、キャプテンとしてどうすればいいのか分からずにいた………ハルの事だけでこうはならないハズなんだが。
「ふぃー……キャプテンも休憩っすか?」
「鬼門か、まぁそんなところだ……というか、お前さっき練習し始めたばかりじゃないか?」
「あーなんか……さっきからなんか集中出来なくて、はは」
俺と同年代のスタメン、鬼門は愛想笑いをしながらタオルで汗を拭いながら近寄ってきた。
………この際だ、色々話してみようか。
「……鬼門、今の雷門を見てどう思う?」
「いきなりどうしたんすか………えー、なんか………みんなも集中出来てないような」
「あぁ、それは俺達にも言える、鬼門はどうして集中出来てないんだ?」
「えっと、えー……それはハルが気になってて……」
「……そして、次に戦う南雲原の事もだろ?」
「……バレてたか」
「俺もだからな、なんでか……あの試合の後から南雲原の事が頭から離れずにいるんだ、それは恐らく皆も同じだ」
「決勝に戦う相手だから当然っすけどね……でも去年はこんな事無かったのに、なんで南雲原の時だけこんなになってるんだろう………」
そう、俺達は南雲原が原因で集中出来ていない、それは何故か?
相手が強いのはまず間違いない、しかし決勝に戦う相手なのだから当然の事だけど………きっと、俺達は……こう思ってるんだ。
「…………負けるかもな」
「………………今、なんて」
「いや、なんでもない」
「いやいやいや、聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど」
「………………すまない、でもこれがみんな感じてる事じゃないのか」
「それ……は」
つい言葉に出してしまった、はぐらかそうとしたけど誤魔化すのはやめた………恐らくこれが、みんなが練習に集中出来ずに戸惑う理由なんだと思う。
今の南雲原はきっと、俺達が今まで試合してしたチームの中で1番強い相手…………少なくとも、この状態の雷門を越える程には。
あの試合、南雲原も帝国もチームとしての実力が試合の中でぐんぐんとレベルアップしていたし……何より、雷門には黒景流を完全に止めれる奴が居ない。
止めれるのはただ一人…………円堂ハル、試合までには帰ってるくると信じているが、それだけで勝てると考えれるなら俺達はこうして悩んでないだろう。
それ程までに………あの試合で俺達に与えられたインパクトは絶大で、強大だった。
ハルはそれを感じ取ってたのだろうか?そして俺達はそれに戸惑っている、このまま練習を積み重ねても……俺達には何か、足りないものがある気がしてならない。
「俺達は、南雲原を恐れてるんですかね」
「かもな」
「……それでもやるしかないでしょ、雷門として……王者として戦うしかないですし」
「…………王者として、か」
「それにハルだって今、リハビリを頑張ってるんですよね?アイツが戻って来てさえすれば雷門は」
「お前はそれでいいのか?」
「え?」
「……俺たちはハルの事を何も分かってやれなった、だからこそあんな怪我が起きたんだと思う………確かにハルが入れば勝つ確率は上がると思うよ、でも………こんな情けない姿を今のハルに晒して、それで頼るなんて……それでいいのか」
「……………………キャプテン」
「俺を含めたみんながハルの事を理解してやれなかった、みんなの今の状態はその罪悪感も含まれてると思うんだ、加えてハルに頼ろうとする弱さで………」
「…………でも、どうすればいいんですか?俺達は」
鬼門の問いを聴きながら、俺は静かに目を瞑る。
ここまでサッカーに関して悩んだのは初めてだ、俺は雷門のキャプテンとして何をすればいい?
ハルにはどうすれば良かったのか、俺の今やるべき事はなんだ?
ハルはハルなりに自分とサッカーに向き合っている、俺はそんなハルの力になりたいし、南雲原にも勝ちたい。
この2つの問題をどうすればいいのか、先ずはハルの事をもっと知らなければ…………そして、それを知ってる人は。
…………よし、足踏みするのは今日で終わりだ。
俺はハルの先輩として、雷門のキャプテンとして……自分のすべき事を果たさねば。
「……キャプテン?」
「鬼門、今日俺はここで上がるよ、みんなに伝えておいてくれ」
「えっ、いきなりどうしたんですか?」
「行きたいところが出来たんだ、ハルと雷門の為に」
「それって……何処ですか?」
「…………ハルの家だよ」
◾︎◾︎◾︎◾︎
それから俺は1度家に帰り、私服に着替えて目的地の家へと向かった。
行き先が行き先だから流石に緊張はした、そしてその家の中の住人に事情を説明し中に招いてくれた。
その人はコーヒーも持ってくると言って席を離れ、俺はその家の中に目を回すように観察し始める。
…………かつてのイナズマジャパンのユニフォーム、そしてその決勝相手の交換したユニフォームもあって、FFIの優勝トロフィーもある、そして伝説のイナズマイレブンとなった当時の写真を飾られている。
改めてハルは凄い人を父親の元で育ったんだなと実感する、サッカー界に置いて生きる伝説の人だからな…………俺は、そんな父親の威光も相まってハル自身を見てやれなかったのかもな。
「雷門中キャプテン、月影 蓮か」
そう考えていた自分の前にコーヒーが置かれ、ある人物が俺の席の前に座った、俺は思わず背筋を正して目の前の人を真っ直ぐ見据えた。
「……はい!憧れの円堂守さんに会えて、光栄です!」
目の前にいる人こそハルの父親、無名だった雷門をキャプテンとして日本一にして、日本を世界大会優勝へ導き、その後もサッカー界に大きな影響を残し続けた伝説のサッカープレイヤー。
円堂守………サッカーに通ずるものであれば知らぬ人は居ない、同じ雷門キャプテンである俺にとっては正しく憧れそのもののプレイヤーである。
「はははっ、憧れか……俺からすれば今の雷門の方がずっとしっかりしてるけどな?」
「いえそんな、俺達がこうしているのも円堂さんの影響あっての事ですから、同じ雷門のプレイヤーとして憧れずには居られませんよ」
「そうかそうか……それで、ハルが気になって来たんだろ?」
「はい、学校にも来なくなる前から連絡はありましたが、俺の方はそれっきりで………家の方なら、何か知ってると思いまして」
「なるほどな、聞いた話によるとハルは遠い島でリハビリに近い特訓をしているってさ、俺達が聞いたのはここまで…………ハルは今、ハルなりにサッカーと向き合ってる、心配するな」
「…………そうですか」
円堂さんの言葉を聞いてコーヒーを一口飲む。
その事については前々からの連絡から聞いていたけど、改めて親の口から伝えられるとやはり安心する、今は再会の時を静かに待とう。
「円堂さんの口から聞けてホッとしました、巷では再起不能なんて言われてましたから……」
「はは!らしいな、でも……再起不能になるのは結局自分次第なんだよ、どんな世界でもその世界へ関わり続ける術はあるのさ、ハルはその答えに近づきつつあるみたいだしな」
「…………はい、今はハルの事を信じて待とうと思います、教えてくれてありがとうございます」
「そうしてくれ、それに………お前達が次に戦う相手も、今のハルに近しい状況の奴だろ?」
「……南雲原の、笹波雲明ですね」
笹波雲明、中学生でありながら南雲原中サッカー部の監督とキャプテンを兼任して、復活したばかりの南雲原をここまで勝ち進めた張本人、インタビュー記事によれば彼は心臓病でサッカーができない身体だったとの事。
あれ程のサッカー知識と目を持ちながらフィールドに出ないのはおかしいと思ってたが、そんな理由があるのは思わなかった。
…………確かに言われてみれば、今のハルと笹波雲明の状況は似ていると言える。
それでも心臓病という命に関わる病を宿してなおサッカーに関わり続けるその気力は凄まじいの一言だ。
「お前らはあの時のハルを怪物と買い被ってたが、俺に言わせれば……本当の怪物は笹波雲明……そしてもう1人、黒景流だ」
「……黒景、流…………円堂さんから見ても、彼はやはりサッカーモンスターなんですか?」
「まぁな……ていうか最初に彼のプレーを見た時は笑ったよ、直ぐに俺の教え子の姿が重なったんだからな」
「円堂さんの教え子…………ではやはり、彼のプレーの起源は」
「あぁ………《松風天馬》だ」
その名前を聞いて、おもわず硬唾を飲む。
松風天馬………15年前、フィフスセクターと呼ばれる組織が敷いた管理サッカーに革命を起こしたとされる、かつては俺と同じ雷門のキャプテンだった人だ。
その経歴は謎が多い人物ではあるが、日本サッカー界でも革命児と呼ばれる程、円堂さんに負けず劣らずの伝説を誇るプレイヤーだ。
彼のプレーを見た時は確かに既視感を覚えて、その心当たりにも気づいていたけど、円堂さんが言うなら間違いないな。
「今でも大活躍をしている選手ですね、円堂さんから見てその松風天馬さんのプレーを彼は体現してるんですか?」
「そーだな、昔の天馬のプレーならよく出来てると思う、ドリブルだけじゃなくて自分だけの必殺技も持ってる…………けど俺に言わせちゃまだまだ、足元にも及んでないよ」
「それでも彼の実力は圧倒的です………笹波雲明に黒景流、そんなかいぶつ2人が居る南雲原………強敵ですよ、本当」
「どうした?………もしかして、ビビってるのか?」
「えっ、あ……その……………はい、雷門に来てから、初めて負けるかもと思ってしまってます」
「弱気だが正直だな、確かに今の南雲原は手強いなんてもんじゃないしな」
「……円堂さん、恥ずかしながら今の雷門について聞いてもらいたい事があるんです、話してもいいですか?」
「おう、言ってみろ」
「ありがとうございます」
偉大なる先人にこんなことを言うのは忍びないかもしれないが、何かしらのヒントを得たいと思い俺は今の雷門の状態を伝えた。
みんなが雷門に来てから立ちはだかる過去最強の敵、その力を目の当たりにして無意識に負けてしまうかもしれないと感じて練習に身が入らなくなってる事、決勝までにハルが帰ってきても今の自分達じゃ足手まといになるかもしれないと、情けないと怒られる覚悟で俺は円堂さんに相談した。
俺の話を聞いた円堂さんはコーヒーを一口飲み、小さく頷いた。
「なるほどな、しかしそれは雷門に来る前から強い相手と試合をした事はあるんじゃないのか?」
「はい……しかし雷門に入って、そこで行われる一流のトレーニングをこなし、そこから様々な相手と試合をして俺達は勝ちました……そして今、南雲原に王者として彼らを迎え撃たなければならないと思うと、手が少し震えるんです………」
俺はカップに添えていた手を離し、少しだけ震えている自分の掌を見つめる。
雷門に入ってからこんな事は初めてで戸惑って、自分では何をどうすれば良いのか分からなかった。
きっとこのまま試合をしても、結果は見えているから。
「それだよ、月影蓮」
「え?」
「《王者として迎え撃つ》……それが今のお前達を作ってしまってるんだ」
先程まで笑みを浮かべいた円堂さんは、今までにない真剣な表情と真っ直ぐな瞳を俺に向けて、思わず背筋が伸びてしまい鳥肌がピリピリと立ってくる。
お、怒ってるようには見えないが、なにか不味いことを言ってしまったのだろうか………とにかく、話を続けなければ。
「ど、どういう……事ですか?」
「……さっきも言ったが南雲原は確かに強敵だ、強い相手を前にしてそう思うのは自然だ……でも今のお前達は、王者って肩書きで余分なプレッシャーを感じてしまってるんだ」
「王者だから勝たなきゃいけない、雷門だから絶対負けられない、俺達は王者だから負けないサッカーをしなくてはならない………お前達はそう考えながら練習をして、それで自分に無意識な精神的負荷をかけてるんだ」
「っ…………」
「プライドは確かに大事だ、今の雷門がそういう立場にあるのも理解してる、でも………現にそのせいで、お前達はそうなってるんじゃないのか?」
「…………」
円堂さんの言葉を受けて、俺はカップに残っているコーヒーに映る自分の顔を見つめた。
………円堂さんの言う通りだ、もし負けてしまえば先人達が作った栄光に泥を塗ってしまわないか不安で、そう深く考えてないつもりでもそう感じていたのかもしれない。
皆もそう感じていたから練習の時、あんな風になってしまっていたのか?もし負けたらが、無意識に思考の中へ入ってしまっているから?勝たねばと、自分に圧力を掛けているから………なのか。
「……王者であることが俺達を絞めているって事ですか」
「少なくとも、俺にはそう見えたよ」
「どうすれば、俺達はその負荷を断てるのでしょうか?」
「…………話は変わるかもだが、南雲原にとって雷門はどう映ってるんだろうな?」
「えっ?」
思わず顔を上げて円堂さんの顔を見る、先程までの笑みを浮かべて俺の答えを待っていた。
南雲原から見た雷門………それは、つまり。
「越えるべき……挑戦すべき相手って、ところですか?」
「そうだな、じゃあ今の雷門にとって南雲原はどう映る?」
「今の俺達からみた、南雲原……」
その言葉を受けて考える。
今の俺達にとって、南雲原は恐ろしい相手?王座を脅かす的?それか、俺達も挑戦しなくてはならないチーム……?
互いが、挑戦すべき相手と……思っているのか。
それが、答え?
「………俺達も、挑戦すべき相手と思ってます」
「そうだ、答えはそれだよ月影蓮」
「え?」
「最後の決勝、お前達は南雲原とは……王者として迎え撃つんじゃなくて、同じ挑戦者として臨めばいいんだよ」
「……同じ、挑戦者………」
「人は挑戦に向かって己を高め、磨き、そして乗り越える為に特訓をする………今のお前達はただ王者たる肩書きを守るっていう、後手に回った意識で特訓をしているから身に入らないんだよ」
「なら決勝だけ……王者ってプライドをかなぐり捨てて、南雲原と同じ視線で試合に望むっていう挑戦を定めれば、お前達のその状態も変わるんじゃないか?」
「王者を……捨てる………」
「時にはそういった覚悟も要るのさ、裏返せば南雲原はお前達にとっては……今までの試合とは比較にならない激戦が望める、ワクワク出来る相手なんじゃないか?」
「……!!」
「やってみろよ月影蓮………ハルが戻ってくる時、そういうチームにしたいんだろう?」
円堂さんの言葉を受け止めながらその視線を真っ直ぐに受け止める。
王者としてじゃなく、同じ挑戦者として試合をする………常勝だった雷門が、南雲原を相手にして心が躍る試合ができる。
………そう思うと胸が高なって、無意識に感じていた精神的な重りが軽くなるような気がした。
そうか……難しく考える事は無かったのかもしれない、王者だから、雷門だからと先に出てた答えを1度忘れて挑戦に集中すれば、みんなの今の状態も変えられるんだ。
でも、今のままじゃ直ぐには変われない。
ならば…………次に俺がすべき事は、今定まった!
俺は自分の顔が映し出されたコーヒーを飲み干し、カップをテーブルに置いて立ち上がり、円堂さんに向けて姿勢を曲げて頭を下げた。
「今日は色々とありがとうございました!円堂さんの言葉通り、俺達雷門は王者って言葉に縛られすぎてたのかもしれません、だから自分で勝手に課せてた重りを1度棄てて、俺達は決勝で南雲原に挑み………必ず優勝してみせます!!」
「……あぁ、その意気だ!俺も雷門には勝ってほしいからな」
「ありがとうございます!では俺はこれで失礼します、早速試してみたいことが出来たので!!」
「あ、おい月影蓮……」
俺は高揚する気持ちのままその家を後にした、先ずはハルの怪我に関する違和感を探った後に、今から俺の考えが間に合うか試さなくては。
決勝の日までに、やるべき事をやるんだ!
「………行っちまった、夕飯一緒に食べて欲しかったんだが………まぁいいか」
「……南雲原との決勝、より面白くなりそうだ」
◾︎◾︎◾︎◾︎
俺が円堂さんの家を訪ねて2日が経過した。
その日の翌日、俺はハルの怪我の違和感を探る為に、その試合のフォローカメラの映像を星村と確認をして、そこに映し出されたのは………相手選手がハルの足に接触したかと思えば、脚には触れられておらずハルがそのまま倒れそうになっている瞬間だった。
あの日ハルは自分から痛みを訴えかけていたことになる、そしてこの試合の日は不幸にも彼の誕生日で、贈り物に親がプレゼントしたとされるスパイク………その要所要所から導き出された答えは………雷門の監督、乙女仙次郎が、ハルの怪我を仕組んでいたのだ。
何故そんなことをしたのか?それは彼の息子さんの事による逆恨みだったのだ。
園崎アイル、かつて同じジュニアリーグでハルと競い合ったライバル……しかし、ある試合中に怪我をしてしまった……サッカーが出来なくなってしまう程の大怪我を。
そのせいで当時は車に飛び込んで自殺したという事になっているが、事実は違う………監督は息子さんがハルを恨んでいたと言い切っていたが、残されていた当時のSNSに記されていたのは、互いが互いを高め合うための練習メニューの意見交換、どんなプレーが出来たか事細かくきさいされていた。
もう一度言おう、ハルとアイル君は競い合い、高め合うライバルだった………アイル君はハルに自分のサッカーを託していた、車の件もただの事故だったのだ。
それでも俺は………サッカーの未来となるハルにした仕打ちを許さない。
彼は息子に懺悔をしながら、警察の人達へ連れていかれた。
ハルがサッカーをつまんないと思う理由は強いが故だけのものじゃなかった、サッカーがやれなくなってしまった親友を失い……高め合うライバルがいなくなってしまったから………友達を、ずっと求めていたからなんだ。
そしてさらに後日。
乙女監督が一般的には突然の辞任ということで皆に知らされ、混乱しているが……俺達にはやるべき事がある、練習を始める前に俺はみんなに呼び掛けた。
「みんな聞いてくれ、今まで俺は敢えてみんなの前で触れなかったが………今や雷門の一軍は、来るべき決勝戦に向けての練習が身に入ってないだろう?」
「それは……まぁ、せやな」
「単刀直入に言おう、それは王者たる俺達が………かいぶつを擁する南雲原に負けるかもしれないと、無意識に感じているからだ」
「「「!?」」」
俺の宣言にみんなが騒然となる、しかし誰一人として俺の言葉を否定してこなかった………やっぱり、皆もそう思ってたんだな。
「このままでは俺達は負ける、例えハルが決勝に間に合ったとしても俺たちはその足を引っ張って終わるだろう………だから今、俺達は意識を変えなくてはならないんだ」
「意識………どういう事?」
「雷門は王者という肩書きを捨てて、いち挑戦者として南雲原に挑むしかない、南雲原の方は俺達王者に挑む挑戦者としての意識を持っていることだろうけど……それと同じ意識を俺達も持って、挑戦を設定するんだ」
「王座を守る為じゃなく、南雲原への挑戦って気持ちで試合に臨みたい、負けることを先に考えずに………勝つ為の練習を俺はしたい、今までの俺達はそう思って練習していたから、サッカーに対してなぁなぁな状態になっていたんじゃないか?」
みんなに改めて問い掛ける、皆は何も言わずに俺を見つめていた………しかし、このままではまだ実感出来ない筈だ。
故に俺は………ここである博打を行う。
この結果次第で……俺達の決勝の結果が変わる。
「俺は来るべき決勝戦の前に、今から二日後………あるチームへ練習試合を申し込んだ、相手もそれを受諾している」
「えっ、この時期に練習試合ですか?キャプテン、どうしちゃったんですか」
「いきなりですまない……でも必要なんだ、今の俺達がやるべき事が、この試合に込められてる」
「……それで、相手は誰なんや?」
暖冬屋が相手を尋ねる。
俺はみんなを見渡し、意を決して伝える。
「帝国学園」
雷門中
見たことの無いデカイ壁に挑むしかないが、王者として勝たねばならないという気持ちでプレッシャーを感じてしまう。
そこで王者ではなく挑戦者として挑む気持ちを備える為に、南雲原と同等の実力を持った帝国学園へ練習試合を申し込んだ。
円堂守
我らがイナズマチャレンジャー。
主人公のプレースタイルを天馬由来のものだと見抜くが、まだまだと評する。
しかし天河ヒカリの存在も相まって、これ世界普通に行きかねないな……なんて思ってたりする。