忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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はい、今回から短めになりますが雷門VS帝国の練習試合です。

それと前回の(修正はしました)帝国の描写で一部の読者様を不快にさせてしまった事をお詫び申し上げます、今後はもっと考えて描きます…………。


因縁の練習試合

「はぁ、はあ………いやきっつ……乙女監督のメニューってかなり効率的だったんすね」

 

「だな、試合中はロクな指示出さない癖に、こういう時になって有難みを感じるとは思わなかった………」

 

「ふーっ……オラもっとこいや嵐!!」

 

「おぅっ!おぉぉッ!!」

 

「………後、スプリント8本っ………!」

 

「バハムート、クラッシュッ!!」

 

 

 

 

「…………よし、調子は戻ってきたな」

 

雷門のグラウンドでみんなが必死に特訓を重ねている姿を、俺はベンチで汗を拭き水分補給をしながら眺めていた。

俺も今まで以上に死ぬ気で特訓をしていた、乙女監督が居なくなった以上、前からやってたトレーニングメニューを元に練習をするしかないが………中々上手くいかないものだ。

 

それでもみんなの意識は変わりつつある、少なくとも前よりかはずっと良くなってる筈だ、帝国との練習試合は明日………改めて気を引き締めなければ。

 

「あーくったくた………こんなに血眼で走ったのは何時ぶりだろほんっと……!!」

 

「大丈夫か、星村?」

 

「はいなんとか……昨日の特訓よりずっとハードですね今日の……?」

 

「すまないな、乙女監督のメニューを元に俺と有海崎さんが組んだんだけど、そう上手くはいかないよな」

 

「………あんなことをしても、やっぱり監督はしっかり監督をしてたんですね」

 

「…………そうだな」

 

今頃は事情聴取でもされてるか、塀の中か………何れにせよもう、二度とサッカー界隈に表立って関われることはもうない。

 

伝説のサッカープレイヤーの息子を再起不能に追い詰めたのだ、当然だ…………しかし………彼の仕組んだ罠が無ければ、ハルと雷門も変わらなかったのかもしれないと思うと複雑だ。

 

もちろん許すつもりは無い、決して………けどせめて、息子さんの真実に気づけたのはせめてもの救いなのだろうか。

 

俺には分からない………もう彼の事は忘れろ、今は自分達の現実に向い合わなければ。

 

「それにしても皆練習に集中出来るようになりましたね、キャプテンのおかげですよ」

 

「俺じゃないよ、円堂さんの言葉あっての事だ、どん底からこの雷門を死ぬ気で日本一にした人の言葉だからこそだ」

 

「ですね、あの時帝国と試合するなんてどうするんだろー!なんて思っちゃいましたよ」

 

「はは………でも必要な事なんだ、今の帝国は俺達の現状を更にぶち壊す相手に相応しいからな」

 

「…………もちろん勝つ気で試合はしますけど、勝てるかな」

 

「……どうかな」

 

ハルはまだ帰ってきてない、今の雷門には監督もいない。

それとは対象的に帝国には天河ヒカリと不破アリス…………最高峰の選手と監督が出揃っている、厳しいなんてものじゃない。

 

そしてそれは南雲原にも言えること………しかしそんなことを言ったって何も変わらない、現にみんな変わろうとしてるんだから。

 

「(……昨日、勇気を出して良かった)」

 

あの宣言をするのには流石に気合いを入れまくった、俺のサッカー人生で1番緊張したと言っても過言じゃない。

 

晴れ渡る空を見上げて、俺は昨日………帝国学園と練習試合をするという宣言を皆に行った後の事を思い返す。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「て、帝国学園と練習試合ぃ!?本気で言ってるんですか!?」

 

「本気だ鬼門、2日後にはこの雷門に帝国学園のチームがやってくる、スタジアムで練習試合を行う……そして、天河ヒカリもスタメンに入る」

 

「帝国のサッカーモンスターもか!?本気なのかよ相手は……!」

 

「雷門と帝国は25年前から因縁がある、こちらが練習試合を申し込んだらそうもなるだろう」

 

俺は練習前に円堂さんに言われた事を伝え、帝国と練習試合をする事を宣言するとみんなは案の定驚いていた。

当然だろう、今の帝国は間違いなく最強の布陣なのだから、サッカーモンスターたるハルも監督もいない雷門では、どこまで食い下がれるか……。

 

「……な、なんで帝国と?しかもこの時期に……」

 

「必要な事と言っただろ赤袖、激闘を繰り広げ南雲原に敗れた帝国だが……裏を返せば南雲原と拮抗する実力を備えている唯一の相手だ、帝国を南雲原に見立てて今から特訓をして、当日の試合で俺達はどこまで相手になれるか、南雲原の実力はどれ程のものか…………それを分析し理解する為の試合だ」

 

「言いたい事は分かるんやが、今の帝国ってヤバいんやろ…………勝てるんか、ワイらは」

 

暖冬屋が珍しく弱気な発言をする、それは周りの仲間達も同じことを言いたそうにしている…………はっきりと、告げなければな。

 

「はっきり言おう、今俺達にはハルの様な選手は居ない、そして監督も…………対して相手は天河ヒカリと不破アリスという屈指のプレイヤーと監督がいる、勝率は半分以下………にも満たないだろうな」

 

思わず乾いた笑いを零しながら告げる、みんなは騒然として顔を見合せていた。

 

「雷門が、勝てないってのかよ……」

 

「帝国の強さはあの試合以上なのかもしれないんだろ………負ければ、俺達は……南雲原にも………」

 

嵐と野神さんの発言でどんどん周りの空気が重くなり、顔も曇ってきた………その様子を見て追い詰めていることに罪悪感を感じてしまうが、それでもやるしかない………勇気を捻りだせ、雷門中キャプテン……月影蓮!!!

 

「…………この状況は無名だった雷門を想起すると思わないか、みんな?」

 

「……えっ?」

 

「知っての通りかつてこの雷門は無名だった…………フットボールフロンティア全国優勝など、天地がひっくり返っても有り得ない程にな、その栄光のきっかけとなったのは雷門と帝国の練習試合………今でも語り継がれる伝説の試合だ」

 

円堂守と豪炎寺修也、鬼道有人が一同に揃い…………イナズマイレブンと呼ばれるに至るまでの伝説が始まった練習試合、その時の試合結果は帝国の棄権ということになって雷門は勝利したとされてるが、結果自体は見るに堪えない惨敗となっている、俺達ももしかしたらそうなるかもしれない。

 

「あの試合は実質的に雷門は帝国に負けていた、それでも彼らは折れることなく特訓と練習を重ねに重ね………ようやく地区予選で帝国を下し、リベンジを果たせた」

 

「………有名なエピソードだよね、少年サッカー黄金期の話だし」

 

「あぁ、そしてみんなに聞きたい……雷門は今や王者と呼ばれる程の名門になったが、かつてはそんな影など見当たらない場所だった………それでも尚全国優勝という栄光を掴めたのは何故だ?」

 

俺がみんなに問い掛け、みんなはざわつくが……明確な答えは見い出せてなかった、その姿は円堂さんに会った時の俺を想起させていた。

今こそ円堂さんの言葉を伝えよう、今の雷門の為に。

 

 

 

 

 

「それは……かつての雷門が王者ではなく、挑戦者だったからだ!!」

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

「円堂守を始めとする伝説のプレイヤー達は最初から伝説だった訳じゃない、チームとしての実力は良くて中の中………そんな中、全国の強豪たちはそんな無名校に容赦なく牙を剥いた」

 

「それでも勝ち進めたのは、巨大な壁への挑戦という明確な目標があったからだ、それを定めて越えるための……勝つ為の特訓を彼らは重ねてきた、その繰り返しでようやく………雷門は初めての全国大会優勝という結果をつかみ取れたんだ」

 

「そして円堂守を中心とした日本代表の世界への挑戦………これも同じ事だ、日本は世界に比べたら小さい所だった……それでも尚挑む事を彼らは諦めなかった、世界を相手に彼らは高揚し、魂を滾らせ、来る日も来る日も挑戦の為の特訓を続け…………そして、FFI優勝という伝説すら作り出した!!」

 

日本の少年サッカーを語る上では欠かせないエピソードをみんなに伝える、誰もが知っているであろう伝説を俺は改めて皆に熱弁する。

同じ雷門出身のプレイヤーの話をここで聞かせること、それが大きな意味になると信じて。

 

「俺達もまたそれらと同じ状況にある!1つ明確に違う点は……俺達が最初っから王者として居るからだ、この雷門に来て一流のトレーニングと質のいい指導を受けて強くなり、苦戦らしい苦戦を経験せずに勝ち進んだ……それは決して悪い事じゃないと思うけど、良くも無いと思ってるよ……それがこの現状を産んでしまってるのなら」

 

「どういう事、ですか?」

 

「俺達は勝ってきた、それはいつの間にか先人たちの栄光を守るという考えにすり変わっていた………そして今、決勝で南雲原に負けてしまいそうという無意識の恐怖を俺を含めたみんなは抱えてしまい、その事ばかりを考えて練習して、全く身に入らない事になっている、そうだろう?」

 

改めて皆に問い掛け、言葉は返ってこない。

俺の言葉を誰も否定しない、みんなもやはりそういう考えを無自覚に持ってしまっていたんだ。

このままじゃ幾ら練習を積んだ所で無意味だ、俺は話を続ける。

 

「だからこそ俺達に必要なのは………王者として迎え撃つのではなく、南雲原と……先人達と同じ挑戦者として試合に臨むという意識だ!」

 

「同じ挑戦者……南雲原と、同じやて?」

 

「そうだ、南雲原もきっと己を挑戦者として認識している…………言い換えれば、今の彼らはかつての雷門と同じ状況と言えなくないだろう?」

 

「……言われてみれば、確かに」

 

「彼らもまた強い相手への挑戦の為に特訓を重ねてきた事だろう、今や知らぬ者もいない黒景流をベンチに置き、常に自分達の限界を越える戦いをしていた……それが今の強さに繋がっていると思っている」

 

そう、無名からの快進撃……それは紛うことなくかつての雷門と同じだ。

挑戦という明確な目的意識を常に絶やさず戦い抜いたからこそ持つ強さ…………それが今の雷門にはない、圧倒的な差の一つだ。

 

「それに比べ今の俺達はどうだ?最初っから負けるかもしれないと思い込み、そのせいで特訓もままならない、帰ってくるであろうハルに頼りかねない、そんな情けない状態のままでいいか?良いわけがない!」

 

「故に俺達は王者を捨てなければならない!挑戦するものとしての明確な意識を携え無ければならない、そして自分達の限界を知るための練習試合だ」

 

「確かに負けるかもしれない、何も知らない者からは王者が練習試合で負けてしまったと揶揄されるかもしれない……でもそれがどうした!?このまま情けない姿を晒して、決勝に負けるよりかは遥かにマシだ!!」

 

「…………ッ!!!」

 

「俺達が勝ちたい気持ちは最初からある、ならばここからは負けない為の特訓ではなく、勝つというより明確な挑戦を持った特訓をしたい!常勝雷門のプライドはここで捨てろ、俺達は既に挑戦者なんだ!!!」

 

 

 

「そして先人達に、この先雷門に来るであろうまだ見ぬ新星達に恥じない戦いをしたい!お前達はどうだ!!?」

 

 

 

俺の話はここで終わった。

肩で息をして、汗を流しながら俺を見て固まるみんなを見据える。

 

静寂が部室を支配している、しばらくの間誰も何も言葉を発さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………初めてやな、お前がここまで熱くなってんのは」

 

 

 

それを最初に破ったのは暖冬屋だ、俺を含めたみんなは彼に視線を集めた。

 

 

「………きっとキャプテンの言う通りやろうな、王者だからなんだと言ってあの有様や、このまま決勝に行ったってみーんなしんどいままで終わるんやろな…………確かにそんなの御免や」

 

「……だね、私だって負けるのなんていやだけど、このままなのはもっと嫌だ、必ず戻るハル君に情けない姿見せたくないもん」

 

「確かに俺達は勝つのが当たり前すぎて、挑戦する事をすっかり忘れてたんだな………それでいざ負けそうになってこれとか、情けなくてしょうがねぇ」

 

「暖冬屋、星村、嵐……」

 

「キャプテンの言葉痺れたぜ、相手はバカでかい壁だけど、逆に言えば今まで勝ってた俺達が負けるかもしれない相手………ようやく本気のサッカーが出来る相手って事だ」

 

「…………うん、そう言われたら確かに燃えるかも」

 

「……負けるのは怖いけど………変わらなきゃ、絶対に」

 

「ここまで言われたらやるしか無いっしょ、王者ではなく、挑戦者として!」

 

先程まで暗い顔をしていた鬼門も何時もの調子に戻っていた、みんなの顔も決意に満ち溢れていた。

俺の言葉はみんなに届いていた、その事実で俺は安堵し笑みを浮かべた。

 

「みんな……!」

 

「やるしかねぇな、帝国にも……南雲原にも、俺達の挑戦をアイツらにぶつけようぜ」

 

「……ありがとうみんな!ではこれより雷門は、2日後の帝国学園の練習試合に向けての特訓を開始する!」

 

「相手は南雲原に負けず劣らずの強敵だ、この試合の目的は南雲原の実力を測るのと、自分達の限界を知る事にある!そして帝国の不破アリスは相手を徹底的に分析するデータキャラ……故に俺達は敵の分析以上の力を特訓で手に入れなければならない、この2日という短い期間は今まで以上の特訓になる、それでも着いてこれるな?」

 

俺の言葉にみんなが強く頷く、今日ここで雷門は変わる…………変わらなければならない!

円堂さん達が常に限界にぶち当たって来たように、俺達もまた限界を越えなければならない。

 

俺達は伝説にはなれないけど………それでも同じ挑戦者として、これから立ち上がる事はできる!

 

「さぁ始めよう…………過去最大の特訓を!!」

 

 

「「「おおっ!!」」」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

そして昨日の特訓、今日の特訓もみんなは今まで以上に食らいついてくれた。

特訓自体は今までも頑張ってはいたが、この2日間に関しては………なんと言うのか、熱を持って臨んでいた。

 

《練習こそが力だ》……それが雷門サッカー部の部訓の1つ、それに従って今まで練習は積み重ねてきたが……必要最低限の量で限界は越えてなかった、そこまでしなくても今までは勝てたからだ。

 

今回に限っては俺達が相手するのは帝国学園…………決勝の南雲原と互角の実力を持つチーム、負ける恐怖は残ってはいるが、それ以上に勝ちたいと思う気持ちが俺達を加速させてた。

 

今までならこんな事は無かった、円堂さんの言う通り…………挑戦者として切り替えて特訓した時の効果は尋常じゃなかった。

 

…………円堂世代のチームも、こんな気持ちで特訓していたのだろうか。

 

負けたくない、勝ちたいと常に思いながら特訓していたのなら………やはり尊敬すべき人達だ。

 

 

 

 

 

「(常に……こんなプレッシャーを抱えながらしていたなら)」

 

 

 

 

正直に言って、俺だけか知らないけど………前以上の恐怖が俺の心にのしかかっていた。

何度も言うが今回の練習試合は勝てる見込みは限りなく薄い…………はっきり言って、負けてしまうだろう。

 

その時の結果で自分の限界を知った時…………俺達は果たしてどうなるのか?最悪王者としていた時の敗北以上に恐ろしいことになってしまうのではないのか?そんな考えがここ最近で過ぎるようになっていた。

 

「(…………弱いな、俺は)」

 

さっきまでずっと空を見上げてたが、次第に俯いて自分の弱さに嘲りにも似た笑みを零す。

俺のかけた言葉が今の現状を壊したのはいい、それでも………明日が怖くなってしまうのは、ままならないな……本当。

 

「…………それでもやるしない」

 

顔を見上げ、グラウンドで特訓を頑張るみんなを眺める。

みんなは俺の言葉を信じて特訓を続けている、皆をそうさせた俺がこんなのじゃ話にならない………前に進むしかない、俺はキャプテンなのだから。

 

「…………よし、休憩はここまでにしよう、星村付き合ってくれ」

 

「分かりました」

 

タオルと飲みさしを置いて、星村と共にグラウンドへ戻る。

…………ハル、俺達もまた………改めて自分達のサッカーに向き合ってるぞ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ふーーっ、つっかれたねー流先輩?」

 

「不破が俺達に色々とさせてたからなー………ていうか何自然と俺の部屋にいるのお前」

 

「いーじゃん、キスした仲じゃん?」

 

「へいへい……」

 

帝国学園にやってきてから2日目、俺は準決勝翌日だと言うのに特訓を開始した帝国サッカー部の練習に付き合った。

帝国のユニフォームも支給されて、まるで俺がチームに入ったかのような気持ちになった。

 

アイツらの特訓開始前と特訓中の規律の高さは南雲原にない、俺も何とか合わせてるけど…………中々に慣れない。

 

しかし………これが彼らのチームプレーの質の高さに繋がってるなら、俺にも活かせるかもしれない…………もしかしたら笹波はその為に俺を帝国へ送ったのかもしれない。

 

 

そして聞いたところによると…………明日帝国学園は、あの雷門中と練習試合をする事になったとか。

 

 

俺を含めた帝国サッカー部のみんなも不破からそれを聞かされて大きく驚いていた、あの王者から帝国へ練習試合を申し込んで来たのだから。

不破曰く南雲原との試合に負けた帝国は、現時点で南雲原と互角の実力を備えている唯一の相手だから、南雲原の実力を知るための練習試合と推測していた。

 

 

なるほどなーとは思うが…………正直、今の雷門は帝国に勝てるのだろうか。

 

 

円堂ハルはまだ雷門に帰ってきたというニュースは無い、今のヒカリは雷門とはいえ簡単には止められないはずだ。

そしてヒカリ以外の選手達もあの試合を通してレベルアップしている、不破アリスの元で更なる戦術や新しい必殺技も確立してるし…………後、俺が色々みんなに付き合ってるせいで強くなってるような…………。

 

雷門が最強なのは理解してるけど…………正直、今の帝国程の圧を感じない、円堂ハルが居ればまた違うのかな………いや、俺の思い過ごしかな。

 

「なぁヒカリ、お前ら明日雷門と練習試合だけどさ、ぶっちゃけどう思ってる?」

 

「雷門?…………んーあんまりー、前のボクなら明日出ようなんて思わないかな、だって間違いなく今の南雲原が強いとおもってるしさ」

 

「そっか……んでお前、なんつー格好してんのさ」

 

「なにー?ちゃんと着てるよー?」

 

「少なくとも野郎が居るの部屋の格好じゃねぇ」

 

今ヒカリは部屋着スタイルなのか、髪を降ろしてタンクトップにショートパンツで寝転がるという、なんとも危機感の欠けらも無い姿になっている。

俺は女性への免疫は来夏で培われてるけど、他の男とかの前だとやばいんじゃね?

 

「また井野辺や戦導に何か言われそうで怖いんだが、お前ふつーに可愛いから危機感持てよな」

 

「んふー可愛いなんて言われたー、先輩に言われるとなんかうれしーな」

 

「さいですか」

 

「ねーねー、来夏先輩とボク、どっちが可愛い?」

 

「え?…………来夏かな」

 

「うおりゃーー!!!」

 

「なんだってんだい!!?」

 

「そこはボクでしょーが!ボクの目の前で他の女の人褒めるなー!!」

 

「お前が質問してきたんでしょーが!やめろ取っ組もうとするな!力強っ!?」

 

…………それと、帝国にいる間ヒカリとの距離感が可笑しい。

気持ちはとりあえず分かったけど、距離の詰め方が以前の来夏以上かもしれない、すげーベタベタしてくる。

 

穂村達はとりあえず、一緒の特訓を通して俺に対しての心象は良くなってるけどさ…………。

 

 

 

 

 

 

『…………お前、忍原来夏や小太刀 鞘が居るにも関わらず天河まで引っ掛けるのはどうなんだ?』

 

『いや、引っ掛けたつもりは無いんだけど』

 

『つもりでないならそれとかやべーだろお前………サッカープレイヤーじゃなくてホスト目指せよ』

 

『いやなんでだよ、スポーツですら無くなってんじゃん』

 

 

 

 

南雲原の仲間達の様な呆れた視線を送ってくるようになったし……まぁ嫌われるよりかは良いけどさ、相変わらず女子陣からはすげー警戒されてるけど。

 

「とりあえずもう部屋戻れよヒカリ!問題起こしたら不味いだろ!?」

 

「流先輩がボクの気持ちはぐらかすからじゃん!絶対逃がさないんだからっ!」

 

「悪かったって、とりあえず離れてくれ!!」

 

その後、とりあえず猛犬を手懐けるように撫でたりして納めました。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

遂に、この日が来た。

練習試合開始まで時間はあるが、そろそろ帝国学園が来る頃合いだ。

 

…………過去にも練習試合は何度も行ってきたが、今日程緊張した日はない、手汗がさっきから滲んでいるし、仲間達もどこかそわそわしてて落ち着きがない。

 

それでも俺達はグラウンドに立って待機している…………そして、段々と何かが近づき、揺れる様な音が聞こえてきた。

 

 

「……来た」

 

 

雷門の校門前に巨大な装甲バスが通り過ぎ、出口と思われる部位が校門前に止まった。

ドアが開けられ階段が伸び、そこから…………帝国学園サッカー部監督、不破アリスを筆頭に次々と選手達がぞろぞろとやってくる。

 

 

帝国学園………こうして迎えると、かつてない圧を感じるな……間違いなく、今の雷門以上の力を持っていると実感する。

 

 

『あの人もこうして雷門にやってきたのかねーアリス?』

 

「そうかもね、ブラザー」

 

「帝国学園監督、不破アリス……雷門中サッカー部キャプテンの月影蓮です、今回は我々の練習試合の要望に応えてもらいありがとうございます」

 

「……帝国と雷門は因縁浅からぬ関係だからね、こうして試合を申し込まれたなら喜んで受けるさ」

 

代表して俺が帝国を迎え入れ、監督の不破アリスと握手をする。

笹波雲明と同じ学生でありながらチームを率いて、今世代の帝国チームの強さを引き出した張本人………今回の試合ではどんな戦術を繰り出すか、油断は一切出来ない。

 

 

そして………………

 

 

「ここが雷門かー………おじさん達も来たんだっけ」

 

 

不破アリスの背後からひょこっと現れた白い髪の少女…………彼女こそがハルと同じかいぶつ、帝国のサッカーモンスター……天河ヒカリ、可憐な少女だが、そのフィジカルは常人のそれを遥かに越える……この子もまた油断ならない。

 

今回は果たしてどんなサッカーになるのか、どこまで俺達は彼らに太刀打ちできるのか…………不安と高揚を交えた形容できない気持ちが、俺の中で渦巻いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(うぉすっげー雷門中だ、あの人の母校にようやく来れたすげー、あの人の歴史を載せた場所とかあるかなー、あ!旧部室残ってるなら見てみてー!)」

 

 

最後尾に、帽子を深く被ったかいぶつがいることも知らずに。




月影蓮/雷門中
みんなに挑戦者としての意識を訴え掛けて、雷門サッカー部はそれに応えてくれた。
しかし初めて挑戦者として立ち向かうことに少しだけ恐怖を抱いている、果たして彼らは何処まで戦えるか。



黒景流
帝国のサッカーを体験中、彼らの組織力を見て自分も活かせないか奮闘中。
帝国とはなんやかんやで仲良くしている、コミュ力だけは高いのでね…………そして雷門中との練習試合を観戦しにやってきた、正体はバレないように帝国の帽子を深く被っている、軽く聖地巡礼気分。
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