忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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遂にここまで来ました、駆け足ですが雷門戦開幕になります。
今回を除いて3話から5話で終了予定です。

皆様の期待添えるか分かりませんが、精一杯やらせてもらいます。


ラストゲーム、キックオフ!

フットボールフロンティア全国大会、決勝まで残り2日。

僕たちは天河さんが持ってきた練習試合の映像を元に雷門の選手たちを分析し、その上で南雲原の選手達のステータスの底上げをする特訓を繰り返していた。

 

新技開発は念頭に入れず、雷門の選手達の推定能力値とそれぞれの個性を頭に叩き込み、個人の持ち味を活かせない為のプレーをさせる為の特訓だ。

 

しかしその特訓では、円堂ハルのプレーは黒景先輩以外は着いて来れない………しかしやりようはある、その為に天河さんは協力してくれてるのだから。

 

 

 

 

「ほーらどうしたのーっ、そんなんじゃ決勝の円堂君は止められないよー!」

 

「くっそ!流石にお前みたいなフィジカルはねーだろ!?」

 

 

 

今グラウンドで南雲原のユニフォームを着ている天河さんは出来る限りハルのプレーを真似て貰って、それを止めるために皆が代わる代わる相手をしている。

決勝の時にはこれ以上の動きをするに違いないが、それでも有効な手になるのは違いない………というか、ハルの動きにはひとつ思い当たる節があるからだ。

 

 

「(それは、ハルも黒景先輩と同じくテクニックを重視するプレイヤーだから)」

 

 

彼は親譲りのセンスと、あらゆるサッカー技能を習得したサッカーモンスター………黒景先輩も技自体は桁外れに突出しており、ドリブルに関しては他の追従を許さない。

対してハルは全ての技が満遍なく高い、それだけなら黒景先輩か有利に聞こえるが……それでもまた彼は自分の底をみせていない、というよりまだ分かってない……当たり前だが、油断など一切できない。

 

だからこそ今回、天河さんが最新の雷門を記録を残した練習試合の映像を持ってきてくれたのはありがたかった、その上練習まで付き合ってくれてるのは本当に大きな力だ。

 

 

…………まぁ勝って欲しいという本音の裏で、黒景先輩ともっと居たいという本音は丸見えなのだが。

練習中は鳴りを潜めてくれてるけど、それ以外となるとかなりベタベタしてくる………必要以上の接近は禁じたのだけれど、忍原先輩も普段より慎ましいとはいえ接近してるし。

 

そして…………なんか小太刀先輩も最近様子がおかしい。

上記の2人程では無いが、黒景先輩に近づく頻度が増えたみたいだ。

 

特にベタベタとかはしてないが、なんというか………小太刀先輩の表情が甘くなったというか、黒景先輩に強かなアピールをしているような気がする。

 

それを見た忍原先輩と天河さんは何か勘づいたのか、忍原先輩は元から警戒していたが……進化した伝来宝刀をぶち込まれた天河さんもまた彼女を警戒し始めた。

 

話に寄れば進化したヘルファイアは彼女一人で止めれたが、伝来宝刀に関しては止めなかったという………何処まで最初の持ち技を研ぎ澄ませるんだあの人。

 

そんで3人は過去最大にハードなトレーニングメニューをこなした後でもグラウンドでサッカーしている元気があるのだ…………まぁ、恋敵に対する闘争心が身体を動かしているらしい………男性陣もその後それぞれの個人練習をしていたりするが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃっと、もーしつこすぎ!昼からどんだけ動いてんの先輩達ー!」

 

「天河がそんな煽るからでしょーが!私たち勝たせたいなら死ぬまで付き合いなさいっ!」

 

「来夏先輩と死ぬとか嫌なんですど!どうせなら流先輩とがいいっ!」

 

「そんなの私が許さない!」

 

「めんっどくさ!そんなんだから振り向いて貰えないんでしょーが!」

 

「そうね、彼女追い詰められたらメンヘラ化するから程々にしておいて、その時の来夏さんが1番面倒だから…………それで嫌われれば良いのに」

 

「鞘先輩一応味方ですよね!?この中じゃ1番流とは距離遠いくせに!!」

 

「その心配は要らないわ、だって貴女達が面倒を起こしてくれたら自動的にこちらに来るもの」

 

「「はぁ!?」」

 

 

 

 

 

夜中のグラウンドで言い争いをしながら元気にサッカー出来るのはあの3人くらいだろう。

天河さんが僕らのコテージに泊まってからは日課になっている、僕らの前では今までと比べて大人しくはなってるけど…………みんなが居ない夜中のグラウンドではこうだ、ギャーギャーと同じユニフォームを着てボールを奪い合ったりしてる、それでも天河さんの実力の方が上だけど…………仲良し達も以前よりずっと食らいつけてる、この調子を維持できたら決勝でも力になれるだろう。

 

「今夜もやってんなー、あの3人」

 

「ですね、もしかしたら男性陣よりもガッツが高めなのかもしれませんね………天河さんが特に忍原先輩に対して煽り散らかしてますから」

 

「前の恨みもあるんだろうなー………でもなんやかんやで楽しそうじゃね?」

 

「………でしょうけど、理由が理由ですからね………その恨みも貴方が発端なんですからね?」

 

「まぁ、はい」

 

僕と黒景先輩は彼女らの様子を眺めながら会話をしていた、明後日には決勝戦だからこのキャットファイトも今夜で見納めだ。

…………何とか修羅場らしい修羅場は起きてない、せいぜい練習中に小競り合いが起きたくらいだし、天河さんも不服そうだけど大人しくはしてくれてる………撫でられたりする所を見る忍原先輩の目はめちゃくちゃ怖かったけど。

 

…………ただそれ抜きにしても忍原先輩と小太刀先輩の動きはメキメキと精度を上げている、他のみんなも天河さんをハルに見立てて動きの質が全体的に向上している。

 

その上で雷門の選手全員の動きを分析するという無茶ぶりを通せば………勝率もグッと上がる。

出来ることはまだ残ってるけど、今の南雲原は間違いなく日本一に立てる領域まで来ている…………勝ちたい、ここまで来たんだ、何としても勝ちたい。

 

「…………それにしてもさ、サッカー部が無かった南雲原もすげーとこまで来たと思わないか?」

 

「……そうですね、あの時の僕はサッカー部が無いから南雲原に来たんですけど、まさかこんな事になるなんて………サッカーには消えて欲しかったと言ってた頃が懐かしいですよ」

 

「あー出会った頃にそんな事言ってたっけ、お前大人しいのに色々物騒だからなぁ、俺にも容赦ないし」

 

「それは貴方が全面的に悪いからでしょ、僕がどれだけ貴方のクソボケに振り回されたと思ってるんですか、これで負けたらマジで恨みますよ」

 

「ごめんて」

 

困り顔な先輩を睨む、1度気絶するくらいストレスをぶつけられた時だってある、この恨みは一生忘れない………今後はもう少し女心を理解して欲しい、そして僕を巻き込むような状況にしないで欲しい、本当に。

 

「全く…………」

 

「………にしても、今こうしてサッカーしてるとさ……一人でずっとサッカーしてた頃がまるで嘘みたいだ、お前が居なきゃ俺は今でもあの砂浜でボール蹴ってたのかな」

 

「黒景先輩ならやりかねませんね、もしくは痺れをきらして何処かの中学に転校していたかもしれません」

 

「はは、サッカーやりたかった癖にサッカー部の無い南雲原に行くとか今考えたら矛盾してるなー俺………そういう意味ではホント、お前が居てくれて良かったよ笹波」

 

「…………僕だけじゃここまで来れなかった、貴方や桜咲先輩、木曽路、忍原先輩、古道飼君、四川堂先輩、柳生先輩、征、そしてみんな…………全員が居たからこそ、今目の前にある勝利への路のゴールが見えてきたんですから」

 

ハルのサッカーを見た時から、彼を越える為に僕のヴィクトリーロードは始まった…………けど、本当に日本一1歩手前まで行けるなんて、当時は半信半疑だったけど………黒景先輩のプレーを見たら、それは夢物語じゃ終わらないと思うようになった。

 

そして、僕にサッカーへの想いを蘇らせてくれた桜咲を始めとしたみんなの存在………サッカーが出来ない僕はみんなをここへ連れてくる為に、色んなことをしたな………どれも今では良き思い出だ…………この人のクソボケっぷりは今でも腸が煮えくり返るけど。

 

でもここまで来たんだ、目指すはひとつ。

あの宣言を現実にするんだ、みんなでゴールを目指すんだ。

 

「……逆に俺を含めたみんなは、お前に滅茶苦茶感謝してるんじゃないかな」

 

「え?」

 

「だってお前が始めなきゃみーんなここに居ないんだ、お前のサッカーがあったからこそ明後日の最高の舞台があるんだ…………1人のサッカーをしていた俺も、やっと本当の意味でサッカーを始められたのはお前が居たからだよ笹波」

 

「黒景先輩…………」

 

「早いかもだけど、ありがとう………俺はお前と出会えて良かったよ」

 

静かに微笑む先輩、同時に優しい風が僕らの間を吹き抜けた…………本当に早いし、そういう事を素面でいうから勘違いされるんだ全く…………。

 

 

 

でも…………そういう人だから僕もなんだかんだで許すし、忍原先輩達も惹かれるんだろう。

呆れるほどに素直で、考え無しで…………サッカーに対して僕よりずっと真っ直ぐだ。

 

 

南雲原のサッカーモンスター…………黒景流。

 

 

この道に立ちはだかるハルを真っ向から倒せるのは…………この人しかいない。

 

…………まぁ、それはそれとして。

 

 

 

 

 

「そういう所ですよ先輩、だからいつか刺されるんですよ」

 

「え?いや……前から言われてるけど、刺されるってなに?」

 

「ナイフでグサッとされるんですよ、近い未来」

 

「えぇ!?誰から!?」

 

「あの3人の内誰かが……多分忍原先輩が有力ですけど」

 

「殺されんの俺!?」

 

「そうならない為にも、先輩はあの3人の内1人を選んで………全員納得させて終わらせてください」

 

「っ…………やっぱ、なぁなぁじゃダメ…………だよな」

 

「当然でしょ……………僕も、貴方がサッカー出来なくなったり、居なくなったりしたら嫌ですから」

 

「…………ごめん、最後の方聞こえなかったんだけど」

 

「言ってませんしね、ちなみに僕はその時ぜっっったい関わりませんからね!」

 

「えぇ頼むよー笹波様ー」

 

「知りません!!!」

 

 

 

彼女達のサッカーを横目に僕は去る。

………黒景先輩ひとりじゃなきゃダメだろう、僕はあくまでもサッカー部の為に身を粉にしたのだから。

とりあえずそれは忘れて…………最後の戦いに向けて、やるべき事をやらなきゃ。

 

 

 

 

 

 

そして…………何度でも言おう。

 

 

 

 

 

 

 

勝つんだ。

南雲原のみんなで、雷門を。

 

そして時間は流れる、サッカーに熱を注ぎ続け………来るべき決戦の日まで。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は晴天。

清々しいくらいに晴れ渡る青空が広がっていた。

 

 

それ故に今日という日に相応しいのだろう。

 

 

決戦の時、最後の試合。

フットボールフロンティア全国大会、決勝戦。

南雲原VS雷門の日には。

 

 

 

 

『遂にこの日がやって参りました!!少年サッカー日本一を決めるフットボールフロンティア全国大会決勝戦!南雲原VS雷門の試合の時が!それぞれのキャプテンを筆頭に現れる選手達の顔ぶれに観客の熱気は既に最高潮です!!』

 

『無名でここまで勝ち上がってきた脅威の新星と、歴戦の王者との試合…………南雲原はかつての雷門を彷彿とさせる快進撃で期待が高まりますね!一方雷門は……再起不能と言われた円堂ハルが帰還している!黒景選手と円堂選手のマッチアップは期待せざるを得ませんね!!』

 

『えぇ!角馬さんはこの試合、どちらが優勢になると思われますか?』

 

『難しいですね……両者共に今や日本屈指のチームです、強いて言うなら今の雷門には監督がいませんからね、対して南雲原は無名だったチームをここまで引き連れてきた笹波雲明がいる、この差が勝負の分かれ目となるやもしれません』

 

『なるほど!果たしてどうなるのか、わたくしも開始が待ち切れません!!』

 

 

 

南雲原と雷門、両者共にベンチへゆきそれぞれのコンディションを整えつつ、これからの戦いに向けて決意を固める。

互いにこの日を待ちわびた、これまでの長き戦いに優勝という栄冠で終わりを告げる為に………彼らの目指すものは既にひとつ、それを勝ち取れるのは…………両者どちらかだ。

 

観客席はその戦いを今か今かと待ち侘びている、チームの家族や支えてきた関係者たちも同じ席でその試合を見届けようとやって来ている。

 

 

その中心地となるグラウンドを…………円堂ハルは一人見つめていた。

 

「…………ふぅ…………」

 

詰まるような気持ちを吐き出すようにため息を吐く、マフラーを掴みながら激戦の地となるフィールドを上の観客席と共に眺めていた。

 

「(…………こんな気持ちは久々だ、待ち切れ無い…………早くやりたい)」

 

マフラーに手を当ててない逆の手を握りしめて、溢れそうな闘志を抑えるようにする。

帝国学園の練習試合の翌日から…………雷門の選手達は人が変わったように特訓をかつての倍以上撃ち込んだ。

 

練習試合とはいえ帝国に負けた、南雲原と同等の実力を備えているであろうチームに………そしてそれは今の雷門にとって初めての負けであった。

 

どんな形であれ雷門は敗北した、その悔しさを糧にして特訓をこの日の為に無我夢中でこなし続けた。

今の立場は王者であるが、今雷門の選手達は誰1人としてそう思っていない。

 

…………ただ挑戦者としてこの試合に臨む、勝てるかどうかも分からない戦いを制するために………恐れはあるが、それ以上にそんな戦いへの期待が彼らには溢れていたのだ。

 

「(雷門に来てからあんなに練習を頑張ったのは無かったな………何度ぶっ倒れそうになったか…………父っちゃんの世代も、あれだけやったのかな?)」

 

当の本人には聞いてないが、きっとそうなのだろうと…………ハルは後ろにいるみんなの姿を振り返って見つめ……笑う。

 

そして次に、対戦相手である南雲原のベンチへ視線を向ける。

彼らもまたこの試合への準備をしており………南雲原の監督である笹波雲明がそこで選手達に指示を出していた。

 

「…………どうしよう、行ったら流石にまずいかな…………」

 

黒景流と一緒に笹波雲明にも約束をした、必ずその道の前に戻ってくると…………その約束は果たせる、2人の言葉があったからこそハルはサッカーへ戻ってこれたのだ。

 

…………その言葉を試合前にどうしても告げたいが、今行ったら迷惑になるかもしれない、円堂ハルは南雲原を見つめながら少し唸り声を上げていた。

 

「んー…………どうしよう…………」

 

「…………笹波雲明に言いたいことがあるのか、ハル?」

 

「……あ、蓮さん………はい、今行っていいのか少し迷ってて」

 

「行ってこいよ、そして自分の言いたい事を始まる前に告げればいいじゃないか………そういう思いもあるんだろ?」

 

「…………」

 

ハルは背中を押してくれる隣の月影蓮を見る、視線が合うと彼は静かに頷いた。

少しだけ視線を地面に向け、ハルは意を決したかのように南雲原へ改めて向き直り…………ゆっくりと歩を進めた。

 

…………ハルはゆっくり近寄る度に少しだけ胸が高鳴ってゆく、何を言いたいか纏まってないが…………どうしても彼に話し掛けたかったから。

 

 

 

「…………ん、な……え、円堂ハル」

 

「えっ?……なんだ、こっちに来ている?」

 

 

近づく度に、南雲原の選手たちは近づくハルに気付き……そして笹波雲明もまた……ハルへ振り返った。

 

ハルはそこで立ち止まる、雲明の瞳を真っ直ぐ見据えながら。

 

南雲原の選手達も円堂ハルを見つめる、一人胡座をかいてグラウンドを見つめていた黒景流も視線をハルに向けていた。

 

ハルは一度呼吸を置いて…………口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「…………戻ったよ雲明、君と進むべき道に」

 

「ハル…………絶対に、来ると思ってたよ」

 

「へへ………あの時から、ここまで予想してたの?」

 

「どうかな……黒景先輩の言葉を受けた君なら、再起不能と言われた怪我すら乗り越えると思っただけだよ」

 

「そっか…………俺今ドキドキしてんだ、今から始まる前だってのに、身体浮ついてて落ち着かないんだ」

 

「僕もだよハル、初めての全国大会決勝だからさ…………でも、勝つのは僕らだよ」

 

「……違うね、雷門さ」

 

静かに闘志を滾らせた視線を送り合う、約束はこれで果たした…………後はフィールドでこの滾りをぶつけ合うだけだ。

 

「………お互い、全力でやろう」

 

「……うん」

 

その言葉を最後に円堂ハルは雷門のベンチへ戻ってゆく、その後ろ姿に南雲原の選手達は数名冷や汗をかいて戦慄する…………以前戦った時は何処か冷めたような印象を受けたが、今はそんなもの見る影もない………威圧感もなく、ただただ純粋な闘志がそこにあった。

 

「…………以前やった時に感じたバカでかい圧迫感っていうか、大きさがみえない………まるで黒景を見ているようだ」

 

「再起不能から復活した雷門のサッカーモンスター、それ以外の選手もまた帝国との戦いを経て特訓したってのが顔つきから分かる、史上最高の難問だな、改めて見ても」

 

「そんなのは分かりきった事だろーが、そんな相手が決勝の敵だ…………テンション上がるに決まってんじゃーねか、なぁ雲明?」

 

「無論です、これ以上に相応しい相手はこの日本に居ません」

 

雲明の言葉にみんなが武者震いをしながら笑う、これ以上言う言葉はない………かつてない強敵を越えてこそ、てっぺんを掴み取る価値があるのだから。

 

 

 

「…………みんな、ここまでサッカーを出来ない僕を連れてきてくれてありがとう、こうなるなんて南雲原に転入してきた時は思いもしなかったよ…………でも本当に来てよかったたと思ってる、だから…………」

 

「皆まで言うな雲明、気持ちはここにいるヤツら全員同じだ」

 

「そうそう!俺らだってお前に感謝してるよ!」

 

「だね!みんなで最高の目標を叶える1歩手前まで連れてきたのは、雲明君が居たからだよ!」

 

「君の与えてくれた選択が、今は僕の誇りさ」

 

「来夏さん目当で来ちゃった僕だけど、サッカーに出会えて本当に良かったよ」

 

「俺も自分を見失わずに済んだ、サッカーに戻れた」

 

「笹波…………もうこれ以上言わなくていいだろ?もうすぐその時が来るんだからな」

 

桜咲が、木曽路が、来夏が、四川堂が、亀雄が、柳生が、流が、みんなが頷く。

気持ちは既にひとつ、その夢を果たす為に…………1秒でも早く、グラウンドに向かいたいと!

 

 

 

 

 

 

「…………うん、さぁみんな行こう、てっぺんまで!!」

 

 

 

 

「「「おおおっ!!!!」」」

 

 

 

雲明の言葉で皆が天に拳を掲げ、で士気は更に高まる。

そして両チームがグラウンドへ赴く、南雲原と雷門の横幕が垂れている観客席から声援が鳴り止まなずに送られる。

試合開始まで、もうすぐ。

 

 

 

『さぁ両チームポジションに着こうとしてます!開始は南雲原ボールから………期待の声が観客席から鳴り止みません!!』

 

 

 

 

「ふー…………」

 

「流、ここまで来たね」

 

「来夏……だな」

 

「…………手、出してもらっていい?」

 

「?こうか?」

 

始まる前、手を出して欲しいといって近づく来夏に疑問を持ちながらも流はその手を差し出す。

 

来夏はその手を両手で震えて握りしめて持ち上げ、自分の額に当てた。

そして…………両手の震えは収まりつつあった。

 

「…………今言うことじゃ無いんだけどさ………大好きな君が居るから私は勇気が持てる、ちょっと怖かったけど……もう大丈夫」

 

「そっか………………勝つぞ、来夏」

 

「うんっ!」

 

何時のも笑顔を見せて来夏はポジションに着く、そして流は改めて雷門を見据え…………円堂ハルと目が合う。

 

 

 

「…………堪んねぇな本当…………この日を、どれだけ待ち侘びたか」

 

「黒景流………俺が中学に上がってから初めて倒したいと思った相手…………!雲明と一緒に立ちはだかる、最っ高の舞台だ!」

 

 

 

瞳に闘志が宿る、直接語らずとも想いは同じ。

勝者はどちらになるのか…………行く末は、その果てにしか分からないのだから。

 

 

 

「…………勝つぞ雷門、俺達もまた……先人達のように伝説を創るぞ!!」

 

「はいっ!」

 

「勝ちに行く、今まで以上にな!!」

 

「潰すぜ南雲原……!!」

 

「雷門のキーパーとして、点は絶対やらへんで!!」

 

「(……見ててくれアイル、俺達のサッカーを!!)」

 

 

 

 

 

「最後にして最大の難問だ!優勝という回答を勝ち取るぞ南雲原!!!」

 

「おうっ!!」

 

「ラストマジックを魅せよう……!!」

 

「ウチらの全てを捧げる…………!」

 

「この道に、勝利を!」

 

「(………父さん………あんたが俺に遺してくれたサッカーはこんな所にまで来たぞ、あの世で見ていてくれ!!)」

 

南雲原も雷門も、この試合に掛ける熱量は凄まじい。

新たなる伝説の予感を、この戦場を見届けようとしている者たちは既に感じ取っていた。

 

ボールが空宮に手渡され、地面に置かれる。

 

舞台は整った。

 

 

 

『さぁ両チーム出揃いました!!決勝戦………果たして勝つのは南雲原か!それとも雷門が王者の座を守るのか!?』

 

 

 

 

 

 

 

『フットボールフロンティア全国大会決勝戦!!いざキックオフッ!!!』

 

 

 

ピーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

遂に試合開始のホイッスルが鳴り響く、歓声で大きく揺れるスタジアムの中で空宮は流へボールを渡す。

 

そして前に出ようとする所へ………………稲妻を纏って彼は立ちはだかる。

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!」

 

「………貴方の相手は、俺ですよ」

 

 

 

 

「やはり……来るか」

 

「頼むぞ、ハル!」

 

 

 

 

伊勢谷と蓮がその2人を見つめる、既に構えて隙はない。

互いに好戦的な笑みを浮かべ、語らずとも既に互いの熱はぶつかり合っていた。

 

 

『試合開始!!そしていきなり黒景選手と円堂選手!サッカーモンスター同士が向かい合うーー!!』

 

『早速来ましたねこの組み合わせ………間違いなく、勝った方へ流れが向かう!』

 

 

南雲原のサッカーモンスター、雷門のサッカーモンスターが対面する状況下、観客席のボルテージは既に最高潮だった。

ボールを持つ流は動かない、ハルも距離を取りつつ、飛び込んできても対応できる心構えを絶やさない。

 

 

睨み合う、チームの誰もその光景に釘付けとなって動かない。

 

 

 

 

 

 

 

そして黒景流は…………動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜ!!」

 

ボールを後ろに出して、円堂ハルを躱すように前線に出る。

それに合わせて南雲原の攻撃陣も前に出た。

 

「…………え!?」

 

「バックパスだと!?」

 

『あーっと黒景選手が動いたがボールは後ろに出されたぞ!?そして受け取ったのは…………伊勢谷選手だー!!』

 

ハルと嵐は間違いなく黒景流がハルを抜き出そうとすることを読んでいたが、それを逆手にとった流は後ろの伊勢谷へボールを送り出し、渡すと同時に前へ出た。

 

「ロングパス警戒しろ!!」

 

月影蓮の声で雷門は動く、誰に渡すか分からないが簡単に攻めさせてはならない、攻撃に掛ける人数は多い…………しかしそれでもやらせるわけには行かないとMF陣とDF陣は構える。

 

そしてボールを受け取った、南雲原の司令塔伊勢谷 要は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄金の果実を手に取り齧り、いつの間にかその背後にいた妖士乃に放り投げた。

 

「ウォォォァアアアアァッ!!!」

 

狼のような猛き叫びがその果実を闇に染めて…………2人同時にシュートを放った!!

 

「「スクリーム・オブ・エデンッ!!!」」

 

創造と破壊のオーラを纏ったシュートが放たれる、当然雷門の選手達は驚く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かった先が、南雲原のゴールなのだから。

 

 

 

「…………え、えぇ!!?」

 

「……なんで、こっちじゃない……!?」

 

『おおっとこれはどうしたのでしょうか!?伊勢谷選手と妖士乃選手が必殺シュートを放ったかと思えば、味方である南雲原側へ放ちました!?』

 

『これは狙って打ったのでしょうか!?どういうつもりで……!?』

 

星村と赤袖が意味不明な行動に驚き戸惑い、実況と解説の言葉で観客席がどよめく。

 

そんな彼らを無視するように南雲原へそのシュートが向かう、そしてその前に……………古手打が意を決したかのように立ちはだかった。

 

「頼むわよ、七南さん……!!」

 

振り返らずに小太刀は来夏と共に駆け上がる、七南もまたそんな先輩の姿を遠くで見ながら笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………参ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脚を広げ、構えを取る。

目を閉じて集中し、神経を極限まで研ぎ澄ます。

 

先輩から伝授された伝来宝刀を自分流に改変を加え、放たれたシュートを打ち返す為に構築した…………黒景流と性質は同じだが、ただ返すだけでは無く、威力を増加させて相手へ返す必殺シュート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を閉じた暗闇の中で水面が浮かぶ。

そこに雫のように、ボールが落ちる。

 

 

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

目を開き、眼前のシュートを一閃する。

先程まで勢いをつけていたボールが空中で止まり、七南の背後で青い菊の花が構成されて…………その花弁の奥から青い刀が姿を表し、彼女が振り返ると同時にシュートが放たれた!!

 

 

 

「菊一文字」

 

 

 

スクリーム・オブ・エデンの威力を載せたカウンターシュートが放たれる、かつてないスピードでフィールドを駆け抜ける、何人も干渉することは出来ず雷門のゴールへ一直線に。

 

 

「だぁぁっ!」

 

「ぐぁっ!!?」

 

 

中盤に居た雷門は身体を張って止めようとするがやはり止まらない、そしてディフェンス陣は戸惑いながらもそのシュートをキーパーと共に待ち構えていた。

 

「皆さん落ち着いて!!まずは威力を減衰させて暖冬屋君に取らせます!先制点は何がなんでも死守です!!!」

 

「おうっ!」

 

「……止めなきゃ……!」

 

遠野が、天空寺、赤袖が汗をかきながらも立ちはだかる、後ろの暖冬屋もグローブを強く叩き合わせながら構え………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞘先輩ッ!!」

 

「来夏さんッ!!」

 

 

そのシュートの前に、マークを振り切った来夏と小太刀が駆け込んでくる。

 

「「「「!!?」」」」

 

「うおりゃぁぁっ!!」

 

来夏は菊一文字に飛び込んでボールに回転を掛け、地獄の業火が着火するように纏わりつく、一見ヘルファイアの様に見えるが…………通常よりも纏わり着く獄炎の火力が凄まじく誰も近づけない…………1人を除いては。

 

「いざ…………!」

 

小太刀 鞘がそのボールへ構えを取り、刃を形どった右脚で勢いよく切り裂くように蹴りつけると…………獄炎はまるで朱い花となりて、火の花弁を散らすように炸裂し紅蓮の刀身がシュートとなりて放たれた!!!

 

 

 

「獄刀……!」

 

「彼岸花ッ!!!」

 

 

 

カウンターシュートの上から更なる超火力を載せた必殺シュート、犬猿の仲が撃った連携必殺技が改めて雷門のゴールへ襲いかかり、威力を殺そうとしたディフェンス陣は予想外のシュートチェインとシュートスピードでそのまま吹き飛ばされた。

 

 

「ぬぁぁっ!」

 

「だぁあ!」

 

「ううっ!?」

 

 

「マジかい!!…………爆!!ゴッドハンド・タイガーッ!!」

 

冷や汗をかきながらも暖冬屋は猛虎の牙でそのシュートを止めようとする、しかし全てを切り裂き焼き尽くさんとする朱い刃は…………そのまま猛虎を切り裂いた。

 

「ぐぁぁぁぁぁああッ!!!」

 

 

 

 

 

ピーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

『な、南雲原開始早々先制点を決めたーーーッ!!!想定外から連なる想定外のシュートコンボにより、雷門早々に失点してしまいましたぁぁッ!!』

 

『す、凄い……!初見殺しの連携とはいえ、こんな形のシュートを決めるなんて、南雲原はやはりすごいです!!!』

 

 

「…………ふぅ」

 

「…………ふんっ」

 

観客席から大喝采が鳴り響く中、来夏と小太刀はそっぽを向きながら拳を合わせる、そんな場面に南雲原の仲間達は大喜びで駆け寄る。

 

 

「うっしゃぁ最高だ仲良し!」

 

「やったな仲良し!!」

 

「すげーぞ仲良し!!」

 

「かっけーっす仲良し先輩達!」

 

「やっぱ仲良しですね!!」

 

「「仲良く、ないッ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「………まじか……すげぇな」

 

円堂ハルは一連のシュートを冷や汗をかきながら乾いた笑みで分析する。

黒景流が攻め込むという思考の隙を突き伊勢谷に渡し、前線に上がった誰かにパスを渡すと思い込ませて自陣に必殺技を放ち、そのシュートをカウンターで威力を高めて…………その上で更なるシュートチェインで意表を突く。

 

セオリーなんてあったもんじゃない奇想天外なコンボ…………これも雲明の作戦なんだと確信する。

 

何れにせよもう先制点………開幕からぶっ飛ばしてきた。

 

 

 

 

「円堂…………こっからだろ?」

 

「………………もちろん、すぐにやり返すッ!!!」

 

 

黒景流の挑発的な笑みに対して、円堂も負けず劣らずの好戦的な笑顔を向ける。

試合はまだ始まったばかり、しかしまだまだ熱は昂るのだ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所にて、ある男二人がスマホから決勝戦を見ていた。

 

 

 

 

 

「凄いな南雲原、開幕からとんでもないシュートコンボだ」

 

「そうですね……それにしてもスクリーム・オブ・エデンや菊一文字、見覚えのある必殺技ばかり使ってるな」

 

「黒景流の影響かもしれないな、何れにせよ試合は始まったばかりだ」

 

「雷門もやられっぱなしで終わるわけが無い…………アイツ、今頃向かってる途中でしょうか」

 

「運良くスタジアムの近くだからな………直に見たいんだろう、過去に再会すると信じあった少年と」




南雲原
ボジションバラバラゲームはせずに、本来のポジションで試合をする。
まずは一点。


雷門
元々高い能力を勝利への飢えで加速させる。
新たなる雷門に、勝利の1ページを。



菊一文字(風)
ゲームにて七南がしれっと覚えていたボイス技。
エフェクトが黄色から青色になり風属性となった必殺技、それ以外は変化無し。


獄刀・彼岸花
ヘルファイアと伝来宝刀のオーバーライド。
来夏がボールに通常のヘルファイアよりも強力な回転を掛けて獄炎を灯し、小太刀か力の限り伝来宝刀で切り裂くことで……まるで火炎の彼岸花が咲くように炸裂し、朱い刃となってゴールへ向かう。

互いが遠慮を知らずに放つことで春雷に勝るとも劣らない火力を叩きだすのだ。
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