忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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決勝戦前半はスピーディーに行きます、まじでサッカーの試合展開ってムズいですよね……ちゃんと書ききれる方をまじで尊敬します。

南雲原 決勝戦スタメン&フォーメーション


【挿絵表示】



決勝戦(前半) 行くぜ皆の衆!!

決勝戦前半、南雲原ボールでキックオフされた直後……南雲原の奇想天外な連携により雷門からゴールを奪い、先制点を決めた。

 

主導権を先に握ったのは南雲原………雷門は初っ端から出鼻をくじかれたと言えるだろう。

しかし試合はまだ始まったばかり、雷門ボールから再び試合再開となる。

 

今度こそ本当のキックオフ………両チーム共に、激しいぶつかり合いで火花を散らすのであった。

 

 

 

『南雲原の先制点から始まった前半戦!残り時間半分を切りましたが………なんという凌ぎ合いでしょうか!?円堂選手と黒景選手、かいぶつ同士のマッチアップも白熱してましたが、両チームのそれぞれの選手達もまた凄まじい戦いを繰り広げてます!!』

 

『前半とは思えない程の熱い展開です!果たして体力が両者共に持つのでしょうか!?』

 

 

「真!ヒートタックルッ!!」

 

「真!フレイムダンスッ!!」

 

 

現時点のボール保持者である嵐は激しい炎を纏い、目の前にいる来夏へ突撃するが……対して来夏も炎を踊らせてボールを奪おうとするが…………嵐の纏う炎がそれを一蹴する。

 

「んなもんで止められると「思ってないからこうするッ!!」

 

来夏のフレイムダンスが嵐のヒートタックルが放つ炎を激減させたところを、伊勢谷が横からスライディングでボールを弾く。

完全に目の前の相手に集中していた嵐は呆気に取られてしまった。

 

「なっ、てめぇ!?」

 

「ナイス伊勢谷君!」

 

「ルーズボールッ!」

 

言葉遣いが荒くなる嵐に構わず伊勢谷は仲間がそれを取るように叫ぶ、転ぶボールに集まるのは小太刀、空宮、月影、赤袖、星村。

雷門の方が人数が多く、脚も早い。

 

そしてそのボールを取ったのは………………。

 

 

 

 

 

 

《ウォォォッ!!》

 

「いよっしゃいッ!!」

 

 

リュカオンを発動させていた木曽路だった。

 

 

「なっ、化身!?」

 

「前半で使っちゃうの!?」

 

想定上のスピードと、木曽路兵太は体力が並より多い選手では無いと考えていた為、使うのは後半からと予測していた月影と星村は、空中でボールを取った木曽路に驚く。

 

南雲原側は現時点でも雷門の方が選手間の実力差が劣っていると認識している、故に出し惜しみなどすれば自ずと負けに向かってしまう。

 

『惜しむな、常に全力投球………如何なる時も勝ちに行け!』

 

「おうさ!」

 

笹波の言葉を思い出しながら木曽路は微笑み、着地すると同時にドリブルで駆け出す。

そこへ野神と、いち早くそのボールを取ろうとした木曽路に反応した月影が行く手を塞ごうとするが………木曽路はボールと共にジャンプして………リュカオンがそのボールを口に咥え、木曽路は背中に乗り、翡翠の雷を共に纏ってフィールドを駆け抜ける。

 

「シップウ、ジンライッ!!」

 

「うぉおっ!?」

 

「この速さ、過去よりも鋭さを増しているっ!?」

 

 

『ボールを奪った木曽路選手!化身と共に雷門ゴールへ駆け上がってゆく!再び南雲原がゴールを決めてしまうのでしょうか!?』

 

『前半時間は既に半分を切りましたからね!雷門がこのまま2点目を許してしまえば痛手も痛手ですよ!?』

 

 

「(うっし局面突破!)」

 

リュカオンの背中から降りて再びボールを保持して駆け上がる、味方と敵の気の流れを読み取り、今1番ゴールを決められそうな選手を探し出す。

 

桜咲はマークに着いている、流は更に2人…………そこで木曽路は気づいてしまう。

 

「(あれ、黒景先輩にアイツが居るんじゃ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イナビカリ・ダッシュ」

 

 

そしてそれは唐突に現れる、まるで一瞬の内に瞬く稲妻の様に。

木曽路の背後からやってきたかいぶつはそのままボールを両脚で挟むように奪い、ジャンプする。

 

それを見た木曽路は………円堂ハルのそんな姿の背後に、本当に稲妻が落ちたような光景が見えてしまっていた。

 

「いや、はや…………てか何処から……!?」

 

「君の化身も警戒対象、だからね」

 

「くっそ!」

 

突如として現れたハルに戸惑いながらも奪おうとするが、ハルは持ち前のスキルを存分に発揮し、化身を発動させてる木曽路に揺さぶりを掛ける。

 

「(まじかよ!気の流れ自体は見えてるのに…………早すぎて先読みなんてあったもんじゃない!?)」

 

「…………ふっ!」

 

余りにも早いシザース、そして持ち前の身体能力から成せるドライブ……まず、簡単に止められるわけもなし。

やはり1人では止められず、木曽路はそのまま抜かれてしまった。

 

「ハル!!」

 

「蓮さん…………ッ!!」

 

ボールを奪ったはいいが、このまま持ち込もうとしても時間が掛かる、先制点を取られた上に前半は既に半分を切っている、このまま無得点でリードされたまま終わってしまえばその時点で不利だ、オマケに…………南雲原は雷門を徹底的に分析していた。

 

「(何となく予想はしてた、黒景さんはあの練習試合に居たからどれだけ詳しく話せたのかは知らないけど、多分あの時の試合だけじゃなくて、過去のデータも参照して、今日までの雷門がどれだけの動きをするか予測して、そんで個性の強い仲間達の特徴を殺しに掛かってる……!!)」

 

先制点を速攻で決められた後、雷門は直ぐにでも同点を取ろうと攻め込んでいた。

雷門も南雲原の動きのデータは分析していたし、超えるためのトレーニングを費やしてきた、雷門は元よりトッププレイヤーの集まり、手抜かりさえなければ早々にねじ伏せられる程度の弱者は居ない。

 

それ故に、南雲原がここまで徹底して雷門の動きに食らいつけてる事にハルを含めた雷門側は驚きを隠せずにいた。

無論南雲原の選手一人一人のステータスは高いと言える、間違いなく日本屈指…………無名のチームからは考えられない程のレベル。

 

そんな相手が強みが明確な雷門の動きを想像以上の分析を施し、その上で互角に及びかねない実力差で更に埋めてくる………雷門はかつてない程に動きずらい状況下に陥っていた。

 

そして今前半まで残り13分程度、雷門は必殺シュート自体はハル以外撃つ機会は何度かあった。

 

そしてディフェンス陣の奮闘と……陣内の砂神・ザ・ハンドがその全てを防ぎきった。

驚異的な防御力、暖冬屋に匹敵…………いやはっきり言ってそれ以上の硬さだ。

 

ハルはまだ必殺シュートを撃ててない、徹底して攻撃に参加させて貰えて無いからだ。

 

 

「ちっす」

 

 

 

 

キャプテンの月影蓮のパスコース前に立ちはだかる…………。

 

 

 

 

「やっぱ、来ますよね」

 

「当然、俺も撃ちたいからさ」

 

獲物を捉える瞳をハルに向ける、南雲原のかいぶつに。

 

『おおっと再び円堂選手と黒景選手が睨み合う!前半だけで何度目になるのでしょうか!』

 

『雷門は一刻も早く最初のゴールを取りたい状況下でこれはキツイですね、南雲原はこの状況を作るためシュートを笹波雲明が考案したのなら、これ以上なく有効打だったと言えるでしょう!』

 

「(恐らく南雲原はハルの力だけは分析してでも追いつけ無かったのだろう、俺達やハルですらもその伸び代が見えないのだから…………その上でハルに対抗出来る黒景流は今でも完成されてる上にまだ底が見えない、実力差は殆ど無いのは確かだが…………今はこの状況だと致命的過ぎる!)」

 

伊勢谷にマークされつつもハルと流のマッチアップを見る月影蓮は歯がゆい感情を抱いている。

今思い返してもあの先制点は痛手過ぎた、その後も雷門は攻めに攻めてるがゴールは割れなかった。

 

シュート力も必殺技の威力も上げたと言うのにだ、その悉くを全て封殺されてしまっている。

南雲原も守ってはいるが隙を見せれば途端に攻め上がって追加点をもぎ取ろうとしてくる、黒景流には必ずボールを持たせないように尽くしているが、それもいつまで持つのか。

 

まだ前半だと言うのに苦戦を強いられていた、帝国との練習試合を経験していなければこの時点で雷門はガタガタになっていただろう。

 

 

 

………………今は違う、苦戦に対する心構えなら既に用心している、雷門がこんな状況下に置かれてるのは悔しいが、誰一人として闘志を失ってなどいない、寧ろ燃え上がらせている。

 

 

 

決勝戦という大舞台、王者の座を守るプレッシャー。

雷門は後者を既に捨ててある、南雲原と同じ目線に立ち、挑戦する者としてこの試合に臨んでいる。

 

恐れはある、しかしそれ以上に今までの試合からは考えられないくらいに昂っていた、常勝だった雷門が今こうして心が燃えるような試合が出来る事実を再確認し、雷門は立ち向かう。

 

そしてそれはもちろん、円堂ハルも同じ事だった。

 

「(やっぱすげぇな黒景さん、何度か抜いたり止めたりしてるけど、それでも実力自体はアンタが上なんだろうな……!)」

 

ハルはボールをキープしながら流と向き合う、揺さぶりを掛けて抜こうとしても反応する、生半可な事ではこの男を抜き去る事など出来ない。

 

時間は刻一刻と過ぎてゆく、そんな中ハルは………決勝前日、星村ナオとふと語り合った事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ねぇハル君』

 

『どうしました、星村さん?』

 

『………明日、勝てるかな』

 

『……らしくないですね』

 

『ごめんね、どうしても思っちゃうんだ………帝国との練習試合、君が来るまで私達全然ダメでさ、ハル君が後半に来てからは好転したけど結局負けちゃった………もっと私たちが強かったら勝ててたのかもしれないと思っちゃって、今のハル君の脚を引っ張ったんじゃ無いかって』

 

『いや、そんな事は』

 

『あの時は王者である事を忘れて試合してたつもりだけど、心のどこかで慢心があったんだと思う………練習だってその時までは言われた通りのこと以上はしてなかったしさ………思うんだ、君と同じくらい強いサッカーモンスターと、ハル君のお父さんが怪物と称する監督の笹波雲明がいる南雲原………もちろん勝ちたいよ、でも………情けないけどそれが疑問になっちゃうんだ』

 

『…………俺も、少しだけそう思ってますよ』

 

『……え?』

 

『俺は今まで練習すらしてませんでした、ずっとサッカーに対して冷めたままで、今こうして熱心になってもやっぱりあの黒景さんと俺とじゃ差がある……それに雲明もいる、かつてない程の強敵ですから……でも』

 

『でも?』

 

『やっぱそれ以上にワクワクしてるんです、俺がそんな事を考えてしまう相手なんて、昔の親友くらいでした………そんな相手が明日決勝の舞台でいる………会うと約束した友達が居るんです』

 

『……それって、笹波雲明?』

 

『はい、諦めるなって………そして俺は必ず戻ると約束しました、そして黒景さんは俺とサッカーがしたいと言ってくれました、そしてその約束を果たした上で、雷門のみんなと一緒に勝ちたい』

 

『ハル君……』

 

『勝ちたいのも怖いもの、みんな同じです、だからみんな一緒に勝ちましょうよ』

 

『……うん!』

 

 

 

 

 

 

 

「(そうさ、その為に俺はここに居る……俺が戻ると信じてくれた雲明と黒景さんと、蓮さんと星村さん、そして雷門のみんな………みんなと一緒にここに居るからこそ、俺はまだ強くなれる!)」

 

一呼吸つき、笑顔を絶やさない黒景流を、ハルも笑みを浮かべて見据える。

黒景流はそんなハルの纏う空気が変わったことを見抜く、この場でより手強くなっていると肌で感じた。

 

「……こんなもんじゃないだろ、円堂」

 

「もちろんですよ、このままじゃ終わりません……!」

 

その言葉を皮切りに円堂は動く、ボール共に……黒景流の真正面へ駆け出す。

その行動に少し驚きの表情を見せるが、すぐに上等だと言わんばかりの笑みを浮かべて流もまた呼応するように前へ出る。

 

そして距離が近づく瞬間、流は消えた。

 

「これは……!」

 

「ワンダートラップ!」

 

姿が消えたと思った瞬間、背後からハルのボールを取らんとスライディングで襲いかかってくる。

それをいち早く察知したハルはボールをスパイクに引っ掛けて飛ぶ、ここまでの一連の流れは恐ろしい程に早かった。

 

「(まぁこれくらいは避けるよな……けど!)……デスサイズッ!」

 

スライディングの体制から高速で姿勢を正し、宙に浮いているハルとボールを刈り取らんと、流の黒く染まった右脚が死神の鎌の軌跡を描くように振り下ろされる。

 

「ハル!」

 

「それくらいは……すると思ってましたよ!」

 

空中に浮かんでる状態で出せる技はない、このままだと取られてしまう………故に。

 

「蓮さんッ!」

 

名前を叫び、宙に浮かんだ状態で月影蓮へパスを繰り出す。

デスサイズは不発に終わり、ボールはそのまま蓮の方へと向かうが………そこには空宮がマークをしている状態だった。

 

「(取れる!ステータスの差はあるけど、事前に頭に叩き込んだ動きをすれば……!)」

 

「(空宮征……!以前より体幹が強くなってるな……!)」

 

両者は飛んでくるそのボールを奪取しようと動く、届こうとしてるこの瞬間、ボールを取ったのは………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃっ!」

 

横から割り込んできた星村ナオだった。

 

 

「何っ!?」

 

「星村!」

 

「見えてましたよ、星村さんの事」

 

ハルと星村は目を合わせて笑い合う、今のままじゃ抜け出せないと判断したが背後で星村が接近していた事を確認し、月影蓮にパスを出したと見せかけて実際は星村に出す為にボールを蹴ったのだ。

 

「……よしっ!」

 

「っ!しまった!?」

 

月影蓮は星村の横槍に一瞬戸惑った空宮の隙を見逃さず、すかさず身体を翻して南雲原ゴールへと向かい、星村からパスを受け取った。

 

 

『円堂選手!星村選手との阿吽のプレーで黒景選手を出し抜きました!!』

 

『背後だったのによく見えてましたね!ボールは雷門キャプテンの月影選手へ行き渡って、南雲原のゴールまでもうすぐですね!』

 

 

「やるじゃないの円堂!」

 

「貴方に直接勝ったとは言えませんけどね!!」

 

同じくゴールへ駆け上がろうとする円堂を流は身体を寄せて制止する、やはりハルは攻撃に参加出来ないことを確認する蓮、そして傍には野神も共に走っていた。

 

敵の壁は3枚、キングス・ランスとはいえ3人のブロックが入れば止められてしまうだろう。

そんな状況を想定した故に編み出した、雷門の新たなる連携必殺シュート!

 

 

「野神さん!」

 

「行くぞキャプテン!」

 

 

揃って立ち止まり、月影蓮が手を振りかざし白の王騎士がマントを翻して降臨し………跳躍する。

そして何処からとも無く現れた黒き飛龍に跨り、龍は咆哮する!

 

 

 

「「バハムート・ランスッ!!」」

 

 

2人が高らかに宣言し空中に浮かんだボール目掛けて跳躍する、白騎士は槍を回転させて構え、黒の飛龍はその顎に力を蓄え………2人のボレーシュートに合わせるように放つ!!!

 

 

「「うおおおおぉおぉっ!!!」」

 

 

キングス・ランスにバハムートクラッシュのパワーを上乗せした雷門の新たなるオーバーライド技が南雲原のゴールへ襲いかかる、キーパーの陣内の前に古手打、妖士乃、古道飼が立ちはだかる。

 

「スピニングカット、V3ッ!!」

 

「ハンターズネットV2!!」

 

「アトランティスウォールッ!!」

 

ディフェンス陣の必殺技が竜騎士が放つシュートを力の限り阻むが、かつて無い程の威力を載せたボールはその障壁達を突き破って行った。

 

「うぁあぁ!!」

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

「ぐぅぅぅっ!!」

 

「後は任せろ、砂神・ザ・ハンドォォォッ!!!」

 

最後の砦である陣内は、砂の魔神を使役しその両手が雷門の必殺シュートを挟み込み、圧倒的な領域風圧が完全に止めようと放たれる………が。

 

「ぐ、ぐぐっ………な、なんだ……3人が防いで、尚この、威力!?」

 

3度のブロックを経ても、バハムート・ランスはとてつもない威力で南雲原のゴールを貫こうとする。

しかしそれでも陣内は押し留まる、決勝のスタメンに選ばれた以上ゴールを一切許してはならない。

砂神・ザ・ハンドは現時点の南雲原キーパー技で最高の威力を誇る反面、体力の消耗はこの上なく激しい。

 

その上でスタメンに選ばれたということは、前半は必ず無失点で終えろという監督の指示。

後半に出る四川堂へ繋ぐ為にも、ここで失点を許すわけには行かない、陣内は己を奮い立たせてシュートを受け止める。

 

「うぉおぉぉおおおっ!!でぁぁぁっ!!」

 

砂の魔神が崩れ落ちる前に陣内は威力が弱まってはいるがこのままでは入りかねないと判断し、ボールを上へ打ち上げて、身体がその衝撃でゴールネットへと吹き飛ばされる。

 

 

『陣内選手!雷門の新たなる必殺シュートを辛うじて防ぎきったかーー!?』

 

『南雲原は危機一髪と言ったとこ………いえ!これは!?』

 

 

誰もがそのボールを目で追いかけて見上げる、南雲原のゴールから前方へ高く舞い上がったボールが太陽と重なる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………そこに、円堂ハルも青空の下で飛び上がっていた。

 

 

 

「円堂、ハル!?」

 

「なんでそこに、流が止めてたはずじゃ……!?」

 

来夏が空にいる円堂ハルから流のいる方向へ視線を向ける、その動きを封じていたのか………周りには月影と嵐、ディフェンス陣から上がってきた紫雨3人が囲み動きをトリプルプレスで封じ込めていた。

 

 

「行けっ!ハルーーーッ!!!」

 

 

蓮の叫びに応える様に、ハルは閉じていた目を見開き………空中で踏ん張りボール目掛けて落ちながら炎の竜巻を纏い………強大な勢いを載せて放つ、新たなる必殺シュート!!

 

 

 

「メテオッド・ファイアトルネードォォォッ!!!!」

 

 

 

極限の力と勢いで蹴り出したボールは隕石のように落ちてゆく、炎の竜巻と高熱でスパークした稲妻を纏いながらゴールへ襲いかかる。

炎のストライカーが愛用した必殺技を、ハルが淡路島でリハビリと特訓を重ねる中でもがきにもがいて習得した、ファイアトルネードを超絶進化させた必殺シュートだ。

 

威力は先程のバハムート・ランスと同等かそれ以上、雷門のサッカーモンスターの復活を告げるようなシュートを、陣内はよろけながら構えた。

 

「なんてシュートだ………だが……!!!」

 

圧倒される、しかしだからといってこのまま決めさせるつもりは毛頭ない。

 

力を振り絞り、砂神・ザ・ハンドを構える………が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげーな、円堂ッ……!!!」

 

そのシュートの前に更なるかいぶつが……黒景流が高揚した笑顔で陣内の前に立ち塞がった。

 

「な、黒景ッ!?」

 

「まさか………嘘だろ、使うのか……!?」

 

月影蓮は3人でプレスしても尚振り切った黒景流の姿をみて戦慄を感じずには居られなかった、あの構えは間違いなくデスサイズ・カウンター………しかしその技が幾らシュート軌道を相手ゴールへねじ曲げることが出来るとはいえ、ハルが放った必殺シュートはかつてない程の威力を携えてる。

 

そんなものを直に受け止めてしまえば、体力どころかその脚すら持っていかれかねない。

ベンチにいる笹波雲明もまた、彼のやろうとしている行動に慄いてた。

 

「まさか先輩……ダメだ!幾らなんでも!!?」

 

「黒景ッ!?」

 

「まじかよ、先輩!!」

 

仲間達が叫ぶ、本当に返すつもりなのかと、しかし黒景流は迫り来るメテオッド・ファイアトルネードしか見据えていなかった。

そして彼は構える、右脚が黒く染まり……………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時に、再び黒い翼が彼の背中に生まれた。

 

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 

グラウンド上の誰もが黒景流の姿に驚いた、それは準決勝の後半最終局面で見せた、黒景流の覚醒の片鱗。

円堂ハルが魅せた極限の必殺シュートに………彼は更なる刺激を受けて再び目覚めようとしたのだ。

 

「黒景………流………!!」

 

空から下へ落ちるハルも、その姿に慄きつつも笑みが零れてしまう。

余りにも恐ろしく、強く、それ以上に昂る………かいぶつとは、こういう奴の事を言うのだと。

 

 

 

「デスサイズ………!!」

 

 

 

溢れる力のままに、ハルの放つ必殺シュートへ飛び上がり、右脚をぶつける。

その時点で技が干渉した際の衝撃でその場にいる選手達は吹き飛ばされようとしている、そしてボールを受け止めようとしている右脚ごと流は身体を捻り………死神の鎌の弧を描きながら。

 

 

 

 

「カウンターッ!!!」

 

 

 

メテオッド・ファイアトルネードを、雷門のゴールへねじ曲げた。

 

 

 

 

「な……ぁ」

 

「……うそ……でしょ」

 

『く、く、黒景流選手!!円堂ハルの新たなる必殺シュートを無慈悲にも跳ね返したぁぁぁぁッ!!!!』

 

『む、無法過ぎる……!!雷門中、再び失点の大ピンチですよ!?』

 

観客席はその光景に興奮の声を震わせ、雷門はその事実に呆然とする。

南雲原は信じられないものを見るように、頼もしくも恐ろしさを感じるかいぶつに引き攣った笑みをするしか無かった、味方とはいえ彼がやった所業はそれ程までにイカれてたから。

 

それを行った本人は着地すると同時に膝を着き、背中の翼も消えてゆく。

そして跳ね返されたメテオッド・ファイアトルネードは雷門のゴールへ向かっていった。

 

 

「ザ・タワーV3!!……だぁああ!!」

 

「ディープミスト……ぬぁぁぁ!!」

 

「エ、エアーバレット!!がぁぁあっ!!」

 

 

雷門はブロックをするものの、威力は全く衰えてない。

黒景流が行った今回のデスサイズ・カウンターは、覚醒しかけた化身の力も上乗せされており、通常の必殺シュートよりも威力が増しているからだ。

 

「かいぶつが、クソッタレ!!………止める、今度こそ………止めるんやッ!!」

 

そして暖冬屋は自らを震わせて構える、ここで2点目決められてしまえば不利な戦況が更にどん底へ落ちてしまう。

 

前半の時間は既に終了間際、同点はもう無理だがせめてここの失点は、我が身を犠牲にしてでも抑えなくてはならない……意を決し暖冬屋は猛虎の牙を呼び覚まし、更なる進化を遂げてシュートを防ぐ!!

 

 

 

「絶!ゴッドハンド・タイガーァァァッ!!!」

 

 

 

炎の竜巻にゴッドハンド・タイガーが牙を剥く、奇しくも起源は同じ雷門の必殺技同士がぶつかり合う。

 

「く、くそ、が……!!なんっちゅう、パワーや……!?」

 

進化した必殺技だからこそ拮抗しているが、パワーは明らかに跳ね返されたメテオッド・ファイアトルネードの方が高く、このままではまた得点を決められるのは時間の問題だった。

 

「決め、させるかいっ……!!俺は、雷門のキーパーや……!!ダァァァっ!」

 

そして空いていた左手もそのシュートを受け止めるために使う、虎が叫びながら更なる力を呼び覚ます………それでも、シュートが止まる気配はなかった。

 

「まだ、や、止める、止めるッ……とめ、る……!!」

 

身体が悲鳴を上げてゆくのを彼は感じていた、それでも諦めるつもりは毛頭なかった。

雷門のキーパーとは、どの時代であっても伝説の円堂守の姿が脳裏に過ぎってしまう。

その後ろ姿に恥じない活躍をしなくてはならない、如何なる時でも諦めないそのイナズマ魂に敬意と尊敬を持って!

 

 

「暖冬屋ッ!!!」

 

「暖冬屋さん!!」

 

「頼む、止めてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………暖冬屋さん!!!」

 

「ッ!?ハル、お前!!?」

 

そしてその後ろに、円堂ハルが回り込んでシュートを共に抑えようと背中を両腕で支えていた。

着地すると同時にイナビカリ・ダッシュで一気に雷門のゴールへ駆け寄り、暖冬屋が抑えている間に間に合ったのだ。

 

「止めましょう……!一緒に、勝つんです!!!」

 

「ッ!……あぁそうや!絶対勝つんや!!!」

 

「「うおおおおおおおおおッ!!!!」」

 

 

 

 

前半終了間際、2人の雄叫びがグラウンドに響き渡る。

押し込まれつつあるが、シュートは間違いなく受け止めていた………そして、猛き叫びをあげるハルの背中から………段々と黒い影が浮かび上がるようになってきたのだ。

 

 

 

 

「ぁぁぁああああぁぁあッ!!!!」

 

同時に湧き上がる力をありったけ込めて、暖冬屋を支え……………デスサイズ・カウンターにより跳ね返されたメテオッド・ファイアトルネードのボールは………雷門の守護神の手に収まったのだ。

 

 

 

ピッ!ピーーーーッ!!!

 

 

 

『く、黒景選手のカウンターシュート決まらず!そして前半終了のホイッスルが鳴り響きました!!スコアは1-0で南雲原がリードしております!!決勝に相応しい波乱の前半戦となりましたー!!』

 

『両チームのサッカーモンスターを中心にしつつも、他の選手達もまた凄まじい活躍です!しかし互いに容赦なしの戦いを繰り広げたせいか、この時点で両校共に体力がかなり消耗してますね……』

 

 

「………や、やった、で………ぁっ」

 

「!!だ、暖冬屋さん!?」

 

驚異的なシュートを受け止めた暖冬屋は、満足したかのように前へ倒れ込む。

黒い影が無意識に収まったハルは、そんな彼を心配するように寄り添うのであった。

 

 

 

 

「………ありゃ、決まらなかったか……ふぅ」

 

「……お、お前、規格外にも程があるぞ………はぁっ」

 

「お前こそ大丈夫か陣内?前の必殺技も相当だったろ?」

 

「ま、まだいける………折角の決勝だ、ぶっ倒れるまでやらせろ………」

 

前半は南雲原のリードで終えた、しかしまだ決勝は続く………互いのチームの闘志は尚、燃え続けてるのだから。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

前半戦が終わった観客席は、怒涛の試合展開に興奮が収まらず声は絶えず続いていた。

そんな中、観客席の入り口に立つパーカーを深く被った男と帽子とマスクで素顔を隠す男が立ってグラウンドを見つめていた。

 

「………お前のとこのは既に目覚めてるが、この調子だと更なる覚醒を期待出来そうだな」

 

「あぁ、笹波雲明と黒景流の存在がハルをまた刺激させてるんだ、この試合の末に………あいつらにも世界が見えて来るな」

 

「そうだな、あのグラウンドにいる3人と、ヒロトのとこにいる彼女を加えた日本なら……あるいはだな」

 

「それでもその4人に頼りっぱなしじゃいけないな、今の世界はそれだけで勝ち上がれるほど甘くない………世界じゃお前んとこのも待ってるんだろ?」

 

「知ってたか」

 

「それにしても、笑えるくらいの無法っぷりだな黒景流、お前はどう見る?アイツが憧れてたプレイヤーからしてみれば」

 

「………間違いなく今世代の中じゃ随一ではあるさ、それでもあいつに比べたら全然だろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事ないですよ彼!今の黒景流は昔の俺を越えてますから!」

 

 

 

 

 

 

2人が話をしていると、その背後からその男は風と共にやってきた。

とあるチームのジャージを着て、帽子とサングラスで素顔を隠しながら語りかけられた男二人は、直ぐにその正体を悟る。

 

「……はは!なんだお前、近くに来てたのか?」

 

「お久しぶりです、今日運良く東京に戻れたので合間に来たんですよ、後半はしっかり見れるぞー」

 

「アイツを知ってるのか、お前」

 

「はい、昔長崎に遠征していた頃に偶然出会ってサッカーをしたんですよ、別れる際お互い名乗らなかったんですけど、初戦の動きを見て直ぐに思い出しましたよ、彼だって」

 

「なるほど、道理でお前のプレーがあんなに色濃く現れてるわけだ、じゃあある意味お前のとこのプレイヤーか?」

 

「ある意味、ですけどね!」

 

「フッ………しかしまだ後半が残っている、雷門は現状不利だがまだまだこれからだ」

 

「あぁ………さぁどうする、ハル?」

 

サッカー界に伝説を残した3人が並び、その試合の行く末を見守る。

その先にある世界に、どれだけの力を示せるのか。

 

 

 

 

「(それにしても黒景君、笑い方怖いな……?)」




バハムート・ランス
バハムートクラッシュとキングス・ランスのオーバーライド。
黒いワイバーンに跨った白騎士が竜騎士となりて、槍と光線を共にボールへ放ちシュートとなる。
ちなみに嵐とも撃てる。
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