忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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ハーフタイムから後半です、こっからが本番みたいな感じです。
展開自体は正直ゲーム基準で淡白なのですが、どんな形であれフィニッシュまで持ち込みたいです。


決勝戦(後半) 画すべき一線を越えろ

フットボールフロンティア全国大会の決勝前半が終わった、スコアは南雲原が1点で雷門は無得点、現時点では南雲原1歩リードでハーフタイムだ。

 

ボクはその試合の様子を、観客席の1番上にある通路の場所である人と眺めていた。

帝国のみんなもこの会場で観戦してるけど、まさかこの人が直接来るとは思わなかったから………折角だから一緒に見ようって事になった。

 

「よっしよし!南雲原がリードで前半終わった!ボクが渡したデータと練習の効果が出てるっ!」

 

「はしゃぎすぎだよヒカリ、しかし雷門はもちろん強いが……南雲原もそれと同等かそれ以上、特に黒景流の最後のカウンターは恐れ入ったよ」

 

「ね!?すごいでしょおじさん!?流先輩すごいでしょ!?」

 

「うん、よく分かったから落ち着こうねヒカリ、大きな声は迷惑になるよ」

 

前半の試合を見て興奮するボクの頭に手を置いて諌めるその人は、キッチリとしたスーツを着こなし、整った赤髪の下には眼鏡をつけてる、一目見ただけでやり手の社長って感じの人。

 

ボクが帝国学園に送る際に、立場的にボクの父親としての存在………同じおひさま園出身の、ヒロトおじさんだ。

 

「それに円堂ハル君もまた昔見た頃よりも成長が著しいね、一時期再起不能なんて言われてたのが信じられないよ」

 

「うんっ、ボクも化身が目覚めた状態でやり合っても円堂君は追い縋って来たからさ……それに、前半最後のカウンターシュートを止める時に、背中に出てたよね?」

 

「あぁ、それに黒景流君もまた準決勝の時のように化身が不完全な状態で現れようとしてる、現状南雲原リードだけど後半に入ったなら一気に状況は変わると思う」

 

「そっかー、それでも南雲原には負けて欲しくない………ボクらが倒すまでは誰にも負けないでよねー」

 

「ふふ、帝国に入る前の様子から随分変わったよねヒカリ、彼のお陰かな?」

 

「………うん、ボクに本当のサッカーを教えてくれた流先輩と、身勝手なボクを信じてくれた帝国のみんなのお陰、そして帝国に送ってくれたおじさんも!」

 

「そっか、それなら何よりだ」

 

ヒロトおじさんがボクに微笑み、ボクも笑う。

そしてまたグラウンドへ目を向けて南雲原のベンチを眺める。

 

練習試合のデータを渡し、ボクの南雲原の練習に付き合った、南雲原のみんなは根気よくボクの動きについてきてくれるし、来夏先輩と鞘先輩はその中でもいっちばんしつこかったなー、流先輩にもリベンジしたいと思ってたけど結局負け越してるし。

 

………ボクら帝国はそんな南雲原の強さに負けた、初めて試合で負けた相手だから勝って欲しい、負けたボクらの分まで。

 

そして雷門、練習試合で円堂君が加わった後の勢いが既に前半に出ている、ボクの渡した映像が無ければ戦況はまた違ったのだろう。

 

ここから後半、南雲原はこのリードを維持するか………それともまだ底を見せていない雷門が追い上げるのか。

 

円堂君にも流先輩にも化身の片鱗が現れている、同じかいぶつ同士共鳴しているからかな………きっと今日で覚醒するに違いない、雷門もこれで終わるわけが無い。

 

だとしても勝て南雲原、負けるな流先輩………絶対に優勝しろ。

 

 

「……随分と黒景流君にご執心だねヒカリ、初恋なんだろ?」

 

「はつこい……うん、まぁ……色々初めてだったし、そういうの」

 

「また語弊を招く言い方して………まぁ俺も彼とは1度話したいと思ってるしね……………色々、と」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「?」

 

眼鏡をかけ直しながら変なオーラを纏うおじさんを、ボクは何が何だかて首を傾げて見つめていた。

 

………初恋、まぁ、初恋だ。

 

きっかけは正直普通のアレとは違うんだろうけど………そういう気持ちになったのなら仕方ないんじゃない?

 

「…………逃がさないんだから、絶対」

 

手摺に身体を預けて、遠くのベンチにいる流先輩を見ながら呟いた………顔が、少し熱い。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「まさか無得点で前半終えちまうとはな、ハルの新技に至っては跳ね返されちまうし、マジでかいぶつだな黒景流……」

 

「あいつ以外の南雲原だってそうだ、スキルのレベルアップ以上に俺達の動きを徹底分析してるのか、やりづらいったらありゃしない」

 

「いずれにせよまだ相手も1点だ、後半はこちらからのボール……このチャンスを取らなければな」

 

前半を終えた俺達雷門はベンチに戻り後半に向けて反省をしていた………南雲原相手にどうするか方針は決めようとしてるが、それ以上に………全員体力の消耗が想定より高い、南雲原の方でも同じだろうけど………動きが封殺されてる以上、こちらが不利か。

 

「しかしキャプテン、このままでは些か不味いのでは?突破口を開けるとしたらハルさんですけど……黒景流との実力は互角です、均衡状態のまま過ぎたらまた無得点のまま失点の可能性もありますよ」

 

「……そうだな」

 

有海崎さんの助言を受け止めながら水分補給をする、総合的な実力は雷門の方が上かもしれないが、南雲原の前半開始直後の速攻から主導権を握られてしまった。

その差を埋めるために攻め上がったのはいいがそれでも届かなかった、ハルも黒景流と何度も戦い、結果的に出し抜く場面は多かったが………それでも直接ぶち抜いたとは言えない、それどころか奴の方の実力が上なのかもしれない。

 

才能面でも、経験でも……二人の間に大きな差はない筈なのに、それでもまだ何か足りない?

 

現状優勢である南雲原もこのままで終わるわけが無い、追加点を決めるプレーをしてくる筈だ。

俺は休んでいる雷門の仲間達を見渡す、前半が過ぎただけなのに全体的に体力は消耗している………ハルはまだまだ余力を見せてるが、このままじゃ埒が明かない。

 

 

手が尽きた訳じゃない、しかしこのままでは焼け石に水だ。

 

 

相手の分析を越える都合のいい作戦は無い、笹波雲明もまた何か隠してるに違いない、まずは黒景流を何としても止めなくてはならない………突破口を見出だせなければ、終わりだ。

 

「いやー………それにしてもほんっと強いねー南雲原」

 

「……はい、覚悟はしてましたけど前半は正直やられっぱなしでした」

 

「このまま負けないサッカーをしたところで、結果は変わらないでしょう……何か手を考えなければ」

 

「ハルが公式戦でそんなに疲れてるとこ見るの初めてだよ、やっぱ黒景流やばいよな」

 

「はい、ほんっと強いですよ彼、ヤバすぎです」

 

「……………(みんな)」

 

しかしみんなの表情は疲れてはいるが憔悴はしていない、寧ろ笑って後半に臨もうとしている………楽しそうだ。

 

雷門に入ってから公式戦でトラブルもなく純粋に追い詰められた事はない、今日が初めてだ。

しかしみんな前向きだ、今日という日の為に特訓を今までよりずっと重ねて、今の雷門と同等の実力を誇る南雲原と全力のサッカーをしている……久々に本気でサッカーをやれてる事がきっと無意識に喜んでいるのだろう。

 

かくいう俺もそうだ、キャプテンとして不利な状況になってる今少しでも形勢を立て直すべきなのだが………その光景を見て思わず頬を緩めてしまった。

 

しかし何時までもこうしてる訳にはいかない、後半に向けて何をすべきか見定めなければ………突破口はハルが作る可能性が高い………がそうなる場合黒景流がまた立ちはだかるのだ。

 

俺達が複数人でマークすれば多少は動きを封じれるのだが、前半最後にそれすら振り切られてしまった、実力差が大きすぎる。

 

それでも南雲原と互角となっている俺達では簡単に好転しないのは事実だ、もっと何か………相手の想定を越えるような手は無いのか。

 

黒景流を………南雲原を出し抜く手は、何かないのか。

 

雷門のサッカーを分析した彼らの裏をかく………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

「?どうしました蓮さん?」

 

「………」

 

閃いたかもしれない。

荒唐無稽な発想だけど、彼らの分析以上のサッカーをするのならこれ以上の手は無いんじゃないのか?

 

突如声を上げた俺に、雷門のみんなは視線を集める。

そんな中俺は思考を巡らせ、意を決してみんなに伝え始める。

 

「みんな聞いてくれ、前半で分かったと思うけど………南雲原は今の雷門のサッカーを徹底分析して俺達のプレーを殺しにかかってる、加えて黒景流の存在が俺達の反撃を潰している、このままやっても状況は悪くなる一方だ、そこで俺は1つ思いついたんだ」

 

「何をですか?」

 

「………俺がハルの居ない間に、お前達に伝えたことを覚えてるか?」

 

「えーっと、王者じゃなくて挑戦者として臨もうでしたよね?」

 

「常勝雷門のプライドは捨てろ、やったか」

 

「そうだ、俺達はその意識でこの決勝を迎えた………そして今もう1つ、俺達が捨てるべきものが見つかった」

 

「………これ以上何を?」

 

赤袖の質問に俺は答える。

今の雷門は純粋に今のサッカーを楽しもうとしている、南雲原にもパフォーマンスは劣っていない。

故に取るべき選択は一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後半は、雷門のサッカーを捨てろ!」

 

 

 

 

 

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「うぁーキッツ………これから後半だってのにヘトヘトぉ……」

 

「だらしねーぞ木曽路……と言いたいが、お前は化身も使ったからな」

 

「七南さん、足は大丈夫かしら?」

 

「はい!全然平気いだだっ!」

 

「平気じゃないじゃん!?やっぱ無茶してたんじゃん!」

 

 

 

「……………」

 

 

決勝戦前半、僕らが1点先取し無失点で終えた。

雷門のデータと過去技を研究し分析しつくし、想定を越えるであろうハルは黒景先輩に任せる形で試合に臨んだ。

幸運にも開始のボールは南雲原だった、そして当初のプラン通りにカウンターシュートからのシュートチェインによる奇襲コンボで先取点をもぎ取り、そこから雷門の攻撃を凌ぎつつ追加点を狙う作戦となった。

 

最後の最後で入りそうだったが、雷門のキーパー暖冬屋さんとハルのプレーによって死守されてしまい前半は終わった。

 

みんなの奮闘も相まって優勢で終われたのは間違いないが………まだ1点差、気は一切緩めれない。

 

雷門がこのままで終わるわけが無い、何か………また来るに違い無いんだ。

 

「……黒景先輩、最後に無茶苦茶なカウンターを決めた訳ですが、大丈夫ですか?」

 

「あーうん、大丈夫……体力はまだあるし脚も負傷した訳じゃないから、にしてもアレ止められるとは思わなかったな………ていうか、円堂もなんか化身出そうになってないか?」

 

「……はい」

 

最後のシュートブロック………というかその前、ハルはとんでもないスピードで自陣のキーパーの背後まで回り、押し込まれそうな所をその背後から現れた黒い影と共に得点を許さず守り抜いた。

 

黒景先輩もまたあの黒い翼を生み出していた………サッカーモンスターの2人もまた、天河さんの様に化身を覚醒させようとしていた。

 

 

………でも。

 

 

「先輩、もう一度出してみろって言われたら出せますか?」

 

「………いや無理、マジでハイになった時にか出せないと思う、ヒカリと同じだわ」

 

「……そうですか」

 

座り込んでいる黒景先輩はそう告げる。

対雷門に向けての特訓に付き合ってくれた天河さんも、練習試合に出せた化身があれ以来出せなくなったと言っていた。

今日の2人と違って完全な状態で覚醒出来てた筈なのだが、恐らく彼女も同様の理由で化身を無意識に使えるようになってたと思う。

 

後半に入れば、多分どちらかが先に化身を完全な状態で発動させられる可能性もある、先に出せた方のチームが………後半戦のリードを握れる。

 

………とは言えそれは不確定要素、気にし過ぎも良くない。

 

この優勢はこの日の為に行った猛烈な特訓をこなしたみんなが導いたものなのだから。

 

天河さんが持ってきた練習試合のデータと今大会でのプレイを研究し尽くし、そこから導き出されたタクティクス《強者封じ》で雷門の主要選手の個性を封じ込める。

 

全員を分析するという無茶苦茶な方法ではあるが、みんなの血のにじむような努力が成せた事だ。

 

自分らを越えかねない敵を前にして勝利を信じ、みんなで勝利への道を歩む為ここまで来たのだから。

 

「つーかよ、やっぱ雷門思ってた以上に強かったわ………天河の手助けが無ければマジで危なかったんじゃーねの」

 

「かもしれないな、カンニング一歩手前だが……それが前半の結果に繋がったのだ、感謝する他無いな」

 

「特訓の成果もあるんだと思いますよ、笹波君の特訓メニューはきっとすごく効率が良かったんですよ」

 

「陣内君、まだ行けそうかい?」

 

「あぁ……砂神・ザ・ハンドを撃てるのはもって後2回つったところだな、それまで絶対点は入れさせねぇよ、お前の出番無くなるかもな」

 

「………それは複雑だね」

 

話しているみんな様子は………前半だけでもかなり体力を削っているのが目に見えて分かる、当然だ………相手はあの雷門、ハル以外でも選手達こ動きは想定の範囲内とはいえスペックだけなら南雲原の選手の平均は上回っているのだから。

 

そこを分析したデータで抑え込めて互角にしているという状況だ、常に全力でプレーしてるのならこうもなる………しかしそれは相手も同じ、そして黒景流と円堂ハルという2人のかいぶつに合わせてるのなら尚更だ。

 

…………そしてハルに関しては分析しきれてない、ポテンシャルの底が黒景先輩と同様かそれ以上に見えない。

故に彼の相手は黒景先輩以外には務まらないだろう、そしてこの調子を後半でも維持出来れば………勝てる、この決勝戦。

 

「みんな前半お疲れ様、特訓の成果と作戦の効果がよく出てたと思うよ、しかし気は絶対に緩めないで、雷門がこれで終わるわけが無い………気を抜かずに後半も勝ち切ろう!」

 

みんなが僕の言葉を聞いて強く頷く、そしてここで選手交代を行おう。

 

七南さんは菊一文字でカウンターした時、脚に負荷を掛けすぎたみたいだし、妖士乃先輩はシュートブロックや攻め上がる雷門のブロックも地味な所でも活躍してくれてかなり消耗している。

 

陣内先輩はまだ行ける………雷門は後半何をしてくるのか、間違いなくハルを中心にして攻撃を仕掛けるのは間違いない。

追加点を入れるにしてもみんなの体力勝負になる、この試合の本番はここからだ。

 

 

『それでは間もなく後半開始となります!両チームの選手達はグラウンドへお願いします!』

 

 

「時間だ、後半の作戦は変えない………でも何が起きても動揺せずに対応して、優勝しよう!!」

 

「「「おうっ!!!」」」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『さぁ前半の怒涛の展開を終えて、決勝戦後半が始まろうとしています!現状は南雲原が1点リードの優勢ですが、南雲原は決して安心出来る点差ではありませんね!』

 

『はい、雷門もまだ全てを出し尽くしてはいませんからね、南雲原はこのまま逃げ切れるのか、それとも更なる追加点を出すのか………変わらず目が話せませんよ!!』

 

『えぇ全く!そして南雲原は古手打選手と妖士乃選手をベンチに下げて新たに柳生選手と星選手をピッチに出します、対して雷門はキーパーの暖冬屋選手と代わりまして木下選手に交代となります!』

 

観客席の歓声を浴びながら南雲原と雷門の選手達が再びグラウンドの上へ戻り、決意を固めた表情でポジションにつく。

 

再開は雷門から、勢いをつけれずにいる彼らはまず同点に追い付けなければならない、南雲原も油断は一切しない………何より、互いに前半の時点で体力が減っているのだから。

 

流も配置につき、雷門の選手達を見渡す。

 

 

「………んー?」

 

 

そして直ぐに、違和感を感じるのであった。

 

「どうしたの、流?」

 

「……なんか、雷門のみんな顔つき変わってね」

 

「え?………言われてみれば、確かに………柔らかくなった?」

 

近くにいた来夏が流の言葉を聞いて雷門の方へ顔を向ける、ハルを始めとした雷門のみんなは真剣な顔付きなのは変わってないが、言われてみればどこか落ち着いているというか、柔らかく笑みを浮かべていた。

 

言ってしまえばそれだけだが………何処か、危機感を流は感じていた。

 

「………へへ、なんかヤバそうじゃね?」

 

「そう、かな………正直何が変わったのか分かんないんだけど」

 

「まぁ気を抜くなって話だ、円堂もまだギアを上げきって無いっぽいしな」

 

「うん、頼んだよエース君っ」

 

「おう」

 

流と来夏は拳を軽く合わせて持ち場に着く、一方伊勢谷も敵陣の様子が変わった事を察知しており、眼鏡を外して考えていた。

 

「(既に雷門は我々が自分達のプレーと技を研究し尽くしてる事に気づいてるはず、何か対抗策を講じてきたという表れなのか………それとも別の何か?いずれにせよハッタリでは無い気がする……)」

 

雷門は間違いなく何か仕掛けてくる、南雲原は現在のリードを守り抜く覚悟を決める。

後半戦、開始の戦況で一気に流れが変わる………南雲原と雷門、勝利を掴むべく力を出し切る為に。

 

 

『両者出揃った模様です!それでは後半戦………開始です!!』

 

 

 

ピーーーーッ!!!

 

 

開始のホイッスル共に観客の歓声が湧き上がり、嵐からハルへとボールが渡される。

ハルを筆頭に雷門は南雲原へ駆け上がり、すかさず流はハルの前へと立ちはだかる。

 

「やっぱ来ますよね、黒景さん!」

 

「当然………なんかもう楽しげだな?」

 

「えぇ、今から俺は………貴方だけに集中しますから!!」

 

「ッ!!?」

 

その言葉を皮切りにハルはすかさずドリブルで抜き去ろうとしている、その行動にいち早く反応した流は直ぐに行く手を阻み身体をぶつけて自由に進ませまいとする。

それを読んでたハルもまた負けじとチャージをする、テクニックではなく原始的な力比べ、プレーの様子がガラリと変わり少し困惑する流はハルの前へ再び回り込む、他の雷門の選手達はそんな2人に介入しようとせず、視線すら送らずにゴールへと駆け込んでいた。

 

 

『開始早々円堂選手と黒景選手がぶつかり合うー!しかし円堂選手、前半とは売って変わってパワープレイが目立ってます、攻撃の仕方を変えたのでしょうか!?』

 

 

「行けハル!ぶち抜いてしまえ!」

 

「俺達はかいぶつの間に入らねーからな!」

 

「分かって、ますよっ!!」

 

 

「なんだこれ、雷門の動きが全然違ってんだが」

 

「何をしてるの、みんな……!?」

 

柳生と小太刀がインプットしてた雷門のプレーに困惑する、攻め上がってることに変わりは無いのだが、野次とか飛ばして無かった。

 

 

「………雷門は、何をするつもりなんだ………ハル……?」

 

雲明もまたその光景を見て戸惑っていた、これも戦術の1つなのかと………しかしハルの顔を改めて見つめる。

 

純粋に流とサッカーでぶつかり合って抜き去ろうとしてる局面を楽しもうとしている、その事にテンションが上がっているのか……流は段々と追いつけずにいたのだ。

 

「お前、こんなプレイヤーだっけ?」

 

「さっき俺の新必殺技跳ね返されちゃったんで、お返しですよ!」

 

「簡単にぬかせるか、よ!」

 

流は手で制する為に右腕をハルの身体に伸ばす………しかしハルは微笑む、その行動を待っていたと言わんばかりに。

 

「ふっ!!」

 

「!?」

 

さっきまで身体をぶつけ合っていたハルがいきなり身体を捻って回転し、流が腕をのばした反対方向へボールを持って移動する。

 

意表を付かれた流は重心をハルの方に向けていた為、少しだけ身体のバランスを崩してしまうが直ぐに持ち直してハルを止めようとするが………。

 

 

「イナビカリ・ダッシュッ!!」

 

 

稲妻を纏って猛烈ダッシュしたハルは一気に流を置き去りにして、ゴールへと向かって行く。

 

「待て……っ!?」

 

「行かせるかよ黒景流!」

 

「悪いが、お前の負けだな!!」

 

追いかけようとする流を野神と嵐が挟み込み拘束する、そして今まで以上のスピードで駆け上がるハルを南雲原は誰も止められずにいた。

 

 

「やったなハル!ようやく抜き去ったな!」

 

「はい!決めましょう、同点弾!!」

 

「うんっ!」

 

 

ハルが抜き去ると信じていた星村と月影が共に並走する、そしてハルは空中へボールを高く蹴り上げて、青い稲妻を纏って空中へ滞在しているボール目掛けて3人は跳躍し………南雲原のゴール目掛けて3人同時にオーバーヘッドキックを放った!!

 

 

「イナズマブレイク……!」

 

「「コード・グレイトッ!!!」」

 

 

 

円堂世代の雷門イレブンが使っていた伝説の技《イナズマブレイク》

 

それを円堂ハルが更なる改良を加え、メテオッド・ファイアトルネード同様空中からの同時オーバーヘッドキックにより落ちる力を加えて威力を増加させた新しいイナズマブレイクがディフェンス陣がブロック出来ないエリアを抜けて陣内へと降り注ぐ。

 

 

「来いっ!砂神・ザ・ハンドォォォッ!!!」

 

 

陣内は臆することなく砂の魔神でそのシュートを止めようとする……が。

 

「な、うそ、だろ………何だこのパワーは!?」

 

凝縮した領域風圧でも全く封じ込めれない程のパワーが込められたボールが、砂の魔神の徐々に崩さんと言わんばかりにイナズマが迸り放たれる。

 

 

「「「いっけぇぇぇぇぇッ!!!!」」」

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁあッ!!!」

 

新たなイナズマブレイクを放った3人の叫びに呼応するようにボールは勢いを増し………遂に砂神・ザ・ハンドを突き破り陣内ごとゴールへと押し込んだ!!!

 

 

 

ピーーーーッ!!!

 

 

 

『雷門中!後半開始直後にようやく初ゴールを決めたぁぁぁあ!!』

 

『まさかファイアトルネードだけでなくイナズマブレイクが進化した姿まで見れるなんて!感動で涙が止まりませんんっ!!!』

 

「やったぁあっ!」

 

「よし!これで同点だ!」

 

「やりましたね!!」

 

雷門の同点ゴールに観客席が大喝采で揺れ動く、イナズマブレイクを決めた3人は肩を組んで喜び合い、仲間たちもその輪に喜びを表しながら向かっていった。

 

対する南雲原は、まるでこちらが前半に行った速攻を返された気分になっていた。

そしてそれだけじゃない………南雲原のかいぶつ、黒景流が真正面からぶち抜かれてしまったのだ。

 

 

「ゴールも決められてしまったけど、それ以上に黒景が円堂ハルに、負けた?」

 

「いや、円堂ハルが後半に入ってからプレースタイルをガラリと変えたせいでもあるけどね、それでも出し抜かれてた……」

 

 

「流、大丈夫?」

 

「………すげー勢いだった、止めらんなかったわ………やっぱ嫌な予感は当たるもんだな」

 

来夏が心配して流に駆け寄る、しかし対する黒景流は申し訳なさを感じつつも笑みを隠さずに居られなかった。

汗を拭いハルを中心に喜び合う雷門を見つめる、先程までは勝つために真剣になってた雷門、それは変わらないが………それ以上に、楽しげだった。

 

「……どういうこと、流?」

 

「詳しいことは分からんけど、多分………雷門はさっきまでのサッカーを捨ててる」

 

「捨ててるって……」

 

「平たく言えば、俺達の分析外のプレーをして撹乱しようとしてんじゃないのかな」

 

「撹乱………そうか、俺達は雷門のサッカーを分析していたからこそ前半は互角に渡り合えたが、それをさせない為に後半から円堂ハルを中心としてプレーの質をガラリと変えることで、こちらのタクティクスを無効にしようとしてるのか……!?」

 

「マジか……でもそんな事したら、雷門だってプレーのバランスを崩しかねないんじゃ……」

 

「その事を承知した上でだろ………てかそれ以上に、楽しもうとしてるんじゃないか?」

 

「え?」

 

「そう言う顔だろ、アレ」

 

流の言葉で南雲原のみんなが雷門の選手達の表情を改めて見つめる、確かに笑っている………そしてここからは、そんな彼らのサッカーを新しく見極めなければならない。

 

オマケに前半でかなり全力で動いたせいで全体的に体力は消耗している、そんな状態で調子を上げようとしてる雷門に立ち向かわなきゃいけない。

 

「まじすか、平たく言ったら………ここからまた強くなるって事ですよね雷門……!」

 

「ウチ達はここからその雷門を迎え撃つ上で、もう一点決める………至難の業ね」

 

「か、勝てるんですか……円堂ハルってまだここから伸びるんですよね……?」

 

 

 

 

 

 

 

「怯えんなっての、後半は始まったばかりだぜ?」

 

少し暗いムードになりつつあった南雲原に、黒景流は声を掛ける。

久々に抜かれてしまった事に対する悔しさよりも、喜びが勝っていると言わんばかりの表情で雷門を見つめていた。

 

 

「相手はこの試合をより楽しもうとしてるんだぜ、なら俺たちだって楽しもうじゃん、こっからは分析とかまどろっこしい事は捨てて立ち向かおうじゃんか、その方がきっと勝てるだろ?」

 

「流………もう、ブレないねほんっと」

 

「でもその通りだな、このまま負けるつもりは毛頭ねぇし、つーか俺は勝つつもりだぜ?」

 

「桜咲の言う通りだ、ビビる事ねぇ」

 

「もちろん、雷門にもリベンジしたいしね!」

 

「……勝ちましょう、改めて言うことでもないけどね」

 

「おうっ!んじゃここからはまたイーブンって事っすね!」

 

「ぼ、僕も最後まで頑張ります!」

 

「久々の出番で決勝戦だ、ロックに行かなきゃ損だな!」

 

南雲原全員は同点に追いつかれた、しかし諦めることなど何一つとしてない、寧ろより強くなろうとしている雷門とより熱いサッカーが出来ることに喜びを感じていた。

 

後半は始まったばかり、つまり試合はこれからだ。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

遂に俺達雷門が南雲原からゴールを奪った、仲間たちと喜びあってる中………俺は前半で言ってた蓮さんの言葉を思い出していた。

 

 

 

 

『ら、雷門のサッカーを捨てるって、どういうことだ!?』

 

『言葉通りの意味だ、さっきも言ったが南雲原は雷門のサッカーを徹底的に研究している、恐らくこの先他の戦術も予測されているに違いない、故にこのまま試合してもジリ貧で終わる確率が高いんだ』

 

『だから、雷門のサッカーを捨てるって…………なら、後半はどうするって言うんですか?』

 

蓮さんが突如として言った、雷門のサッカーを捨てるという言葉に仲間達は驚いていた、当然だけど。

俺は冷静になって蓮さんの意図を聞く、蓮さんは目を閉じながらみんなに続けて語りかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………自由にやれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え?』

 

『は?』

 

『はいっ?』

 

『え』

 

『はっきり言う、さっき思いついたから具体的にどういうサッカーをするかという考えは纏まってない!しかしこのまま今まで通りのサッカーをしたところで南雲原には勝ち越せないという判断だ、よって今各々が出来る最高のサッカーを自由にやってみてくれ!南雲原の想像の範疇を越えるためにも!』

 

『え、えぇ!!?待ってくださいよキャプテン!いきなりそんなこと言われても困りますって!』

 

『だろうな、しかし今の俺達は間違いなく強くなっているのは確かだ、今日という日の為にどれだけ俺達が血のにじむような特訓をしてきたか、忘れてないだろ?』

 

『それは、そうだけど………』

 

『後半は何としても敵の分析以上の力を発揮しなきゃならない、なら今度は自分が今出来る最高のプレーを引き出すために雷門のサッカーを1度忘れて、後半は戦うしかない!』

 

蓮さんはそう言い切り、雷門のみんなは呆気にとられて言葉も出なかった。

その言葉通りだとは思っていただろう、しかし荒唐無稽な策をこうして自信満々に言われても、固まるのは当然だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ふ、ふふ、ふふふははっ』

 

 

 

そんな中、俺は………笑いを堪えるのに必死だったけど。

 

 

 

 

 

『……え、ハル君……?』

 

『ふふ、はははっ、れ、蓮さんいつの間に昔の父っちゃんみたいな事言うように、なったんですかっ!』

 

『そ、そうか?円堂さんならこういうんじゃないかとは確かに思ったけど………』

 

『もうまんまですまんま!……………いいじゃないですか!やりましょうよ、雷門のサッカーじゃなくて………俺達それぞれのサッカーを!』

 

『ま、マジかハル?お前まで……』

 

『俺も今のままじゃ黒景さんのこと越えられませんから、また一から自分のサッカーをしてみようと思います、みんなだってこのままじゃ勝てないかもしれないって思ってるでしょ?』

 

『………それはそうですけど』

 

『ならやりましょうよ!俺達は心のどこかでこんなサッカーが出来る日を待ってたんです、そんな日だからこそ思いっきり自由にやってみましょう!』

 

蓮さんの隣に立ち仲間にに語り掛ける、皆はそれぞれ顔を合わせると意を決したかのように笑い、俺達に頷いてくれた。

 

 

 

 

そして気持ちを新たにしてグラウンドへ向かい………後半開始直後に黒景さんを初めて真正面から抜き去り、新しい必殺技のイナズマブレイクCGを決めて同点まで追い上げた。

 

 

 

 

ようやく決めれた初得点、蓮さんと星村さん、そして雷門の仲間たちと喜びあった。

 

 

「よくやった!これでやっと同点だな!」

 

「ひとまずはハル達が決めた、後半はここからだなっ!」

 

「はい、南雲原もきっとここから前半よりも攻め上がると思います、絶対死守でカウンターを決めるぞ!!」

 

「「「おうっ!!!」」」

 

俺の掛け声にみんなが応えてくれる、雷門の結束はまた一段と強くなっていると感じた。

この熱い時間はまだ終わらない、それと同じくらい強いライバル達もいる。

 

ここで勝って、俺達雷門が改めて日本一だと証明する!

 

 

 

 

 

 

 

 

『おおっと、ここで南雲原早くも交代のようです、先程の必殺シュートで力尽きた陣内選手と代わりまして四川堂選手、そして……………こ、こ、これは!!?』

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

実況の人が困惑の声を上げている事に気づき、そして観客席から大きな声が湧き上がった。

俺たちは南雲原のベンチを見る、そこに居たのはまず本来のスタメンキーパーだった四川堂我流………そしてその前には…………!

 

 

 

 

 

「………え」

 

「まさか……来るのか、もう1人のかいぶつ」

 

「うそ、本当に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「選手、交代!」

 

白のジャージを脱ぎ捨てて、番号のないユニフォームの左腕には赤いキャプテンマークをつけ………俺達以上の覚悟を秘めた表情でピッチに降り立つ、その男は………。

 

 

 

「………雲、明……!!!」

 

思わず冷や汗を流してしまうが、それ以上に笑ってしまう。

もしかしたらと思ってた、しかし病気のこともあるからって………そのことを承知の上でアイツは来た。

 

フィールドへゆっくりと歩く雲明と目が合う。

改めて感じた、この決勝戦の本番はここからだと。

 

 

 

試合は今、始まった!!




イナズマブレイク・コードグレイト
オリオンの刻印で放ったオーバーヘッド版イナズマブレイク、今作品では初代の進化版ということで差別化。
色のエフェクトも円堂ハル仕様となっている。


雷門中
南雲原の分析を越えるためにそれぞれが出来る最高のサッカーをする事を決意、だんだん自由になってきたな………。


笹波雲明
ゲームでも激アツシーンの1つである決意の参戦。
南雲原のかいぶつが、いま2人出揃う。










次回、決勝戦終幕。
どうか最後まで見届けてください。
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