忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今回で決勝戦は終了になります、かなり手短だし展開も早すぎるかもしれませんが、長引かせずに決着をつけます。

かいぶつ共の歩んだ道の結末を、どうぞ。


決勝戦(終戦) 激しく鳴ってる、心臓に沿ってく

「うそっ、笹波君……出れないんじゃ」

 

「南雲原の少年監督………この局面で出るのか」

 

 

 

 

「取材で聞いた話は、フェイクだったのか?」

 

「いえ……彼が嘘をついたとは思えません、病によって試合に出れないはずです」

 

「何を、考えている……?」

 

 

 

 

「………!」

 

「来たか、笹波雲明」

 

「(……あの顔を知っている、過去と未来、宇宙で見慣れた………強い覚悟を決めてサッカーをする奴の顔だ)………でもそれ以上に、ワクワクしてるね」

 

 

 

 

 

背番号のない南雲原ユニフォームを着て、飾りだったキャプテンマークを左腕に着ける、背後の四川堂先輩はそんな僕に着いてくるように歩く。

 

仲間達や雷門の皆はピッチへ上がってくる僕の姿に釘付けだ……まぁ、知っているものからすれば当然だ、僕はサッカーが出来ないのだから。

 

その事を承知の上でここに来た、こんな体でも、ボールを満足に蹴れなくても……ここでみんなとサッカーをする為に。

 

「(………ふぅ)」

 

にしても久しぶりだ、ユニフォームを着でグラウンドの上に立つのは……でもこんな大観衆の中なのは初めてだな。

ベンチと中じゃまるで違う、プレッシャーも感じるけど………それ以上に心臓が高揚で高鳴っている、この思いに沿って行く。

 

見ただけで感じた、後半の雷門は僕らが研究してきた今までのサッカーを捨てるつもりだ、そこから調子ついて更なる得点を決められてしまえば勝利は遠のいてしまう。

 

その前に僕が変える、同じフィールドで。

 

「雲明、お前……」

 

歩み寄る僕達に桜咲先輩を始めとした仲間達が集まる、この上なく戸惑っており心配そうな表情だ。

仕方ないとはいえ寂しさも感じる、ていうか………事前に伝えてもない、本当のアドリブだからな。

 

「笹波………我慢出来なくなった?」

 

「アホ言わないでくださいクソボケ先輩、勝つ為に来たんです」

 

「勝つ為って雲明、どうするつもりなの?」

 

「みんなも予感していると思うけど、後半の雷門は動きをガラリと変えてきた、それに対応する為の新しい指示を遠くのベンチから出してもきりが無いからね、ここで直接指示を出す事にした」

 

「それにみんな既に体力もお世辞にも多いとは言えない、ボロが出ちゃ不味い……だからこそ僕がここで指示を出す、皆はそれに合わせて欲しい」

 

「う、うん……でも、誰と雲明君は交代するの?」

 

 

 

 

 

「……解答は俺だろう?」

 

「伊勢谷君……?」

 

 

 

 

眼鏡に触れて名乗りを上げた伊勢谷先輩に小太刀先輩を始めとした仲間達が視線を集める、やっぱり分かるんだな………司令塔のポジションが被る以上、自分が下げられる事を。

 

「本来ならキャプテンが俺以上に司令塔として相応しい立ち位置に居る、君が出る以上俺がこの場で潔く身を引こう」

 

先輩は柔らかな表情で淡々と告げた……きっとそう言ってくれると信じてましたよ。

 

「……伊勢谷先輩、ここまでチームを引っ張ってくれて本当にありがとうございます、後は僕に任せてください」

 

「あぁ………頼むぞ!」

 

僕と伊勢谷先輩はハイタッチを交わし、歓声を浴びながら伊勢谷先輩は後腐れない表情でベンチへと戻ってゆく。

その後ろ姿を見届け、僕は改めて皆に向き直る。

 

「……とはいえ知っての通り僕は走ったりは出来ません、せいぜいパスの中間程度です、しかし僕が入る事で必然的に起きる人数不足の解消案は既にあります」

 

「………それは、つまり………?」

 

「はい、もちろん黒景先輩に頑張ってもらいます」

 

「やっぱ俺なの?」

 

次に黒景先輩が仲間の注目の的となる。

僕がそう言い出して何となく察していたのか、少し引き攣った笑みを浮かべた顔の頬をかく。

僕がフィールドで指示するだけで本来は実質10対11になってしまうが、この人なら2人分どころかそれ以上の活躍が望める、今のハルと対面しながら僕の指示を聞いてチームの勝利に貢献してもらう。

 

「………何時か僕は試合に出る日が来るかもしれないと思ってました、そこで黒景先輩には予選の頃から僕の無茶振りの練習に付き合って貰いましたよね?」

 

「え?……あーあれか……確かに普通の特訓メニューから考えられないくらいの量とか、一人で海坊主二倍増しのジグザグドリブル往復しろとか、ガトリングトラップ一人でやれとか………もしかしてそれと同じくらいの無茶振りをこの試合でさせるつもりなのかお前?」

 

「違います、それ以上をさせます」

 

「えぇ!?」

 

「そうでもしなきゃ確実に勝てません、貴方一人のサッカーじゃね……だから南雲原と僕が居る、先輩は今からろくに走れない僕の手足になって下さい、」

 

「笹波の手足……」

 

「どんな形であれ、僕はサッカーから逃げることなんて出来なかった……ここにいる仲間達とサッカーをすると決めました、その為にも黒景流……かいぶつである貴方の力が必要になる」

 

「…………」

 

サッカーが何よりも好きで、それでもこの身体はまともにそれをさせることを許さなかった。

だからサッカーを憎んで忘れようとしたのに、桜咲先輩との出会いを始めに南雲原の仲間達と出会い、やっぱり僕がサッカーを憎むなんて出来るはずも無かった。

 

そして監督としてサッカーに関わり続け、みんなと勝ち進み、ようやくここまで来れた。

そして相手は雷門、覚醒したハルが加わった最後にして最強のチーム。

 

まともにサッカーが出来ない僕は最後までベンチで見届けようとしたけど、ダメだった………僕らが施した分析以上のサッカーをしようとする雷門を見てたら、身体が抑えられなかった。

 

僕はみんなを、南雲原を日本一のサッカー部にすると約束した。

 

なら僕もこの胸の高鳴り共に、みんなと一緒に最後の勝利を目指すんだ……笑顔でゴールを掴み取る!!

 

「僕だって今まで貴方のバカにどれだけ振り回されたと思ってるんですか、申し訳ないと思うなら後半はみんな以上に僕の指示に服従してください、拒否は認めませんから」

 

「それ言われたら何も言えない………ていうか何も言うつもり無いし、寧ろ俺は滅茶苦茶嬉しいけどな」

 

「……?」

 

「………お前とこうして、決勝戦で同じグラウンドに立ってサッカー出来るんだからな……な、お前ら?」

 

「……あぁ、黒景だけじゃなく俺達も使えよボス」

 

「おう!大歓迎だ!」

 

「雲明君が同じピッチに居るなら安心だよ!」

 

「これはお前が始めた事なんだ、その締めくくりもお前が務めな」

 

みんなが笑顔で僕を見てくれてる、本当に最高の仲間達だ。

勝つ……絶対に。

 

そしてみんなと一緒に雷門の方を向く、ハルを始めとした彼らも僕を警戒して見ている……ハルと視線が合う。

 

彼は待っていたと言わんばかりに笑っている、僕もそれにつられて笑った……さぁ、みんなで行くぞ。

 

このヴィクトリーロードの……クライマックスへ!!

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「雲明……やっぱり来ると思ってたよ」

 

「彼は病で走れない……フィールドでプレーが出来るの南雲原の選手は9人……だが黒景流もいる、油断は一切できないな」

 

「油断どころか今までよりずっと気を引き締めなきゃ喰われますよ……何せ、南雲原のかいぶつが2人出揃った訳ですから」

 

「そうだな………だと言うのに、心底嬉しそうだな」

 

「はは、‎すみませんつい」

 

「いいさ………さぁお前達!後半は……いや決勝はここからだ!俺達のサッカーで、南雲原に勝つぞ!!」

 

「「「おおおっ!!」」」

 

雷門はこれまで出てこなかった笹波雲明の参加に戸惑うが、士気は衰えることなく高まっていた。

後半開始にゴールをようやく決めてスコアは同点、ゲームは振り出しに戻った………ここから再び流れを掴んだチームが、この試合の主導権を再び握ることが出来る。

 

雷門はここから南雲原の分析を越えるサッカーをする、そして南雲原もそれに対応すべく行動する。

 

勝者となるのは、果たしてどちらか。

 

伊勢谷のポジションに雲明がつき、両チームともそれぞれの持ち場へと戻る。

雲明の隣には流が立っており………今初めて、同じフィールドでゴールを共に見据えていた。

 

「ここから先、互いにどんなプレーをするのか読めなくなる、残る力の全てを出し切って、ぶつかって足掻いてゴールを目指すしかない」

 

「それでも僕らは勝つ………その為にここまで来たのだから、どん底から這い上がった南雲原が、日本一だと証明する為に………みんなとこのフィールドで今出来る最高のプレーを彼らにぶつけて、僕たちの勝利への道の終着点に辿り着く為に」

 

「円堂ハルを……雷門を越えて、その先のゴールへと!」

 

「だな、ここまで来て負けるとか有り得ねぇし………俺達の戦いの締めくくりの試合としてもうこれ以上は無い………全部出し切って捧げてやろうぜ笹波、俺達のサッカーを!!」

 

「……はい!」

 

笹波雲明は己の運命に絶望した、それでも胸に燻るサッカーへの想いは南雲原での出会いにより爆発した。

どれだけ無様でも、足掻いて足掻いて、初めて南雲原が試合に勝った日に彼は決めた………前に進むと。

 

そしてその道の終幕を己の手で飾る為に………笹波は自分のキャプテンマークを握り締めて、目の前を強く見据えた。

 

 

『南雲原からこれまで一度もピッチ立たなかったキャプテン、笹波雲明がピッチに現れました!!』

 

『この決勝の舞台まで温存していたということでしょうか!?ここから更に力を出し切る総力戦ということですね!!』

 

『はい!両チーム同点、ここから更なる展開に目が離せません!!後半戦、再開です!!』

 

 

 

ピーーーーーッ!!

 

 

 

後半再開、観客のテンションは最高潮となっており大歓声が飛び交う。

空宮から流へとボールが手渡され、流を中心に南雲原は駆け上がり雷門も新たな体制でその攻撃を迎え撃とうとしている。

 

そんな中雲明は目を閉じて、フィールドの流れを読み取る。

相手のサッカーを新たに分析するのはここからだ、今は……南雲原のサッカーを自身の手で新たに導く為に、目を強く開き天に手を翳す。

 

 

「僕がフィールドを照らしだす!グラウンドは晴れ渡る大空となる!!」

 

「勝利のラインへ向かって、みんな飛び立て!!」

 

「天空のタクトッ!!!」

 

 

雲明の両手に風が集まり、味方へ振りかざして数多の風の導きが南雲原へ吹き抜けた。

笹波雲明の指示する方向は全て、南雲原の動きを完全に把握した上でゴールへ向かう有効打となっている事に、雷門はすぐに気がつく。

 

「笹波雲明、まさかここまで見えてるのか!?」

 

「前に行かせないッ!」

 

円堂ハルがボールを持って駆け上がる流に飛び込む、そしてそれを確認した流はそのまま加速し………

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜咲ッ!」

 

 

 

 

 

より前へ出てた桜咲へパスを出した。

 

 

「……な!?」

 

「黒景が、こんな早くパスを……!?」

 

そのボールを受け取った桜咲は戸惑ってしまうが、雲明の示すラインに従って駆け出す、ハルも驚きを隠せずにいた、これまでも流はパスを出していたが……それまでに掛かる時間はそれなりにあった。

 

己の感覚のみに従ってた流の独走的プレースタイルは、長年の1人サッカーからなる経験によりチームプレーがはっきり言って苦手の部類に入っていた、故に自身が対応する事によって前半は一対一、もしくはこちらの多人数で対応出来ていたが、雲明の天空のタクトによりパスコースを導き出された事により、感覚と思考が同調してパスを出す事に成功したのだ。

 

「雲明君がピッチに出たことで、流が本当に南雲原のチームと1つになろうとしてるんだ!」

 

「おいおい嘘だろ、洒落になんねぇ……!?」

 

南雲原が流の更なる変化に喜ぶ反面、雷門は黒景流の唯一の隙が笹波雲明によって消された事実に乾いた笑いを浮かべてしまう。

 

円堂ハルもそんな流を止めようとする、しかし顔に汗は浮かんでいても上等だと言わんばかりの笑顔で、流もそんなハルに対して笑って見せた。

 

そんな中、南雲原は天空のタクトにより次々と攻め込み、ボールは来夏が保持していた。

敵の壁はまだある、しかしようやく来たゴールチャンスをものにせんが為に桜咲がそこへ駆け込んだ。

 

 

 

「やるぞ忍原!!」

 

「おっけー!!はいっ!!」

 

 

強烈なスピンを掛けたボールが宙へ舞い上がり、桜咲は飛び上がって暴れ回るボール目掛けて、その剛脚のシュートを放つ!!

 

 

「爆・春雷ッ!!!」

 

 

「え、地面へ!?」

 

紫電を纏った南雲原の代名詞たるシュートがゴール……ではなく、真下へと向かってゆく。

このグラウンドは人工芝、砂埃は上がらない為撹乱には向いてない筈なのに、春雷はその勢いのまま地面へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………いざ参る」

 

 

 

 

 

 

 

そこには構えていた小太刀 鞘が……己の代名詞たる必殺技を構えて佇んでいた、これも全て雲明が導き出した指揮の結果、超強力なシュート同士のチェインによるゴールへの設計だった。

 

雷門が気づいた時には時既に遅し、小太刀は真っ直ぐ……ゴールを見据えていた。

 

 

「《極》………」

 

「伝、来、宝……刀ッ!!!」

 

 

紫電の纏う一撃をその右脚で両断し、更なる力を重ねたシュートチェインが雷門のゴールへと一直線に向かう。

黄金色の刀身に紫の雷を纏ったボールを遠野、鬼門、紫雨は意を決したかのような表情で待ち構えていた。

 

 

「2人とも!あの技をやりましょう!!」

 

「このメンツってことは……でもあれまだ、いや……やるんだ、止めなきゃ!!」

 

「うん、やるしかない……!!」

 

「はいっ!ハァァァァっ!!」

 

 

遠野がザ・タワーよりも遥かに高い塔を創り、鬼門と紫雨はそこれ乗り出す。

最高到達点に至った塔から2人は背後の雷を纏いながら飛び出し、南雲原のシュート目掛けて脚を激突させた!!

 

 

「「「パーフェクトタワーッ!!!」」」

 

 

地上最強イレブンに集められたディフェンス陣の合体技がシュートを阻む、しかし威力は絶大だったが故に……簡単に止めれる訳もなくそのまま塔ごと3人は吹き飛ばされた。

 

「ぐぁぁあっ……後は、お願いしますッ!!」

 

薙ぎ払われつつも、背後にいる暖冬屋に変わる雷門のキーパー……敵の分析を越えるために、キャプテン月影蓮から見出された新たなる才能……名を木下まつの、彼女は自分の事を仲間にシグドママと呼んで欲しいと言う、シグド戦記をこよなく愛する変人。

 

しかし彼女は未だに凄まじい威力を誇るシュートを前にして、不敵に微笑んだ。

 

「………女神シグリアの名のもとに!」

 

彼女が祈る仕草をすると脚から花のような魔法陣が浮かび上がり、花の大地と共に巨大な女神が背後に現れた!

 

「女神大陸!!」

 

現れた女神は大地を抉るように手を広げて、迫ってくる南雲原のシュートを包み込むように受け止め………その女神が消えると同時にシュートはシグドママの手に収まっていた。

 

『南雲原ゴールならず!新たなる才能、シグドママの守りが雷門の危機を救いましたー!!』

 

 

「(いってぇーシュート!3人が減衰させてもこれっすか!)そりゃ反撃っ!」

 

シグドママはボールを遠くへ投げる、ハルへと渡したかったが黒景流がマークに着いている為迂闊に渡せばまた反撃を貰いかねない。

 

故にボールを送った相手は……月影蓮だった。

 

「よし!ここから反撃……」

 

「させねぇっすよ!!」

 

「っ!?木曽路兵太……!?」

 

ボールを受け取り敵陣に行こうとしたが、リュカオンを発動させてる木曽路がその行方を阻む。

遠くの雲明はボールが渡る可能性が高い相手を月影蓮だと見抜き、木曽路に化身を使わせていち早く向かわせたのだ。

 

「く、化身相手は分が悪い……!」

 

「(逃がさないぞ、気の流れは既に見えてるんだ!)」

 

リュカオンが導く気の流れを既に読み取っている木曽路はそのまま月影蓮からボールを奪おうとする、いかに雷門の主将とはいえ化身使い相手では流石にステータスの差があり、このままでは取られかねないと判断し…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キングス・ランスッ!!」

 

 

 

 

 

手を振りかざし、白の王騎士を召喚した。

 

「な、まじっ!?」

 

「うおおおおおォッ!!!」

 

放たれる王の槍と共にボールを蹴りだし、ロングシュートを雷門陣営から放つ。

ここでボールを取られるよりかはマシという、月影の咄嗟の判断だった。

 

放たれたキングス・ランスは木曽路の隣を突き抜け、ゴール………ではなく、上空へと弧を描き登っていった。

 

 

『これは!?月影選手の必殺シュートが上へと登ってゆく!これはミスキックか!?』

 

 

 

誰もが実況者の言う通りと思い、上空へ登ってゆくキングス・ランスを見つめていた。

 

 

 

 

笹波雲明と月影蓮を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………まさかこれは、ハルに向けての!?」

 

 

 

雲明はボールを見届けると、直ぐに走っているハルとそれを止めようと身体をぶつけて寄せている流の姿を目にする。

 

中央ラインに2人のかいぶつ、月影蓮はその戦いをハルが制すると判断………いや、信じてロングシュートを放ったのだ。

 

その事実に気づいたハルはグラウンドを駆ける、流はそれを止めようとするか………段々とハルとの力比べに負けつつあった。

 

「お、まえ、円堂………!?」

 

「(蓮さんが俺を信じてるんだ、それに応えるんだ!勝つんだ!雷門のみんなと!!絶対に!!!)」

 

「ハルッ!!」

 

「ハル君!!!」

 

「「「ハル!!!」」」

 

雷門のみんながハルに希望を託すように叫ぶ、その声を受けたハルの瞳はより輝きをみせる。

そしてハルはその身体から力が湧き上がるような感覚を受け始める、そしてそれは背中から黒い影の様に溢れそうになっていた。

 

 

 

「うおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 

「ぐぁぁあっ!!」

 

ハルの雄叫びがグラウンドに響き渡ると同時に背中からそれは溢れ出し、流はその奔流に弾かれるように吹き飛ばされる。

 

そして黒い影は段々と形となってゆく、身体中に赤い稲妻と炎を迸らせ、背中には日輪のようなオーブを背負った………雷門を勝利へ導く為に覚醒した、円堂ハルの化身!!

 

 

「魔神ヴィクトリーッ!!!」

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

ハルの化身、魔神ヴィクトリーが天を裂かんばかりの咆哮をグラウンドに轟かせる。

サッカーモンスターの化身覚醒、観客席は興奮と熱狂で揺れ動いていた。

 

 

『なんと!!?円堂ハルがここで化身を生み出しましたーー!!!』

 

『見覚えのある姿の化身………!!そして円堂ハル、その化身と共に飛び上がり月影選手のシュートを追い越した!!?』

 

誰もがその光景に呆気に取られる中、雲明とキーパーの四川堂、そしてディフェンス陣は空中のボールへ追い付いたハルを見上げていた。

 

そしてハルは空中て踏ん張り、ボール目掛けて勢いよく落下し……炎の激流の様に竜巻を纏いてキングス・ランスへ力の限りシュート放った!!

 

 

 

「メテオッド・ファイアトルネードV(ヴィクトリー)ーーッ!!!!!」

 

 

 

シュートチェインと化身の力が加わり極限的な威力となったメテオッド・ファイアトルネードが前より巨大な炎の竜巻となりて南雲原のゴールへ落ち行く。

 

「だぁぁぁああっ!!?」

 

「うわぁぁああ!!」

 

「ゴッド……フィンガーズッ!!!」

 

星と古道飼は何も出来ず吹き飛ばされ、最後の砦たる四川堂が神の指を携えた巨大な手を振るう………しかし。

 

「……な」

 

ボールに触れた途端、紙細工のようにゴッドフィンガーズは燃え尽き、四川堂はそのまま吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐぁぁぁぁあああ!!!」

 

「四川堂先輩ッ!!?」

 

ゴールキーパーも為す術なく敗れた、ゴールはそのまま直進し………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだッ!!!」

 

 

 

 

 

ゴールネットへ突き刺さろうとしていたメテオッド・ファイアトルネードVを、間一髪間に合った黒景流が右脚をぶつけて制止した。

 

「なっ!!?」

 

「ばかな、間に合っただと!?」

 

「く、黒景先輩……!!」

 

『なんと!?誰もが決まったと思われた瞬間!黒景選手がその脚でシュートを防いでるぞーー!!!』

 

『し、しかしデスサイズではなく純粋に右脚をぶつけてるだけです!!化身の力が加わったシュートチェイン、幾らなんでも彼とは言え止められるわけが………!!』

 

黒景流は踏ん張った、力を少しでも緩めてしまえばこのまま決められてしまう事を悟っているから、後半の時間もかなり過ぎている、ゴールになってしまえばその時点で一気に不利へと落ちるからだ。

 

手を血が出かねない程強く握りしめ、歯を砕けんばかりに食いしばる。

それでもボールは勢いを止めない、支えてる左脚も後退りしてしまう。

 

「や、べぇ、きま、る……!!!」

 

絶体絶命、それでも彼は………笑っていた。

これ程のシュートを受けれる機会なんてそうそうない、純粋な威力だけじゃない………雷門の想いがこれでもかと込められたボールだからだ。

 

だからこそ負けられない、負けたくない。

ここまで来て、南雲原のサッカーを負けで終わらせたくない。

 

笹波と、みんなと勝ちたい、その思いだけが流を奮い立たせていたが………ハルの放つシュートが止まる気配は一向にない。

 

 

「決まれぇぇぇぇええぇぇぇえ!!!!!」

 

 

ハルが落ちながら雄叫びを上げる、流は今にも吹き飛ばさそうな状況で、シュートはそのまま……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁあ!!!」

 

決まらず、流の反対方向で左脚がボールにぶつかり、勢いが少しだけ止まった。

 

「!?」

 

ダメかもしれないと覚悟した時だった、流は突如として共に止めようとする仲間を見る、そしてその人物は………。

 

「ぐ、いったぁっ、なんでひとりで止めれてんの流ぅっ!!?」

 

「ら、来夏!!!?」

 

止めに入ったのは忍原来夏だった、苦悶の表情を浮かべながらシュートを共に止めてた、既に涙目だ。

南雲原も雷門も驚いていた、フォワードである彼女がゴールまで走って戻ってきたという事なのだから。

 

「お前、まじか、やめとけ折れるって!」

 

「なんで流は折れてないのっ!てゆーか止めなきゃ、決まるってぇ!」

 

「来夏、お前ッ……!!」

 

「流っ!!!」

 

来夏の大声が流の言葉を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

今にも途切れそうな力をつなぎ止めながら彼女の顔を見る、少しだけ泣いているが、彼女は彼に微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に、勝とう………一緒に!!!」

 

「………!!」

 

 

 

 

 

「黒景先輩ッ!!!」

 

「先輩!!!」

 

「黒景ェ!!!」

 

「流君ッ!!来夏さん!!!」

 

「来夏先輩!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、黒景君………分かってたと思うけど、君はあの頃の様に一人でサッカーをしてるんじゃない」

 

「みんなとサッカーをしているんだ、その気持ちを自覚するんだ」

 

「そして自分の為、チームの為に力を出し切れ」

 

「その心さえ君が持てたななら、君の翼は…………」

 

 

 

 

 

 

 

「天まで、とどくっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉおぉぉーーーーッ!!!!!!!」

 

 

喉が潰れんばかりの叫びと共に黒景流の背中から黒い翼が今までよりも巨大な形となって現れ、流の身体から離れると同時にまた別の姿が現れ始めた。

 

「え、これって……流の……!!?」

 

来夏は共に止めながらその姿を見上げる。

黒の翼をはためかせ、黒い騎士の様な甲冑を纏い、白い傷だらけのマントを翻す、鳥人の様な………南雲原のサッカーモンスター、黒景流の化身!!

 

 

 

 

 

 

 

 

魔皇(まおう)、グリュプスッ!!!!」

 

 

 

 

 

誰もがその化身の覚醒に驚く、猛々しき翼を翻しながら嵐のような風を起こし、グラウンドと観客席にいるもの達全てをその風に晒していた。

 

『ま、まさかの黒景選手までもが!化身を完全に覚醒させました!!!!?』

 

 

 

 

「凄い……!パワーだけなら円堂ハル君の化身を上回りかねないのか…!?」

 

「あれが流先輩の化身、すごいすごいっ!!!」

 

 

 

 

「あれが黒景流の化身か……!」

 

「とてつもないな……それに、あれはまさか」

 

「………グリフォン………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

化身の覚醒により流にはかつてない程の力が蓄えられ、徐々にメテオッド・ファイアトルネードVを押し返しつつあった。

そして来夏も負けじと流に合わせて、左脚にありったけの力を込めていた。

 

「来夏、行くぞ……一緒に!!!」

 

「………っ………ぁ………うんっ!!!」

 

サッカーに置いて、初めて流が自分を求めてくれた事に感極まってしまう来夏は強く頷き、ハルのシュートを共に押し返してゆく。

 

 

「「うおおおおおおーーッ!!!」」

 

 

グリュプスが起こす風と2人の叫びが最後のひと押しとなり………ハルのメテオッド・ファイアトルネードは、そのまま空中へと放り出されてしまった。

 

 

「……まじ、かよっ………!!」

 

 

雷門も、ハルもそのシュートを弾き返された事に唖然とするが、ハルは着地すると同時にボールが落ちる位置を割り出し、再び取ろうとする。

 

 

 

 

しかしそこには、雲明が既に回り込んでいた。

 

 

 

「雲、明!?」

 

雲明は走ることが出来ない、せいぜい早歩き程度だ。

南雲原のゴールからそのボールとの落下点は決して近くない、それなのに既にいるという事は………跳ね返した時点で、いやその前から動いていたのだろう。

 

「行けぇぇぇぇええッ!!」

 

雲明は落下地点に合わせて力の限り脚を振るい、前線へ向けてパスを繰り出す。

フィールドを上から見降ろす様に全体を俯瞰している雲明が割り出したパスコースには………桜咲、木曽路、柳生が追いつこうと走っていた。

 

「決めるぞぉッ!!」

 

「はいっ!!!」

 

「行くぞ木曽路ィッ!!」

 

 

そのボール目掛けて木曽路と柳生は飛び上がり、体を一回転させると同時にかかと落としでボールを下に蹴り、そのボールには白と黒の稲妻が迸り、桜咲はその落下地点へ先回りし佇んで構え………その剛脚が過去最大の力を込めてシュートを蹴り出す!!!

 

 

「「「エボリューションッ!!!!」」」

 

「ぐぁぁ!」

 

「うわぁあっ!」

 

木曽路と柳生の《ジョーカーレインズ》、桜咲の《剛の一閃》が合わさったオーバーライド技、紅と白と黒の稲妻が迸るシュートが雷門のディフェンス陣を蹴散らし、再びシグドママに襲い掛かる、そして彼女はまた女神を呼び出していた。

 

 

「女神大陸!!!」

 

 

巨大な女神が大地ごとシュートを受け止めようとする、しかし……そのボールに込められた力は想定以上の力が宿っており、勢いは留まることを知らない。

 

「ま、まじか、止まらないッ……!?」

 

「まだだ!諦めるな!!!」

 

「決めさせちゃ、ダメっ!!」

 

「キャプテン、星村先輩!!?」

 

押されそうになるシグドママの巨体を後ろから月影蓮と星村ナオが支えて止めようとする、ゴールが決まらなかったからと言って諦める理由はない、ここは何としても止めなくてはならないという執念が彼らを突き動かしていた。

 

「「「うううおおおおっ!!!」」」

 

3人が崩壊する女神を支えながらシュートを受け止め………やがて互いの技が炸裂し、ボールは前方へ弾かれてしまう。

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

「くぅっ!」

 

「きゃぁっ!!」

 

それに伴い止めようとした3人もまた弾かれてしまう、そして月影蓮はボールの行方を即座に目で追う。

弾かれた威力はそこまでない、宙に軽く浮いてたボールは……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

ディフェンス陣から走り出していた古道飼の元へ飛んでゆき、彼は言葉にならない叫び声を上げながら……飛び込む様なヘディングシュートを放った。

 

「な、あっ!!?」

 

月影は脚を伸ばして止めようとするが………届かず、ボールは雷門のゴールネットを揺らした。

 

 

 

 

 

ピーーーーーーッ!!!!

 

 

 

 

『南雲原の追加点が決まったぁぁぁぁぁあ!!!決めたのは古道飼選手!弾かれたボール目掛けて飛び込んで決めましたぁぁあ!!』

 

『よく走ってましたね彼!!素晴らしい!!!』

 

 

 

「うべっ……いてて、え、決め、決まったの?」

 

「亀雄ぉぉおぉお!!!」

 

「やったぜ!!!やるじゃねぇかよお前ッ!!!」

 

「うわぁっ!?」

 

地面に勢いよく顔面をぶつけて鼻血を垂らす亀雄の元へ南雲原の仲間達がその巨体目掛けて飛び込みもみくちゃにする。

雷門の反撃から一転して追加点を取るという怒涛の展開の決着に、スタジアムは大喝采で揺れ動いており収まる所を知らない程だった。

 

無我夢中でゴールへと走っていた亀雄、指示もなく駆け出していたのは彼の本能だったのか………何れにせよ、大金星なのは間違いなかった。

 

 

「やった!亀雄が決めた!!」

 

「………っしゃっ!!!」

 

南雲原のゴールの中で動けず座っていた来夏と流もその結果に喜んでいた、遠くで喜びあってる仲間たちを眺めながら、体力の消耗で立てずにいる身体を休ませていた。

 

「………流、右脚大丈夫?」

 

「え?あぁ……ちょっと痛い、もう化身とか必殺技出せないかも」

 

「そっか……でもやっぱ凄いね流は、化身まで出して跳ね返すんだもん」

 

「…………お前が居なきゃダメだった」

 

「え?」

 

「お前が一緒に止めてくれたから、俺は1人でサッカーをしてるんじゃないって改めて分かったから………お前が居てくれたからだよ」

 

「流…………」

 

ひとりでは決して止めれなかった、ひとりじゃなかったからこそこの結果が生まれた。

その事実を流は噛み締めながら、来夏の頭に手をそっと載せた。

 

 

 

 

「………ありがとう、やっぱ………お前が隣にいてくれて良かった」

 

「………………………」

 

 

 

 

 

 

 

「………来夏?なんで泣いてんの?」

 

「……うっさい……みるなっ……みるなぁ……ううっ……へへっ………」

 

「やべー四川堂、なんか俺いらん事言った?」

 

「……いや、良いんじゃないかな、笹波君?」

 

「そうですね、比較的……ですが」

 

「えぇ?」

 

 

 

 

 

 

「………くそっ、追加点……時間は!?」

 

「後、7分……」

 

盛り上がる南雲原とは対象的に雷門は沈んでいた、残り7分を残して追い越されてしまった、ここから2点………今の南雲原を越えられるビジョンが見えず、言葉が出ずにいた。

 

 

 

 

 

「諦めんなみんなッ!!!」

 

 

 

 

そんな時にハルは大声を出してみんなを鼓舞する、その声に雷門はハルの方へ顔を上げた。

ハルはまだ笑顔でいた、まだ何も諦めてない顔だった。

 

 

「試合はまだ終わってない!!どれだけ不利でも関係ない!!こっから泥に塗れて転げ落ちても、死に物狂いで勝ちに行こうぜ!!!」

 

「ハル………」

 

「……そうだな、このままじゃ終われない!!」

 

雷門は次々と顔を上げる、その瞳に闘志を宿して試合に臨もうとしている様を南雲原も見ていた。

 

 

 

「試合はホイッスルが鳴るまで終わりません!!最後まで全力を出し切って勝ちましょう!!!」

 

「「「「おおおっ!!!!」」」」

 

 

両チームの決意を新たに、試合は再開されるのであった。

 

 

ピーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

そこからも試合は続いた、両者共に技を繰り出す力は残っておらず、ひたすらボールを追いかけ、止めて、走って、ぶつかって、泥臭い押収の繰り返しだった。

 

その限界を超えて戦う姿にこの試合を観戦する者たちは魅せられていた、そしてその中心となる少年少女達も汗を流し、笑顔でボールを追い掛けていた。

 

そして3人の男達も、そのゲームを見て心を熱くさせていた。

 

 

 

「……雷門も南雲原も、あれだけ走って体力がよく持つな」

 

「昔の俺達を思い出すよな、豪炎寺?」

 

「ほんっとうに楽しそうですね皆、剣城も神童さんも直接観れば良かったのに」

 

「はは……ハル、楽しんでるな」

 

「やっぱ嬉しいですよね、円堂さん!」

 

「そういうお前もすげー嬉しそうだぞ、天馬」

 

「……ええそれはもう、彼が1人じゃなくて、誰かとサッカーしてて、あんなに楽しそうな姿を見れたら」

 

「この後、会うのか?」

 

「…………いや、この試合が終わったら俺は行きます、直接会うのはまたの機会に持ち越しです」

 

「そうか、なら何か伝える事あるか?ハルを経由して」

 

「…………そんなの、決まってますよ」

 

男は帽子を外し、サングラスも取る。

そしてグラウンドでハルと笑顔でボールを奪い合う流を眺めて微笑み、フードの男に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また絶対、サッカーやろうぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーーーーッ!!!!!!

 

 

『ここで笛ーーーッ!!!』




エボリューション(南雲原ver)
本来はジョーカーレインズとマッハウィンドだが、南雲原はジョーカーレインズと剛の一閃のオーバーライドとなっている。
エフェクトも黒と白と紅に変更されており、威力も本元より向上している。


魔皇グリュプス
黒景流が真に覚醒させた無属性の化身、魔帝グリフォンのマイナーチェンジ。
全体的に黒く騎士のような甲冑を取り付けている、マントは白くなりボロボロとなっている。
必殺技はまたの機会に………性能?グリフォンと同じですが何か?

どの試合が良かったですか?

  • 京前嵐山
  • 帝国学園
  • 王者雷門
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