忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
かーなーり長くなりましたが、書ききれて良かったと思ってます。
それではどうぞ。
歓声と選手達の声が飛び交う中、ボールは宙を舞う。
そして審判が腕時計で時間を確かめ……ゆっくりとホイッスルに咥えた。
ピッ
ピッ
ピーーーーーーーーッ!!!!!!
『ここで笛ーーーッ!!!』
3度笛が鳴り、観客席から大きな声が湧き上がる。
そんな中フィールド上の南雲原と雷門の選手達は、まるで時が止まったかのように立ち止まり、浮いてたボールは地面に落ちてゆっくり転がった。
笛が鳴った、3回……それが意味する事は一つ。
そして点数は………南雲原2点、雷門1点。
結果は………決まったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………え?」
ボールを追い掛けようとしたが、笛の音を聴いて立ち止まった流は何が起きたか分からない表情となっていた。
そしてそれは、他の選手達も同じ事だった。
「笛……って、ことは……」
「まさか、これって……」
「ゆ、ゆ、ゆ……!?」
「やったのか……勝ったのか……!」
「……ええ、ウチらが……!」
「決まったな……最っ高にロックだ……!!」
「………僕らが、勝った………!」
『常勝の王者雷門敗れる!!優勝は……九州の南雲原中ーーッ!!!』
雲明の言葉に合わせるように実況の高らかな宣言が響き、大喝采と共に紙吹雪が舞い上がる。
激戦に続く死闘、限界の限界を越えた決戦に相応しい試合、その戦いを制したのは………無名でありながら勝ち進んだ、南雲原中サッカー部だ。
「………うおおおおおおおーーーッ!!!」
「やったぁっ、やった!優勝だぁぁ!!!」
「鞘先輩ッ!みんなぁ!!」
「最っ高の、イリュージョンだ!!」
「完全回答、パーフェクトだ……!!!」
その事実を確かめた柳生と木曽路がこの上ない喜びを表し、南雲原のベンチにいた選手達も狂喜乱舞しながらピッチへと飛び出す。
その姿を見届けるマネージャー達と顧問の先生も目尻に涙を浮かべながら感動に震えていた。
「優勝、やったんだ、私達……!!」
「……来夏、さん」
「………鞘先輩!」
来夏と小太刀も、今の関係を忘れてハイタッチを交わす、感動の涙を浮かべて互いに笑いあった。
『雷門中!王者の威を示す猛攻が続きましたが、最後まで粘り切りました南雲原!!選手達の熱い思いがこの実況席にまで届くような試合………正しく歴史に残る一戦になりましたね角馬さん!!』
『ぐぅ、ううっ……ええ!!ほんっとうに熱かった……!!素晴らしい試合を見せてくれた選手達に感謝します!!』
角馬圭太が熱い涙を流しながら、最高の試合を繰り広げた両校に感謝の言葉を述べる、観客席にいる者たちも感動し、感涙し、熱狂し、グラウンドにいる全てのプレイヤーを惜しみ無く称えた。
「やった!!流先輩が!南雲原が勝ったぁっ!!」
「……熱いサッカーだった、本当に……久々にやりたくなったな」
「ちょっと行ってくるねおじさんっ!!」
「……えっ、いや待ってダメだよヒカリ!?」
「…………行くのか円堂、天馬」
「あぁ………天馬、そっちも頑張れよ」
「……はい!!」
「フッ………」
「………雲明」
「桜咲、先輩……!!!」
互いに顔を見合せ、笑い、互いに勢いよく右手を掴み握り締める。
二人の出会いにより全ては始まった、最悪のはじまりからここまで来れた、互いにサッカーを一度は諦めた者同士…………出会えた事に、感謝の念が絶えず視線を送りあった。
そして黒景流はその光景を見ていた、肩で息をしながら整え……震える右の掌を見つめ……強く握りしめた。
「………あぁ………」
額にゆっくりその握りこぶしを当てる。
今にも倒れそうな程疲れて、右脚も酷使に続く酷使で限界が来ているというのに、皆で掴み取ったこの栄光の瞬間に感動し震えていた。
「………風が、吹いてる………」
ピッチの上にいる選手達を称えるように風が優しく吹き抜ける、心地いい風に撫でられ……目を開く。
今この時、正しく人生最高の瞬間だ。
振り返り、喜び合う南雲原の仲間達を見つめる。
一人では絶対にここへ来れなかった、一人じゃ絶対勝てなかった、この感動を味わうことなどできなかった、極まった思いが溢れそうになる。
「……ふぅ」
胸いっぱいの気持ちを和らげるような、穏やかため息を流は吐いた。
「………負けました、黒景さん」
そんな流に円堂ハルは歩み寄って来た。
その声に振り返り、ハルの顔を流は見つめる。
無論これ以上なく疲れ切っている、そして雷門は負けた……それでも彼の顔に暗い影はない、とても晴れ晴れとしたような……清々しさを感じる笑みを浮かべていた。
流とハルは化身が出せず、必殺技も使えない状態でもぶつかり合ってた、人並み外れた体力を持ってる流だが化身の覚醒によって著しく消耗し、終盤はハルに追い縋るだけでやっとな状態だった、しかしそれはハルも同じ事だった。
しかし互いに苦では無かった、過去最大に凌ぎを削ってぶつかり合ったからこそ………結果に左右されず、終わってもこんなに晴れ晴れとしてるのだ。
「円堂……ぅっ、いててて」
「っ!大丈夫ですか?」
「あー大丈夫、お前の超絶シュート2回も弾いてその後も全力だったからな、流石に無理し過ぎた……でも大した怪我にはなってないと思う」
「そうですか、良かった………」
ハルに歩み寄ろうとした流は右足の痛みで座り込む、ハルはそれを心底心配して流と同じくしゃがんだ。
そして安心の表情を見せて、改めて流と語り合う。
「……それにしても、こんなに全部の全部出し切ったのは初めてですよ、これ以上何も出ないって感じ」
「俺もだよ円堂、化身覚醒時のシュートだって来夏が居なきゃ防げなかったし、お前はやっぱすげーよ」
「………俺の渾身の必殺シュート2回も弾いてるのに、嫌味ですか?」
「いやいやいや、それ言うならお前が張り付くせいで俺もマトモにシュート撃てなかったし」
「なら、おあいこですね」
「………負けず嫌いだな、お前」
「…………別にそんなんじゃないです」
「ははっ」
少し不貞腐れるハルに流は笑い、手を後ろに支えて空を見上げる。
世間じゃ俺達はサッカーモンスターだのなんだの言われてるけど、普通に怪我もするし負けず嫌いにもなるし、ただ人よりサッカーが大好きで上手いってだけの単純なプレイヤーの一人でしかない。
かいぶつってのはきっとそんなもんなんだろうなと、流は晴天の空を眺めながら笑った。
「……どうしました?サッカーモンスター2人が座り込んで」
そんな2人の間に笹波雲明がボールを傍らに抱えて歩いてくる、彼もまた清々しい表情で、それを見たハルが少しだけムッとしながら笑うのだった。
「いやな、円堂は意外と負けず嫌いって話」
「ちょっ」
「あぁ、まぁ納得ですね」
「人の事言えないでしょ、雷門の事これでもかってほど分析して、いざそれが通用しなくなるってなったら出て来たじゃん雲明」
「戦況の対応と言ってもらいたいね、百歩譲って負けず嫌いだとしてもハルには負けるよ」
「認められないんだけど、それ」
「いいじゃないのさお二人さん」
「黒景さんは負け知らずだからそんな事言えるんですよっ」
「全くだね、仮に負けてもサッカー楽しいで済ませられるマイペースサッカーバカですし」
「サッカーバカはお前らもだろー?」
「…………」
「………………」
「…………へへっ」
「ふふっ」
「はははは」
小さな事で言い合うが、それが少し可笑しくなり笑い合う、そして雲明も座りボールを隣に置く。
そしてその場にいるかいぶつ3人は同じ空を見つめるのだった。
「ねぇ雲明、黒景さん……俺達と天河さんで組んで、次は海の向こうへ攻め込もうよ」
「……世界、か」
「かいぶつ4人で世界進出、面白いじゃんか」
「うん!モンスターカルテット結成だねっ!!」
「「「うおっ!!?」」」
彼ら3人が世界へ想いを馳せるていると、そこに帝国の制服姿でいつの間にか座っている天河ヒカリがニコニコと満面の笑みでさも当然のように居て、3人は予想外すぎたのか大声をあげて反応していた。
「ちょ、え、天河さん!?何でここに居るの!?」
「……まさか、また観客席から降りたんですか!?」
「うんっ!試合見て居ても立ってもいられなくてさー」
「またやっちまったなヒカリ……後で不破にどやされても知らねーぞ」
「そんな事よりっ、ボク達が日本代表になって世界と戦うなんて最高じゃん!アリスが監督でいいけど、笹波君でも面白そうだなー」
「……まぁ俺も賛成だな、笹波のサッカーでヤリたいし」
「は、ハルはともかく貴方達二人の手網を握るのは心労で死ぬんですけど……!?」
「なんか2人に手酷くやられてるようだね雲明……」
「円堂君だってそう思うでしょー?」
「………そうだね、俺たち4人ならどんな相手だってそうそう負けないさ」
「とりあえずカルテットの序列はボク、流先輩、笹波君て、ドベは円堂君ね、全部負けてるし」
「練習試合はノーカンでしょ!ていうか後半入ってから俺来たし、天河さん化身出しても追い込まれてたし!」
「扱いきれなかっただけですーっ!ちゃんとやってもボクは負けませーん!」
「でもお前あの日以降化身出せて無いよな?」
「ちょ、流先輩っ!」
「俺はちゃーんと出せるよ、勢いだけだったみたいだね天河さん」
「あーもう!じゃあここで白黒つけるよっ!」
「天河さんスカートでサッカーやる気……ていうかここでやっちゃダメですよ!」
「大丈夫!この下スパッツだし!ほら!」
「「見せようとするなっ!?」」
ヒカリは立ち上がってスカートを捲ろうとしたが、雲明とハルの手によって制止される所を流はただ見つめていた。
そして静かに笑った、笹波雲明と出会わなければこんな場所にまで来れず、目の前にいる天河ヒカリと円堂ハルにも出会えなかった。
ハルの言ってた海の向こう、世界のサッカー………一体どんなかいぶつがその先へ居るのか、この4人以外の仲間達とどれだけ進めるのか………考えただけで胸が高鳴る。
そして流は改めて、強く感じる。
「(サッカーやってて、良かった)」
「おい雲明!黒景!とっとと来いよ!」
「みんな待ってるよっ!」
そして後ろから桜咲と来夏の声が聞こえ、4人はその方向へ振り向く。
彼ら二人の後ろには、南雲原の仲間達が並んで笑顔で立っており、流と雲明の2人を待っていた。
「お呼びだよ、2人とも」
「とりあえずボクもそろそろ出よーっと、それじゃーねっ!」
「だな………笹波」
「なんです、先輩?」
一緒に立ち上がり、流は隣に立つ雲明を真っ直ぐ見つめる。
この先どんなサッカーが待ってるのかはまだ分からない、それでも南雲原の仲間と………自分を見つけてくれた笹波雲明が居るのなら、黒景流のサッカーはどこまでも行けると、彼は信じていた。
「これからも、サッカーやろうぜ」
「…………当然です、先輩」
互いに笑い頷き合い、揃って歩き南雲原のみんなの元へと歩き出す。
彼らの歩く勝利への道、その到達点に雲の隙間から太陽が照らし出され、風が流れていた。
かくして少年サッカーの祭典、フットボールフロンティア全国大会は南雲原中サッカー部の優勝で幕を閉じた。
今年の大会は近年より稀に見る試合間のレベルの高さ、サッカーモンスターと呼ぶべき3人の選手達の活躍により注目度、熱狂度共に最高のものとなった。
そしてこの先に待ち受ける世界、サッカーモンスター達を中心とした日本の挑戦が間近に近づきつつあるが。
それはまた次の物語として待とう。
今はただ………怪物どものグレートロードに、惜しみない栄光を捧げて。
南雲原中サッカー部
かいぶつ2人を中心とし、無名から日本一へと至ったモンスター集団。
かつての雷門の再来として新たな伝説を残し、今 彼らへの挑戦に燃えるチームが後を絶たない。
モンスターカルテット (命名・天河ヒカリ)
笹波雲明、円堂ハル、黒景流、天河ヒカリのかいぶつ4人の総称。
今の日本サッカーを代表するサッカーモンスター達、何れ訪れる世界への挑戦に熱を滾らせる。
しかし雲明はクソボケと天邪鬼の手綱を握るという心労負荷不可避なのである、ハルは唯一の良心。
はい、ということでFF全国大会もといゲーム本編はこれにて終了になります。
作品の前書きにもありますが当初はサッカー描写は薄くなる予定でしたが、まさかここまで力を入れることになるとは想定してませんでした………しかし皆様の反応を見るのは作者の楽しみでモチベになってました、改めて見てくださりありがとうございました。
………ですが今作品はまだ終わりません、ゲーム本編の続篇がどうなるか分からない以上、残りはサッカーは少なめ来夏メインになります。
多分後10話行くか行かないか程度で完結としたいと思ってます、最後までどうかお付き合いください。
どの試合が良かったですか?
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京前嵐山
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帝国学園
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王者雷門