忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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来夏メインに戻りますの助。
今回は、引き続き優勝後の話と戻った時の物語を少々。

久々に来夏ちゃん万歳。


エクストラゲーム
終戦後の試練にて


私たちはやり遂げた。

どん底にいた南雲原中サッカー部は、笹波雲明を中心とした物語の末に………フットボールフロンティア全国大会優勝、日本一の頂へと登りつめた。

 

ダンスで勝ち取った日本一に並ぶ………いや、みんなと一緒に辿り着いたから感動も喜びもあの時の比じゃない。

南雲原のみんなとこれ以上なく喜び合い、決勝で最高の試合をした雷門のみんなとも互いを讃えあった。

 

感涙の泪を流して歓喜の瞬間に震えた、ここまでの道のりは平坦なんかじゃ無かった。

好きな幼馴染みとの距離を離されて、周りに集まるライバルに奪われそうと勝手に暴走して困らせたりして、どうしようもないくらい私は迷惑を掛けたと思うけど…………それでも、こうしてサッカーと出会えた事は私の誇りだ。

 

ダンスで日本一を取っても満足出来ずに燻って、流の隣で怠惰に過ごして、彼がやってたサッカーに強い興味も持てなかった………そんな時に出会った雲明君が私の道を示してくれた。

 

そしてサッカー部の一員になり、仲間達と出会い、ライバル達と戦ってここまで来れた。

 

この思い出は一生私の心に残り続ける事だろう。

中途半端な満足なんかじゃない………私は心も体も、達成感で満ち溢れていた。

 

 

 

そしてその日南雲原が優勝し、表彰式と軽いインタビューを終えてコテージに戻り………少しの休憩を挟んだ後、みんなでご馳走を囲んでワイワイはしゃいでいた。

 

サッカー部復活からここまでの道程をみんなで語り合い、笑い合い………とにかく色んな事を話し明かした。

 

雷門戦に備えた特訓はよりキツかったなぁ………雲明君が効率的な特訓プランを用意したのはいいけど、ギリギリを攻めすぎて死にそうだったし………協力してくれた天河も容赦ないし、度々私達の目を盗んで流に甘えるし!鞘先輩もいつの間にかそこはかとなくアプローチしてるし!!

 

そして打ち上げの途中、みんなが………。

 

 

『見ろお前ら!記事でも忍原と小太刀先輩が仲良く涙を流して両手を取り合って喜んでる超レア写真だ!』

 

『こんなのあったんですね星先輩!すごくいい絵じゃ無いですかー!』

 

『やはり仲良しか、決勝の初得点も2人だった訳だからな』

 

『おう、仲良しだな!』

 

『いよっ、仲良し!』

 

『仲良しさんですねー』

 

『『う、ぬ、うぅっ………!?!?!?』』

 

 

優勝が決まった時に隣にいた鞘先輩と夢中で喜んでいる場面を撮られた写真が出回っており、南雲原のみんなにその事を弄られて私たちは茹でたこのように赤くなって、否定の言葉も出なかった。

 

……………いやまぁ、同じ仲間だから当然だし良いと思うけど、その後ハッとして離れたし………ていうかなんでそんな所撮ったんだよカメラマンさん!?

 

この日は嬉しいことばっかりだったけど、こればかりは仲間を恨む事にした、この先鞘先輩と何かあってもこれが持ち出されるんだから。

 

…………そして明日の昼過ぎにはこのコテージ……サッカーガーデンから離れて九州の長崎へ戻ることになってる。

当然だけど物寂しさも感じるし、日本一になった南雲原中サッカー部がこれからどうするかは決まってない、けど前みたいな燃え尽き症候群にはなってない。

 

こんなにも楽しい事を辞められる訳ないし、何よりサッカーのてっぺんと同じくらいの目標が今の私にはあるのだから。

 

…………大っぴらには言えないけどね。

そう思いながら私は、離れで桜咲と笑い合う流の姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

そして優勝した日の翌日、私達は鮮烈な試合後とどんちゃん騒ぎで疲れが残ってた状態でコテージで雑談したり部屋で休んでたり、帰る前に東京を見て回ったりと自由に過ごしていた。

 

帰りはスカイクラフトで飛んで行けるらしく、最初に来た時よりかはずっと早く帰れるとの事だ。

 

私もリビングのソファーでスマホをいじったりして休んでいたが……ふと、ある事に気づいて周りを見渡した。

 

「………あれ?いつの間にか流居なくない?雲明君も」

 

「…………聞かされてなかったの?2人は雷雷軒っていうラーメン屋まで行ったそうよ、円堂ハル君と天河さんと約束してたらしくてね」

 

「えっそうなんですか、一言くらい残してもいいじゃん流…………」

 

「面倒になったんじゃない、貴女の相手は」

 

「余計なお世話ですー!」

 

いつの間にか隣で座ってお茶を飲んでいた鞘先輩が教えてくれたが、余計な事まで言わなくていいでしょうが!相っ変わらず陰湿なんだからもう…………。

 

ていうか、今や日本サッカー界で知らない人が居ない注目人物4人でラーメンって凄いな………今頃店内大騒ぎなんじゃないかな。

 

「ていうか鞘先輩はどっか行かなくていいんですか、渋くに湯呑みでお茶とか飲んで」

 

「昨日の疲れも残ってるからね、それにここへ来た初日に流君とショッピングモール見て回ったから大丈夫よ、貴女は…………ごめんなさい、余計なお世話だったわね」

 

「……今からグラウンド行きません?久々にキレちゃいましたよ…………」

 

「いっつもウチにキレてるでしょ、もうすぐ帰るんだから大人しく休んでなさい、どうせウチが勝つし」

 

目を閉じて静かに微笑みながらお茶を飲む先輩に私は握り拳を作っていた、こんのいっつもいっつも要らん事言ってイラつかせるなーこの人はぁぁっ!

 

イラつきながらソファーへ少し乱暴に座り直し、スマホで何となくSNSを覗いた。

昨日の熱狂がまだ残っているのか、トレンドはフットボールフロンティア決勝とサッカー関連の話題が溢れかえっている。

 

当然ではある、そして南雲原の写真やつぶやきが流れて見る度に、本当に優勝出来たんだと実感が何度も湧いてきて微笑んでしまう。

 

そして試合映像や画像もめちゃくちゃ貼られている、そしてそこには指示を出す雲明君と………円堂ハルと凌ぎ合う流の投稿が多かった。

 

黒景流の名前も今や南雲原のサッカーモンスターとして知らない者は居ない、いつの間にか迫っているという世界大会の日本代表に選ばれるのも確実と言われてるくらいだ。

 

流のプレーには多くの反応が集まっている、かっこいいとか、人間業じゃないとか、松風天馬の再来とか……最後の方は流も聞いてたけど、その時……。

 

 

『ふざけんな俺があの人の再来な訳ないだろ、1ミリも追いつけてないし、今の俺じゃどう足掻いても勝てないし、ていうか超憧れてるだけでなりたいとは思ってないし…………もう一度サッカーはしたいけど』

 

 

なんか決勝かそれ以上に真剣な表情で、松風天馬の再来という言葉を強く否定してた。

話には聞いてたけどあそこまでとは思わなかったなぁ…………あれ、もしかして流の1番ってその人の事じゃ…………いや無いよね、うん。

 

「(でもいつの間にか、私以上にみんなに知られてるんだなぁ、流)」

 

流の事を讃えたり認めたりしている投稿を見ていると嬉しくなるのは本心だけど複雑だ…………ていうか、正直嫌だ。

私も一度はダンスで日本一になって南雲原以外でも有名になったけど、サッカーともなれば世界で常に熱狂を起こしているスポーツだ。

 

そんな所であれだけの存在感を示したら注目するなって言うのは無理からぬ話なのは理解してるつもりだけど……………嫌だな。

 

「(…………面倒な女だな、私)」

 

自嘲するように笑う、私達の関係はまだ幼馴染みの延長線上でしかない………前よりかは互いに好意を感じてるし、ずっと近くなってるのは間違いないけど、鞘先輩や天河の存在もあるし、こうやって誰かに注目されてると……また別の誰かが流に…………。

 

あのシュートを打ち返せた時、流は間違いなく私の事を求めてくれた………泣くほど嬉しかった、だからこそより誰にも渡したくなくなってきた。

 

でもはっきり好きだって、愛してると言っても、流の意識がガラリと変わらなきゃやっぱり厳しいよなー………この気持ちも膨れるばかりで、制御は出来てるけどいつまで抑えられるのやら。

 

「…………ふー」

 

「…………………………(ジー)」

 

「…………うわっ!?」

 

なんか隣で視線を感じると思ったら、距離を詰めてた鞘先輩が私の事をジトっとした目で見つめていた。

な、なに?今度はなんですかこの人は。

 

「…………貴女、またメンヘラモード?なりかけてたわよね?」

 

「な、なってませんっ!なんだと思ってるですか私の事!」

 

「面倒な女の子に尽きるわ、流君関連の投稿なんか見たりして………どーせ私だけの幼馴染みだったのにー、とか思ってるでしょう?」

 

「…………………………………………いや?」

 

「せめて即否定しなさいよ、全く」

 

「うぐぐっ……」

 

「この調子だとウチが居なくなった後も、流君とキャプテンは苦労しそうね」

 

「え?居なくなった後ってなんですか?」

 

「…………ウチ、来年にはもう居ないから」

 

「……あ」

 

そういえば、そうか。

まだまだ先の事だけど、この人は既に3年生だから卒業が近いんだ。

 

「………早いですけど、進学先はどうするんですか?」

 

「福岡の進学校に決めてるわ、南雲原と同じでスポーツに力を入れてる所よ」

 

「へー………そこでもサッカーするんですか?」

 

「……悩んでるわ」

 

「えっ………もしかして、剣道も?」

 

鞘先輩は何も言わず湯呑みをテーブルに置いた。

すっかり忘れてたけどこの人は元々剣道の凄い人だった、2年連続で南雲原剣道部を日本一に導いた秀才、周りの声で剣道に向き合えなくなったんだっけ………そんな所で流と出会い、彼とサッカーに惹かれた。

 

故に剣道に対してはすっかり冷めてると決めつけてた、でも実際そうだった筈なのに…………。

 

「昨日優勝した後にね、剣道で優勝した時にも同じ感動があったなって思い出したの、すっかり忘れてた筈なのに………結局ウチは剣道も好きなんだって気付いた」

 

「…………」

 

「そしてウチが目指してる高校は、剣道もサッカーも有名所なの…………だから迷ってる、このままサッカーを貫くか……剣道に戻るか」

 

真っ直ぐと外の空を眺めながら鞘先輩は告白した、そんな事を言われるなんて思わなかったから私は何も言えずその顔を見つめてた。

 

…………私はかつてやってたダンスに愛着はあるけど、今はすっかりサッカーに対してお熱だ。

でも鞘先輩はどちらも大好きで、どちらかに優劣をつける事を少し躊躇ってるんだ。

 

真面目だなぁ……そこが私と違うところでもあるのか。

だから私みたいに理由に対して歪な気持ちじゃなくて、真っ直ぐな好意を彼に向けられるんだ…………羨ましい。

 

 

とりあえず…………私の思ったことを伝えようか。

 

 

「……私は、鞘先輩にはサッカーやって欲しいですけどね」

 

「え?」

 

「これは私の言葉なんで無視して結構ですけど、いつか私も別の高校に行って、鞘先輩のいるチームと試合してぶっ倒してやりたいので」

 

先輩は驚いた顔をして私を見る。

同じチームだから勝ち負けとかはないけど、それでもこの人の事は嫌いだしいつかギャフンと言わせてやりたい。

 

だからいつの日か、この人と真正面からぶつかって…………私がその無表情を歪めてやるんだ。

 

そして先輩は、呆れた様な笑みを私に向けた。

 

「……最低の理由ね、そんなんだから流君に振り向いて貰えないのよ」

 

「余計な一言っ、最低でけっこーです……私は先輩みたいないい子ちゃんじゃないので、べーっ」

 

「…………ならいいわ、記憶の片隅に留めておいてあげる、貴女に負けるビジョンが見えないもの、色んな意味で」

 

「余計な一言多すぎでしょあんた!?こちらが親切に悩みを聞いてるのに!!」

 

「そう言う貴女は永遠に悩みすぎなのよ……そうね、流君にもウチと同じ高校を勧めようかしら、そしたら貴女を迎え撃てるから…………一緒に」

 

「(ブチッ)…………やっぱグラウンド行きましょうよ先輩、マジで限界きました今…………」

 

「……良いわよ、スカイクラフトの中で泣きを見ても知らないから」

 

言ってろと内心で愚痴りながら立ち上がる、ほんっとーにムカつく………好きな人が被ってるだけじゃなくて、いちいち私の癇に障る事を次々と言って、その癖サッカーのプレーは相性いいってのが拍車を掛けてる。

 

思えばいっつもこうだ、私が流で少しウジウジしたら何も言わなくてもそれに気づいて発破かけて、その癖譲る気なんて一切ないし、放っていいのに勝手に来る。

 

私だって流の事を諦めるつもりなんて微塵もない、ようやく隣に立てそうなんだ、だから鞘先輩にも天河にも渡さない、ほんっとにムカつく…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

貴女がいつか南雲原から居なくなると思ったら。

 

 

少しだけ寂しさを覚えてしまった自分にも、ムカつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー?なんだアンタら、グラウンドに行くつもりか?」

 

「やっぱり仲良しさんですね!鞘先輩と来夏先輩!」

 

外へ出ようとした時、私達の背後から星と古手打さんの声が聞こえてきた。

 

そしていつもの決まり文句を言われて私たちは振り向く。

 

 

 

だーかーらっ、私達は。

 

 

 

「「仲良くないっ」」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「やーっ食べた食べたー、笹波君って意外と食べるんだねー?」

 

「いや天河さんに言われても、あれだけの量が入るスペース無いでしょ?どうなってるんですか」

 

「胃袋がブラックホールになってるとしか思えねーよ、ヒカリは」

 

「はは、それにしてもラーメン食べてる間、他のお客さんずっと俺達のこと見てたよな、当然だけどさ」

 

「円堂っていつもあんな感じで注目の的だったのか?」

 

「まぁはい、3人も今後は少し顔を隠したりした方が良いと思う」

 

「めんどーい」

 

俺と笹波と、円堂とヒカリは雷雷軒の帰りの道を歩いていた。

既にサッカーガーデン降りの駅から出ており、コテージにももうすぐ到着出来る。

フットボールフロンティアに優勝し、今日で東京から離れて帰る為折角だから4人で雷雷軒に行こうっていうヒカリの発案を受けて、先程一緒にラーメンを食べてその帰りだ。

 

ヒカリの食べっぷりに2人は驚いてたし、周りのお客さんも俺達にめちゃくちゃ注目していた。

まぁ、あれだけ南雲原の事デカデカと載ってたらそうもなるよな………今後あんなこと増えんのかな、面倒くさ。

 

「笹波、スカイクラフトで帰る時間はもうちょい先か?」

 

「はい、急ぐ必要も無いのでゆっくり行きましょう」

 

「俺もまた長崎に遊びに行くよ、雲明達もまた東京来てね」

 

「ちょっと厳しいかもだけど、頑張るよ」

 

「帰っちゃうのかー流先輩も………………ねぇ笹波君、急ぐ必要は無いんだよね?」

 

「?はい、そうですね」

 

するとヒカリはいきなり立ち止まり、俺のジャージの裾をつまむ。

どこか切なそうな表情のヒカリを見た笹波は、何か納得したかのように目を瞑った。

 

「………分かりました、ハル、僕たちは先にサッカーガーデンに行こう」

 

「え、なんで?2人は?」

 

「いいからいいから、とりあえず………要らんことはしないでくださいね、先輩」

 

「なんで俺?」

 

その言葉を最後に笹波は困惑する円堂の背を押して先に行き、俺とヒカリはちょうど中央広場に残される形となった。

 

…………頭を掻きながら隣のヒカリを見る、顔は俯いてて表情が伺えなくなってる。

 

別に此の先会えなくなる訳じゃないけど、それでも俺がやらかした事考えたらこうもなるか。

 

「…………とりあえず、どっか座るか?」

 

「……うん」

 

ヒカリは小さく頷き、中央広場から下に行く階段を降りて、そこにあるベンチに座った。

隣にいるヒカリとの距離は肩が触れ合うくらいに近い。

 

そしてずっと裾を握っていた手が、俺の手に重なった。

 

「……ボクを置いて言っちゃうんだ、流先輩」

 

「今生の別れじゃないんだ、お前も何時でも遊びに来いよ」

 

「もちろん行くけどさ………その間、誰のモノにもならないでよ?」

 

「モノじゃないよ俺は」

 

「うっさい、女誑しなんてモノで十分じゃん」

 

「えぇ?」

 

「………来夏先輩と鞘先輩も、流先輩の事好きなんでしょ?」

 

「……まぁ、みたいだな」

 

フットボールフロンティアも終わり、笹波曰く暫く南雲原サッカー部は目立った目標もない。

故に自然と俺は………来夏と鞘先輩、ヒカリの関係について色々考えねばならなくなってしまったのだ。

 

…………気持ちに関しては気付けるようにはなったし、考えようとも思えている。

それでも俺には決定的に、異性的に好きになるってのがまだない。

 

みんな可愛いし、魅力的だとは思う、少し照れたりもするけど………なんだかなぁ。

別に誰とも付き合いたくないとかいうあれは無いけど、俺が絶望的にそういうことに向いてない気がするんだよな。

 

「…………ボクはキスまであげたんだよ?」

 

「……そっすね」

 

「その前もボクのあんなにして、責任取らないつもりなんだ、逃げるんだ」

 

「いや逃げませんよヒカリさん、今は無理だけど…………答えは何時か出すからさ」

 

「……それは、ボクが望まない結果にもなるんでしょ?」

 

「………………そう、だな」

 

「………」

 

ヒカリは押し黙り、暫くの間沈黙がその場に流れる。

仮に3人のうち誰かを選ぶとなれば、他の2人は置いていかれるという事になる………必然的に仕方ないと言えるが、傷つく結果になるのは間違いない、どうしたものか。

 

全員選ぶような甲斐性は無いし、ていうか色々アウトだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………流先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると先程まで黙ってたヒカリが、俺の膝に乗っかりその両手を俺の頬に添えてきた。

 

ヒカリの自前の力によって振りほどけず、がっちりと顔が固定されて目と目が合う形になった。

 

「ひ、ヒカリ?」

 

戸惑いながら呼び掛ける、ヒカリは白い頬をほんのり染めており、俺を捉える瞳には艶やかさが滲み出てた。

とても、1つ下離れてるとは思えない雰囲気を纏っていた。

 

「…………色々あったけどさ、ボクは本当に流先輩と出会えて嬉しかったよ、楽しいし、居るだけでなんか幸せな感じもするし」

 

「こんな気持ち初めて抱いたのは先輩のせいだから、ボクはそんな先輩を一生許さないし、逃がすつもりもないから」

 

「あの2人に渡したくない、絶対に負けたくない………けど今は仕方ない、これで許してあげるから」

 

「これってなんすか、あの、嫌な予感がするんすけど」

 

「しっつれーだね…………もう一度焼き付けたらさ、ボクの事何時でも思い出せるもんね」

 

「あの待ってくださいヒカリさん、力強っ、待ってまじ待って」

 

「ボクみたいな女の子振りほどけないなんてよわよわだね、かわいいなー流先輩っ………………じゃ、よーく見てね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度でも言うよ、逃がさないから」

 

「ここから誰かとキスするなら、ボクの事思い出してぐちゃぐちゃになってよ」

 

「それならボク達、お揃いだもんねっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても黒景さんと天河さん、何してるんだろ」

 

「…………肉食うさぎにでも食べられてるんじゃない」

 

「???」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

程なくして、南雲原中サッカー部は東京を後にした。

見送りには円堂とヒカリが来てくれたが、俺はヒカリの表情を直に見ることが出来なくなってた。

 

しかし隣の来夏は瞳孔を狭めてヒカリを恐ろしい顔つきで睨んでいた、鞘先輩は頭を抱えていた、笹波は知らんぷりだ。

 

そしてスカイクラフトに乗り込み、しばらくして九州の南雲原中へと帰還した。

 

俺達サッカー部がそのスカイクラフトから出ると………大勢の生徒と教師達、そして記者とカメラマンが出迎えて来たのだ。

 

 

「サッカー部ーッ!!全国優勝おめでとーっ!!」

 

「試合観てたぞ!!俺もサッカー始めてていいかな!?」

 

「来ました!初出場にて日本一の栄冠を掴んだ南雲原中サッカー部の皆様です!英雄の凱旋に南雲原中は湧き上がっております!!」

 

 

もうお祭り騒ぎでてんやわんや、恥ずかしかったけど嬉しかったな。

そこからまたサッカー部はインタビューを受けて、生徒達と色々揉みくちゃになりながら話したしりして、1時間弱拘束されてようやく解散となった。

 

…………いやー、優勝したなー。

この思い出は一生記憶に残り続ける事だろうな、これから南雲原も有名になって色んな新入生プレイヤーが流れてくるのかな。

 

今からが楽しみだ、それに…………。

 

 

 

 

 

 

「(あの人が、俺の事覚えててくれた)」

 

 

 

 

 

今日約束で円堂と出会い、決勝を観戦していた円堂の父親…………即ちあの円堂守さんが俺に伝言を預かっていたと言う。

伝説のサッカープレイヤーから何事と思い身構える、そしてハルはこう伝えたのだ。

 

 

『父っちゃんが、かつての教え子から受け取った伝言です…………また絶対、サッカーしようぜ…………です』

 

 

 

その言葉を受けて、俺は一瞬固まった。

円堂守の教え子からの伝言…………俺にまたサッカーやろうぜ、という言葉。

 

直ぐに結びついた、あの時信じあった言葉だと。

そして………………あの人は、俺のことを忘れないで居てくれた。

 

 

 

正直、感極まってしまった。

込み上げる気持ちをぐっと堪えて、俺は円堂守さんに………ありがとうございますと伝えてくれと、円堂に言った。

 

 

直接会えないのは残念だけど、覚えててくれてただけで感無量だ。

いつかまた絶対に会いたい、そしてまたサッカーをしたい。

 

その為にも、今以上に強くなるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……さて、現実逃避はやめにしよう)」

 

 

 

 

 

「フーッ、フーッ、フーッ、フーッ……!!!」

 

 

先程までのモノローグを語っていたが、今の俺は帰宅して…………何故か一緒に家に来た来夏にベッドの上で押し倒されているのだ。

 

そして来夏は俺の首筋に息を粗くして、これ以上無いくらいの憎しみがこもった視線を向けた、めちゃくちゃ怖い。

 

 

 

………………何せ、かつて自分が遺した痕とそっくりだったからだ。

 

 

 

あの時、力でヒカリに抵抗できず俺はされるがままにされてしまった。

その姿にかつての来夏を思い出してしまった、そして最後には…………うん、何も言うまい。

 

なーんで俺は定期的に喰われるのだろうか、俺が何をしたというのだ…………まぁ色々やったけどね?

 

やべーって、来夏また暴走するやつじゃん。

また俺笹波にどやされるやつじゃん、どうしようマジで、ていうか俺悪くなくねー?

 

 

 

「……流っ」

 

「……はい」

 

「今、私今めちゃくちゃ襲うの堪えてる」

 

「見て分かります、どうか勘弁してください」

 

「うん、ねぇ、でも無理かも、襲っていい?」

 

「堪えてるって言ったよね?お願いまって?また鞘さんといらんことになるよ?それにヒカリに怒ってくれ頼むから」

 

「いつかあの女はころ…………ぶっ潰すからっ」

 

「言い直せない殆ど!とりあえず退こう、話し合おう!」

 

「…………とりあえず、上書きしていいっ?」

 

「ダメだこいつ、早く何とかしないと」

 

帰ってきた途端これだよ、どうしよう?何か落ち着かせる手段は無いのか?でも無理矢理解いたらなんか行けない気がする。

 

 

 

………………でもなんか、何時かまたこんな事が起きるような気がするんすけど、またここではぐらかしたら絶対面倒な事になるって。

 

 

 

「(…………どうしよう?)」

 

 

 

…………帰る前、ヒカリにやらされた事はぶっちゃけ刺激が強すぎた。

来夏の様に居て当たり前の女の子じゃないから、変に意識してしまった、あぁいう気持ちが来夏も…………いや、違うのか?

 

「今絶対あの女の事考えてたでしょ、私の前で、私の前でっ」

 

「ごめんなさい勘弁してください、落ち着いてぇ」

 

「無理、襲う、襲うからっ」

 

「今までの頑張りぶっ壊すなよーーっ!」

 

取っ組み合いになりながら服に手をかけようとする来夏を抑える。

くっそ…………どうする、この場を丸く収める手段は…………!!

 

「流ぅっ!!!」

 

「うわっ!?」

 

すると来夏は、いきなり全体重を載せてきて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぷはっ」

 

 

 

 

 

 

 

「(…………………………いかん、ヒカリが脳裏にチラつく)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………流、しばらくサッカー部は特に大きな事無いんだよね」

 

「…………そっすね」

 

「もう少ししたら夏休みだよね」

 

「……へい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貯めてた分、ぜーんぶ払ってもらうから覚悟して」

 

「…………私しか見えなくしてあげるから」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けて笹波様!!!?




忍原来夏
フットボールフロンティア優勝によりサッカー部は今後の目標が暫くなく、仮のお休み状態、もうすぐ夏休み、ヒカリがむしゃむしゃ。

反撃開始になります。



黒景流
こっから今まで働いてた狼藉全部の報いを受ける時。
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