忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
私達が流に迫る前の話をしようと思う……………3年になり、最後のフットボールフロンティアも2連覇で終えれて、いよいよ私の中学でのサッカーが幕を閉じようとしている頃………私はかつてのように、放課後で1人屋上で景色を眺めていた。
「……………はぁ…………」
気分の上がらないこの感覚は何処か懐かしさを覚える……再び味わいたくは無かったが。
しかしかつてと違って燃え尽きたわけじゃない、高校でもサッカーは続けるつもりだし………理由は別にある。
幼馴染みであり……私が恋焦がれている流の事でだ。
他人からすれば異常と言える程の好意を彼に抱いてしまった私は、去年からずっと彼にアプローチを仕掛けていた………出来ることはなんでもした、キスだってした、少し大胆な事だってやった。
それでも流からは明確な答えを聞けてない………前と違って女心はある程度察せるようになったと言うのに、上手くはぐらかされている……ずっとだ。
以前はクソボケ過ぎて察することすら無かったのだけれも、今は変にはぐらかし方を覚えたせいでより煩わしさを感じてしまう………それでも流の事は諦めたくなかった。
惚れた弱みと言っていいのか分からないけど、この気持ちを簡単に手放したく無いからだ………流だって私の事は大事に思ってくれてる筈だ、それでも受け入れてくれない理由の一つとして………私以外にも流の事が好きな女の子が2人居るからだ。
私の先輩だった小太刀 鞘、流と同じサッカーモンスターの天河ヒカリ……この2人の存在で私をすぐに選んでくれないのだ。
2人もまた流に対してアプローチを仕掛けてる………それでも2人を選ぶことすらしてないのだけれど………何時までこんな膠着状態が続くのだろうか?もしも私じゃなくて彼女達の誰かを選んでしまったら………私は、どうなるのだろうか。
想像するのも嫌だ、ここまで来て流を……他の子に渡したくない、絶対に………だからこそこんなにも頑張ってるのに、流は見るだけで何もしない………結局、私の事はただの幼馴染みとしか見てないのだろうか?
だとしたらあんまりだ、最初のキスだって流に奪われる形になったのに………許せない………流が許せないよ……。
しかし……もしも流がしどろもどろしている理由が、私達3人の中から選ぶことが出来ないのが1番の理由なら………それを解決する方法は既に見つかっているのだ。
「………適正婚姻法、か」
適正婚姻法、つい最近可決された昨今の少子化問題を解決する法案とのこと………簡単に言えば、能力と適性のある人物は複数の女性との結婚が法的に許されるというものだ。
つまりはハーレムが公認となる………そしてこれは流に間違いなく当てはまっているのだ。
現在のサッカー界において無類の強さを誇り、そして現時点でも私を含めた3人の女の子に好意を寄せられている………適正婚姻法にピッタリの人物なんだ。
仮に私達と流がこれの無い状態で納得したとしても、周りからは白い目で見られるに違いないし、家族からも納得なんて出来ないだろう………しかしこの法案がこれから浸透する以上、そんな事は無くなってゆく。
そして流の何も選ばない状態を打破することも出来る………そうすれば少なくとも仲間はずれになる人は居なくなり、傷つくことも無くなる筈。
…………しかし、私としても複雑だ。
待ちに待った結果がこれでいいのかなって、流には私を選んで欲しいのに結局誰かを選ばせずにみんなを受け入れさせる事になっていいのかなと……そもそも、流が私達を丸ごと受け入れるなんて選んでくれるのかな?そして2人はそれすらも受け入れることが出来るのかなって。
仮に適正婚姻法に則るにしても、まずは話し合わなきゃいけない……無論私は流と添い遂げる覚悟だ、多分鞘先輩と天河もそのつもりだと思う。
………でも結局、流がその選択を選ばないのなら無意味だ。
かと言ってこのままの状態が続いてもどうにもならないに決まってる……その事で私はずっと悩んでいた。
「はぁ…………」
今日もため息ばかりだ、そもそも流が何も選ばないのがいけない、私を受け入れることも拒絶することもしないからこうなってる。
いい加減に決めて欲しい………もう決めさせてやろうかな、高校生になったらその内………逃がさない証を作ってやろうかな……なーんて、こんな事を考える位に私はおかしくなってる。
「……帰ろ」
最近は流にくっつかずに一人の時間が増えている、流は………何も悩んでいないんだろうなぁ、別に私が居なくても良いもんねアイツ。
「…………居なくても………いいんだ………」
……………自分で口にしておいて胸がズキっとなる、つくづく自分が面倒な女なんだなと実感する。
1人の男の子にここまで悩む同年代もそうは居ないだろうなと思いながら屋上から出て、靴箱のある学校の玄関まで歩く。
私がそこまで近づいた時だった、話し声がそこから聞こえる様になってきた。
誰かなと思いながら耳を澄ませると、そこに居たのは…………。
「いやぁにしても、もうすぐ黒景先輩達が卒業って思うと寂しくなりますねぇ、戦力的にも」
「来年からは雲明とお前が引っ張るんだから、弱音吐くなよ木曽路」
流と木曽路だった、まだ帰って無かったんだ………そう思いながら私も一緒に帰ろうかなと思い、声を掛けようとした………けど。
「それはそれとして先輩……あれから忍原先輩とは進展ないんすか?」
「え?あー……まぁな」
そんな会話が聞こえると同時に立ち止まり、勢いよく自分の身を隠してしまった。
木曽路はなんの気もなしにそんな話題を振ったのだろうけど、私は心が軋むような感覚を受けてしまった。
流の口から……進展がないなんて口にされたのだから。
「えー?だって先輩キスまでしたんでしょ?それに忍原先輩だってめっちゃアプローチしてるんじゃないすか?今の彼女めちゃくちゃ可愛いっすよ?人気だって前よりずっと上がってるし」
「まぁ………でもなんだかな、確かに魅力的だとは思うよ?けど……やっぱなんか、結局そういう目で見れないって言うかな………」
「多分先輩だけっすよ彼女前にしてそんな事言えんの………まぁ忍原先輩以外にも小太刀先輩や天河も居ますし……あっそーだ!今なら適正婚姻法ってのがあるから、全員娶ればいいんじゃ?」
「いやいや無理だって、俺なんかじゃ………来夏の事は確かに大事に思ってるけどさ…………色々やってなんだけど、結局はただの幼馴染みとしか見れないんだ、悪いんだけど………鞘さんもヒカリも俺は受け入れないで終わらせようと思ってる、きっと俺にはそういうの向いてないんだよ、雲明からはずっとクソボケとか言われてるし………遅かれ早かれ、俺と付き合った人を不幸にしそうでさ」
「……まぁ最後のは一理あるかもすけど……良いんすか?それ結局前に言ってた嫌われてもいいとかって奴ですよ?」
「だから俺への愛想尽かせて終わらせようかなって……進学先も来夏のとは違う所選ぼうと思ってるし、その内来夏も………なんてな」
「えー………俺が口出しするような事じゃないんすけど、ぜってー諦めませんよ忍原先輩?」
「………かもなぁ………でも何かを選ぼうって気にもなれないしな……はは、俺ってばサッカー以外だと中途半端だな」
「サッカーの才能に全部吸われたんじゃ無いんすか?」
「それ毎回雲明に言われてる奴」
その言葉を皮切りに流と木曽路は学校から出ていった。
私はその場で立ち尽くして………動けずにいた。
「……………逃げるんだ」
結局、逃げるんだ。
私を真正面から拒絶するでもなく、2人を選ぶんじゃなく………何も答えないまま逃げて遠くに行こうとするんだ、最低だ、ほんっとに最悪………ここまでして、ここまで来て出た結論がそれ?ふざけるな、私をなんだと思ってるんだ、キスまでして……頑張ったのに………何も選ばないで逃げるんだ………。
鞄がずり落ちて空いた手を強く握りしめる、爪がくい込んで血が出てしまうがそんな事を考える余裕もなかった。
奥歯を砕けるくらいに噛み締める、私の目から涙が零れ出ていた。
「……………逃がさないから………」
なんてクズなんだ君は…………そんな奴がまた、他の女の子を誑かしたらその子が可哀想だよね?だったら………そんな君を受け入れる人達で囲んだ方が良いよね?
…………私の答えは決まった、もう待ってなんかやらない、絶対に逃がさない………そんな君だって私は好きなんだよ?
この気持ちに嘘は無い、無くせる筈もない、もう……………今度こそ、絶っ対に許さないから。
◾︎◾︎◾︎◾︎
その夜………私は鞘さんと天河でグループを作り、私達でグループ通話をした………今日ここで決定する為に。
「………聞こえてる?」
『聞こえてるよー、来夏先輩からこんなするなんて思わなかったよ』
『そうね………それで、この3人が集まったってことは………』
「はい……結論から言います、私達3人で適正婚姻法に則って流を囲いませんか?」
『やっぱそれかー……でも来夏先輩が決めるなんて少し驚き、誰にも渡さないって言ってたのに』
「…………もう渡さないとかそういう話じゃないんだよ」
『………どういう事、何があったの来夏さん?』
「簡単に言うとね、流はさ………私の事は結局ただの幼馴染みとしか見てなくて、それでも面と向かって拒絶しようとせずに逃げようとしてるんだ……それと同時に鞘さんと天河の事も選ぼうとしてない、何処か別の高校へ行こうとしてるんだ………愛想尽かせて忘れさせようって、考えて」
『……………………へぇ』
『………そんな………嘘でしょ?』
「嘘ならどれだけ良かったか…………その言葉を聞いて私は限界が来た、そして今……1人の男の子を囲うことが違法じゃ無くなって、そして流が私達3人からにげようとしている………もう私達がいがみ合う理由は消えている………だからもう、私達で流を共有したいって考えている」
『『…………』』
「そしてこれ以上他の女の子が彼に擦り寄ってきてもそれを受け入れない……この3人だけが流の相手になる」
『…………なーんの答えも出さずに逃げるんだ流先輩……確かにそれは許せないなぁ、ボクなりに勇気を出したのにさぁ………いいよ、来夏先輩の考えにさんせーい』
「……鞘さんは?」
『………ウチは……でも、そんなの………彼の意思を捻じ曲げることに、そんなのは……』
「今更いい子ちゃんなんて無理がありますよ………流からから聞いてるんですよ?貴女がほぼ毎日彼に数時間通話して同じ高校に通わせようとしている事を………今の鞘先輩は彼が取られるかもしれないっていう焦りがあるんでしょう?かつての私のような」
『そ、れは………』
「…………まぁ別に良いですよ、鞘先輩が居なくても私とヒカリで流を留めるので」
『そうだねー、じゃあ手始めに…………流先輩にお仕置としていっぱいシちゃう?』
「そのつもりだったよ私は、もう言い逃れ出来なくしてやるって」
『ま、待って…………ウチも、やる』
『あら、その気になったの?』
『………ごめん、なさい………やっぱりウチも流君を諦められないから………ウチにすら何も言わないのは流石に、ムカついた………受け入れるわ』
「……じゃ、決まりだね」
『うんうんっ……もう、流先輩は逃げられ無いねー』
『…………ウチももう、我慢するのは辞めるわ…………』
「………じゃあ流に伝えておきますね」
「逃がさないって」
それから、私達は流を捉えて…………私たちの愛をぶつけた。
私たちから逃げようとした報いを、私達の想いを………今まで我慢していた分ありったけを注ぎ込んだ。
私から提案しておいて、罪悪感を感じずには居られなかったけど………それ以上にようやく結ばれたという喜びと、愛し合っている快感が勝った。
望んだ形とは程遠い選択だけど………仕方ないよね?流がぜーんぶ悪い、答えを出そうとすらしなかったんだからさ?
でもいいよね?君みたいな中途半端な奴をまだ好きでいてくれる女の子達で囲んで愛せば、そのねじ曲がった性根もきっと治るよね?
ヒカリはこの上なく嬉しそうに流を貪ってるし、鞘先輩も罪悪感を感じながら顔と身体は正直だし………私は思いっきり流をぐちゃぐちゃにしてる。
もう逃げられないね、流っ。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「………っぁ………」
気怠い、痛い………おきあがれ、ない。
とにかく怠い……これ以上何もないくらいにやべぇ………死ぬ、本当に………死ぬ……死ぬ。
「……もー流先輩まだへばっちゃダメだよー?残りはまだまだあるんだからさー」
「ウチもまだ足りてないわ……もっと頑張って、ウチも頑張るから」
「流って意外と受け気質だよねー、めっちゃ感じてたもん」
「そういう来夏先輩はがっつき過ぎっ、めちゃくちゃキスしてたし噛んでたし!」
「ヒカリだって似たようなもんでしょ!ていうかこの中だとダントツでやってるじゃん!?」
「……ま、って、死ぬ………ゆるし、て」
「………何言ってるの、許すわけないじゃん?逃げようとした罰なんだから、これは」
「大人しくボクの事選んどけば良かったのにー………いや、もういいや、こうして流先輩がぐちゃぐちゃにされる可愛い姿見れたからっ」
「ごめんなさいね流君………ウチに何かを言う資格はもうないけど、その分尽くすから……」
「…………もう逃げちゃダメだからね…………こんな事してもさ、逃げようとしても…………こんなにも好きなんだから」
「………これでもう、逃げたいなんて思わないよね?」
来夏が涙を流しながら俺にキスをした。
何も選ばなかった結果がこれなら、俺はどうしようもないやつだ。
俺に出来ることはもう、3人の想いに応え続けるしかないってことか?
これでよかったのだろうか………いや、良いわけないか。
心の中で3人に謝りながら、俺は彼女達を受け入れるしか無かった。
黒景流
この世界線だと結構クズになってる、因果応報ってことでこの結末でございます、しかしまぁ…………美少女に囲まれてるなら良いよね?
忍原来夏/小太刀 鞘/天河ヒカリ
主人公を貪ったヒロインズ、形はどうあれ溜まってたものぶつけられて幸せ、この後同じ高校に通って無双する。