忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
負ければ、存在価値はない。
負ければ自分は消える、死ぬ、だから勝ち続けなければならない………オリオンの使徒として私は自分を徹底的に殺した。
全てはオリオン財団の為に、私を助けてくれた恩に報いる為に………私は強くなる為に、修練を積んだ………課せられた修練の内容ははっきり言って殺人的だった、私は他人と比べて秀でてたからこなせてはいた、そのキツさを表には出さなかった。
そして私はその中でも優秀だと評価を受けていた、同期の指標としての立ち振る舞いを財団に求められた………光栄な事だと受け止めて、身体と自分の感情の軋みを隠しながら日々は過ぎた。
未だに辛いという甘い感情が残っている自分の弱さに忌々しさを感じる、弱さを見せてはならないのに………そんなもの私には必要ないのに、あぁ………。
「今日もキツそうだなー優等生?」
「黙れ怠け者、今日も上手く教官の目を躱して」
「チクる?」
「そんな時間は無駄……どうせ治らないんでしょ、流」
オリオンの使徒の特訓場にて自主練をしている私の近くでリフティングをしながら欠伸をする彼の名は黒景流……私の同期だ。
どのような経緯でオリオンの使徒へ入ってきたのかは不明だが………この場所に不相応なくらいに、脳天気なやつだ。
怠け者とは言ったが鍛錬は必要最低限はこなし、過剰なまでのトレーニングメニューは自分のペースで消化して教官からはバレないように行っている………それに気づいていたのは、その場でいつも私だけだった。
入ってきた時期、そして訓練で一緒になる事が何かと多かった私は………いつの間にか流と話すようになっていた。
オリオン財団へ絶対の忠誠を誓うと決めた私と、態度を見る感じ財団へそこまでの忠誠を感じない流、性格も反対と言っていい。
反りが合わないと感じていたが……どうにもそういう事にはなっていない。
………何故だろうか。
「お前は何時も張り詰めてるよな、今日も自主練じゃん」
「そういうお前は緩みっぱなしだな、いい加減真面目に取り組んだらどう?」
「拷問みたいなトレーニングと洗脳じみた教育なんか、程々じゃなかったら壊れるっての、現に壊れちまいそうな奴はゴロゴロいるし」
「彼らは財団への忠誠を誓って自ら使徒に志願した者たち、覚悟の上での行動よ」
「だろうけどなー、初代理事長みたいな人が今もやってたらこんなことにはなってないだろうけどなぁ」
「………今のは聞かなかった事にする、罰せられたくないならもう少し意識を持ちなさい」
「………ユリカって意外と俺には甘いよな?」
「バカ言わないで、貴方の能力が取るにたらないモノなら既にこの場には居ない」
………ダメだ、彼がいると引き締めてた意識が緩んでしまう。
私と同じかそれ以上の能力を秘めて……それを隠してのらりくらりとしている、それに財団に対する忠義を感じない態度、私にとっては許せない要素の1つなのに、大きく怒る気にもなれない。
どうしてなのか、ふと考えても答えは見つからない。
そうこうしてもこうやって一緒にいる時間はより多く、そして増えていってた。
けど………悪い気は、しない。
彼との自主練は他の同期とやるよりも効果を感じられるし、適度な緩みは私の負荷を和らげている気がする。
私がより強くなる意味でも彼の存在は有用と言える………そういう事で、良いのかな。
「にしても……FFIももうちょいで開催か、俺は何処に飛ばされんのかなー……ユリカは、財団直属チームのキャプテンだっけ」
「……そうだね、けど流も今から自分の潜在能力を示せば私のチームに入れるよ」
「うーん、悪くねぇけど……どうせなら他のチームに行った方が面白いしな」
「………なら流、オリオンの使徒がやるべき役目を忘れるな、その為に私達はここで鍛錬を重ねて、財団がより……」
「分かっておりますよ、そうじゃなきゃ俺だってここに居ねぇし……でも」
「……でも?」
「俺も普通にサッカーしたいんだよな、外のアイツらみたいに」
「…………」
ボールを片手に施設内の天井を見上げる流を、私は静かに見つめていた………オリオンの使徒達はサッカーの試合結果を管理する為にサッカーの鍛錬をしている、その中でサッカーに対して真摯に向き合う人は稀有と言っていい、無論私はその中に含まれてない。
そして流はその稀有な人物の1人だ、彼だけはボールを蹴る時……無表情ながらも楽しんでいるように見えた。
私はあくまでも仕事でサッカーをしている、だから彼の気持ちは理解できない………それが少し、歯痒く感じていた。
「………ユリカはサッカー、好きか?」
「……別に、思い入れもない」
「勿体ねー、お前ならいいサッカープレイヤーになれるのにさぁ」
「私からしたら、流がもっと真摯に使徒としての責務に向き合えば私と同じ評価の使徒になれていた」
「そーですかい………でもさ、俺はその内お前んとこのチームでサッカーしてみたいよ」
「なんの為に?」
「いや普通にサッカーしたいだけだよ、本来俺らみたいなサッカーは道から外れてるなんてもんじゃ無いし、お前とは純粋な試合をすれば楽しいだろうしな」
「……私は楽しむつもりでサッカーはしてない」
「それって使徒とかの責務があるサッカーしかしてないからだろ?そういうの1回忘れてボール蹴るのも良いんじゃないか?」
「……………」
「気難しく考えるなよユリカ、今すぐじゃなくてもいいからさ、いつか俺は本心を晒しているお前とサッカーをやりたい」
「………本心、か」
サッカーに対して思い入れはない、あくまでも使徒としての責務でプレーをしているに過ぎない、どれだけ卓越したプレーをしたとしても楽しさなど感じない、元より興味なんて無いから。
私の本心がそれだ………でも流は違う、彼は純粋にサッカーが好きなんだろう。
「…………ま、ユリカは堅物の優等生だからな、簡単には本心を見せてはくれないか」
「堅物で悪かったね…………でも」
「でも?」
「…………なんでもない」
ふと言いかけた言葉を飲み込んで、私はその場を去る。
サッカーに関しての考えは変わってない、変えられる気もしない、私はあくまでもオリオン財団の意思のままに遂行する兵器だ。
でも私の本心………というか、自然体な本音は………流の前でしか吐露していない、どうにも彼の着飾らない態度にはそうしてしまう力がある。
これは……どういう気持ちなのだろうか、単なる友情……なのだろうか。
………分からない、私には、初めての感覚だったから。
◾︎◾︎◾︎◾︎
それから暫くして、流は日本へ旅立った。
FFIの日本代表チーム、イナズマジャパンにオリオンの使徒として潜入し、勝敗をコントロールする為に。
そして私は…………しばらくの間、形容しがたい苛立ちを暫く感じていた。
何か嫌な事があった訳じゃないのに、ムカムカする。
表情には出してないけど………感情を制御しきれてない、何故か。
「(………なんでなの)」
流が日本へ行って、一人で自主練して、それからはずっとこの調子だ…………原因が分からない、何故こんなにもイライラするんだ。
落ち着かない………さっきからシュートばかりだ、まるでこの苛立ちを発散するかのようにボールを蹴っている。
「…………」
…………一人で自主練をするのは随分久しぶりな気がする、何時もは流が隣でくだらない事を喋っているのを聞いていたから、このフィールドがやけに静かに感じる。
今頃彼は何をしているのだろうか………アジア予選は既に始まっている頃合か、私は1度シュートをやめてスマホを取りだし、その試合内容を見る。
1回戦は日本対韓国、確かこの試合の勝敗は日本側が敗北で終わらせるように言われてたハズ………流が、画面に映った。
「………ふふ」
無意識に笑ってしまった、画面越しとは言え……その顔を見て安心していた。
そんな自分の状態に気づく事なく、私は試合内容を見る。
………今の所、流に目立った行動は無かった、普通にプレーをしていた。
そしてイナズマジャパンのストライカー、豪炎寺修也が絶技を使用し先制ゴールを決める…………思っていた以上に日本側は力をつけているようだ。
しかしこの試合の行方は既に決めている、おそらく使徒はここで動くはず………そう思いながら私は試合を見続けた、そして豪炎寺修也にボールが再び行き渡り、再びゴールを決めようとする………おそらくここで使徒達の妨害工作が始まるはず…………そして豪炎寺修也はそのまま………。
再びラストリゾートを、決めた。
「…………え?」
…………おかしい、いつもならここで使徒の工作が始まるハズなのに、先程から見る影もない。
そして前半は終了した、オリオンの使徒達は何をしている?
「………まさか………流…………」
彼は、サッカーが素直に好きだと言っていた。
そして、オリオン財団のやり方に少なからず反感を抱いていた。
「………うら、ぎった?」
嘘………。
まさかとは、おもってた、もしかしたらとは考えてた。
でも、それでも、オリオンの使徒の責務を放棄して………自分の意志を選んだ。
「………流…………」
明らかな反逆行為、オリオン財団は彼を絶対に許さない。
オリオンの使徒たる責務を放棄した彼はもう…………ここに戻ることは、無い。
「…………いやだ…………」
そんな言葉が、零れた。
二度とここには来ない、戻れない、その事を承知で流はサッカーをしていた………つまり、私とも決別するということ。
そう考えると、先程まで忘れていた寂しさが蘇り、身震いしてしまい………恐怖と怒りが私を満たしていた。
今やっと自覚した、彼が日本へ赴いて私から離れて………私は、嫌だったんだ。
離れないで欲しかったんだ、オリオンの使徒としての役割以外要らないと思っていた私は無意識に、流を求めていた。
あの関係が心地よかったから…………でもそれは、もう叶わない。
流は………財団よりも使徒よりも、私よりも………自分の道を選んだんだ。
「………ゆるさない…………」
財団を、私を裏切ったことを。
もう一度、捉えて、彼の全てを壊して、今度こそ使徒として従順にさせてやる…………二度と逆らえないようにしてやる。
そしてもう
私から離れられないようにするんだ。
覚悟して、流。
いつか………私から会いに行く。
◾︎◾︎◾︎◾︎
《黒景流がイナズマジャパンと合流してから1ヶ月弱》
「流くーん!練習付き合ってやー!」
「ん、白兎屋……いいよ」
「よっし!ていうかうちの事名前で呼んでやー」
「あー忘れてた、なえさん」
「呼び捨て!」
「な、なえ」
「よろしい!………怪我、大丈夫だよね?」
「もう無問題っすよ、鍛えてるんで」
「良かった………流くん」
「へい?」
「もうウチを庇って怪我とか、やめてね」ジトジト
「……へい」
その後……勝ち上がる戦神イナズマジャパンの前に、とてっつもなく面倒な修羅場が起こることを、まだ知らない。
黒景流(オリオンの使徒)
勝敗を操作するオリオンの使徒として、一星 充に変わって潜入し……使徒としての責務を即放棄してサッカーやろうぜ状態に。
財団と使徒の事をリークしてイナズマジャパンへの不正行為の対策をほどこし、被害は原作よりも少なくなっている。
そして……現時点、この世界線唯一の化身使いである。
しかし女誑しも健在。
白兎屋 なえ
アレスの天秤でしか出番がなかった人気キャラ、万作の代わりにイナズマジャパン入りしたチームの紅一点。
オリオンの使徒による妨害工作を諸に受けてしまいそうになるが、その場面を主人公が庇い、傷を遺してしまう。
それから主人公と交流し始めて落ちた、なんでやろな。
ユリカ・ベオル
多分オリオンの刻印の中で最人気キャラだと思ってる、可愛いし。
己を兵器として捉えていたが、主人公との交流が無意識のうちに心地よくなっており、情緒が異性に対する免疫も出来てないため無自覚な好意を持つことになるが、主人公がオリオン財団をあっさり裏切った事により更なる闇堕ちを果たす。
機械的な女の子が愛に狂う姿はみんな好きだよね?
次回、クソボケ死す。
ま、嘘なんですけどね。
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