忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが?   作:グラビトン

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今回で西ノ宮中決着となります。
とりあえず今後はサッカー描写も頑張りつつ来夏メインは変えずに描き続けようと思ってます。
至らぬ点があれば話の内容含めてガンガン感想をください。

さぁ来夏ちゃんにお祈りを。

南雲中サッカー部フォーメーション

フォーメーション ダイヤモンド
来夏 柳生 桜咲
小太刀 木曽路
星 伊勢谷 妖士乃
古道飼 古手打
四川堂


本当の始まりにて

「ヤバすぎるでしょ、1回戦目からサッカーモンスターを相手するなんて反則だろ………」

 

「難問どころの騒ぎじゃないな……」

 

前の話から少し時間は遡り、開始直前の俺達南雲原サッカー部は相手チームの西ノ宮中のメンバーを見てそれぞれの反応を見せる。

今日という日のために練習は積み上げてきたが、まさか助っ人として化け物2人を連れてくるとは思わなかった。

 

「円堂ハル………まだサッカーに疎いウチでも分かる、今ここにいるサッカープレイヤーの中で一番の強者ね」

 

「オマケに雷門中キャプテンの月影蓮まで……いきなり全国レベルが相手になりやがった」

 

小太刀先輩と星の言葉に皆身体がこわばる。

サッカーをするものなら誰もが知る最強のサッカー部、雷門中。

その現時点で主要人物となっているあの二人だけでも加入すれば、苦戦を強いられること間違いなしだ。

 

…………よりにもよって、俺らにとって一番大事なこの試合にあんな奴らが来るとか、やべーな。

 

「(戦ってみてー………いかんいかん、そんな場合じゃない)」

 

頭の中に湧いた欲を振りほどき、改めて状況を確認する。

南雲原中サッカー部は出来たばかりではあるが、メンバーそれぞれの素質は十分にある、その上で特訓を重ねて戦術も立ててきた、必殺技も最低限習得もした、万全の状態ではあるが………相手が悪い、その一言に尽きる。

 

最悪西ノ宮中のメンツは無視しても構わないが、あの二人は正直今のメンバーで止められるのか………信じたい所ではあるがかなりキツイ筈。

 

差はそれ程までに歴然だ、まともに戦って勝てる程甘くない。

さてどうするか………先程から口を閉じて思案する笹波に目を向ける。

 

「……流」

 

「ん?どした」

 

「勝ちたいけど、あの二人に今の私達は通じると思う?」

 

「………正直、無理だろうな」

 

「ッ………そっか、じゃあ………君は?」

 

「………どうかな」

 

やってみないと分からないと言い切りたいが、多分キツイ。

まぁそれ抜きにしても戦ってみたいけど、笹波が許すかどうかだな………この試合にサッカー部の命運が握られてるから、壊されるとなりゃ俺も出たいけど。

 

「雲明、黙ってねーで何か言え、作戦はあるのか?」

 

桜咲が笹波に語り掛け、皆が待つように我らのキャプテンに顔を向けて指示を待つ。

この戦い、何としても勝たなきゃならない………その作戦を、皆は求めていた。

 

「………決まりました、恐らく勝つにはこれしか無い」

 

「何かあるんだな!?勝算のある作戦が……!」

 

「どうするんだ笹波君、やはりここで黒景君を投入するか?正直その方が勝つ確率も上がるが………」

 

柳生に続いて四川堂がそんな事を言ったから俺にも視線が集められる。

期待されんのは良いけど、多分余計に状況悪化しそうなんだよなぁ………何となくだけださ。

 

「皆さん聞いて下さい、試合開始から僕の指示に従ってください、無視は絶対許しません」

 

「当たり前だっつの雲明、それで……どうすればいい?」

 

桜咲の言葉の後に、笹波は皆の顔を一瞥して………こう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の指示があるまで攻めないで下さい、必殺技の使用も一切禁じます」

 

「少なくとも前半は、あの二人の好きにさせましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「………え?」」」」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

試合の開始を見守りながら、先程までの笹波が皆に送った作戦を思い返す。

 

 

前半、必殺技の使用と攻撃は一切禁止。

なるべく雷門の2人の好きにさせる、こちらの作戦は悟られぬように。

 

 

一見勝つ気なんて微塵も感じられない作戦だ、それ以上の説明はなく当然抗議の声は出た。

俺もなんでだと思ったが、その真意に勘づいた。

………確かにそうしなきゃ勝てない、そうせざるを得ない。

 

しかしこの作戦は半ばギャンブルだ、マジで相手の出方に握られている。

後は皆が上手くやるだけ………しかし、それもダメならどうしようか。

 

「……笹波、仮にあの作戦が通じなかったらどうする?」

 

「………その時は、以前の発言を撤回するかもですね」

 

「………そうか」

 

それ以上は何も言わず、試合を見ることに集中する。

笹波から試合に出さないと明言されている為、俺がやる事はチームがどういう動きをしているかを観察することだが………今完全に手を抜くプレーをする南雲原を見てもどうしようもない。

 

だから………皆には悪いが、前半はあのサッカーモンスターを見ることにしよう。

 

前半は西ノ宮ボール、月影から円堂にボールが渡されそのまま駆け上がる。

直ぐに前線の桜咲と来夏がペアで阻む、しかし円堂はそのスピードを緩めずボールリフトからの高速ターンで2人を抜ける。

 

速いし上手い………俺も出来るけど、精度も技術もあのモンスターが1つ上回っている。

 

直ぐにMF陣が迫るが、円堂は阻む隙も与えずにスピードアップで抜き去って行く。

とてつもない初期加速、移行する時のタイムラグも無いに等しい。

 

あっという間ゴール前、DFはまだ残っているが円堂は距離を縮めるとボールを軽く蹴り上げ……………。

 

 

 

「────ひとつ」

 

 

空中で後ろ蹴り、スピンを掛けた強烈なシュートを放つ。

恐らく必殺技ではない、けど見てわかる…………下手な必殺シュートよりも遥かに恐ろしい力を秘めてる。

 

ディフェンス陣は追いつけず、シュートの軌道はまっすぐGKの四川堂へ飛んでゆき、四川堂はそのボールを両手で受け止めるが………恐らくキーパー技を持ってしても簡単には止められないような球をそのまま止めれる筈もなく、あっけなく吹き飛ばされてボールはゴールネットに突き刺さった。

 

 

ピーーーーッ!

 

 

ゴールを示唆するホイッスルが鳴り響き、観客からは大きな歓声が湧き上がる。

開始早々のゴール、圧倒的なスペックから繰り出された驚異的なプレーに為す術もなく、前半1分足らずで1点差を決められてしまった。

 

「これが、円堂ハル………サッカーやってない私でも凄いって分かる………」

 

顧問の香澄崎先生から驚嘆の声が漏れる。

はっきり言って特別な事は何もしていない、でも………円堂ハルからすればこの程度で事足りるのだろうな。

別格、その一言に尽きる。

 

かく言う俺も両手を合わせ握り締めて、力が入る。

鳥肌が収まらない、あれがサッカーモンスター………円堂ハル………!!

 

「─────ぁあ」

 

あぁくそ、強い。

俺よりきっと強い。

 

戦りたい……………戦ってみてぇよ。

 

 

「(あのかいぶつとぶつかってみたい………!!!)」

 

 

分かっている、俺が出てもなんにもならない。

むしろ何もかもぶっ壊して悪化させるばかりだ、良い事など何一つとしてない。

 

でも居るんだよ、あのフィールドに強い奴が。

独りだった時には居なかった強い相手が。

 

「……………円堂、ハル………!」

 

「かつてない程に目が怖いですよ、黒景先輩」

 

「……!」

 

一人でヤバくなっていた俺に、隣の笹波の冷静な声が響く。

それで我に返り、冷静になった。

 

………やべぇ、一人で熱くなってた。

チームの事頭から消えてた………俺の悪癖だなこれ。

多分、笹波もそれも理解してるからスタメンに出してくれないんだろうなぁ。

 

「………落ち着きました?先輩」

 

「うん、悪い笹波………そんでお前から見てどうよ、アイツ」

 

「僕も動画は何度も見返してますけど、こうして見ると圧巻の一言ですね」

 

「ど、どうしましょう笹波君?必殺技ってのを使わなきゃ負けますよ?」

 

「逆ですよ先生、ここで抵抗してしまえば僕達は負ける………前半はこのままで行きます」

 

そう、ただでさえ超不利な状況を打開するのがそれしかない………抵抗したら負けるっていうのもおかしな話だけどな。

 

 

ピーーーーッ!

 

 

そうこうしてると試合が再開された、次はこちらのボールだ。

渡された来夏が駆け上がるが、攻撃はなるべく控えるように指示されているためどうすればいいのか少し戸惑っているのがこちらでも分かる。

 

しかしそんな場面をあのモンスターが見過ごす訳もなく、猛スピードで来夏からボールを奪いにやってくる。

それを察知した来夏は後方に居た木曽路に素早くパスをする………が、そこを月影蓮がカットして奪われてしまった。

 

こうなることをいち早く察知して先回りしてたのか、雷門中キャプテン………視野の広さは流石の一言だ。

 

円堂は既に前線へ飛び出しており、月影もドリブルで上がり始める。

…………さっきからプレーに西ノ宮中が全然関わってない………ていうか付いてこれてない、あの二人だけでフィールドが支配されてる。

 

月影に柳生と小太刀先輩が挟んでくるがその前に月影は遥か遠くへボールを蹴り出す、その先には………円堂ハルが飛び上がっており、上空でダイレクトボレーシュートを放ち、四川堂は不意の一撃に反応できず再び得点を許してしまった。

 

すげぇ………決めた円堂もだけど、あの上空の位置へ正確なパスを送れるなんて、月影も負けじと怪物だな。

 

「2点目、だな」

 

「想定内ですよ、皆も僕の指示を守ってくれてる」

 

「……………笹波、仮の話なんだけどさ、俺と円堂ハル………ぶつかったら俺って勝てるかな」

 

「………ノーコメントで」

 

「えぇ?」

 

「それよりもチームの動きをよく見てください、円堂ハルじゃなくて味方をですよ?」

 

「………いや、見たって皆今手を抜いてるしさ」

 

「このまま見続けたら、貴方は絶対我慢出来ませんよ」

 

「いやいや大丈夫だって………大丈夫だってば、そんな目で見ないでくれ笹波」

 

「(き、緊張感無くないこの二人………?)」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

前半が終わった………3-0という大差で。

何も出来なかった、圧倒的だった。

 

たとえ雲明君の指示を無視して全力で攻めても、きっと全部潰されていた………あれが全国レベル、雷門中サッカー部の中核をなす2人の実力なんだ。

 

「(まるで、あの時の流を相手にしてたような感覚だった……)」

 

座り込みながら水分補給をして思い返す、実力差による次元の違いを。

西ノ宮中はほとんど前半の点数に絡んでなかった、もうあの二人だけで手一杯だった。

負ける………このままじゃ何も出来ずに負けてしまう………。

 

「くっそ、バケモンが………」

 

「マジやべぇってあの二人……動きのレベルが違いすぎる………」

 

「特訓したことが全然通用しない……どうしよう……」

 

私以外のチームメンバーも諦めては無いが、どうにも打開策が見いだせない………ていうか、必殺技使わない上に攻めないなんてどういうつもりなの雲明君………わざと負けますなんて言わないよね?

 

そんな事を考えながら、ベンチに座っている雲明君を見るけど………何考えてるんだろアレ、流もその隣でグラウンドをぼーっと見つめてるし………状況分かってるのかな………?

 

「おい笹波!言わてた通りにしたけどもう3点差だぞ!?後半まで攻めるななんて言うつもりじゃ無いだろうな!?」

 

柳生が痺れを切らして雲明君に問い詰める。

彼の言う通りだ、このままじゃ勝てる見込みなんてない……………ここで負けちゃえばまサッカー部は終わる、流もここでサッカーが出来なくなっちゃう………それだけは、嫌だ。

 

「雲明君このままじゃ負けちゃうよ、後半巻き返す為にもここは………」

 

「このままで行ける」

 

「………え?」

 

柳生に続いて雲明君に話し掛けた途端、流が声をあげて私の言葉を阻む。

他の皆も流に視線を集め始めた。

 

「どういう事だい、このままで行けるって………」

 

「笹波の思惑は恐らく効く、後半始まって死ぬ気で攻めれば………この試合は勝てる」

 

「なんだって……!?」

 

「ど、どういう事っすか黒景先輩?雲明も何か言えよ!」

 

「………直ぐに分かるさ、後半からは存分に戦ってください」

 

2人はそれ以上何も言わなかった………意味分からない、手を抜くことがどう勝ちに繋がるって言うの?

 

「………………やはり、そういう問題だったか」

 

皆が何が何だか分からないと思っている中、唯一チームメンバーの中で伊勢谷君が何かを理解したかのように呟く。

皆それを聞き逃さなかった、伊勢谷君はメガネに触れながら敵陣を見ている。

 

「あ?伊勢谷オメー何に気づいてんだ?」

 

「仮に前半、全力で抵抗していたら俺たちは確実に負けていた………とだけ言っておこう」

 

「はぁ?ちゃんと言えよ!」

 

「解答はこの後すぐだ、さぁ後半が始まるぞ」

 

星の問いをはぐらかして、伊勢谷君は先にフィールドへ戻っていく。

私たちは何も分からぬままフォーメーションの位置へ向かった。

 

ダメだ分からない………でも流は勝てるって言った、どうやってあの2人を止めれば……………あれ?

 

「………居ない?」

 

前半で散々苦しめられたあの二人がフォーメーションの中に居ない。

どこに行ったのかと探すが、相手ベンチに雷門中の2人が座っていた………まさか、もう負けないと思って下げられたの!?

 

「くそっ、舐められてんな」

 

「でもあの二人が居たら勝てないよ」

 

「はっ、居なけりゃ勝てると……………まさか!?」

 

桜咲の言葉にハッとする、もしかしてこれが雲明君の狙い!?

わざと何も出来ないチームの振りをして、これ以上の過剰戦力は必要ないと思わせる為の作戦だったんだ、必殺技を使わせないのもその為に………!

 

「あの二人を下げさせる為に前半はあんな指示出したのか雲明!だったら言ってくれれば………」

 

「それは不正解だ木曽路」

 

「へっ、なんでですか伊勢谷先輩……?」

 

「これはあくまでも無力に見せかける為の策、仮にキャプテンがその思惑まで話せば俺達はそうしようと行動してしまう、そこから勘づかれて下がる可能性が潰えてしまえば、その時点でゲームオーバーになるからな」

 

「なるほどね、タネは最後まで隠すもの………見事なイリュージョンだ、笹波君」

 

「………だったらここから、やる事は1つ!」

 

柳生が拳と掌を合わせて気合を入れる、そして私を含めた南雲原中サッカー部は先程までの絶望感を完全に払拭し、勝利への活路を見出していた。

 

「開幕から一気に攻め立てて」

 

「4点決めて逆転!ロックだな!」

 

「あの二人が居ない以上、僕もこれ以上の点は絶対入れさせない!」

 

「僕も頑張ります!」

 

「ここでサッカー部を終わらせないよ!」

 

皆の士気が高まってゆく、ここから最低でも4回ゴールを決めなきゃならない………でもやってやる、ここで終われない、終わらせたくない!

 

「絶対………勝つ!!」

 

ベンチの流を横目で見る、すると偶然にも目が合う。

彼は何も言わず、静かに私に向かって頷いた。

 

「……うん、見ててね、私の事」

 

遠くてもそこにいる、私を見ててくれてる。

今なら………誰にも負けない!!

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

『伊勢谷先輩にはフィールド上で司令塔になって貰います、その広い視野と敵の内心を見破る観察眼で、僕の指示を遂行しつつその場で起きる現象に対応をお願いします』

 

「……………」

 

後半開始直前、ふと前日のキャプテンの言葉が脳裏を過ぎた。

司令塔………つまり俺に南雲原のゲームメイカーを任せるということ。

 

全く、一週間前に始めた初心者に任せることではない………噂通り無茶な難問を出す男だな、笹波雲明。

 

「しかし最適な解答だ、俺もそれに応えよう」

 

眼鏡を一旦外し、改めて現状の状況把握を開始する。

助っ人枠として暴れていた雷門中の2人は既に居ない、1度下げた選手は二度とフィールドへ戻すことは出来ない、よってあの二人の危険性は完全に排除された。

しかし我らは既に3点差を食らっている、ここから巻き返すにはこれ以上の失点は論外、そして最低でも4点を決めねばならない。

 

そして敵のキーパー技、スウェットスティルネスを破るには必殺技が必要…………そしてその技を持つ味方は桜咲、忍原、柳生、妖士乃、そして俺。

 

本来の西ノ宮中はデータ通りこちらとの実力差はそこまでない、しかし相手は前半の快進撃とは裏腹に複雑な心境が顔に現れている………よって、モチベーションも低迷している、好機だ。

 

ならやはり………やる事は至極単純、そしてそれは皆も理解している。

 

 

ピーーーーッ!

 

 

後半開始のホイッスルが鳴り響き、眼鏡を掛け直す。

 

 

 

「行くぞ南雲原!後半の時間に全てを捧げ、勝利を掴み取る!!」

 

「「「「「おう!!!」」」」」

 

キャプテンからの指示は出た、ここからは攻めに攻めて死にものぐるいで勝ちに行く!

 

結論………ゴリ押し!!

 

ボールを手渡された忍原がその俊足で駆け上がる。

敵陣はいきなりの強襲にたじろぎ、素早いフェイントを織り交ぜたドリブルで抜き去っていく。

 

「な、なんだ!?」

 

「動きがいきなり変わった!?」

 

西ノ宮はこちらの前半とはまるで違う攻めの姿勢に驚き、対応が遅れていた。

まずは1点………そして忍原の前にはディフェンス陣2人が立っている………ならここは。

 

「忍原!こちらに戻せ!」

 

走りながら指示を出す、チームも俺が司令塔である事は知っている、忍原は直ぐに俺へバックパスを出す。

早い判断だ、そしてボールが来たところを………。

 

「(すかさず、二歩後ろの妖士乃へ!!)」

 

息付く暇もなくパスを出し、妖士乃は少し驚いた様子でそれを受け止める。

それを確認すると同時に、俺はゴールの方へ走り出す、そして妖士乃に視線を送り続けた。

 

「(撃て、妖士乃!)」

 

「(………!なるほどね)OK、司令塔(コマンダー)!」

 

笑みを浮かべる妖士乃を見てこちらの意図を理解したことを確認、ここでまず一点を……俺達で奪う!

 

「シルバーウルフレジェンド!!」

 

加速をつけ浮かび上がり、共に飛んだボールに幾つもの連撃を与え…………咆哮する共に銀色の狼の光がボールに宿りゴール目掛けて放たれる。

 

「こっからシュートを打った!?」

 

「大丈夫!その距離なら威力は落ちます!」

 

このままのシュートでは距離減衰により最悪必殺技じゃなくてもキャッチ出来る可能性が高い…………このまま、ならな!

ボールの軌道上に移動し、近づいてきたところを……………このシュートを更に加速させる!

 

「アンサーブースト!」

 

瞬く刹那の間にシュートを繰り返し………最後の一蹴りで、更なる加速をつけてシュートする!

 

「な!シュートチェイ、わぁぁっ!」

 

 

敵にとって予想外のシュートチェインを食らい、GKは反応できずそのままゴールを突き破った。

 

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

「1点目、クリアだ」

 

着地すると同時に眼鏡を掛け直す。

 

南雲原中の初ゴール、観客の大きな歓声が響く。

チームメイト皆が俺達に集まり称えてくれるが…………気は抜く様な状況ではない。

 

「まだ1点だ、気を抜くな!攻めの姿勢を崩すなよ!」

 

「当然だ、次は俺が決める!」

 

柳生が不敵に笑みを浮かべる、皆も同じ気持ちだ………そして、相手ボールで試合が再開される。

 

「落ち着け皆、まだ2点差だ!ここから突き放して勝つよ!」

 

敵陣のキャプテンが指示を出す、しかしこれ以上の得点は許すつもりはない、こちらには上がらせない!

 

「桜咲!柳生!」

 

すかさず指示を体格の大きい2人に出す、2人はすぐさまボールを持つキャプテンに向けて走り出した。

キャプテンはすかさず横のFWへパスをする……しかし急とはいえ迂闊だ!

 

「ほいっとな!」

 

「なっ!?」

 

そこは木曽路が既に走っている、2人に呆気を取られて気づかなかったな。

木曽路がボールを奪い取り、敵陣中央のMFが止めに来るが……。

 

「分身フェイント!」

 

木曽路のドリブル技、三体分身によるドリブルにより次々と抜き去って行く。

 

「小太刀先輩!」

 

木曽路は前へ走っていた小太刀先輩へとパスを出す、ボールが来たことを確認し小太刀先輩はそのボールを受け取り、スライディングしてきたディフェンダーを飛んで軽やかに避ける。

 

「……忍原さん、決めて」

 

そのまま空中でフリーだった忍原にパスが出される、忍原は来るとは思ってなかったのか慌てた様子でそのパスを受け取った。

…………チャンスだと言うのに、少し複雑な顔をするな忍原。

 

「…………よっし、行くよ!ぐるぐるシュートっ!!」

 

忍原はボールに回転を掛けて蹴り出し、更にブレイクダンスにより発生された竜巻で更なるスピンを追加してボールはその勢いのままゴールへ向かった。

 

「スウェットスティル……早っ!?」

 

今度こそと技を放とうとするが、予想以上のスピードシュートで間に合わずそのままゴールが決まった!

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

「2点目……行けるぞ」

 

「っしゃぁっ!!」

 

忍原はゴールを決めてとてつもなくいい笑顔だ、ベンチの黒景目掛けてピースもしてる。

…………まぁここは何も言うまい、しかしこの調子なら追いつける!

 

再び西ノ宮ボールで試合再開、流石に焦りが顔に浮かんでおり開始直後にこちらへ駆け上がって来た。

全国レベルの助っ人を、こちらの本来のサッカーを捨ててまで勝ちに来たのに……居なくなった途端に追いつかれそうになれば焦るのも納得だろう。

 

同情はするが、勝負である以上情けはかけない、こちらもサッカー部の存続が掛かっている!

 

そして現時点でのボール所持者であり、西ノ宮中での要監視人物だった諸星の前に俺が立つ。

この中でもより一層の焦燥を見せている。

 

「くそっ、エンデバーラン!!」

 

シンプルな加速をつけたドリブル技、まだブロック技を身につけてない俺では追いつけず止められない…………しかしシンプル故に、軌道は読める!

 

「今だ!!」

 

「そこだっ!スピニングカット!」

 

走った先に待ち構えていた古手打のディフェンス技が諸星の行く手を阻み、青い衝撃波の壁で吹き飛ばさせる。

転んだボールを古道飼が拾い、すかさず前線へとパスを出した。

 

「やべ!カウンター!?」

 

西ノ宮は追いつかれそうになった焦りで攻めに前のめりになっていた為、中盤の奴らもこちら側へ多くの人数を割く形になっていた。

そしてロングパスを受け取った人物は、柳生だ。

あの技なら……妨害もされずゴールへ放たれる!

 

「行くぜ同点弾!!」

 

柳生がボールを高く打ち上げ、スパークするように弾け始め空中で雷を纏いながら滞空する。

そこに柳生は腕を組み、堂々とした態度で飛び上がった。

 

「天空サンダーッ!!!」

 

力の限りボールを蹴りだし、迸る雷を放ちながらゴールへ強襲する。

 

「スウェットスティルネスッ!!」

 

今度こそ必殺技を発動させて拮抗する…………だが計算は出ている。

その技は既に、お前の技を越えている!!

 

「な、とまら……ぅうわっ!!」

 

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

 

抵抗虚しくスウェットスティルネスは破られ、我ら南雲原サッカー部3点目の、同点ゴールが決まった。

 

「よっしゃぁぁぁッ!!!」

 

「柳生先輩さっすが〜!!」

 

「ようやく追いついたぜ!行けるぞ!!」

 

雄叫びを上げる柳生に木曽路と桜咲が飛び込む。

他の仲間達も高揚している、後半の時間はそこまで残されてないが勝てる、このまま行ける!

 

「さぁラストだ、勝ち取りに行くぞ!」

 

「「「「「おおっ!!」」」」」

 

士気は最高潮に高まっている、そして今までの特訓とキャプテンがら用意したそれぞれの作戦が功を奏している。

前半は雷門中の2人に阻まれてしまったが、今はそれすらも巻き返している。

ここまで来ればゴールは目の前、皆で…………勝てる!

 

 

 

ピーーーーッ!

 

 

 

 

後半で3回目となる西ノ宮ボール、相手は最早焦りを隠し切れていない。

そうなるのも当然だが容赦はしない!

 

「皆落ち着け!逆に言えばここで1点さえ入れば勝ちなんだ!焦りを見せるな!」

 

「この状況で焦るなって言われても無理ですよ!!」

 

焦燥を加速させつつも相手はボールを繋げていく、土壇場での底力を見せている。

お互い勝ちたいのは当然だ、しかしこちらにも負けられない理由がある!

 

「行かせないぜ!」

 

「挟むよ、木曽路君!」

 

西ノ宮中のミッドフィールダーに木曽路と妖士乃が挟み込み、木曽路の足が触れてボールが弾きだされる。

そこには誰もおらず、そのままラインを越え…………

 

 

 

 

「とりゃぁっ!」

 

 

 

る事はなく、そこに走っていた忍原の脚が届いた。

ナイスだ、敵陣はさっきの反省で先程より残っているが……大チャンス!

 

「そのまま上がれ忍原!!」

 

「ラジャーっ!!」

 

敵に進行を妨害されつつも忍原に指示を出し、彼女はそのままゴールへひた走る。

しかし、ぐるぐるシュートは先程見せてしまった……あれはパワーではなく回転率の速さと弾道の読めなさでシュートする技、タイミングを掴まれてしまえば止められてしまう…………。

 

ゴールを決めた俺と柳生もマークされている…………しかし、まだ居る。

必殺シュートを放っていない者が…………我らのストライカーが!

 

「左に出せ忍原ッ!フリーだ!」

 

「っ!!」

 

俺の声と共に、桜咲が忍原のパスコースにまで辿り着く。

俺達に集中しすぎてマークを疎かにしていた、俺がそれに気づかないとでも思ってたか。

 

「こっちだ!!」

 

「おっけー!決めろぉっ!!」

 

忍原が気合いを入れたパスを繰り出す、普通よりも回転を掛けて桜咲へ届かせようとするカーブパス。

桜咲はそこまで届くと信じ、佇む。

キーパーとは真正面、構えてその脚に力を溜めて………ボールが来ると同時に飛び上がる!

 

「剛の、一閃!!」

 

紅い閃光となりて翔けるそのシュートは、現時点の南雲中サッカー部にて最高威力のシュート技。

天空サンダーと正面から止められなかった技で…………防げるはずも無し!

 

「スウェットスティルネスっ!!…………ぐぐ、がっ、ぁあっ!!!」

 

拮抗したが、先程よりも呆気なくGKは弾き飛ばされ、そのシュートは遂にネットへ突き刺さった。

 

 

 

ピーーーーッ!!

 

 

 

「おらぁぁぁぁッ!!!」

 

勝ち越し、4点目。

桜咲の天を割かんばかりの咆哮と共に、南雲原中の逆転ゴールが炸裂した。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

ピッ、ピッ、ピッーーーッ!!

 

ホイッスルが3回鳴り響く。

それは試合終了の合図、そしてスコアは……4-3。

後半の失点を許さず、逆転に全てをかけて攻め続けた南雲原中サッカー部の…………俺達の勝ちだ。

 

「……ッしゃあっ!」

 

声を抑えて右手で拳を強く握りしめる。

笹波の作戦通りにあの二人は下げられた、そこからはアイツらの底力が発揮されて一気に4点までゴールを決めた。

 

すげぇよアイツら、この逆境から勝てた。

一人一人が自分に出来る動きを最大限に発揮して、後半の西ノ宮中を完全に抑えられた。

まだ出来たばかりなのに、間違いなく強いぞ。

 

「1回戦、突破ですね」

 

「あぁ、見事だったぜキャプテン」

 

「南雲原はまだ発展途上……これからもまだまだ課題は出てきますけど、彼らとならきっと行ける、てっぺんまで」

 

「そうだな、連れてってくれよ?」

 

「…………どちらかと言えば、貴方も連れて行く側の人間ですよ?」

 

「え、そうか?」

 

「今は待ってもらうことしか出来ませんが…………この分だと、黒景先輩がチームに入る日も遠くありませんね」

 

「…………あぁ、楽しみだ…………これでようやく、本当の始まりだ」

 

「……はい!」

 

スタジアムの歓声を浴びながらフィールド上で喜び合うサッカー部の皆を見ながら実感する、ここからが南雲原中サッカー部の始まりだと言うことを。

 

「(俺も変わらなきゃな)」

 

ベンチから立ち上がりそう決意する。

ずっと前から抑えていたサッカーの衝動、このチームを壊させない為にも俺は…………。

 

「流っ!勝ったよ!」

 

と、そんな時に来夏が駆け寄ってきた。

物凄くいい笑顔だ、手を勢いよく振っている………うん、やっぱこの方が来夏らしいや。

 

「お疲れ、ナイスゴールでナイスアシスト」

 

「うんっ!」

 

右手をあげてハイタッチする。

喜びながらプレーの最中の話を聞いていると、小太刀先輩がこちらを見ていることに気付く。

 

俺は静かにサムズアップを向けて、それに気づいた小太刀先輩は薄く笑みを浮かべていた。

あの人もよく避けながら状況把握して来夏に出せたよなー…………冷静な視野はサッカーに置いても健在か。

 

「……流、こっち向いて聞いてよ」

 

「あ、わり」

 

何にせよ、こっからが始まりだ。

あー…………でもやっぱ、サッカーモンスターとやってみたかったなぁ。




黒景 流
んほーこのサッカーモンスター堪んねーってなる所を笹波に咎められる。
いよいよヤベー奴になりつつある。

笹波雲明
主人公の手綱を握るキャプテン、猛犬調教師かな?































円堂ハル
なんでベンチの人、後半出なかったんだろ。

仮に、キャラ1人だけ読者参加の募集をかける企画とかあればして欲しいですか?(まだ未定)

  • やって欲しい。
  • やめておけ
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