忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
今回は久々にヒカリのお話を書かせて頂きました、今更っすけどこの子は作者の性癖をぶっこみ過ぎてとんでもない事になっちまいました…………いつかの続編の時まで、主人公並に読者の方に面白がられるキャラにしたいです。
※この話はヒカリが初めて長崎に来たという世界線ということで。
「外あちーなー………いきなり暑くなったなぁ」
「本日最高気温更新らしいですよ、長崎は」
「やべーのぅ、午前に来夏は日焼けしたくないとか言って俺にクリーム塗れって言ってきたぜ?そしたら鞘さんが横から入って来夏に塗りたくってたけど」
「何してるんですか」
南雲原中、昼休み時。
炎天下の中で昼飯と洒落込むのは流石に無理があるということで、比較的涼しい部室の中で俺と笹波は昼飯を食べていた。
最近の夏はそこまで暑くないなー、なんて言ってたらこれだ………別に暑いのは嫌いじゃないけど限度というものがある、気温の高低差で風邪を引いてしまいそうだ。
ちなみに他の奴らとも部室で食べようかとしてたけど、来夏を含め尽く予定が合わなかった為俺と笹波だけで食べているのであった。
「にしてももうちょいで夏休みだなー………その期間中も合宿やんの?」
「当然です、僕らは全国制覇を果たしたのは良いのですが、それ故に燃え尽きている節がありますから、ここら辺で締め上げておいた方がいいでしょう」
「厳しいなオイ………でも実際今後のサッカー部の目標と言えば、ウィンター杯と来年のスプリング杯だもんな、期間は空いちまってるし」
「ちなみに先輩はよりチームプレーをしてもらう為に他の部員よりぶっ扱きますからね」
「…………そこはほら、笹波が出てくればオールオッケーじゃん?」
「ろくに動けない選手を毎回ピッチに立たせようとしないでください、そして甘えずに自分の弱点を克服してくださいいい加減に」
「へい、ごもっともっす」
笹波のド正論に何も返せない、以前よりかはパスとかは出来るようになってるけど、やっぱりどうしても一人で突っ走る癖が抜け切れない…………あの決勝戦は同じフィールドに立った笹波の指揮があったからこそ出来た芸当だ、決勝の笹波が下した判断はぶっちゃけ命懸けではあったから何度もやる訳にも行かないのは当然だ。
少し話は逸れるが、あの試合以降俺の化身………グリュプスが出なくなっていた。
あの時の身体の底から湧き上がる力は覚えているんだけど、それが現在影も形も無い…………というか出ない。
原因は分からず終い、笹波曰く火事場の馬鹿力か何かだと推測している………そういやヒカリも化身は出せたけど雷門との練習試合以降出せてないとか言ってたっけか。
うーん分からん、どうしたものか。
「どうすりゃもっかい俺のグリュプス出てくるかなぁ、必殺技すら打てて無いのにさー」
「化身ですか、先輩がチームの一員だってことを真に自覚したからこそ発現したのなら、やっぱり先輩は何がなんでもチームプレーをそのすっからかんの頭にぶち込む必要がありますね」
「前々から思ってたんだけど、なんか笹波って他の奴らと比べて俺に容赦無くない?なんで?」
「それをギャグで言ってるのなら、僕は今から貴方をシバき回します」
「すんませんでした」
魔王になりかけた笹波様の御前で頭を下げる、いかんな…………最近また威圧感がものすごいことになってる、何回も迷惑かけているせいなのは分かってたけど……。
「大体、先輩は決勝の最中忍原先輩にあんなこと言っておいてその後音沙汰無しでしょう?そのせいであの人また拗ね始めてるんですからね」
「あれは、そのままの気持ちで他意はなかったんすけど」
「そういうとこですよほんっとに………」
笹波は呆れ返りながら弁当のおかずを頬張る、うーん………あの時は素直に来夏がそばに居て良かったと伝えただけなんだがなぁ………素直な気持ちを伝える度に来夏はどんどん拗れてる様な気がするのは何故だろうか、女心と言うやつはムズい…………。
「ふー…………うん?」
いま考えてもしょうがないと断定し、購買のパンを齧ろうとすると…………傍に置いてあった俺のスマホが震えた、どうやら着信したらしいが、こんな時に誰が電話を掛けて来たのだろうか、来夏なら普通にメッセージ送るだけだし………とりあえず俺は一旦食べるのをやめて、スマホに手を伸ばした。
「誰だ…………ありゃ?」
「どうしたんです、誰からでした?」
「ヒカリだ」
「…………何したんですか?」
「なんで俺がやらかした前提なんだよ」
「前歴が多すぎるからですよ、彼女だってそうでしょう」
「そうでございましたね…………」
相手はヒカリだった、その名を聞くなり笹波は俺を訝しげな顔で睨まれてしまう………時々信用されてるのかそうじゃないのか分からなくなる、まぁ俺が悪いんだけどさ…………とりあえず、その着信に俺は応じた。
「はいもしもし」
『おっ、流先輩おひさー、ボクに会えなくて寂しいー?』
「そんなでも無かったぞ」
『お世辞でも言ってよっ!』
「悪い悪い」
スマホ越しからハキハキとした声が聞こえてくる、こうして話すのはフットボールフロンティア以来だ、ヒカリも元気そうにやってるらしいようで何よりだ。
「……んでいきなり電話とかどうしたんだ?珍しい」
『あーうん、明日から三連休じゃん?』
「あぁ、そうだな」
『僕、長崎に行くことになったからさ』
「あー………あ?」
『明日先輩暇なら案内して欲しいなー、長崎初めてだからさ!』
「いやいや待て待て、急すぎるだろお前」
突然の電話で何を言うかと思えば、予想外のことをスラスラと述べるヒカリに静止を入れながら突っ込む。
え、三連休で長崎来るのヒカリ?東京からわざわざ?いや円堂って前例があるけどよ、いきなり過ぎるだろ。
「な、なんでいきなり長崎に来るんだ?ひとりでか?」
『ううん、おじさんと一緒に』
「おじさん………たしか、お前の保護者の基山ヒロトさんだっけ」
『そ、ヒロトおじさんがお仕事で長崎にちょっとだけ滞在する事になってさ、折角だからボクも行かない?って誘われてさ、ちょうど先輩にも会いたかったし!』
「そ、それでか………」
『それとなんか、仕事の合間があれば流先輩と話をしてみたいって言ってたよ?』
「………………え、基山ヒロトさんが、俺にか?」
『うん』
「…………マジか」
色々驚かされてたが、最後の最後でえらいことを言われてしまった。
元日本代表の基山ヒロトさんが俺に興味を?マジかよ、FFIでも大活躍をしたあの人に負けず劣らずのかいぶつが俺に…………もしかしてサッカー出来たりするのか?うおおおっ。
『…………ねぇ、なんかボクが来るよりおじさんの事でテンション上がってない?』
「………あっいや、そう言うんじゃなくってさ」
『絶対そうじゃんっ!明日来たら覚悟してよねっ!!』
不機嫌になったヒカリの大声を最後に通話が切れた、ありゃ………拗ねらせてしまったか、明日は覚悟しておこう………主に財布の中を。
とりあえず明日はヒカリに長崎の案内か、笹波が前に円堂にした事を俺がする形になるとは………まぁ明日は暇だったし全然良いけどな。
「………先輩、横で聞いてましたけど天河さんが長崎に来るんですか?」
「おう、なんか保護者の基山ヒロトさんの仕事に着いていく感じでさ、多分三連休の間は居るんじゃないかな」
「………え、天河さんってあの基山ヒロトさんが保護者になってるんですか!?」
「あー言ってなかったなそういや、まぁ色々事情があるんだよ、天河にも」
「そ、そうですか…………」
ヒカリの諸々の事情はあまり口にはしていない、少なくとも南雲原の皆には、こういう事は他人が口を滑らせて良いもんじゃないしな………確かに何も知らない奴からすれば帝国のサッカーモンスターが元日本代表の養子なんてさ。
「それでその、基山ヒロトさんは先輩にに何か話でもある感じですか?」
「みたいだけど、なんだろなー………サッカー出来たりして?」
「……………」
「………どしたの笹波?」
笹波はその言葉を聞くと何か考え出すと、俺に対して話しかけてくる、何故か冷や汗を少し流してるけど…………。
「(………黒景先輩って、彼女の事で色々やらかしてたし………多分天河さんは基山ヒロトさんにこの人の事を色々話してるよな、女関係含めて………そして彼女が彼の娘のような存在なら、話したいことって)…………先輩」
「何?」
「骨は拾いますから」
「へい?」
なんか不吉な事を言って笹波はそそくさと退散していった、なんだってんだ………?
◾︎◾︎◾︎◾︎
『じゃあヒカリ、あまり羽目を外さないでね、わがままも控えるように』
「はーい」
『夜遅くなる前にホテルに必ず戻りなよ、間違っても黒景流君の家に泊まったりしないように』
「………はーい」
『やれやれ、とりあえず楽しんで来て』
「うんっ、おじさんもお仕事頑張って」
その会話を最後に通話が切れる、スマホをポッケに入れて帽子の鍔を掴み空を見上げる。
見事なまでの晴天、流れる雲から眩しい陽射しが容赦無く差し込む。
けっこー暑いけど爽やかな潮風も吹いてきている。
「風きもちー」
鳴きながら飛ぶカモメを見上げ、ボクは港で一人立っていた。
長崎で軽い出張が決まったヒロトおじさんは、そのついでにボクを長崎に連れてきてくれた、ボクも前々から行きたいなーと以前何気なく話していたのを覚えててくれたのだろう。
それに…………久々にあの人にも会える。
そう思うと心がなんだか浮き立つ気持ちになる、ちょっとソワソワして落ち着かない………どうしよ、こんなの初めてだ。
「………変なとこ、ないよね」
今日はタンクトップの上に薄い夏用のパーカーを羽織り、下はショートジーンズを履いている。
陽射しも強いからキャップ帽とか被ってみた、普段服装とか気にしないけど………似合ってなくは無い、よね?
先輩まだかな……ていうか約束の時間まではちょっと早かったりするけどね。
そこにあった係船柱に腰掛けて港を見渡す、今日は三連休の初日という事もあって人が多い、家族連れもちらほら見掛ける。
何となく母と娘の2人組が目に入り、目で追ってしまう。
「……………家族か」
ボクには居ない………正確に言えば、知らない。
血の繋がった本当の家族を。
お日さま園のみんなの事は本当の家族と思っている、帝国サッカー部のみんなもいるから寂しさは無いけど…………もしもまだ、この世にボクの本当の親がいるのなら問いただしてみたい。
なぜぼくをすてたのかと。
どうしてそんなことができたの、と。
前まではこんなこと考えることなんて無かった、けど何故か最近………フットボールフロンティアが終わった後、時々そう考えてしまうようになっていた。
どうしてか分からなかった、こんなことは初めてでどうしたらいいのか、分からない。
…………行けない、折角の長崎なのにこんな沈んだ気持ちじゃ。
「ふー…………あっ」
軽くため息を着いて何となく見渡していると、ふとそれは目に入った。
ピリリと肌に来る感覚、若干猫背でゆっくりと歩くその姿、少し眠そうな顔で誰かを探している様子。
そんな男の人が目に入った、途端に………さっきまで沈んでいた気持ちが軽くなってゆくのを感じる。
あの日以来、連絡はしてたけど顔はずっと見れなかったあの人。
ボクにとって大きな存在、お日さま園や帝国サッカー部のみんなと同じくらい………もしかしたらそれ以上に大切で大事なかいぶつ。
「……ッ!」
気づいたらボクは駆け出していた、少し距離は離れてたけど持ち前のバネでその人との距離を瞬く間に縮める。
「りゅー」
「せーん」
「ん?」
「ぱーーーいっ!!」
「ヒカ、ぬごぁっ!!?」
先程までの鬱屈とした気分を吹き飛ばすように、暫くの間会えなかった寂しさを消すように、ボクは思いっきり先輩の胸に飛び込んだ。
先輩は突然の突撃にダメージを受けてよろめきながらも耐えて、ボクを支えてくれた。
「ひっさしぶりー!ずっと会いたかったよーっ!」
「お、おぅそっか、てか久しぶりって言っても数週間っすよヒカリさん……うぇっ」
「それでも寂しかったし!」
先輩の身体に顔を埋めながら力いっぱいぎゅーっと抱き締める、あーっ東京と長崎だから気軽に会えないし、今回来たのも先輩に会いたかったのが大半の理由だし、来てよかったほんっとー!
さっきまでの憂鬱な気分はどこかへ吹き飛び、ボクは大好きな人との再会の喜びに打ち震えていた。
先輩の体温と匂いを感じながら抱きしめる力を強める。
「ちょ、ヒカリ、さんっ、苦しいっすちょ、人目!目立ってる目立ってるって、うぇが」
「へへへっ」
「あの、アイス食べませんっすか、おごるんで!ヒカリっ、いででででで!」
暫くこの状態が、数分続いたのであった。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「うーん美味しー、食べてみたかったやつなんだー」
「そりゃよかった、いでで」
人が混む南雲原港から少し離れたところで、俺とヒカリはベンチに座っていた。
隣の少女は長崎の名物であるチリンチリンアイスに目を輝かせながら舌鼓を打っていた、そして俺は再開時のタックルからの締め上げによるダメージが残った状態でアイスを食べていた。
約束の時間前に来て探していた時にいきなりヒカリが俺に突撃してきた時は何事かと思ったわ………しかも以前よりパワーが上がっていたせいでその際に抱き締める力も尋常じゃなかったし………まじで真っ二つにへし折られるかと戦慄したわ………おまけに人目に滅茶苦茶晒されてしまった、何人か撮ってよな………?
それにしても………久々に面と向かって会ってここまで喜ばれるとは思わなかったな、そんな好かれるような事したっけ………寧ろ嫌われそうな気もするけど………まぁ、悪い気はしないか。
「なぁヒカリ、初めての長崎だけど行きたいとことかあるか?」
「うーんそうだなー………流先輩が普段行ってるとことか見ていたいかな、南雲原中とか!」
「そんなんでいいのか?」
「うんっ!どうせ後2日もあるし、ていうか先輩となら何処でも楽しいし!」
「無邪気だなぁ、口にアイスついてるぞ」
口元にアイスクリームをつけながら屈託のない笑顔で俺に言う、この子が俺に向ける気持ちは………来夏と同じ、でいいのかな。
まぁ………そうじゃなきゃ、あんなことはしないか。
………とりあえず今考えなくてもいいか、折角来たヒカリに長崎を案内するとしよう。
互いにアイスを食べ終えて出発する。
今日も中々に暑い、既に夏真っ盛りだ。
とりあえず適当なところを案内して回るついでに、俺とヒカリは歩きながら雑談をしていた。
「全国大会の後どうだ?いつもと変わらない?」
「そうだねー、ボクらは練習はいつもより頑張ってるし、それとあれから円堂君とは会ってるんだよね」
「へぇ」
「円堂君とは何時でも全力でサッカー出来るからさ、来年のフットボールフロンティアで南雲原に勝つ為に凌ぎあってるよ」
「円堂と気軽に会えるのは羨ましいなー、俺もやりてー」
「後でボクとやればいいじゃんっ!」
「おっとそうだな、わり」
ぷんすこと怒るヒカリを宥める、最初会った時は………なんと言うか、ちょっと狂気的な一面があったが………今はそれが鳴りを潜めているから隣にいるこの子は明るい無邪気な後輩だ。
本当のボクを見つけてくれた………か、俺は自分のサッカーの為にあの時のヒカリのサッカーを壊そうとしただけなんだが……………あれ、今更だけど俺かなりやばくね?その後も含めて結構やらかしてね?ていうか………来夏には何も話してないけど、今隣にヒカリが居ることバレたら面倒なことにならない?
……………よしこの話はやめよう、俺は過去を振り返らないのだ。
「………どうしたの、先輩?」
「あー、いや………来夏今何してるかなって」
「なんで?」
「え?」
「なんでボクが居るのに来夏先輩の事考えたの?」
「あ、いや、特に意味は」
「何時も隣に居るじゃん、じゃあ今はボクだけを見てよ」
「………へい」
来夏の名を口にした途端、ヒカリは真顔になって俺を見据えてスラスラと低い声で語り出す………やばい、あの据わった目は来夏が拗らせた時と同じ目だ、ヒカリまでそんなことになってたんすか。
まずい、さっきまでご機嫌だったのに拗ね始めたぞ、目は元に戻ったけど頬を膨らませてる………。
「ヒカリー」
「………」
「ヒーカーリー」
「……………」
「………カステラパフェ後で奢るから許してくれ」
「何それ!?」
耳元に小声で囁く……前にやった似たような手段をヒカリに仕掛けてみると、ヒカリは目を輝かせて俺に向き直る。
……………ヒカリはサッカーと同じくらい、食欲には抗えないからな。
「とりあえず機嫌直してくだせぇ」
「も、もーしょーがないなー、そのパフェと今日一日中ボクの事だけ見てくれたら許してあげるっ」
「あざっす」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「ほい、ここが海公園、俺が昔からサッカーするのに使ってる場所だ」
「おぉーっ、海が近くにある公園かぁ、潮風が気持ちいいなぁ」
流に最初案内されたのは、一人サッカーするのによく使ってたと言われている海公園だ。
聞いていたよりいい場所じゃん、海が近くにあるから心做しか涼やかに感じるしロケーションもめちゃくちゃ良い!
ここでのサッカー練習も楽しめそうだなぁ。
「それにしても……思ったより人少ないね?三連休なのに」
「別の浜辺に集まってるか、どっかに行ってるかじゃないかな、この辺りだと正直海も珍しいもんじゃないしな」
「そっか」
「…………んで来たのは良いけどどうする?良いとこなのはそうなんだけどこれ以上案内するようなものもないぞ?」
「んー、折角だし座ろ?」
良いとこだからゆっくりしてみたいと思い、ボクは先輩に海が良く見えるベンチ席に案内されてそこへ互いに座る………ちょっと近くに座っても良いよね、人少ないし。
初めて長崎に来てそれほど時間も経ってないけど、もう好きになっちゃいそうだなぁ、後でカステラパフェっていう絶対美味しいスイーツも食べれるし………てかそうだ!その前にちゃんぽんも食べたいな、本場の味って奴!
脚をパタパタさせてこれからの予定に思いを馳せる、先輩に会えただけでもテンション上がるのに明日からもこれが続くのだから楽しいったらありゃしない。
「楽しそうだな、ヒカリ」
「うんっ、なんかすごくワクワクしてるんだ、明日も先輩と一緒に居られるし!」
「あ、俺が居るのは確定なのね」
「当然じゃん!ボクだって何時でも来れる訳じゃないんだしっ」
「まぁ、特に予定がある訳じゃないから良いけどさ」
「へへーっ」
「でも流石に1日位は来夏に付き合わなきゃ行けない日もあるかもしれんし」
「………………………」
「あ」
「………ボクだけ見てよ」
「…………へい」
またあの幼馴染みの事を考えてる………今はボクが隣にいるんだから、この時位ボクの事だけ見て欲しいのに。
…………先輩は自覚が無いのか知らないけど、やっぱり来夏先輩の事が誰よりも大事なんだろうね、どういう好意の形かははっきりしてないけど、少なくともボクよりも大きいんだろう。
………あーもう、やっぱり羨ましい、長い時間ずっと一緒に居るからそうなってるんだろうなぁ………まぁそのせいであまり女の子として意識されなくなってるのもあるけど。
…………ボクに関してはそれでもいい、ていうか関係ない。
大事な人が傍に居てくれるなら、どんな形でもそれだけでいいって………最近そう思う様になってきた。
流先輩の事はもちろん好きだ、後輩としても、ライバルとしても、異性としても…………流先輩は、ボクの相手を面倒臭がらずしてくれるけど………ボクの事はどう思ってるんだろ。
「ねぇ流先輩、ボクの事どう思ってる?」
「………ん、どうしたいきなり?」
「何となく、思えばそういうの聞いてなかったなーって……あ、ボクは流先輩の事大好きだよ?」
「そすか………んーと、俺の人生初のライバルで、なんか………そうだな、妹みたいにも思えてきた、気もする」
「………妹?」
「幼馴染みの来夏以外にここまで距離感のある女の子は初めてだし、鞘さんは今んとこは先輩で女友達って感じだけど、お前は何となく………そう思うようになってるわ」
「………妹かぁ」
「わり、キモかった?」
「ううん全然、そう思ったのはボクだけなんでしょ?」
「まぁそりゃ」
そういう目で見られてたんだ、友達やライバルって言葉以上になんだか嬉しく感じる。
思えばお日さま園にいるみんなとの関係でお兄ちゃんって感じの人は居なかったな、1つ2つ上の子は居たけどそんなでも無かったし、ヒロトおじさんみたいな人達は完全に頼れる歳上としか見えなかったから。
…………兄妹、か。
もしかしてボクが先輩にここまで惹かれるのってそれが理由だったりするのかな、全国大会が終わった後に度々来るようになったあの寂しさは…………お日さま園の人達以外にもそういう深い繋がりを求めてたからかな。
………………こんな事をこの人にだけ思えるのは、そんな理由、かもしれない。
来夏先輩は流先輩にとって誰よりも特別かもしれないけど、こういう関係も負けず劣らずの強い繋がりになるよね。
「じゃあさ………これから流先輩の事お兄ちゃんって呼んであげようか?」
「え、いや……あんま真に受けるなよ、そういう感じがするってだけで」
「先輩にそう言われてさ、ボク結構嬉しかったよ?これなら来夏先輩並に強い繋がりが生まれてるしさ、そーゆーの男の人って好きなんでしょ?」
「そ、そうかな………」
「じゃあボクはこれから流先輩の事はお兄ちゃんみたいな存在って事にする!先輩で、ライバルで、お兄ちゃんで、初恋の人って事でっ!」
「多い多い、カオスな事になってるんすけど」
「いーじゃんっ、これならこれからのボクが先輩の中に強く残るでしょ?また離れてても」
肩が触れ合うくらいの距離を更にボクは縮めた、彼の肩に頭を載せて帽子を脱いだ…………うん、落ち着く匂いがする。
「ヒカリ、お前………」
「嫌じゃ無いんでしょ?」
「………そういう関係が欲しかったのか、お前」
「かもねー、流先輩なら全然おっけーだよ、てゆーか先輩が言い出しっぺでしょー?」
「う、まぁそうだけど………はぁ、手のかかる妹が出来ちまった」
「えへへー………改めてよろしくね流先輩、そして………お兄ちゃんっ」
「へいへい」
諦めたかの様に流先輩はため息を着いてるけど、ボクの頭を優しく撫でてくれた。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「…………って感じで流先輩はお兄ちゃんみたいに思う事にしたんだ」
「……うん、なんと言うか、凄いことになったねヒカリ」
「うん、でもボクの事を先輩が妹みたいだって言ってくれて嬉しかった、それってある意味幼馴染みよりも特別なんじゃないかなって」
「言ってしまえば家族の関係って事だしね、でもヒカリ………言い方悪いけどそれだと、その」
「何、おじさん?」
「…………いやなんでもない、明日も早いんでしょ?今日は寝たら?」
「そーするっ、おじさんは流先輩とお話したいんじゃないの?」
「そうしたかったけど今の所空きがあるか分からなくてね………俺の事は気にしないで、明日も楽しんできなさい」
「うんっ、それじゃおやすみ!」
ホテルのロビーで話していたヒカリの後ろ姿を見送り、俺は一人ソファーに座って外の景色を眺めていた。
先程あの子から今日の出来事を楽しげに語られた、その様子に喜びを覚えつつも………黒景流君に対する想いを語られた時は流石に反応に困った。
かなり好意的に見ていることは承知していたが、ここまでとは………普通の女の子か抱く好意とはちょっと違っているのは確かだろう。
ヒカリは昔から………言い方は悪いが、常人の感性からはズレていると言っていい。
普通ならそう感じないのにそう感じ、考え、実行する………その突拍子もない感性がサッカーにおいてかいぶつと畏れられるレベルの力を発揮しているのかもしれない。
………それ故に周りから避けられている節があったのは否めないが、彼女もそれを多分自覚していた、そしてそのズレが否応にも孤独を作っていたんだろう。
あの子は帝国に入る前から話していた……『ボクと同じかいぶつに出会いたい』と。
ヒカリがサッカーをする理由の一つには、自身が持つ感性を理解してくれる存在を無意識に求めていた………と俺は思っている、親代わりとしてこう語ってはいるが、結局の所ヒカリ自身にしか分からないことなのだろう。
「………だからかな?黒景流君にヒカリがあそこまで惹かれたのは」
直感的にせよなんにせよ、彼女は今までにない程のシンパシーを彼に感じたのだろう、自分に何か通づるものを。
それは同族を求めていたのか、それともかいぶつな自分を愛してくれる唯一人を求めていたのか。
でも確かな事はひとつある。
黒景流の存在が、彼女に少女らしい笑顔を齎してくれたのだと。
それに関しては感謝してるけど………けどなぁ。
「女関係に関しては目を瞑れないんだよな」
聞いた話によると大分面倒な事になってるらしい……かつての円堂君と似たような事になってるけどそこまで酷くは無かったんだが。
俺としてはヒカリを応援するが、先が不安になってしまう。
「………まぁ今ここで考えなくてもいいか」
時間はある、その時が来たのなら俺は道を違えないように導くしかない………同じ孤児で、血の繋がりは無くとも捨てられた家族として。
「…………かつての貴方のように、俺もなります」
夜空を見上げ、微かに灯る星を俺は見つめ続けた。
天河ヒカリ
円堂ハル、黒景流以上に理解不能な存在。
愛に飢えているのかもしれないし、とめどない自分の衝動に生きているのかもしれない。
少なくとも主人公には同族としてみている、その形が兄であり先輩でありライバルであり初恋の人であり……………まぁ、とにかく自由って事。
基山ヒロト
現在はヒカリの保護者、親代わり。
彼女のことを昔から見ているがそれでも理解出来てない部分があるが、それを含めて見守っていきたいと願っている。
ちなみに昔はよくサッカーの相手をしていた、流星ブレードもその際に見せていた。
黒景流
どけ、俺はお兄ちゃん………になったのか?
かいぶつに懐かれた主人公、特に否定的な感情は無い為受け入れた、しかしかなりややこしい事になったのは確か。
次は何時になるかは分かりませんが、地続きの話を投稿したいと思ってます。