忍原来夏とはただの幼馴染みです………それだけですが? 作:グラビトン
……………なんだか最近本筋に乗っ取った話の方に筆が乗ってしまう、このままじゃ本作のコンセプト崩壊や……!!
故に来夏ちゃんへ2度お祈りを。
フットボールフロンティア2回戦、その対戦相手が決まった。
九州屈指の実力とされる、通称パーフェクトサッカーの北陽学園。
合理的にプログラムされたトレーニングと戦術、それらを完璧に操作し指揮するキャプテン、空宮征の存在。
今回も間違いなく強敵だ、オマケに現時点でのこちらの必殺シュート全て、敵のキーパー技『グラビティデザート』という技を破れないとの事だ。
桜咲のシュートとかウチの最高火力なのに、それでも破れないのか………と思っていたが、笹波の言ってた事は間違い無いらしい。
「グラビティデザート!!」
「なっ!?」
だって、今まさに当校のグラウンドで実践証明させて貰ってますからね。
………そう、何故か南雲原中に来ていた北陽学園サッカー部の奴らに来夏がサッカーバトルを吹っかけたらしい。
どうやら本当に破れないか否か確かめたかったらしいが、こうして見ると無理だな、うん。
てかなんで南雲原中に来てんだろ北陽学園、スパイにしては堂々とし過ぎだし。
そんな事を考えつつバトルの状況を見守る、ちなみに笹波は母親が病院に運ばれるという大事が起きていたらしく今居ない。
そんな事があればしょうがないが、居たらまたこんな状況も変わってたのだろうか………そう思うくらいには押されっぱなしだからだ。
「どー見るよ、伊勢谷?」
「………パーフェクトサッカーの異名は伊達ではないということがこの小規模なバトルでもよく分かる、とにかく無駄がない………合理的なプレーだ、選手一人一人の動きもな」
「オマケにキーパーのグラビティデザート……あれも強力だね、生半可な火力じゃさっきの桜咲君みたいにまるっと抑え込められちゃうな」
北陽学園とのサッカーバトルと言うことで、南雲原中サッカー部全員がそのバトルを観戦していた。
先程から敵陣へシュートを撃ちまくってるが、どれもこれもあの砂塵の嵐に飲み込まれて最終的には敵の手の中だ。
「(………確かにこりゃ、笹波の言ってた技がいるな)」
笹波の考案した、桜咲と来夏の連携必殺技『春雷』
強力なスピンを掛けた来夏のボールに桜咲の強烈なストレートシュートを組み合わせることで放たれる技……聞くからに強そうだ。
とにかくこの技が今後の最優先事項とはなるだろう………けど。
「(それ頼りってのも良くないよなぁ)」
西ノ宮のスウェットスティルネスはある程度の威力がある必殺シュートであれば幾らでも破れたが、今回のはそうはいかない。
同じ威力を………いや、破れないにせよ貫通させる相性の技をもう1つ、誰かに会得して貰った方が勝率も伸びるだろう。
………ま、笹波と違って目処も無い考えですが。
とりあえず負け確なバトルを見守りながら、今後の特訓の見積もりを考えるのであった。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「いやーボコボコだったな、完封されてたわ」
「北陽は最後まで余裕だった、5人とはいえ底は見せてないということか」
「今回も手強い相手って事だ、どう戦る司令塔?」
「キャプテンの指示を元に俺がフィールドで突き崩す、まだ負けとは決まってない……それに、君が言ってた技があれば勝率も上がるだろう?」
「まーな」
ボロ負けしたサッカーバトルの後、笹波はそのまま帰る為俺達サッカー部もそれぞれ自主的な練習を終えてそのまま帰るか居残るかを選んでた。
俺と伊勢谷は軽く北陽学園とのバトルを観ていた立場から軽くおさらいしていた、とりあえず春雷の完成は間違いなく必須、ということでダブルフォワードには是非とも頑張ってもらいたいのですが………。
「……しかし春雷の完成は大前提として、それありきでは一点目は決めれたとしても二点目はまたマークされて厳しくなるのではないのだろうか、無失点の状況ならまだしも、流石にそうなる程甘くない相手だろうからな」
「お、俺と同じ事考えてるじゃん、いざって時のセカンドプランも保険としてあってもいいと思うんだよ」
「そうか………一応聞くが、宛は?」
「ない」
「期待した俺がバカだった」
冷めた声で眼鏡に触れる伊勢谷。
ひでぇ、まぁそうだけど………さーて、どうしたものか。
柳生は桜咲程じゃないけどパワーはある……でも試合までの期間でそんな技を開発して会得するのはギャンブルだな………妖士乃と伊勢谷もだいたい同じ、ていうか積極的にゴールを狙う役割でも無いからな……何かいいアイディアは降りてこないものだろうか。
「……ん、小太刀先輩と古手打か」
「お?」
歩きながら考えていると伊勢谷が古手打と、今日あまり見かけてなかった小太刀先輩を見つけていた。
よく見ると部室近くのグラウンドで、小太刀先輩がシュートを打っている姿が見られた、辺り一面にはボールが転がっている……古手打はそれを応援しているってとこかな?
とりあえず気になった為、俺達はそこに近づくことにした。
「うーっす元剣道部のお二方」
「はぁ、はぁ……あぁ、黒景君と、伊勢谷君」
「あっ、お疲れ様です!」
随分と練習に精が出てたらしく、小太刀先輩は汗だくだ。
そこを古手打がタオルとスポドリを手渡していた、この2人もいい先輩後輩関係だよな。
にしても、これってシュート練習で良いのか………あれ、なんか地面少し切れてる?
「先輩、これってただのシュート練習……じゃないっすよね?」
「………ふぅ、えぇ、ウチが今会得したい必殺技の練習よ、昨日からしててようやく形が見えてきたって感じだけど」
「ほう必殺技、ちなみにどんなものですか?」
「…少し待ってて」
伊勢谷が尋ねると、小太刀先輩は自分のカバンからスマホを取り出して操作すると、こちらに画面を向けてきた。
そこに俺と伊勢谷と古手打が集まりその画面を見る、それは過去の試合映像。
「(随分前の……てかこれホーリーロード、松風天馬の世代じゃんか)」
かつてフィフスセクターという組織が敷いていた管理サッカーと戦い、革命を起こして自由なサッカーを取り戻したとされる円堂守に負けず劣らずの伝説を遺した人だ。
そんな人の試合映像……いや、雷門のか?
そんな中、ある人物の必殺技が放たれた。
鋭い一閃、敵を切り裂くような蹴り。
……………これは。
「いやー私も今日見たばかりですけどかっこいいですよねーこれ、鞘先輩にぴったりな技ですよ」
「……まぁ見た目に惹かれたものあるけど、この技ならウチにも出来そうな気がしただけよ……黒景君は、どう思う?」
「……………」
「……………」
「……えっと、先輩方?」
「………伊勢谷」
「………黒景もそう思うか」
「えっ、えっと?」
「どうしたの?」
その必殺技の映像を見て、小太刀先輩を見る。
この時点で俺達はある確信が持てたからだ。
砂塵の嵐を切り裂く……春雷に次ぐ、第二の刃。
「あったな、セカンドプラン……!」
「……えっ?」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「と、言うことで……相手にこのシナノフォームを使わせて、敵陣の守りが薄くなった状態をカウンターで攻める、これを基本としたいと思ってる」
時間は飛んで翌日、サッカー部の皆はグラウンドで笹波の対北陽学園戦術を聞いていた。
北陽学園は数多の戦術携えており、空宮征を中心としたトライダイヴと他に戦術を敵チーム毎に切り替える、出来たばかりの南雲原中にはそういった戦術がまだ備わってなく、多彩な戦術を駆使されてしまえば勝ち目が薄くなる。
よって笹波は、相手の戦術を固定させる事を狙いにした。
まずはブロック・ザ・キーマンで空宮征の動きを潰し、そうすることで北陽学園3年のもう1人のストライカーとも呼べる品乃雅士による戦術、シナノフォームを誘発させる。
こちらもトライダイヴに負けず劣らずの攻撃力を持つ戦術だが、こちらはより多くの人数を攻撃に割く、よってその瞬間のボールを奪うかシュートを捕らえれば一気にカウンターチャンスが訪れる、という事だ。
「空宮征を防ぐ事を前提とした作戦か……とにかく戦術を駆使させなくさせるってことか」
「ブロック・ザ・キーマン、確かに集中してやりゃあの空宮といえど簡単には抜け出せねぇだろ」
「いや、このままだと簡単に抜けられますよ」
「えっ、なんで?」
「空宮征の個人能力が、ウチのマンツーマンにおける実力を超えている……だからこそチーム全体の防御と一人潰しをより強固にしなきゃいけない」
「ひゃーまた特訓……………あれ?」
すると、木曽路が何か気づいたかのような声を上げて話を遮った。
あら……察したのかな?
「………雲明、あの、間違いならそれでいいんだけど」
「何?」
「さっき言ってた2つって、どーやって上げんの?」
「………分かってて言ってるよね?」
「う、雲明君、まさか……!?」
とりあえず種明かしだ。
「サッカーやろうぜー」
「「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!!」」
ボールを回しながら名乗りを上げたら、木曽路と古道飼が俺を見るなり絶叫を上げて抱き合い、知る者は青い顔になり、そうでないものは何事かとギョッとしていた。
失礼な後輩だなオイ、ブロック・ザ・キーマンの立役者と言ったら俺でしょーに………そういうことで暫くの間俺がチームのサンドバッグになる事が決定した。
まぁ以前の特訓の人数分が増えたもんだと思えばやりがいもある、俺もこのピカピカなグラウンドでボール蹴りたいしね。
「ちょ、ちょっと雲明様!流石に手加減して貰えるようにしてるよね!?」
「もちろん、前よりは緩めてるけど」
「ほぼ意味無くない!?」
「しすぎたら意味無いでしょ、これはもう決定だから皆には頑張ってもらうよ」
「マジかよ………」
「お、オイオイ……オレらも黒景が超上手いのは知ってるけどよ、そこまで嘆く程か?数はこちら優勢だしよ?」
「それ、僕らが当初思ってたことと丸かぶりですよ星先輩……」
「あぁ?」
怪訝な顔で古道飼を見る星、いや睨むかアレ……?
ま、今回は人数も増えてるし笹波様の許可は降りてる、ある程度は俺の自由にやらせてもらうぞー?
「まぁとりあえずそういう事で、しかし最終的にはグラビティデザートを突破しなければなりません、だからこそ忍原先輩と桜咲先輩のお二人は……」
「何がなんでも春雷を完成させなくちゃならねぇわけか」
「はい、それが大前提なので」
「はーい、でも誰かさんが足を引っ張らなければなー?」
「なんだと!?お前の先行キックがいちいちブレブレなのがいけねぇんだろ!」
「はぁー!?自分のミート力不足を他人のせいにしないでよね!!」
「んだと!?」
「なによ!?」
「………桜咲君、忍原さん、大丈夫なの?」
小太刀先輩含め皆が困り顔で最重要ポジのダブルフォワードを見る、いや仲違いしてる訳じゃ無さそうだけどそこは合わせようぜ………ったく。
でも悪くないコンビかもな、暫くはあの二人だけにしてみるか。
「………まぁとりあえず試合まで日はあります、しっかりと必要な要素を揃えて当日に備えましょう」
笹波が声を上げて区切り、それぞれの対北陽の特訓を開始することになった。
◾︎◾︎◾︎◾︎
…………話だけは聞いていた。
かつて野球部と決闘をした5人から、黒景の実力は実際どんなものかと。
サッカー部関連の騒動が起きる前からサッカーに関しての話は妖士乃とよく聞いていたが、当時はどちらもサッカーの知識には疎かった為聞くだけ聞いていたのだが。
そして今、サッカーをやり始めてそこまでの期間は経ってないが上達は実感している。
黒景も影ながら我らの成長に一役買ってくれている。
実力者ではあるのだろう、それが俺を含めたサッカー面接で加入した5人の総評価のようなものだった。
………そして上記の話を聞いた5人からは。
「とりあえず難しく考えたら相手になれない」
と、返された。
相手にならないじゃなくて、なれない?
それは思ってたより黒景は弱いとか……いや、あの表情はそんなものではない………何よりその瞳からは当時の景色を思い出し、疲弊を表しているかのようだった。
聞いた時はあまり実感というか、どれだけものかは余り感じ取れなかった。
故に今回は良い機会とも思った、練習にもなるし次の試合で必要なものが揃えられると思ったからだ。
まぁ
「よっとら」
「………ッ!!古道飼!古手打!妖士乃!」
40回も過ぎればそんな感情は消え失せたわけだが。
「(今回は小細工無しで一気に高速ドリブルで自陣をごぼう抜きしたと思えば、俺がついた瞬間に無減速でヒールリフト!?回答策が永遠に機能しない!!?)」
既に通り過ぎてゆく黒景の後ろ姿を見ながら先程までのプレーを解析する、やる事は分かる、だが何故それが出来るコイツは?
理解が、出来ない……こんなプレーが出来たのか、コイツ!?
「古手打さん挟むよ!古道飼君は僕の後ろに!逆来たら食らいついて!!」
「わかりました!!」
「は、はいぃ!!」
妖士乃、古手打、古道飼3人が対策を講じて構える、ボールは上げたまま空中に浮かんでる状態で段々とゴールに近づく。
「…………」
すると先程までトップスピードを維持してた黒景がいきなりブレーキをかけて減速する、そのまま突撃するかと思っていたディフェンス陣は戸惑っていたが……彼は徐々に落ちてくるボールを真っ直ぐ見据えていた。
「……ッ」
そして、身体を捻りながら飛び上がり………そのボールを空中で後ろ回し蹴りを放った………は?
「なに、して……!?」
「クッ!!!」
常に警戒していた四川堂が構えるが、3人の間へ飛び出した威力とスピードを載せたストレートシュートに追いつけず……そのまま38回目のゴールを決められてしまった。
ピーーーーッ!!
「………ゴール38回目、です………黒景君、もう少し何とかなりません?」
「え、またダメ?」
「見てくださいよ皆さん、もう日が沈み掛けなのにボロッボロですよ?」
「………まぁ、こんくらい扱かなきゃな」
「…………誰か一人でも、ボール触れました?」
「………身体に触れた記憶すらない」
「………あれ、これもしかして前と同じでボール取れなきゃ終わりじゃない?」
「う、そだぁ……前よりなんか、止められなくない……?」
ブロック・ザ・キーマン習得&防御力向上訓練。
参加しているのは春雷コンビと小太刀先輩を除いた8人、訓練にはなっているのかもしれない、勝敗という観点を入れればボロカスという無慈悲な解答が貼り付けられるが。
「どーする、休憩しますかい」
「……いや、休憩というか既にタイムリミットじゃないですか?」
「あー確かに」
「(何故そこまで疲労を感じていない……?)」
運動量自体は彼の方が上回ってるハズなのに、疲れが微塵も感じられない……!?
「……まぁ皆動き良くなってるし、対応も早くなってるから、この分だと明日またやれば取れるよ、多分」
「ま、待てや黒景、また1日やらされると俺らぶっ壊れるぞ色んな意味で……!」
「んー………との事だけどキャプテンー?」
「……黒景先輩、途中自分のプレーしか頭にありませんでしたよね?」
「………………………いや?」
「今から先輩だけ、百目階段始めから最後まで50往復しますか?」
「待てそれは壊れるすみませんでした」
「全く………」
………だが、あの不規則な動きは前日の北陽学園には無い。
間違いなく黒景個人の力は空宮征を上回っている事には違いない、キャプテンが出すことも無いだろうが。
とにかく明日やるにしても本番にしても、今日の経験を頭と身体に残しておけば何とか着いてこれる筈だ………明日に関しては正直もうやりたくないがな。
「これが、南雲原の切り札………扱いの難しい事だ」
皆と同様グラウンドにへたりこみながらキャプテンに頭を下げている黒景を見る、良くも悪くも………今の南雲原中サッカー部には劇薬のような存在だ。
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「………どうやらあっちの地獄絵図は終わったらしいな」
「うん、もう流一人でチームメイト蹂躙してたね……」
流が雲明君に色々と言われてる脇目にグラウンドで死屍累々の如く倒れているサッカー部の仲間達を私と桜咲は苦い顔で眺める。
練習メンバーは皆ユニフォーム姿だけど、彼だけは自前の黒いジャージを着込んでいるから目立つ。
正直春雷の特訓をやるように勧めた雲明君に感謝してる、あんなの見せられたら相手なんてしたくない………ずっと私たちが連携の為の特訓をしてる最中ずーーっと流のプレーに翻弄され続ける皆の悲鳴じみた声が聞こえるもん、正直あんま集中出来なかった…………。
「にしても、改めて見るとヤベーよな黒景は………どうしたらあんな事出来るんだよ」
「だね………桜咲、流の事は正直どう思う?」
「あ?なんだいきなり?」
「別に、何となくだけど」
「…………バケモンだな、事サッカーに置いては得体の知れなさってやつを感じるわ……ま、それ以外のとこじゃただの気のいい寝坊助だがな」
「そっか、そう言えば桜咲も流と同じクラスだったね」
「最近気づいたけどな、もう重役出勤しないのかなんてからかわれたぜ」
「へぇ、誰にも変わらないな、アイツ………」
「……どうしたんだよ、黒景の事になると性格変わんのは慣れたけどよ」
「えっ、何言ってんの、別に……」
「隠してるつもりだろーがサッカー部の奴らは皆気づいてんぞ、ついでにどう思ってるかもな」
「うぇっ……!?」
た、確かに最近距離縮め過ぎたかもしれないけど、やっぱりそんな事してたらバレるか……いや待って恥ず……!!
「……おい大丈夫かお前?」
「大丈夫、びゃない」
「重症だな……俺は恋ってやつ経験ねーけど」
顔どころか全身焼けるように熱くなりながら蹲る、ていうかやっぱバレてた………嘘死ぬ死ぬ死ぬ………もう気軽に近づけないし無理だって恥ずいぃぃぃ……!!
「幼馴染みでーって奴マジであるんだな………そんな惚れてんならなんで告らねーんだよ」
「なんで告ればいけると思ってんの、あのマイペースバカ見て気づくだろ……」
「………あー確かに、気が1ミリも無さそうだもんな」
「もう無理しぬ」
「死ぬな正気戻せ……ま、今の時期に告白したらこっちも困るけどな」
「………うん、サッカーやってなかったら多分………なんでもない」
「…………敢えて聞かねーぞ、だから言うなよ」
少し引かれてしまった、まぁ当然だけど……。
…………初めて好きになった人で、認めてくれた人だから、こうなるのも当然じゃないのかな。
特に私はそういう家で育ってきたから………確かに、初恋とはいえ執着が他よりおかしい自覚はある、彼の懐の深さに甘んじてるのも。
でも、どっかに行くと思うと抑えられくなる。
壊れてるのかな、私。
そんな事を考えながら、流も含めて撤収していく皆を見る。
………もうこんなに遅くなってしまった、なんだがもうすぐ出来そうな気もするけど。
「とりあえずだ、明日にでもぜってー完成させようぜ春雷、そんでもって勝たねーとよ」
「……そうだね、頑張らなきゃね」
ちょっとだけ桜咲に話したから軽くなれたかもしれない。
………どうすればいいかは分からないけど、ウジウジ悩むよりかは進まなきゃなんにもならないし、今までだってそうだったでしょ、私。
「………そういや、あの練習小太刀さん居なかったな、昨日も居残って部室近くのグラウンドで何か練習してたし」
「あ、確かに……なんでだろ」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………ぅうっ」
肩で息をしながら片膝を着く、もう力が入らない………かなり撃ち込んだ、もう何十発蹴ったか数えてない。
それでもまだ完成には至っていない、正確に言えば近づきつつあるんだけど、まだハッキリとした輪郭は見せてない。
とりあえず、今日はここで終わりか………校庭のグラウンドからは悲鳴じみた声も聞こえなくなったし。
「………剣道なら、練習でこんな悪戦苦闘も無かったのにね」
自嘲気味に笑う、あの時の練習もキツイものがあったが……それは体力とか思ったように行かないとか、そういったものじゃない………寧ろ逆だ。
やれば出来た、剣道に関する事は大抵すぐに上手くなった。
それは決して悪い事では無いのかもしれない、当時の私もすぐに上手くなれたと喜んでいたのかもしれない、それとは裏腹に……何処か欠落したような感覚も無意識に感じていたが。
けど今はどうか………上手くいかない、こんなにも。
初めてした時もそうだ、ある程度の身体能力や運動神経はあってもキツかった、そして初めたての剣道みたいに上手くいかなかった。
あんなのは初めてだ、そしてどうにか形になれた時の達成感は、確かに感じ取れた。
剣道をしていた時は大会に優勝した時くらいしか、それはなかった筈だ。
そして今、ウチが偶然習得しようとしている必殺技は……次の試合で春雷に次ぐ切り札になる可能性を秘めている。
昨日の黒景君と伊勢谷君が、確信めいた目で私を見ていたから。
『この技は偶然にもグラビティデザートの弱点をついて破れる可能性のある技です、小太刀先輩は試合までにこの技を身につけてください、笹波には俺が話しておくんで』
『それは、本当にウチでいけるの?その技だけじゃ不安なのは分かるけど、ウチはまだ……』
『いけます、一人でこの技を見出してこうしてひたすら練習しているのなら、俺はそう信じます』
『黒景君……』
『折角サッカーやり始めたんだ、先輩も1回くらいヒーローになってくださいよ』
「……ヒーロー、ね」
正直、そこはあまり興味ない。
サッカーはチーム戦、その為に最善な行動がウチに出来るのならベストを尽くすまで。
でも、それ以上にウチは………キミが向けてくれた期待に、応えたい。
忍原さんじゃなくウチに見せてくれたその目に応えたい。
先程まで入らなかった力が沸き上がり、静かに立ち上がる。
「……帰ってまた、研究ね」
あの必殺技に関する動画は集めるだけ集めて研究している、こんな事までするなんてね………楽しんでる、でいいのかしら、サッカー。
「………そうね、楽しいかも」
◾︎◾︎◾︎◾︎
「(………そういや、進捗聞いてなかったわ小太刀先輩………頑張ってるよなきっと)」
「何考えてるの、流?」
「ん?いや小太刀先輩今日あんま話してないから、何してたかって」
「…………ふーーーーーん、好きなの?」
「え?俺にそういうのない事くらい知ってるだろお前」
「……まーねっ(ま、私にも無いんだろーな)」
「それはそれとして春雷は?行けそうか?」
「え?うん、明日にでも完成させるつもりだよ」
「そっか、桜咲と二人三脚で頑張れよ」
「う、うん」
「とりあえず俺は春雷には関わんないから、暫く他の人の面倒見とくわ」
「えっ」
忍原来夏
みんな大好き春雷の完成まで奮闘中、そして唐突な死刑宣告。
小太刀 鞘
主人公に頼られてテンションMAX、サッカー楽しい。
北陽学園の間はこっちがヒロインかも。
伊勢谷 要
現時点でセレクトキャラの描写に力を入れてる司令塔。
試合に居る者としての描写としてのキャラを立ててる、一回戦の結果も残してるため雲明からも信頼を寄せられてる。
パズル化はしてない。
万部……要る?
-
要らん
-
まぁ原作だし……