ヘルガ・ハッフルパフと不思議な国の猫   作:桜日和

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作戦会議

 

深い深い森の奥に、苔むした石壁と古い木材で組まれた小さな家がひっそりと佇んでいた。

窓辺には乾かした薬草が吊るされ、暖炉の火が静かに揺れている。

ハーブの香りが部屋いっぱいに広がり、外の冷たい森の空気をやわらげていた。

 

テーブルの上では、ヘルガが淹れたハーブティーの湯気がゆるやかに立ちのぼっている。

なのに、室内には妙にぴりついた気配が漂っていた。

 

集まっていたのは四人の魔女と魔法使い。

ゴドリック・グリフィンドール、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリン、そしてヘルガ・ハッフルパフ。

ヘルガの足元では、チェシャ猫が静かに尻尾を揺らしている。

 

 

最初に声を上げたのは、やはりゴドリックだった。

 

「魔女狩りを止めるだけなら簡単だろう!俺があの連中の前に立ちはだかって、力こそ正義だって教えてやれば――」

 

「奴らの行為を正当化することになるな」

 

「その正義感が、時に事態を悪化させると理解はしている?」

 

サラザールとロウェナがぴしゃりと返す。

 

ゴドリックは言い返そうとして、二人の冷静な目に押されたように口をつぐんだ。

 

「な、なんだよ。お前らが黙りこくってるから・・なぁ、ヘルガ?」

 

「ん〜、でも私もその案には賛同できないわ。力でねじ伏せるやり方はいつか限界が来るもの。まず、どうして彼らが急に魔女狩りを始めたのかを考えてみない?」

 

「考えるまでもないわ」

 

ロウェナがため息をつく。

 

「無知から生まれる恐怖・・それが魔女狩りの正体よ。問題は愚かな非魔法族の“間違った知識”なのよ」

 

スリザリンが鼻で笑った。

 

「じゃあ、その知識を与えたのは誰かって話になるな。この男を知ってるか?」

 

「知らないわ」

 

「私も」

 

「ん?あぁ、アーデン・ヴァルク神父だな!」

 

ゴドリックが軽い調子で言うと、サラザールは冷たい視線を向けた。

 

「俺が話した時は普通にいい人だったぜ?」

 

「お前が“普通”だと思う基準が一番信用ならん」

 

ゴドリックの眉が一気につり上がる。

 

 

空気がぴんと張り詰めたそのとき、ヘルガが静かに息を吸った。

 

「いい人が、いつも本心で話してるとは限らないわ」

 

「ヘルガまで神父を疑うのか?」

 

「違うの。信じたいから、きちんと話を聞きに行きたいのよ」

 

ゴドリックは眉を上げ、ロウェナは少し目を伏せ、スリザリンは視線をそらした。

 

ロウェナが口を開く。

 

「明日、ヘルガとサラザールがミサに参加して神父に話を聞きに行って。

私とゴドリックはミサ帰りの信徒たちの聞き込みをするわ」

 

家の中に漂っていた緊張が、その言葉で少しほどけた。

 

チェシャ猫は尻尾を床に垂らし、毛並みが落ち着くのを感じていた。

 

 

(最初はただの傲慢な女だと思ってたけど)

 

 

ロウェナの声は凛としていて、争いを避けつつ最善の道を示す力があった。

 

三人とも、自然と彼女に従っていた。

 

 

ロウェナはさらに続ける。

 

「では、大まかに役割を整理しておきましょう」

 

・ゴドリックの役割:正面突破

 

「指導者の前に出て、力じゃなく言葉で魔女狩りが間違いだと説く。わかったよ、俺にもできる」

 

サラザールが皮肉気に笑う。

 

「勢い任せの交渉がどこまで通じるか、楽しみにしておく」

 

「おい、信用してねぇだろ!」

 

 

・ロウェナの役割:知識の改革

 

「私は魔法の真実を体系化して伝えるわ。恐怖は“知らないこと”から生まれるのだから」

 

ヘルガが微笑む。

 

「ロウェナならできるわ。あなたの説明はとてもわかりやすいもの」

 

「当然よ」

 

 

・スリザリンの役割:裏からの操作

 

「魔女狩りを主導する連中の情報網を潰す。誤情報を流し、内部から崩す」

 

「げぇ、汚ねぇやり方だな」

 

「だからお前には任せない」

 

 

・ヘルガとチェシャ猫の役割:治療と保護

 

ヘルガはそっと手を組む。

 

「私達はこの小屋を広げて、避難所を作るわ。怪我をした人や怯えている子どもたちを守らなくちゃ」

 

チェシャ猫は尾を揺らし、にやりと笑う。

 

「巣づくりは得意だよ。追ってくる連中は、少し迷ってもらえばいい」

 

ゴドリックが明るく笑った。

 

「頼もしいぜ!お前らが後ろを守ってくれりゃ、俺たちは前に出られる!な、サラザール!」

 

「前に出るのはお前一人だ。・・まぁ頼み方次第では支えてやらんこともないがな」

 

火の粉がぱち、と跳ねた。

 

その微かな音に、ヘルガは未来の気配を感じた。

まだ遠く、まだぼんやりとしているけれど、確かに温かい何かが生まれつつあった。

 

こうして四人と一匹は、それぞれの役割を胸に刻んだ。

 

静かな森の家に、わずかな炎のような希望がともり始めていた。

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