愛を求める半端者   作:とぅる子

10 / 10
んーキャラ崩壊あります。
あと少しのエロ要素も。
ヒロアカのフィギュアとか眺めてエッチな描写を想像してますが文字に起こすのが難しいです…。
それにしても葉隠ちゃんのスタイル羨ましい…



10話

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順にに列で並ぼう!」

 

「委員長っぽいな」

 

「緑谷から託されたから余計に気合入ってるんでしょ」

 

「なんか委員長って感じでいいね!」

 

A組一同は午後のヒーロー基礎学で行う人命救助(レスキュー)の訓練場へ向かうため移動していた。

生徒たちの服装は戦闘訓練同様にコスチュームを着ている者が多く、中にはその時に壊れて体操着を着ている生徒もいた。

今回、天音は最初からコスチュームを着ており、両サイドにはコスチューム姿の耳郎と葉隠がいた。

まだ葉隠の個性に合ったコスチュームは作れていないので、相変わらず裸の状態だ。

そうして三人は緑谷に変わって委員長になった飯田の指揮の下、順番にバスに乗っていく。

 

「こういうタイプだった、くそう!!」

 

乗るバスが修学旅行とかで使うタイプの席だと思った飯田だったが、その予想は外れ席順もぐちゃぐちゃになっていた。予想が外れてしまったからか見るからに悔しがる飯田。よほど責任感の強いタイプなのだろうと、天音は彼を見てそう結論付けた。

 

天音の隣は幸か不幸か葉隠だった。周囲は楽しそうに話しているのか騒がしい。ここならちょうどいいかと天音は隣に座る葉隠に視線を移す。

 

「…葉隠」

 

「ん?なーに?」

 

「服はどうした」

 

「邪魔だから置いてきちゃった!どうせ周りには見えてないし良いかなって!」

 

あははとおどけて笑う葉隠を見て天音は引きつった表情を浮かべた。周りには見えて居なくとも隣の自分にはガッツリと視えているのだ。綺麗なシミの無い真っ白な肌が。

思わず顔を隠すように覆った天音。その様子を見ていた葉隠の小さな口が孤を描いた。

 

「…ねえ、天音君」

 

「っ?!…なにしてんだよ

 

バスで移動中にも関わらず、隣でゴソゴソしたかと思ったら葉隠は突然天音の膝を跨いで座る。彼女の存在を唯一知れるはずのグローブは丁寧に天音の隣に置かれていた。

そのため、他の皆は今彼女が裸で天音の上に乗っかっていることを知らない。

 

「…こんなことしても天音君以外、誰も視えてないんだよね?」

 

「そうだろうな」

 

「そっか…なんかドキドキするね」

 

「そんな真っ赤になるならやめろ」

 

「…やだ、やめない」

 

「子どもかよ」

 

呆れたように吐き捨てた天音は外の景色を眺めようとする。すると、葉隠は天音の顔を両手で包むと周りからは自然に視えるようにゆっくりと動かす。

 

「…なんで視てくれないの」

 

「視れるか」

 

「なんでよ」

 

「視えてるからだろ」

 

「視てほしいからしてるんだよ」

 

「…は?」

 

「天音君に視てほしいからこうしてるの。ずっと視てくれる天音君だから」

 

するりと天音の首に腕を回し、ギュッと抱きしめる葉隠は一瞬腰を上げるとさらに密着させるよう、寄せ付けた。

 

「…甘ったるい匂い」

 

「何もつけてないよ?」

 

「可愛い女の子は花の蜜の様に甘い匂いがするんだよ」

 

「え、そうなの?聞いたことなかった!」

 

「…妹が言ってたんだよ」

 

「可愛いこと言う妹さんなんだね」

 

「まあな、ってか良い加減隣に座れよ。危ない」

 

「私の事ちゃんと見てくれたら言うこと聞くよ」

 

耳元でクスクス笑う葉隠にどうしたらいいのか分からず困惑する天音。明らかに様子がおかしい彼女にどうするべきかと頭を悩ませていると、本人自らその答えを教えてくれた。

 

「…一佳ちゃんとお家で何してたの?」

 

「…は?」

 

「だから、一佳ちゃんとお家で何してたのかなって。本当にご飯食べてただけ?」

 

「嘘つく理由がないだろ」

 

「わかんないよ?もしかしたら二人が付き合ったりしたかもしれないじゃん。そうじゃなくても、その…」

 

急にモジモジしだす彼女に、何となく葉隠の心境が分かってきた天音。彼の予想では、葉隠は一佳に友達が取られてしまうのではという不安があると考えていた。自分と仲の良い子が他の子と仲良くしているところを見ると、独占欲とか嫉妬とかに似た感情を抱いてしまう、思春期学生によくあるあれ。

それを葉隠は拳藤に抱いていると天音は推測した。

だが、天音のその推測は少し違う。

嫉妬とか独占欲は当たっているのだが、それはとっもだちが取られてしまうというものではなく、想い人が取られてしまうというものだ。しかも葉隠にとって天音は自分のことを唯一視認することが出来、どこにいても見つけてくれる存在だ。

そんな彼女にとって特別な存在である天音への独占欲というものは凄まじいものであり、これは彼女はまだ自覚していないだろうが一種の依存に近い性質だろう。

故に、葉隠はどうにかして天音を繋ぎとめようとしているのだ。

その手段の一つがこれである。

ほぼマーキングといっていいほど、葉隠は天音の身体に自分の身体を擦り付ける。

恥かしいことをしている自覚はあるのか、天音の方に顔をうずめる葉隠は少し呼吸が浅く乱れていた。

 

「…はぁ、なにか勘違いしてる見たいだけど、別にそういうんじゃない。誰と仲良くなろうがそいつだけとずっとつるむってわけでもない。こんなことしなくても離れたりしないんだからこれからは控えろ。じゃないと…」

 

「っん?!」

 

「これでも男だ。理性を抑えるのに限界はある」

 

天音は左手で葉隠の腰を掴みグイっと寄せて、右手でくびれを掴みながら親指でグイっと下腹部を圧迫する。

突然来る刺激に思わず声が漏れそうになる葉隠だったが、天音の肩に口を押し付けなんとか漏らさないように抑え込んだ。

そして数回、葉隠の腰をトントンと小さく叩くき、隣に移動するよう伝える。するとなぜか葉隠はそれを一回は拒絶する。体温が上がったのか若干汗ばんできてしっとりしてきた肌に触れた天音は、彼女の様子などを観察してある一つの可能性を見出した。

 

「…お前まさか」

 

「~っ!!」

 

「…発情期かよ。今回は気にしないからさっさと隣に移動しとけ。今度から不安ならまず言葉にしろ、出来ることはしてやるから」

 

「…うん、ありがと」

 

葉隠はまるで熱があるのではないかというほど火照ったまま、ゆっくりと元の位置へ移動した。天音は気にしてないという意思表示か流れる外を眺めている。

対して葉隠は先ほどまで自分が座っていた天音の腰付近を見つめていた。そこには天音の服の色とかで分かりにくいがよく見ると小さなシミのようなものがポツッとあった。

それが確認できた瞬間、ボンッと煙が葉隠の頭から出た。

あのシミの正体を天音は知っているのだろうか、いや、ああやって気を使って知らないようにしている時点で分かっているのだろう、彼の心遣いに恥ずかしさと嬉しさとで心境がごちゃごちゃになる葉隠。

すると、天音は腕に付ける変身アイテムを起動し、自身のジャージ上下を取り出すと彼女に渡した。

 

「まだバス移動が続く。冷えるから着とけ」

 

「…洗って返すね」

 

力弱いか細い声でそう伝える葉隠はゴソゴソと渡されたジャージを着ていく。

天音の匂いに包まれた葉隠は大きさでぶかぶかなジャージを上まで止めると、襟元に顔を隠す。

 

(私確実に変態だ…)

 

悶々としたまま自分の今までの行動を振り返った葉隠。

後悔しつつも、でも好きな人に対してなら何でもしたいと思ってしまい、罪悪感はありつつも反省はあまりしていなかった。

そんな時、バスの中の話題はそれぞれの個性の話になっていた。

 

「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪、そして帳弥だな」

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

 

「んだとコラ出すわ!!」

 

「ホラ」

 

爆豪の性格などでバス内が騒がしくなっていく。

そんないじられている爆豪の幼馴染である緑谷は、小さいころからガキ大将だった爆豪が簡単にいじられていることに驚いているのか、頭を抑えて震えていた。

これから講義なのにも関わらず騒がしくなっていく車内に相澤の限界が来たのか、たった一言中止しただけで全員が私語をやめ静かになる。

それから到着まで各々緊張感を高めていくと徐々に大きなドーム状の演習場が見えてきた。

 

「「「すっげー!!USJかよ!!?」」」

 

バスを降り、会場に入るとその中はまさにどこかのテーマパークのような設備をしていた。

 

「水難事故、土砂災害、火事…etc。あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も…

ウソの()災害や()事故()ルーム!!」

 

(((USJだった!!)))

 

この演習場を担当しているスペースヒーロー─13号が軽く紹介した。13号は災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーローである。

 

そんな13号の下に近づく相澤は、今回担当するもう一人のヒーロー─オールマイトがいないことに気づき彼のことを聞いていた。

どうやら通勤時に制限ギリギリまで活動していたらしく、今は仮眠室で休んでいるとのこと。

その話をこっそり聞いていた天音は今回なんで三人のヒーローが担当しているのかを考えていた。

 

(災害救助なら13号だけで事足りるだろうことを今回はオールマイトとイレイザーの3人体制。講師としてならイレイザーの個性とかも含めるとこの訓練にはあまり適正的ではない。そうなると他の理由だが、もしかしてあの警報が関係してんのか?侵入者が出たのは確かに驚きもんではあるだろうしな。可能性はあるか)

 

色々と考えていると、13号が個性の在り方について話し始めていた。個性によっては命を簡単に奪えるため、その使い方を考え、人を助けるためにあるのだと心得てほしいと。

そうして13号の素晴らしい演説が終わり、ぺこりとお辞儀する。

天音は13号の話を聞いてから、その内容が頭の中で何度も再生されていた。

 

 

人を助ける…その()っていうのはどこからが人なんだろうか。

 

果たして本当に助けを欲している人にはその手が届くのだろうか。

 

もし人が助けを求めた時にちゃんと助けられるなら、あの時の俺らは…。

 

「はっ、わかんね」

 

思わず自傷気味に笑う天音。その彼から放たれた小さな声は誰にも届くことは無かった。

すると、階段を下りた先辺りで「ズズ…」っと不気味な音が聞こえた。

黒い穴のようなものが空間に空いたと思ったらそれは徐々に大きくなり、中からぞろぞろと不気味な集団が流れ込んできた。

 

「一かたまりになって動くな!」

 

突然相澤から放たれた言葉に生徒一同は唖然とした。

 

「13号!!生徒を守れ!」

 

相澤と13号が的確に動く、すぐさま迎撃態勢を整えた。

 

「なんだアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

切島が穴の方を見てはかつての入試の様にいきなり演習が始まっているのかと呟くも、どこかいつもと雰囲気が変わりわずかな焦りが見える相澤画それを否定した。

 

「動くな!あれは(ヴィラン)だ!!」

 

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…」

 

奇しくも、命を救える訓練時間に生徒たちの前に現れたソレ。

プロが何と戦っているのか、何と向き合っているのか。

それは、途方もない悪意。

 

「子どもを殺せば来るのかな?」

 

どんどん穴から増える敵に生徒たちはやっとことの重大さを理解した。

あまりにも深く重くそして暗い底なし沼のような悪意と首元にナイフを当てられたかのような冷たい恐怖が生徒たちに迫る。

 

「バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的(・・・・・・)があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

生徒の中でも数少ない冷静だった轟がこの状況を分析する。そして相澤が戦闘態勢を整えながら13号に生徒の避難誘導を支持する。

そして単身で敵の集団がいる適地へと突っ込んでいく。相澤もといイレイザーヘッドは装備したゴーグルで個性を抹消した相手を絞らせないようにしながら、首に巻いた捕縛布で的確に行動不能にしていく。

 

「すごい!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析してる場合じゃない!早く非難を!」

 

緑谷が相澤の戦いに感動しており、それを委員長である飯田が注意し避難へと促していた。

 

「させませんよ」

 

だが、悪意はそう簡単に逃がさない。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合」

 

A組一同の行く手を阻むように現れたのは敵連合と名乗る全身が黒い靄の様なものに包まれた異形の存在だった。

 

「せんえつながら…今回ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

敵連合が告げた今回の目的、それを聞いた瞬間、生徒たちの時は一瞬止まったかのように静まり唖然としていた。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが何か変更があったのでしょうか?」

 

黒い靄は周囲を見渡してはその今回の目的であるオールマイトの存在を見つけられずにいた。

すると、その黒い靄が広がるとその中から不気味な雰囲気を纏った一人の少年が現れた。

 

「どうやら朝方から活動してたみたいだな。ニシシ、相変わらず忙しいな平和の象徴様は」

 

顔はバイザーで隠されているが、露わになっている口は三日月の様に孤を描いていた。背は高く、恐らくA組で一番高い天音と同じ190はあるだろう。そしてその全身が黒に染まっていた。

 

【挿絵表示】

 

明らかに強者の類だと判断したのか、生徒たちと13号は一気に戦闘態勢に入るも、そのほとんどが相手から来る重圧に震えていた。

 

「…なるほど、それでここにいらっしゃらないと。ですが、少しここで生徒たちと遊んでいれば後に来るでしょう」

 

「お、いいねぇ。それじゃ予定通りに「させるわけねえだろうがぁっ!!」…お?」

 

呑気に話す敵二人に迫り大爆発を喰らわせたのは爆豪だった。そしてその爆発に続いて硬化した拳で思い切り殴ったのはツンツン赤髪が特徴的な切島だ。

切島の個性は爆豪の放った爆破の威力を気にせず突っ込める硬化。

威力を調整しなくていい爆豪とは相性が良く、即席にしてはなかなか良い連携を行っていた。

だが、その連携も他の寄せ集めの敵を相手にしていたなら効果はあっただろう。

 

「ハハッ!元気も元気!だが、まだ軽いなぁ」

 

爆破の煙が晴れていくと、そこにいたのは全く攻撃が効いていない黒い敵の少年。バイザー越しで目線が合っているかは分からないはずなのに爆豪と切島はまるで蛇に睨まれたカエルの様に、恐怖に包まれ身動きが取れなくなった。

 

「お前ら雑魚はいらない。雑魚は雑魚と戯れてな」

 

「そういうわけで、私の役目は…」

 

「ダメだ!どきなさい二人とも!!」

 

「ちっ!」

 

散らして嬲り殺す

 

黒い靄が生徒全員を包むように広がり取り込んでいく。

黒い少年はその光景を見て嗤い、13号はどうにかして生徒の安全を優先しようとするも個性上生徒を巻き込んでしまうため動けず、天音は最悪の状況を予期して舌打ちを溢しながらも、天音自身は傍にいた葉隠をその場で押し倒し分断を阻止、他の生徒達には大きなタコ型呪霊を呼び出し離れないように足で掴ませるも数人、間に合わず黒い靄に呑みこまれた。

やがて靄が晴れるとやはり数人見当たらない。

 

「やっぱお前は…良い!」

 

「殺気丸出しなんだよ」

 

靄が晴れてすぐ、天音に変わった形の短剣を振り下ろす敵少年。なんとか腕を掴むことで阻止するも、見かけによらない腕力に長くは保たないと判断した天音は、すぐさま口に呪力を流した。

 

「【ぶっとべ!!】」

 

呪いが込められた言葉はそのそのままエネルギーを纏い言霊となって放たれた。

勢いよく後方に吹き飛んでいく敵少年、その威力は凄まじくUSJの強固な壁を破壊する勢いで対象を叩きつけた。

確実に倒したと思ったのだろう、残った生徒たちに活気が戻るも、天音だけは全く手ごたえがなかったことに気づき、すぐさま状況を整えるよう動く。

 

「13号!生徒数人消えた!残ってる奴と一緒に誰が消えたか確認!」

 

天音は一番の脅威がいないうちにすぐさま13号に指示を飛ばす。天音の若干焦った声に全員が驚くも、すぐに天音に言われた通りに動くい一同。すると、打ち付けられたことで煙が上がっていた箇所から軽い足音が聞こえてきた。

 

「腕が使えないなら言霊で、いいな。状況判断もいいし実践慣れしてる。やっぱお前は他とは違うな」

 

「おや、ご無事でしたか」

 

「この程度じゃ撫でられた程度だろ。それより、思ったより散らせてないな?」

 

「ええ、上手く抑えられました」

 

「ニシシ、やっぱいいわ帳弥天音」

 

相変わらず無傷の敵少年はその不気味な笑みを崩さぬまま靄の敵の隣まで歩いてきた。

誰もがA組最強と認めている天音の一撃を喰らってへらへらしている敵少年を見て、生徒たちの顔は絶望に包まれた。天音の攻撃であれなら自分たちでは全く歯が立たない、そう納得させられてしまった。

 

「13号、全員を頼みます」

 

「なっ!?待ちなさい帳弥君!君はどうするんですか!?」

 

「アイツの狙いは俺みたいなんで相手します。黒い靄の奴もこっちくれば相手しますけど、それはなさそうなんで」

 

「君も私が守るべき生徒です!危険なことは許可できない!」

 

「貴方の個性は確かに強力ですが恐らくあいつとは相性が悪い。というかオールマイトがいない今、あいつに勝てる手段があるのは俺だけだ」

 

「しかしっ「それに」…!?」

 

天音は軽くストレッチをしながら13号の言葉を遮り、背中越しに告げた。

 

「俺、最強なんで」

 

その言葉に13号は反論することが出来なかった。

入試の実技試験の映像を見ていた時から、あまり戦闘経験がない13号でも天音の実力はわかっていた。もし仮に自分と天音が戦うことになっても、自分が勝つことは天地がひっくりかえっても無理だ痛感していた。

それどころか、この雄英に勤めるプロヒーローで彼に勝てる者はオールマイトを除いて0に等しいとも思っていた。

 

「…わかりました。君を信じます。ただ一つ、絶対に死なないでください」

 

「…余裕だな」

 

「もういいかー?」

 

天音がやる気を出したタイミングで、くたびれたような呆けたような声をかけるのは敵少年。

どうやら天音が戦闘に集中できるように待っていたようだ。

 

「待ってくれるとは随分と優しいな」

 

「集中してもらわないとつまらないからな」

 

「なら期待に応えないとな」

 

「ニシシ、頼むな」

 

天音は特別構えをとるわけはなく、あくまで自然体のまま真っ直ぐ敵少年を見ていた。

 

「俺は敵連合の…ソラ。よろしっ…く!」

 

「っ!?」

 

丁寧に頭を下げた敵少年のソラは、そのまま一気に地面を蹴り抜き予備動作なしでトップスピードに入った。

不意を突かれた天音はソラを視認できず、その速度のまま蹴り飛ばされた。

咄嗟に腕でガードするも満足に呪力を込められなかったかミシミシと腕の骨から嫌な音が鳴り響く。

 

「オラァッ!!」

 

吹き飛ばされた天音の速度に追いついたソラはそのままその拳を天音の顔面目掛けて振り抜く。

それを天音は指を鳴らすことで無義遊戯を発動し位置を入れ替える。

ソラの拳が地面を穿つ。

あまりの威力に大きなクレーターを作ったソラは孤を描いた口がさらに上がった。

 

「位置の入れ替え!面白いっ!」

 

「【動くな】」

 

天音はすぐさま呪言でソラの動きを止めるとそのまま身体を宙で返すとその勢いを利用して踵落としをソラに喰らわせる。しっかりと十劃呪法でクリティカルを強制させた攻撃は一撃喰らうだけで意識を刈り取る。

 

「…当たれば、な」

 

ソラは自身の腕で防御。そのまま天音の襟を掴むと力いっぱいに投げ飛ばした。

 

「…鎖ィ」

 

感か入れずソラは、いつの間にか彼の肩に乗っていた脳が剥き出しの小さい化け物の口から吐き出された鎖を掴むと、天音の身体を巻き付けるように放った。

 

「帰っておいで!」

 

そのままグイっと引っ張り吹き飛んだ天音がソラに引き寄せられる。拳を構えるソラはそのまま引き寄せられた天音目掛けて振り抜く

 

「…外れ」

 

「やるねぇ!」

 

殴られるギリギリで再度指を鳴らし位置を入れ替えた天音。今度はソラが鎖に巻かれる。

そんなソラにまるで拳銃の様に人差し指を向けた天音。

その指先に呪力が収束していく。

 

「【グラニテブラスト】」

 

極太のレーザービームがソラを包みこんだ。

周囲を破壊しながら吹き飛ぶソラに天音は警戒を緩めない。

すると案の定、まるで瞬間移動かの様に天音の懐に現れたソラは先ほど見せた短剣を構えていた。

 

「(っ!?こいつは受けられない!)っらぁ!」

 

位置を入れ替えカウンターで蹴りを狙う天音。それを読んでいたソラは背後に入れ替わった天音の右足をノールックで串刺す。

一撃もらうもそのまま勢いに任せてソラを蹴り飛ばし、一旦距離を取りつつ13号達の様子を確認する。

するとそこには黒い靄の個性であるワープゲートによって自身の背中を吸い込み塵にしてしまった13号の姿がいた。そしてそれと同時に出入り口に走りだす飯田。

その瞬間、彼らの狙いを察した天音はすぐさま自身の手を叩いた。

 

「(一旦縛りを解除、効果範囲ギリギリだがいけるな)走れ飯田」

 

黒い靄と飯田の位置が入れ替わる。その光景に全員が驚くも、この能力が誰のものなのかは全員が知っている。

A組の頼れる最強の援護だとわかった飯田は、そのまま後ろを振り向くことはせずに走り抜けた。

 

「おいおい、生徒逃がされたら残り時間少ないだろ」

 

「ならさっさと逃げろよ無個性野郎(・・・・・)

 

天音の言葉にソラの口が裂けるぐらいに大きく孤を描いた。まるで面白い玩具を見つけた子どもの様に。

 

「お?バレたか!初めて殺す前にバレたわ」

 

「この眼は色々と視えるんだよ。それこそ相手の個性能力とかな。んで結果は意外にも無個性。そのタフさは生まれつきか?」

 

「まあな。個性が絶対のこの世界で、俺は個性がないのに個性持ちよりも強い。無個性だからと散々馬鹿にしてきた奴らがその無個性に蹂躙される。皮肉だと思わねえか?」

 

「(別の世界でありながらそういう仕組みは働くのか?だったらなんであの子たちも…いや、今は一旦あいつに集中。あれは完全に伏黒甚爾や真希と同じ天与呪縛のフィジカルギフテッド。油断してると狩られるな)…知らねえよ。それより、足元注意だ」

 

天音は右手をソラに向けるとグッと拳を握った。その瞬間、ソラの立つ地面が地割れを起こすと強烈な衝撃波が発生した。

衝撃波によって地面から周囲に飛び散った赤い液体をソラが目撃した。

 

「…血か!」

 

「【赤血操術・血爆衝壊(ちばくしょうかい)】」

 

ソラを囲うように散った天音の血液が一瞬光ると、そのまま爆ぜて再度衝撃波が発生した。

だが、僅かな衝撃波の隙をついて目にも止まらぬ速度で回避したソラは、天音の背後に移動ると短剣を振り抜くも、その動きを目で追えていた天音は短剣の側面をはたくことで防いだ。

 

「【赤燐躍動】」

 

「体内の血液を操作して身体機能の強化!手数が多くて飽きないな!」

 

「お前は単調すぎて飽きてくるよ」

 

「なら変化を加えよう!」

 

「ッ!?」

 

ソラは短剣を握る手とは逆の手で天音の足元に鎖を巻き付け素早く足を払った。

 

「絶叫アトラクションは好きか?」

 

体勢を崩した天音をソラは鎖を振り回して地面や周囲の障害物に叩きつけていく。

超人的な力を持つソラの攻撃が容易に地面を抉り巨大な岩を砕いていく。

何度も何度ももの凄い音を立てて叩きつけられる天音は、思わず血反吐を吐いてただひたすらやられる一方だった。

その破壊力は周囲にいる生徒たちからも視認できている。

あの天音が一方的に嬲られている光景に生徒たちの顔色は徐々に青ざめていく。

 

「これより急上昇からの大旋回を得て地面に急降下いたします!お客様は衝撃に備えて下さいっ!!」

 

蹂躙を楽しんでいるソラはまるで遊園地にいるスタッフの様に話しながら、告げた通りに天音を振り回す。

残像が見えるほどの速度で旋回すると、グンッと振り下ろして地面に叩きつけた。

地面に巨大なクレーターと衝撃波が発生する。

ソラは天音の足元に巻き付けた鎖を回収し、また短剣を取り出した。

視線の先にはまるでトマトが潰れたかのように、ボロボロで倒れ伏した天音とそれを囲う飛び散った血。

 

「これぐらいじゃ死なねえだろー?さっさと起きろよ帳弥天音」

 

ソラは天音がいるクレーターの中には入らず、上からジッと見下ろしていた。

余裕な態度を見せつつも決して油断はしない。

それは的確に相手の力量を図れる強者故のもの。

 

「向こうは脳無が動き始めたか?てことはイレイザーヘッドは終わりだな…お?」

 

ふと敵が最初に出てきた地点から空気の変化を察知したソラは、向こうの戦況を簡単にだが把握していく。すると、空気の揺らぎが自身の下から発生したことに気づき、視線を戻す。

 

「ニシシ!良い眼(・・・)になったじゃん?」

 

そこには亡霊のようにゆったりと経つ天音の姿。

頭から血を流し、全身傷だらけのその姿は、天音がソラのもとへ歩くたびに塞がり、血が逆再生するかのように天音の体内に戻っていく。

 

「あ~…久しぶりに頭蓋割れた。頭ドロドロで内臓ぐちゃぐちゃ。…気分が悪いわ」

 

一歩ずつソラに近づく度に天音の纏う雰囲気が変わる。

それは完全に異質であり、どこか冷たく重い。

常人がそれに触れれば全身の細胞が最大の警告を鳴らすだろう、ひどく呪われた瘴気がソラの頬を撫でた。

 

「…ハッ!第二ラウンドだな?」

 

「今度は…俺の番」

 

A組最強と敵連合最凶、その両者の殺し合いはさらに加速する。

 




【赤血操術・血爆衝壊(ちばくしょうかい)
血液を爆破し衝撃波を発生させる。
地面に流しこんで地雷の様にすることも可能。
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総合評価:3813/評価:7.42/連載:36話/更新日時:2026年02月25日(水) 23:58 小説情報

術式「百鬼夜行」(作者:Virus Miss)(原作:呪術廻戦)

「百鬼夜行」を術式にしたらこうなるかもと考えてそれをオリ主にぶち込みました。


総合評価:1184/評価:7.12/連載:27話/更新日時:2026年03月30日(月) 00:00 小説情報


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