愛を求める半端者   作:とぅる子

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キャラプロフィール
名前:帳弥(とばりや)天音(あまね)
身長:192cm
個性:


3話

天音たちが試験を終え、手ごろな喫茶店でお疲れ様会を開催している中、雄英高校では今回の試験で大忙しだった。

 

「実技総合成績出ました」

 

ここは雄英高校の一室。

暗い部屋に大きなモニターがあり、そこには今回の実技試験の総合結果が映し出されていた。

そのモニターを見ながら雄英教師たちが受験生のデータが記載されたプリントを見ながら、話し合っていた。

 

「救助P0で2位とはなあ!」

 

「仮想ヴィランは標的を補足し近寄ってくる。後半、他が鈍っていく中、派手な個性で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」」

 

「対照的に敵P0で8位」

 

アレ(・・)に立ち向かったのは過去にもいたけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

「思わずYEAH!って言っちゃったからな!」

 

一人ひとりのスコアを見ては件の受験生の試験映像が映し出され、教師陣が分析したり盛り上がったりと色んなリアクションをしていく。

 

「だがなによりも問題なのは…」

 

「敵P863(・・・)、救助P78で堂々の1位どころか創設以来の歴代1位。圧倒的すぎる…」

 

そんな中、誰かが一人の受験生の話を出した。モニターの一部には受験票が映し出され、そこに貼られていた写真には綺麗な銀髪に宝石のような蒼眼、誰がどう見ても美形と判断するぐらいには整いすぎた容姿の子が真顔で写っていた。

誰かがその子の性別を見て驚く声が聴こえるも、それよりも衝撃的だった彼の試験中の映像が流れ、そのあまりの圧倒的すぎる実力に、教師たちは言葉を失っていた。

 

「誰よりも速く試験を開始していましたしね。それに途中からこの試験の主旨を理解している節があった」

 

「拍手によって瓦礫と仮想敵の位置を入れ替えていただけでなく、自身を分裂してケガ人の救助と治療。そして最後の…」

 

「あの巨大な拳を軽く受け止めた超パワーと、一刀両断にした見えない斬撃、50mの機械を1m弱まで圧縮させた技。…まとまりがなさすぎる!一体どんな個性だ?」

 

「…それだけじゃないでしょう」

 

周りの教師が天音について話していると、ぼさぼさ頭の教師が天音の映像を手元のタブレットで見直しながら話を割って入った。

 

「どういうことだ、イレイザー?」

 

「この帳弥天音という受験生、試験開始と同時にまずは全体を見れる高層ビルに移動している。それから仮想敵の位置を把握、他に人がいない場所を見抜いて一番遠いビルを利用して一瞬で多くの仮想敵の撃破。それと同時進行で自身を分身してケガ人の救助と治療。そして最後の巨大仮想敵にやった最短での処理。周囲に被害を出さないよう極限まで圧縮している。極めて合理的。おそらくこの受験生はそれを考えてやっていたんでしょう。現時点でそこらのプロよりも実力がある。下手したらトップにすら手がかかるかもしれない実力者ってことです。現に今わかる範囲での各会場で出た負傷者の数、彼がいた会場だけ0人。こんなこと、少なくとも俺がここで教師やり始めてから初めて聞く」

 

イレイザーと呼ばれた教師はモニターのリモコンを操作しながら天音のログを見返していく。

イレイザーの説明を聞きながら天音の動きを見返す教師陣は、彼が言った言葉の信憑性が増していくことに言葉を失っていた。

 

「誰かあの子の受験票とかもろもろ持ってきて!情報が足らなすぎる!」

 

すると教師たちが大慌てで室内を駆けまわる。

そんな中、試験を終えて受験生の安否や人数確認、そして会場の見回りなどを担当していた教師たちがその仕事を終えてぞろぞろと帰ってきた。

 

「お疲れ様~B会場の受験生、人数とけが人の確認終わって全員帰ったわよ。…あら!天音(・・)じゃん!相変わらず顔面強いな…ってどうしたのみんな慌てたような顔して?」

 

「「「…えっ?」」」

 

その担当で席を外していた教師、18禁ヒーローのミッドナイトがモニターに映る少年を見て思わず声を出した。

そしてそのミッドナイトに発言に反応する、先ほどまで大慌てだった教師たち。

静寂に包まれた一室。全員がミッドナイトに視線を向けている。

訴えているのだ、「説明しろ」っと。

それをミッドナイト自身も察したのっか、ポンッと手を叩いて納得した反応をする。

 

「彼なら訳あって今うちで暮らしてる(・・・・・・・・)わよ?あ、贔屓してないからね。校長に事情言って今日の試験内容、私だけ当日説明されるようにしてもらったんだから」

 

ミッドナイトの発言。その一部を聞いた瞬間、教師たちの目が変わった。

発言の内容からして、彼はミッドナイトと暮らしている。世間で18禁ヒーローと言われている彼女は現在独身。そんな中で、あまりにも容姿の整った血縁関係のない未成年の少年と同居している。それはつまりどういうことかというと…。

 

「あんたマジか!?」

 

「とうとうやりやがったな!?」

 

「未成年のイケメンって見境なしかよ!?」

 

「これが18禁ヒーローの真実か!」

 

「そういえば前よりも肌艶が良いというか綺麗さが増したと思った!」

 

「おい誰か警察呼べ!それとヒーローだ!」

 

「ばか!ヒーローはお前だろ!?いや俺もだ!?」

 

年増(・・)だから焦ってんだろ!」

 

「うっさいわよあんたらっ!!…って誰だ今年増(・・)って言ったやつ!?」

 

世間体的にアウトだ。

暗いことを良いことに言いたい放題に言う教師陣、それに激怒するミッドナイト。

するとモニターの前にちょこんと立つ一匹のネズミがいた。

 

「みんな落ち着くのさ!彼がミッドナイトと共に住んでいるのは私も知っていたから、安心してほしいのさ!ただ、私も彼のことは気になってる!だからなんでもいい、彼のことを教えてくれるかい?」

 

ネズミの正体。名を根津といい、この雄英高校の校長を務めている。ハイスペックという個性を発現したみんな大好き知的なネズミだ。

 

彼からもお願いされたミッドナイトは、「別に隠すこともないし全然話すわよ…」と頬を膨らませ不貞腐れながらぼそりと呟いた。

 

「と言っても私自身、彼の個性を全部理解しているわけじゃないわよ?情報としては記載されている個性情報となんら変わらないし、なんなら今初めて見るようなものもあるわね。あの位置の入れ替えとか」

 

「普段の彼の行動などはどうなんだ?」

 

ふと疑問に思った教師が質問する。これだけ優秀な生徒なら、あと心配するのは普段の素行など。

だが、この話題をミッドナイトに振るのは間違いだった。

 

「それはもうめちゃくちゃ良い子よ!まずご飯がめちゃくちゃ美味しい!もう外で食べれなくなるぐらいには何を作らせても絶品で、仕事終わりにあの子の作った料理で飲むビールがもう最っ高なの!あと掃除も分身して隅まで綺麗にしてくれるしでもう全部の家事完璧!朝が弱くて、寝起きは荒れてることが多いけど、それも可愛いのよね!ほら、これでもわかると思うけど、この子めちゃくちゃビジュ良いじゃない?もうそれをずっと眺められるだけでも最高なのに、普段からかっこいいと可愛いでもう眼が肥えちゃってね?もう独身でもいっかっていうか、そうならざるを得ないっていうかね!とにかくもう最高で…」

 

質問を聞いたミッドナイトは明らかに目の色を変えると、先ほどの様子とは変わって突然テンションを上げた。

ぺらぺらと早口で話すその様子はまるで好きなものを語るオタクの姿。

普段との変わりように周りの教師が若干引いている。

何名かは「これもう手遅れだろ…」と合掌しているものまでいた。

そうして空気が変な方向に行ってしまっていることに気づいたミッドナイトは、なんとか自分で冷静に戻ると、一旦咳払いして、周りが本当に聞きたかったことを話し始めた。

 

「…普段から個性訓練ってことで家の中とか庭でちょくちょくあの子が個性を使う様子は見てきたわ。あの不可視の斬撃もあんなに強力なのは初めて見たけど使ってたわね。普段は食材切るのに利用してたけど。あの圧縮するのは缶とかを潰すのに使ってたでしょ。分身なんかしょっちゅう使っては家事を分担してやってたし。怪我の治癒も私が仕事でケガした時なんかも治してくれてたし…あ、そうそう!前に包丁を造ってくれたわよ!凄い切れ味が良いの。あと息を吹きかけると食材を凍らせて冷凍保存したり。結構なんでもやってたわね!…にしても本当にカメラ写り良いわね。これ切り取って現像できるかしら…」

 

ミッドナイトから語られる普段の天音の様子とその個性の使い方を聞いて、本日何度目かの静寂が教室を包む。

その汎用性の高さもそうだが、誰もが驚いたのはその個性の精密さだ。

あれだけ派手な現象をひき起こせるなら威力の調整も難しいだろう。そしてあの年齢の子はいかに派手な動きが出来るかに注目しがちである。個性を使った時の見栄えを気にするのは、あれぐらいの年齢の子たちにはよくあることだからだ。

だが、彼は先を見据えてかその調整を今の内からしていたのだ。

先を見据える力とその努力の結果が、今回の成績を生んだのだ。

誰かが重い唾を呑みこむ。

これはとんでもない逸材が入ってきたと。

周りが天音の凄さを実感したことがわかり、思わず保護者替わりのミッドナイトはその立派な胸を張り、鼻が伸びてドヤ顔を披露する。

ミッドナイトの話を聞いて、根津は一度そのつぶらな瞳を閉じて、胸の中で天音の人間性を高く評価した。

 

「決まりだね…帳弥天音、彼を今年の主席として合格するのさ!通知は主席ということでオールマイトと私からしよう!クラスはA組、担任はイレイザーヘッド、相澤君にお願いするのさ!」

 

「…了解しました」

 

「今日彼に伝えるかどうかはミッドナイトの判断に任せるのさ!保護者としての喜びもあるだろうしね!ただ、くれぐれも口外はしないように、ということだけ注意してほしいのさ!異論がなければ、次はクラス分けなどの話を進めていこう!」

 

こうして教師たちをその圧倒的な実力で戦慄させた天音は、無事に主席合格という形でヒーローへの一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

時は少し遡り、試験が終わった頃。

 

「それじゃ、試験お疲れ様!かんぱ~い!!」

 

「「かんぱ~い!」」

 

「…かんぱい」

 

天音たち4人は雄英高校の近所にある喫茶店で、仲良くお疲れ様会を開催していた。

店内に迷惑が掛からない程度にジュースで乾杯すると、お洒落なランチを食べながら各々改めての自己紹介をする。

 

「まずは私から!名前は葉隠透です!個性は見ての通り透明化だよ!身に付けてるものは透明化できない(・・・・・・・・・・・・・・・・)!よろしくね!!」

 

乾杯の音頭を取った葉隠が初めに自己紹介をした。したのだが、彼女の個性を聞いた瞬間、一緒にいた耳郎とサイドテール少女が試験の時のことを思い出した。

彼女は確かに透明化という個性で容姿が見えなかった。見えていたものは今彼女が着ている制服と同じように、身に付けていた手袋と靴。まるで浮いてるように見えたそれは彼女の個性での結果だった。浮いている部分以外は彼女は何も身に付けていない。つまりあの試験中、彼女は…。

 

((ま、まさか、すっぽんぽん!?))

 

衝撃の事実に気づいた耳郎とサイドテール少女は、決して言葉には出さなかったが、内心で戦慄していた。

いくら個性で誰にも見えないと言っても、あんな大勢の人の前で手袋と靴だけでいるのは、こう、女として色々覚悟がいるなとわかり、二人は葉隠が将来大物になるかもしれないと感じたのだった。

 

「次はウチね。名前は耳郎響香。ウチの個性はイヤホンジャックっていうこの耳ね。遠くの音を聞き取ったり、自分の心音を大きくして飛ばすことが出来んの。受かってるかわからないけど、よろしくね」

 

「それじゃ、私は拳藤一佳。個性は大拳って言って私の手を巨大化できるんだ。できることは今はただ力いっぱい殴るだけ!なんか入学前からこうして友達が出来て嬉しいよ。よろしくね」

 

耳郎とサイドテール少女の拳藤の自己紹介が終わり、三人は天音の自己紹介を待ってジッと彼を見つめていた。

一方の天音は三人の個性を聞いてなにやら黙り込んでしまっていた。

だが、なにかと周囲の視線を集めることが多かった天音は三人の視線を感じ取り、自身の自己紹介を始めた。

 

「最後は俺だな。名前は帳弥天音。苗字はあまり好かないから下の名前で呼んでほしい。個性は呪術と言って、特殊なエネルギーを使って色んな事象をひき起こすことが出来る。まあ主な例としては試験中に見た通り。確かに入学前からこんなに可愛い子たちと知り合えて役得だ、よろしく」

 

最後に軽く爽やかな笑みを三人に向ける。天音は自身の容姿が整っていることは自覚している。女の子にどのように微笑みかければ好印象を与えられるのか、そういった類のものは熟知している。

現に他の女の子たちよりかは騒がしくないが、この三人は確かに今の天音にドキッとしていた。

 

「あ、天音って第一印象と結構違うんだな!覚えてるか?試験説明の時に隣に座ってて、ちょっと起こしたんだけど?」

 

拳藤が少し戸惑いながら天音に話かける。それを見て天音は、気まずそうにしながらも確かにそんなことあったなと思い出していた。

 

「あ~!それ私も観てたよ!凄い怖かった!」

 

「ウチも観てたけどまああれはね…」

 

「あれは寝起きだったから。あと知らないやつに話かけられるのはあまり得意じゃないっていうのもあった」

 

仕方ないだろ、と肩を竦める天音に三人は苦笑いを浮かべる。

そんな彼女たちのリアクションを華麗にスルーして注文したコーヒーを嗜む。

その姿が容姿も相まって絵になっている光景に天音と一緒にいる三人はもちろんのこと、その店にいる男女問わず全員がその天音の姿に見惚れていた。

 

面が良いというのは最早一つの個性にも並ぶ破壊力があるのかもしれない。

その店内の様子を外でたまたま見かけた、頭がブドウみたいな特徴的な形をした受験生は血涙を流し天音を睨んでいた。

 

 

 

 

その晩、ミッドナイト、もとい香山睡がやや疲れながらも上機嫌に帰ってきた。

事前に帰宅時間の連絡を貰っていた天音は、香山の帰宅に合わせて晩御飯の準備を済ませていたので、二人で仲良く一緒に晩御飯を楽しんでいた。

そこで香山から一足先に主席合格だという話を聞いた天音。

自分のことのように喜ぶ彼女を見て思わず笑みがこぼれる。

 

(お兄ちゃんやったぞ、二人とも。…っとそうだ。皆にも連絡しとくか)

 

食事を済ませて香山が風呂に入っている間、天音は自身のスマホである人物にメッセージを送った。

 

天音『見事に主席合格だった。今度お祝いに皆でご飯奢って』

 

??『いいな、何食いたいか考えとけよ』

 

送ったら一分も経たずに短い返信が来たことに口が緩む天音。

返信内容通り、何を食べようか考える天音だった。

 

 

 

 

 

 

「先生、黒霧、あいつ合格したってさ。しかも主席」

 

「流石ですね。これはうんとお祝いしなくては」

 

『せっかくだし僕からも何か祝おうかな。天音の欲しい個性があればいいんだけどね』

 

「個性どうこうはどうでもいいけど、今度皆で飯奢れだってさ。あんたなら良いところ知ってるだろ、先生」

 

『なら知り合いがイタリアに美味しいお店をやっていてね。個室もあるし、黒霧の力で4人で行こうか』

 

「お任せを。私自身も何か作ってお祝いしましょう。確か天音は甘いものが好きでしたね」

 

「あいつはこの前チョコケーキが食いたいって言ってたな。黒霧、俺も同じ奴でいい。お前も食えよ」

 

「ええ、次来るときまでに準備しておきましょう。お祝いしましょう皆で」

 

「ああ、これからが楽しみだ」

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