愛を求める半端者 作:とぅる子
それからは爆豪が緑谷の個性に焦り怒りを露わにして詰め寄り、それを相澤が個性で止める。そこで相澤がドライアイということが発覚。
そのまま時が進んで全種目が終了。
結果は天音の堂々1位、大して最下位は緑谷というので幕を下ろした。
除籍に関しては相澤による合理的虚偽であった。
理由はただ焦らせてこっちの実力を最大限に引き出すためだったものらしい。
まあ本人はこう言っているが、明らかに緑谷が可能性を見せなければ除籍するつもりだったんだろうな、と天音は読んでいた。
テストが終わったあと、天音の個性に人を癒す治癒の力があることを知っていた雄英は、保健室で働いているリカバリーガールに誘われ緑谷を治療してくれないかと頼まれるも、今回はそれを拒否し、そそくさと家に帰った。
晩飯時に、一緒に住む香山と今日のことを話し、どこかツボに入ったのか爆笑してボールを吹きかけられる天音。受ける人によってはご褒美なのだろうそれを、天音は慣れているのか笑ってスルーしていく。
そのまま酒をがぶ飲みしていく香山は完全に出来上がり、ご飯を食べ終えた後に風呂に入る天音だったが、突如酔っぱらった香山が生まれた姿で乱入。まあこんな出来事も日常茶飯事なためこれも天音はスルー。
なんだか怪しい息遣いを背に受けながら、二回目のシャンプーや身体を現れる天音。
なんていう休まらない家での生活を過ごし一日が終わった。
そして次の日。
午前は普通の授業を受け、昼は自作のお弁当を教室で食べ、次は午後の授業。
その科目は【ヒーロー基礎学】
その授業を担当する教師は。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
No.1ヒーローであり平和の象徴。オールマイトが教室にヒーローコスチュームを着て入ってきた。
今年から雄英高校の教師になったらしく、そのオールマイトが直々に教えるのが今回のヒーロー基礎学だ。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ!!」
単位数も最も多いぞ、付け加えながらその内容を説明しているオールマイト。
そしてなにやら手に持つカードをこちらに突き出し、今日の授業内容を打ち明けた。
「早速だが今日はコレ!【戦闘訓練】!!」
突き出されたカードには【BATTLE】との文字。
どうやら今回は入学前に送った個性届と要望に沿ってあつらえた
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!」
オールマイトの指示を聞いた全員が元気な返事をすると、着替えるために教室を移動する。
「あれ、天音ケースないの?」
「ほんとだ!まだ作ってないの?」
手ぶらで移動する天音に同じみの耳郎と葉隠が話しかけた。
「いや、作ってある。まあ後で見せるわ」
「「?」」
仲良く首を傾げる二人。葉隠に関しては顔は透明だが天音にはその姿がばっちり見えているため、彼女の表情は当然わかる。
疑問だらけのまま着替えるために分かれると、天音はそのまま先にグラウンドへと一人で向かっていった。
「…!お、おや?帳弥少年!戦闘服には着替えないのかい?」
「ああ、俺のは
先にβへと向かった天音を待っていたのはオールマイトただ一人。
皆が着替えるのに時間がかかると踏んでいたのか、なにやらコソコソと紙切れを見ては天音の存在に気づいて慌てて懐に隠していた。
絶対今回のカンペだな、とオールマイトが懐にしまった物の正体を見破った天音。
「な、なにかな帳弥少年!?私に答えられるモノなら何でも答えちゃうぞ!」
腰に手を当てふんっ!といきまうオールマイトに、天音は優しく微笑むとその整った口を開いた。
「なら早速、…オールマイト、どこか
「…っ!?」
心配そうに聞く天音の質問に、突然顔色を悪くするオールマイト。
明らかに動揺している彼の様子を悟られないように観察する天音。
「ど、どうしてだい!?別にどこも悪くないぞ!この通り、元気いっぱいさ!!」
力こぶを見せつけるようにポーズをとるオールマイト。明らかにナニカを誤魔化し隠してる様子に思わずジトッと視線を送る天音。
「(バレバレだな。そして彼の個性、明らかに
観察していく中で得た情報をまとめながら、次の質問をしようとしたところでこちらに向かってくる複数の足音に気づき、諦める天音。
すると案の定、戦闘服に着替えたA組がこっちへと集まってきた。
「…体調気を付けてくださいね。先生は無理をしすぎていると思うので」
「あ、ああ!ありがとう帳弥少年!その心遣いだけで凄く嬉しいぞ!」
「…そういえば苗字は嫌いなので、下の名前で呼んで下さいね」
よろしくです、と付け加え話を終えた二人。そんな中で、戦闘服に着替えた皆が集まると、各々、戦闘服を初めて来たことで似合っているか確認したり、照れていたり、あとは女子の際どい恰好に興奮する変態など、色んな反応を示していた。
するとやがてみんなの視線は派手な戦闘服を着た中で唯一制服姿でいる天音へと集まっていた。
「天音、いつまで制服で居るのさ?いい加減着替えないの?」
耳郎が距離を詰めては天音の姿を指摘する。
流石にもうそろそろ着替えるか、と天音は身に付けていたブレスレットに手を触れた。
「俺の戦闘服は自作でね。常時持ち運べるようにしてんだよ。こんな風に」
ブレスレットに触れた瞬間、一瞬光り輝くと、天音の姿が黒い影の様なもに包まれる。
そして一瞬でその影が消えると、先ほどまで制服だった天音の服装が首元がやや長い黒一色のものへと変わった。
かなりスタイリッシュな姿になった天音。着なれた服装に思わず笑みがこぼれる。
突然服が変わった天音にオールマイト含めてA組全員が驚きのあまり大声を上げていた。
「何それかっこよ!?変身アイテム!?」
「あれ自作って言ってたよな!どういう原理よ!?」
「イケメンだけじゃなくて変身アイテムとかも作れるのかよ!?もうなんかズルいだろいろいろ!」
今の現象に天音へいろいろ言うのは主に男子群。
確かに変身アイテムはヒーローを目指すものなら憧れるものだろう。ましてや男の子はこういうのが好きなものである。それは№1ヒーローも例外ではない。
「(なにあれかっこいい!私も欲しい!あとで作ってくれるか聞いてみようかな…)かっこいいじゃないか天音少年!」
画風が違うオールマイトの眼がキラキラ輝いていた。
やはり大人でも、胸の内に少年心を持っているのだ。それが男というものだ。
久しぶりに純粋な興奮をしているオールマイト、は一旦置いといて、耳郎は興味深そうに天音のブレスレットを眺めていた。
「凄いねそれ。本当に天音が自分で作ったの?」
「まあな。俺の個性的に応用すれば色々作れる。だから基本俺の使ってるものは全部自作だな」
「あんたの個性、ほんとなんでもありだね」
耳郎は呆れたように笑うと、天音の個性を詳しくは知らない他の生徒たちが彼の能力が気になり質問攻めにあっていた。
すると、流石に授業時間が押してしまうため、オールマイトが大きく咳払いを一回行う。
流石に優等生が集まる雄英、その咳払い一回で察したのか一瞬で静まりオールマイトの方へと注目する。
「始めようか有精卵共!戦闘訓練のお時間だ!!」
ここグラウンド・βは入試の時に使っていた演習場と同じ場所。
ただ、これから行うのはあの時と同じ市街地演習をするわけではない。
これから行うのは屋内での
「敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ」
数々のヒーロー活動をその身一つで成し遂げてきたオールマイト。
そんな彼の説明は誰よりも重く現実的なものだった。
「監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会。真に賢しい敵は
「君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて、2対2ノ屋内戦を行ってもらう!!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」
今回の授業内容を説明するオールマイト。
すると入試の時にも質問していた真面目そうな眼鏡をかけた少年─飯田が質問していた。
「オールマイト!我々A組は全員で21人います。ぺアで組むなら一人余りますがこの場合はどうするのでしょうか!?」
「そこなんだけど、天音少年。今年の入試主席である君にお願いがあるんだけど、天音少年にはこのコンビ決めから抜けて数的不利の状況で戦ってもらいたい。もちろん一人が嫌ならどこかのペアをトリオにして行う形でもいいんだが、どうかな?」
入試主席。その単語をオールマイトが発した瞬間、前にも感じた殺気が混じったような突き刺す視線が天音に向けられた。天音はその視線の質のようなものを感じてはそれが前と同じ人物のものだということに気づいて小さく溜息を溢した
「(ウザ。質の悪い殺気向けるぐらいなら自身あるんだろ。…ちょうどいいか)…俺は別にどちらでも。ソロの場合相手は二回戦うってことですよね。そうなると一回やってその疲労がって言なる可能性もある。その場合も考慮して俺もペアとソロで二回やるでもいいですし。オールマイトの決定に従いますよ」
「ううむ、なら天音少年にはにペアとソロで二回やってもらおうかな!入試の実技試験、君の立ち回りを観させてもらったが素晴らしかったからね!皆にはぜひ同年代の天音少年の動きを見てもらいたい!」
「わかりました。そんな持ち上げられるのも困りますけど、やれるだけのことはやります」
「ありがとう!それじゃくじを引いてコンビと対戦相手を決めようか!」
【対戦ペア一覧】
《ヒーロー側》 《敵側》
A:緑谷・麗日 VS D:爆豪・飯田
B:障子・轟・尾白 VS I:帳弥・葉隠
E:青山・芦戸 VS C:峰田・八百万
F:砂糖・口田 VS G:上鳴・耳郎
J:瀬呂・切島 VS H:蛙吹・常闇
K: 帳弥 VS L:
「最後のLは5回目が終わったあと、希望者を募ろう!みんなの疲労などもあるだろうからね!」
もの凄い早さでペア組と対戦相手をボードに書いていくオールマイト。そして一通り書き終えると、今度はこの訓練に現実味を持たせるべく、今回の設定をカンペを見ながら説明していく。
「そして次に今回の状況設定を説明するぞ!今回は【敵】がアジトに【核兵器】を隠していて、【ヒーロー】はそれを処理しようとしている!【ヒーロー】は制限時間内に【敵】を捕まえるか【核兵器】を回収すること。【敵】は制限時間内まで【核兵器】を守るか【ヒーロー】を捕まえること!これが今回のッ君たちの状況だ!」
設定アメリカンだな!!
オールマイトの作った設定にA組一同の心のツッコミが重なる。
まあオールマイトは一時期アメリカにも行っていたため、似たような現場に遭遇したことがあるのだろう。
そうして無理やり納得すると、一組目の対決を始めるらしく、一組目は現場へ移動。他の者は別室のモニターで観察するらしく、移動を開始した。
5分間の作戦会議をした後、作戦を開始するらしい。その様子も別室のモニターで映し出されるらしい。
ヒーロー側の緑谷と麗日はしっかり建物の見取り図を見ながら話している。音声はどうやら聴こえないらしい。
対して敵側の爆豪と飯田はあまり作戦を練っていないように見えた。
天音はモニターに映る爆豪をどこか冷えた眼で眺めていた。
するとくいっと自身の袖を引っ張られて、天音の視線が下に移った。
「ねえねえ天音君。同じペアだね!よろしく!」
「…ああ、そうだな。よろしく」
袖を引っ張ったのは同じペアの葉隠だった。天音の身長が190cmを超え、葉隠は150cmちょい、かなりの身長差を誇るため天音は自然と見下ろす形になるのだが、葉隠の戦闘服が問題で視線をどこに向けようか迷っていいた。
葉隠透という少女の個性は透明化。自身の肉体が全て透明であり、服やアクセサリーなどの身に付けるものは浮いて見える。そういった個性のため、彼女の個性を活かすなら自ずと装備するものは少ない方が真価を発揮する。
するのだが、こういった肉体に影響を及ぼす個性というのは、自身のDNAなどを利用すれば、その個性効果を物に付与することもできることがある。
例えば発火の個性を持っている者が、自身の個性で服が燃えてしまうことがあっても、自分のDNAを利用して作った服なら、発火しても燃えない服が作れたりするのだ。
それで行くなら、彼女の個性である透明化も、葉隠自身の髪などを利用すれば着ているのに透明で素肌よりも当然防御性能が高い戦闘服を作ることも可能なのだ。
だが、葉隠はそれを知らないのか、はたまた誰も見えないからとその考えすら思いつかなかったのかは不明だが、現在の彼女の恰好は入試の時と同じく生まれた時の姿、つまり真っ裸なのだ。
唯一身に付けている装備は少し立派なグローブのみ。それ以外は完全に綺麗な肌しか見えない裸だった。
そしてその透明化という個性の都合上なのか、異様に距離が近いのだ。
天音にも周りにも見えてないから良いと思っているのか、天音の腕をガッツリ抱きしめて話している。
いくら透明だからと言っても感触はある。
なので、天音の腕はしっかりと葉隠の心地よい少し高めな体温と女の子特有の柔らかい肌の感触が伝わっていた。
これがそこらの高校男子なら己の高ぶる欲望と葛藤するのだろうが、そこは色々と人生経験多めな天音は特にドギマギすることなく、身に付けていた変身ブレスレットに触れると先ほどまで来ていた制服のジャケットを出して葉隠にかける。
突然の天音の行動に驚いて肩が跳ねた葉隠。思わず綺麗な天音の顔を見上げると、彼の輝く蒼眼と目があった。
「(…えっ、これって今目合ってるよね。透明だから今まで人と目が合うことなんて長い時間一緒に過ごしたことがある家族とか友達ぐらいなのに。…もしかして)…ね、ねえ天音君。もしかしてだけど、私のこと…」
恥ずかしさともしかしたらという期待で鼓動が早まる葉隠。もはや心臓の音しか聞こえないのではないだろうかという程、うるさく響くそれをなんとか無視して次の言葉を放とうとした瞬間、天音の顔が葉隠の耳元へと近づいた。
「…その話はあとでしてやる。今はとりあえずそれ着てろ。風邪ひく」
「ひゃっ!///」
耳元で優しく囁かれたその声を聴いてゾクッとした感覚が葉隠を襲った。男性特有の低く落ち着くような声。
それをまるで見えているかのように、耳の位置ピンポイントで発した天音に、葉隠の中にはただ慣れない快感に驚いたのと自分の存在全てを見てくれるかもしれないという希望が交差していた。
なぜだか急に静かになった葉隠に不思議に思いながらも今はモニターに映る始まったばかりの緑谷達の戦いを観戦することにした。
すると今度は、耳郎が天音の隣に移動してきていた。
「天音はAとD、どっちが勝つと思う?」
「耳郎か。そうだな、実力で言えばDの方が優勢だろうな。個性だけで考えればDは他のチームの中でも戦闘向き。対してAの緑谷は個性の使用が不安定、そして麗日はその手で触れないと発動が出来ない。戦闘慣れしてない時点で個性を発動するまでの流れが組めない。そうなると総合的に機動力のあるDチームが勝率が高いだろうな」
天音の細かい分析に言葉を失う耳郎。あまりにも分析し慣れているというか、実戦を知っている人の視点だなと思い、思わず質問をした。
「麗日への評価がやけに具体的だけど、触れて発動する個性のヒーローに知り合いでもいるの?」
その耳郎の質問を聞いて一瞬周囲の空気が揺らいだ感覚が彼女を包む。
不思議に思い天音の顔を窺うと、彼は微笑みながら答えた。
「まあ前に少しな。後はよくヒーロー活動をテレビとかで見ていたからそれもあるのか」
「へ~、あとはあんた前にちょっとヤンチャしてそうだもんね。喧嘩の経験とか多そう」
「ふっ、まああながち間違いじゃないかもな」
「やっぱそうなんだ?これからはやめときなよ?」
「はいはい、もうしないよ」
「にしても話し戻すけどさ、Dチームが勝つって言いきると思ったんだけど、そうじゃないんだよね?それはどうしてなの?」
「…単純な実力差があっても、冷静さを失えば格下にも負ける。変なプライドで目の前を失ってるやつが戦うなら誰でも結果はわかる」
「なるほどね。…そんなこと、この短時間でわかるもんなの?」
「…わかるさ。人の眼を見れば大体は。…必要だったからな」
「…それってどういうk「いきなり奇襲かよ!?」な、なにっ!?」
二人で話し込んでいると、いつの間にかモニターで両チームの戦いが進んだのかA組の他の生徒が騒がしくなった。
それに倣って天音と耳郎、そして正気に戻った葉隠がモニターを観ると、爆豪が単身で緑谷たちに奇襲を仕掛けていた。
「爆豪ズッケぇ!!奇襲なんて男らしくねえ!!」
「奇襲も戦略!彼らは今、実戦の最中なんだぜ!」
「緑谷くん、よく避けれたな!」
A組の生徒たちとオールマイトが戦いを観ながら話している。そんな彼らの様子を静かに眺める天音はどこか冷えた眼差しを向けていた。
その後も戦いの展開は進んでいき、麗日は先へ進み、緑谷と爆豪の一騎打ちへと変わった。
緑谷を視る爆豪の眼、明らかに負の感情の類が込められたその眼をモニター越しで観た瞬間、天音は心底つまらなそうに爆豪を睨むと、モニター室の端へと移動し目をつぶった。
「ちょ、天音。今一応授業中だよ、寝るのはダメだって!」
「そうだよ天音君!評価下がっちゃうよ!」
「結果はもう見えた。MVPは飯田か麗日。勝ち方もおそらく褒められたものじゃないだろう。ここまでくればもう観る価値もない。やることないし寝る」
身を丸くして目を瞑るやすぐに静かな寝息が葉隠と耳郎に聞こえた。
天音の自由さに二人は苦笑すると、今はそっとしとこうかと天音を二人で挟むように隣に並んで、遠くからモニターで戦いを観戦することにした。
『ヒーローチーム!WIIIN!!!』
しばらくしてオールマイトによる勝敗が告げられた。
それと同時に目を覚ました天音。モニターに映る両者の様子から、大まかな試合内容を推察し、そのうえでくだらないなと、次の出番である自身の動きを考えていた。
一同の講評を容だけ参加し、話は見事に聞き流す。
ちらりと天音は爆豪の様子を見ると、下に観てた相手に負けたことがよっぽどショックだったのか、顔色は悪い。
ずっとうざったい視線を向けていた相手の無様な結果にゴミでも視るような視線を爆豪に向けた天音は、講評が終わり次の二回戦へと移動する。その時、わざと全員がまだいる前で爆豪に話かけた。
「無様だな」
「…あ゙?てめぇ今なんつった?」
「
「…喧嘩売ってんならそういえや」
「先に売ってたのはお前だろ?気持ち悪い視線向けて。自尊心の塊さん、主席が取れなくてそんなに悔しいか?」
「…何がいいてぇんだ?…あ゙?」
「回りくどく言っても単細胞にはわからないだろうからハッキリ言ってやるよ。…お前、ヒーロー向いてないよ。今のお前を形成してるその全てが、俺の鼻に突く。俺の
「…ぶっ殺す!!」
「跪け」
とうとう我慢の限界を迎えた爆豪が掌を爆破させながら天音に襲い掛かる。
すると、天音が小さく何かを呟いた瞬間、凄い速度で地に頭を付けて跪いた。
突然の爆豪の行動に驚くA組一同。
その瞬間を見ていたオールマイトはその人々を安心させる笑顔を崩さぬまま、わずかに冷や汗を流した。
(私の角度では天音少年の背中しか見えないが、なにか動いた様子はなかった。異変があったとしたら、至近距離にいた爆豪少年しか聞き取れないぐらいの小さな呟き。一体天音少年は何を…?)
「戦いたいなら最後のL、入れよ。現実を見せてやるから」
「…上等じゃねえか。ぜってぇぶっ殺す!!」
「犬風情ができるわけないだろ。お前、
今にもまた襲い掛かろうとする爆豪。だがその姿は無様にも地面に頭を付けていた。
すると、本来なら保健室に運ばれるはずのけが人である緑谷が小型搬送ロボに運ばれてモニター室へとやってきた。
「ち、ちょっとハンソーロボ!緑谷少年はケガ人だ!すぐに保健室に!」
『チガウ。今回ノケガ人ハ全員トバリヤアマネノ下へ運ブヨウ命令サレテイル!』
「え、そうなのかい天音少年」
小型搬送ロボのハンソーロボの答えに戸惑うオールマイトは、困惑しながら天音を見ると、天音はなにかを思い出したかのように、手をポンッと叩いた。
「ああ、そういえばそうでした。リカバリーガールに言われてたんだった。今回の授業で出たけが人は可能な限り俺が治しますよ。できる限り他の戦いも観れた方が良いでしょうし」
そういうやいなや、天音は自身の手を使って手影絵のようなものを組む。
すると、天音の影がまるで生きているかのように蠢くと影の中から生き物が出てきた。
「円鹿、治療してやれ」
人の数倍は大きい体躯に四つ眼が特徴的な鹿が、天音の影から現れた。
「「「でかい鹿だぁぁぁ!!!」」」
「可愛い!」
その姿に驚くA組一同を相変わらず無視する天音。円鹿と呼ばれたその巨大鹿は天音の指示に従いゆっくりと担架に乗る緑谷に近づくと、鼻先をピトッと触れさせた。
すると緑色のオーラが緑谷を包むと、みるみるうちに見えていた怪我が治っていく。
やがて見える範囲だった怪我が全て消えると、円鹿は役目を終えたことを知らせるために天音にその頭を摺り寄せる。
「ありがと、お疲れ様。また呼ぶかもしれないからそれまで休んでてくれ」
頭を撫でると円鹿は気持ちよさそうに四つの眼を瞑ると、主の言われた通り一旦影に戻っていった。
衝撃の光景に静まり返る中、次の準備をするべく葉隠を手招きして移動する天音。
全く読めない彼の個性と人間性に、ただ黙ってその背中を眺め見送るA組一同。
その数分後、彼らは目の当たりにする。
数あるヒーロー科高校の中でも最高峰の雄英、その主席に君臨する男の実力を。