愛を求める半端者   作:とぅる子

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いつのまにかお気に入り数が増えていて驚きと同時に嬉しいです!
評価はあまり気にしていませんが、それでも高評価をいただけるのは嬉しいのでこれからもよろしくお願いします!


7話

「…オールマイト」

 

「ん?どうしたんだい天音少年」

 

「次の戦闘、カメラ音声を全てオンにしてくれませんか。個性の質問が多いので話しながらやります」

 

「それは別に出来るけど大丈夫かい?あの二人は手強いぞ?」

 

「大丈夫ですよ。だって俺…最強ですから」

 

天音は余裕ともとれる自身に満ち溢れた笑顔をオールマイトに見せ、次の戦場へと向かって行った。

そして場所は件の建物へと変わり、敵側の二人は今回コンビであり仲間なのにも関わらず、空気は重くギスギスしていた。

 

「おい半分やろォ!てめぇは手ぇ出すな!あの女顔は俺が殺す!」

 

「それは出来ねえ相談だ。アイツには負けた借りがある」

 

「反論すんなやぁ!!ならてめぇはここで留守番してろや!俺が先行する」

 

田舎のヤンキーの様にガニ股でズンズンと歩いていく爆豪。その背中を眼中にもないのか無視して轟は核爆弾の周囲を氷で覆う。

今の轟に爆弾で勝敗が決するような結果は求めていないし考えてもなかった。

今、彼が求めるのは天音と真っ向から戦って勝つこと。自身の半身の個性だけで己の力を証明することだった。

 

「俺はお前の力なんかなくても№1になってやる。母さんの力だけで勝ってやる。そしてお前の()を完全に否定してやる。…クソ親父」

 

火傷の痕が残った顔の左半分に触れる。炎は使わない。必要ない。ただそれでも、火傷痕が残ったところに触れればまるで燃えるように熱が籠っている。憎悪が込められた熱。

ただそれだけが彼の中に渦巻いていた。

 

 

 

 

建物の外で軽くストレッチをし、その時が来るのを静かに待つ天音。

 

 

体内にある呪力を廻す。

 

もう微かにしか覚えていない遥か昔の記憶。

 

だが、呪力を廻せばその失った記憶が僅かに蘇る。

 

生まれ変わってもなお、前と同じ容姿。唯一違うには、昔の親友が持ち合わせていた特別眼。

 

全てを見透かす、最強を創った片翼の力。

 

呪力を廻す。

 

昔の力が教えてくれる。

 

この力の使い方を。

 

この力の在り方を。

 

この空っぽの器に注がれた数多の呪いが不気味に蠢いた。

 

 

「さあ…呪い合おうか」

 

天音の瞳が開かれる。空よりも美しく澄んだ青が万物を見透かしていた。

 

 

 

『それでは【屋内対人戦闘訓練 最終戦 開始】!!』

 

オールマイトが戦闘開始を告げる。

天音はゆっくりと建物に入る。

すると、天音の眼の前に一人戦闘態勢を取る少年がいた。

 

「勝負しろやァ!女顔ォ!」

 

「うっさ…。いちいち叫ばねえとまともに話せねえのかよ」

 

「黙れやァ!!」

 

爆豪はもの凄い剣幕な表情で天音に突っ込んだ。

それを無防備で眺めていた天音。

すると、天音は自身の手を爆豪に向ける。

 

「じゃあ俺の個性について教えようか」

 

天音が突っ込んでくる爆豪を半身になって軽々避けると、その手で爆豪を軽く触れた(・・・)

 

「俺の個性の名は【呪術】。呪力という人間の負の感情から生まれるエネルギーを利用し様々な事象をひき起こせる」

 

天音に触れられた瞬間、爆豪は時間が止まったかのように動かなくなり、まるでガラスのプレートに印刷されたかのように天音の掌に収まった。

 

「例えばこれ、俺に触れられたものは1秒間の動きを20分割にしたイメージを作らなければいけない。それが失敗するとこうして動きを切り取られフリーズする」

 

クルクルと爆豪を回して遊ぶ天音。するとそのフリーズした爆豪を空に放つと、拳を握った。

 

「ゲームとかで言うクリティカルってあるだろ?いわば時々強力な攻撃が放てるラッキーパンチだ。俺はそれを対象物を7:3に内分し、その点を強制的にクリティカルが発生する弱点へと変えることが出来る。ここで問題だ。フリーズし身動きが取れない爆豪、強制的に弱点を作れる力を持っていたら何をするでしょう?」

 

拳を握った手に炎のようなオーラが纏われた。そのままその拳を空に放った爆豪へとぶつけた。

あまりの威力にプレートは砕け、爆豪の腹へ天音の拳が刺さる。

 

「ガハッ!?」

 

血を吐き吹き後方へ飛ばされる爆豪。

 

「おねんねにはまだ早いだろ。ほら、もう一回だ」

 

飛ばされた爆豪にいつの間にか追いついていた天音がもう一度爆豪に触れる。

再度フリーズした爆豪にもう一度クリティカルを発生させる。

それをいくつも繰り返す。

 

何度も何度も何度も。

 

そこら中に飛び散る爆豪の血。なんとか爆破で吹き飛ばされる途中で体勢を整えようとするも、それよりも速く移動する天音にそれを阻まれる。

 

「さて、これが俺の個性、その一部だが…まだやれるか?」

 

もはや傷の無いところはないほど、ボロボロになった爆豪を見下す天音。

なんとかもがき立とうとする爆豪はまっすぐに天音を睨んでいた。

 

「まだ…ま、けて…ねえ、!」

 

「ならさっさとかかってこいよ。お前の悪いところその1だ。おしゃべりが多い」

 

「ざ…けん、なぁ!!」

 

「ほら、頑張れ頑張れ」

 

フラフラになりながらも立ち上がった爆豪に、天音は棒読みで「おおー」と拍手しながら眺めた。

だが、あまり時間もかけたくなかった天音は体から泥のようなものを出すと自分と同じ姿をした分身を一体作り出した。

 

「そいつを後で連れて来い」

 

「めんどくさ…自分でやれよ」

 

「ならお前が轟をやれ」

 

「俺なんだから分かるだろ?」

 

「なら最初から従えよ」

 

「退屈なんだから仕方ないだろ」

 

「まあ確かに。とりあえずよろしく」

 

「はいはい、いってら」

 

「そうだ、最後に言っとくが…」

 

本体の天音はふらつく爆豪の腹を殴りその場に倒れさせると、その髪を掴んで爆豪を睨みつけた。

 

「本当に人を殺したことも、一度も死んだこともねえ奴が簡単に俺の前で殺すなんて言うな。本気で殺すぞ」

 

本気の殺気を爆豪に放つ。それは一種の呪いとして彼の中に入り込んでいく。

言葉を失う爆豪。それは果たして恐怖からか、はたまた得体の知れないナニカが天音の瞳の奥で見えたからか。

ただ今までかいたことの無いほどの大量の汗が爆豪から噴き出した。

天音は分身に爆豪を任せて先に進む。徐々に周囲の気温が微かに下がっていたことに気づき、次の対象が近くにいることを肌で感じた。

A組きっての戦闘センスを魅せた爆豪をいとも簡単に倒しいてみせた天音。

次の標的へと進む彼の脚は通学路を歩くかのように軽やかだった。

 

 

これまでの戦いを観ていたモニター室。それはまるで無人の部屋の様に静かだった。

ただ、誰かの息遣いが聴こえることで、この部屋に人がいることが分かる。

誰かが話すまで、その静寂は続く。

その均衡を壊したのは一体誰か。

 

「なんだよ…あれ」

 

誰かがどうにか出した声でつぶやく。

その声音に込められた感情は戸惑いとそして恐怖。

 

「【呪術】人間の負の感情をエネルギーにして事象を発生させる力。相手をフリーズさせたり、弱点を強制的に作ったり、異形の生物を召喚、そして自分の分身をも作り出せる。なんだよそれ、最強だろ!?」

 

「帳弥の言ってることが本当なら実質あいつは色んな個性を持ってるようなもんってことだよな!?なんかズッケェ!」

 

「あんなに対人戦闘のセンスが凄かった爆豪がああも一方的にやられるって、高校生のレベルじゃないだろ…」

 

「人間の負の感情をエネルギーに?人間の負の感情ってなんだろ?イメージしやすいのは怒りや悲しみ憎しみなんかだけどそれを帳弥君はエネルギーに変えているってこと?そしてそのエネルギーを使って事象を具現化できるならそれはどこまで可能なんだ?今の帳弥君の言い方からしてやけに能力の情報が細かかった。あらかじめ作ったならそれまでなんだけど、なんか元からあった力をそのまま使っているような、誰かを手本にしているような型が見えた。もしかして帳弥君の個性って事象の具現化ってよりもその力の複製(・・)に近いのか?もしそうなら自由度はこの世界に存在する個性の数だけなんじゃ…」

 

「デク君またぶつぶつ言っとる…」

 

ぶつぶつと独り言をつぶやき始めた緑谷とそれを見て苦笑する麗日。

だがいずれにしろ、他のみんなも天音の個性について考えているのか色々意見が飛び交っていた。

その間にもモニター先での展開は進で行く。

一同がモニターを観ると、場面はちょうど天音が轟がいる部屋のドアを開けたところだった。

 

 

 

「丁寧に氷で核を覆ったのか。悪あがきだな」

 

部屋に入るなり周囲を確認した天音。すると、轟は会話をすることなく天音に向けて氷を生成し放つ。

避ける素振りもしなかった天音はそのまま轟の攻撃が直撃する。

手ごたえがあった轟は若干の警戒を解くも、すぐにそれが甘い考えだと気づいた。

 

「一撃が随分派手だな。もしかして繊細なコントロールは出来ないのか」

 

「…なんで無傷なんだよ」

 

「あー正直に言うと当たってない(・・・・・・)

 

「…そんなはずねえだろ。今お前は避けなかっただろ」

 

「アキレスと亀ってだけ教えてやるよ。さて、じゃあ…」

 

天音は手を床に付けるとそのまま轟を真っ直ぐ視界に捉える。

 

「お前の得意でやってやる」

 

天音の周囲が一気に凍てつく。なぜか床に霜が発生する異質さに轟とモニター室にいる全員が戸惑いに包まれる。

 

「…【氷凝呪法 直瀑】】」

 

「ぐあっ?!これは?!」

 

呪いの氷が地面を這って轟に直撃し炸裂する。一気に轟の身体に氷の塊が生えるとそれと同時に襲う重い衝撃。

身体に氷の耐性があるはずの轟が、そのあまりの寒さと威力に怯む。

 

「呪力の籠った氷だ。いくら氷に耐性があってもそれを上回る威力で放たれれば効くだろ。このままじゃ自分と俺の氷で体温下がり続けるぞ。対処方法(・・・・)あるんだろ?」

 

天音は挑発を込めて轟の顔の左にある火傷を指すように、天音自身の左顔を指さした。

その意をちゃんと理解したのか、怒りと殺気が宿った瞳で天音を睨む。

 

「ふざけんな…。俺は絶対に炎は使わねえ(・・・・・・)!」

 

「使わない…か。ふざけてるのは誰だろうな」

 

轟の言葉に、今度は天音が殺気を込めて轟を睨んだ。恨みと呪いが込められた冷たく暗い重圧が僅かに放たれた

 

「…なにが言いてえ」

 

「お前は今本気か?全力か?」

 

「…当たり前だろ」

 

「嘘はダメだろ。…【砕氷(さいひょう)】」

 

軽く指を鳴らす。瞬間それがトリガーとなり、天音が発生させた氷や凍った部分全てが砕けて衝撃波が発生した。

不可視の衝撃が部屋中に生まれる。上手く調整したのか、核爆弾の氷は上手く壊さずに。

衝撃波に包まれた轟は血を吐き出しながら吹き飛ばされ壁に打ち付けられた。

 

「一度辞書で意味を調べることを勧める。お前は今、本気でもなければ全力でもない。自分の持ちうる全ての力を出すのが全力であり本気だ。それを聞いてまた聞くけど、お前それ全力?」

 

「がっ!…何度も、言わせんな!俺は母さんの力だけで(・・・)…№1に」

 

「ほんと…どいつもこいつも、私怨ばっか。資格なし」

 

またも左手の指を鳴らす天音。すると部屋の壁付近にいた轟がパッと天音の目の前まで瞬間移動した。

何が起きたのか理解していない無防備な轟、そんな彼を天音は右手で拳を握り思い切り殴り飛ばす。

しっかり十劃呪法で強制弱点を作り威力を上げて放った天音の拳は轟の腹に突き刺さった。

先ほどよりも多くの血を吐き出した轟。返り血が天音の顔についた。

先の爆豪と似たように、指を鳴らし吹き飛ばした轟を目の前に移動させまた殴る。

 

「自分よりも圧倒的な力を持つ相手に対して、個性をフルに使わない。その理由は同じ個性を持つ父に恨みを持っているから、か。随分とくだらないな」

 

「…お前、なん…でそれを」

 

「ここはヒーローになるための場所だ。ヒーローとは弱きを助け強きを挫く存在。ヒーローとは市民を守るためにいる。どんな手を使っても助けを必要とする人に手を差し伸べ、どんな手を使っても悪い敵を倒し捉えなければいけない。だが今のお前はどうだ?本来の個性である氷と炎、その半分しか使わず、結果俺に手も足も出ない。ふざけているのはお前だろ」

 

何度も殴り飛ばしていた轟の首を掴むとそのまま持ち上げてボロボロの彼を見上げている天音。

 

「っ…」

 

「この状況、もしお前がヒーローで俺が敵だった場合、お前は手も足も出ない敵相手に全力を出さずに負けるんだろうな。殺されるかどうかは知らねえが、敵がヒーローを倒して自由になったらやることは一つ。次の得物を決め暴れる。街を壊し、無害の人間を殺す。人々の悲鳴を、絶叫をBGMにまた殺す。これらの悲劇をひき起こしたのは一体誰か。直接暴れた敵か?違うな。じゃあ避難に遅れた市民か?もっと違う。答えは明白だ。…お前だよヒーロー。変なプライドや意地で全力を出さずおめおめ敵に負けたがゆえに、無駄な犠牲が増えた。可哀想だな、自分のことしか考えていない馬鹿なヒーローのせいで善良な市民が死んだ。直接殺していないからセーフか?自分の手を汚さないなら何をしてもいいのか?そんなにヒーローは偉いのか?なあ教えてくれよ轟焦凍、くだらない意地で負けてどう市民に言い訳するんだ?どう被害者に詫びるんだ?ヒーローに育てられたんならわかるだろ?ヒーローの本質(・・)が」

 

「お、れは…」

 

徐々に轟の首を掴む手に力が入る。このままでは空気を取り入れるための気道が確保できない。教えてくれと言いておいて全く話させる気のない天音にツッコむ者は居ない。

モニターで観ていたオールマイトがそのマイクに手を懸け止めようとしたその時、入り口付近から爆発が起きた。

 

「俺ぁまだ負けてねえんだよ女顔!」

 

爆豪が血と傷だらけのまま突っ込んできた。天音の視線が爆豪に向いたのに気づき、轟は自身の右手から氷を生成し放つ。

轟と爆豪に挟まれた天音。だが指を鳴らして適当な氷と位置を入れ替え回避した。

自分の分身をつけていたはずなのにここまで来た爆豪に一瞬疑問が残ったが、その答えは隣の氷と入れ替えてきた奴が教えてくれた。

 

「説明してみろ」

 

「連れて来いってことだったんで連れてきた。ていうか勝手に行ってた」

 

「まあ俺ならそうだな」

 

「んでこれからは2対2?」

 

「…つまらないからもう終わりにするか。これ以上は後に響く(・・・・)

 

ボロボロになりながらもまだ戦意が失っていない爆豪と、どこか先ほどよりも同様で戦意が散っている轟。

これ以上の戦闘は身にならないと考えた天音は分身と共に口元に手を添える。

 

「呪いの込められた言葉は言霊といい、特別な力が宿る」

 

添えた手を外すとその口もとには先ほどの試験でもみせた不思議な模様。口端にある蛇の目と、ベッと出した舌にある牙の画。

それを天音本体と分身の両者に宿った。

思わず耳を防ごうとする二人だったが、気づくのが遅かった

 

「「【ぶっとべ】」」

 

二人が放った言霊。それは単純に威力が二倍となって放たれた。

凄まじい威力に吹き飛ばされた二人はビルの壁を突き破り外へと放り出された。

かなりの距離吹き飛んだ二人を見て天音はその後の回収をしなければいけないことに気づいて、見るからにめんどくさそうな表情を浮かべた。

 

「まあ、これで終わりだな」

 

分身に二人の確保を命じて本人は核爆弾に手を添えた。勝利条件を満たした天音はそのままモニター室へと歩き始めた。

 

『おっとと、ヒーローチーム WIIIN!!』

 

 

遅れてやってきたオールマイトのアナウンスが天音の勝利を告げた。

雄英一年のトップを争う実力者3名による戦いは、数的不利という状況ながらも、帳弥天音の完全勝利で幕を閉じた。

 

 




【オリジナル技紹介】
《氷凝呪法・砕氷(さいひょう)
氷凝呪法で生成した氷を砕き衝撃波を発生する。

《無義遊戯》
通常の拍手で入れ替わるよりも効果範囲が狭まる縛り→指を鳴らすだけで位置を入れ替えられるようになった。
ついでに呪力消費も減って燃費◎


今後もオリジナルの技などが出来てきますので、その際はこうして解説を入れようと重います!
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