ゲ謎要素はキャラが登場するわけではないので、あしからず。
9月になり新学期を迎えた。
夏休みの間はこれといったイベントはなかった。別にぼっちだからとかじゃなくて、どこで何をするのも金がいる。
極端な貧乏じゃないが、友達と夏祭りに行って同じように楽しめるかと言ったら難しい。妹は受験だし、なるべくそっちに金を使ってほしいというのが兄の威厳だ。
とは言っても今年はいつもと違くて、何もしなくても夏祭り自体は行った。人間の作るお化け屋敷とか屋台とかを本物達はどう思うのかとか、色々楽しかった。ろくろ首って日本列島並みに首伸ばせるって知ってた?いつ使うか知らんけど。
「よう」
自転車置場にチャリを停めていると、同じクラスメイトの優斗が声を掛けてきた。夏を楽しんできましたと言わんばかりの小麦色に焼けた肌に、ところどころ皮が剥けた赤い部分が見受けられる。
「随分焼けたな」
「半分くらい海にいたからな。合宿に海の家短期バイト。来年はこんなことやってられないし」
「あっそ。で、お目当ての彼女は出来たのか?」
「ノーコメントだ。というのもな……」
ノーコメントなのに喋るのかよと思いながら、適当に聞き流しながらクラスに向かって歩いていく。俺の話をしたところで信じてもらえることはないから、適当に相槌をうつ。
「お前はどうなんだよ」
「うんうん……うん?どうって?」
「だから……お前さ、如何にも自分は興味ありませんって面するけど。性欲ないのか?」
「ないと言ったら嘘になる。けど、そこまで必死こいてまでじゃねぇかな」
「ふーん。ま、お前みたいな変人相手するのってなかなかだからな」
「どこが変人なんだよ」
「どしゃ降りの雨の中で【絶望ごっこ】なんて遊びやらないね」
【絶望ごっこ】ーーアニメでよくある衝撃の事実を知り、雨の中で叫び散らかすあれ。ストレス発散に丁度いい。
「お前の妹もそういうとこなければ優良物件なのにな」
「そんな言い方すんな」
クラスの扉を開け、エアコンのひんやりした風を浴び思生き返るような声を漏らした。ガヤガヤと騒がしいクラスの中で、俺は優斗と別れ自席に向かうーーが、思わず足を止めてしまった。
「(なんか知らん女子おる……)」
バチバチの白ギャルが俺の机を占拠していた。誰と話す訳でもなく、ただ一人ネイルしてある爪を眺めている。
その場で一学期のクラスの様子を思い出すが、あんなのいなかったはずだ。夏休みデビューというやつか?でも失敗してるよなあれ。
しかし、正直なところ容姿はかなり可愛い分類だと思う。JKモデルとか、漫画で参考にしました!とか言っても差し支えないレベル。知らんけど。
とやかく考えても仕方ない。以前からいるなら普通に話しかけても問題ない筈だ。……ないよね?
意を決死再び歩み始める。目の前まで来ると彼女はこちらをチラリと見た。
「そこ、俺の席だからどいてくれないか?」
瞬間、隣と前にいたクラスメイトが俺を見た。片方は不思議な顔をし、もう片方は怪訝な表情をしている。あれ?俺、席間違えてる?
『貴方……見えるの?!』
白ギャルの一言に全てを察する。待て、何か冗談かもしれない。僅かな希望に賭けよう。
両目を閉じ、まずは右目を開ける。白ギャルはいる。
もう一度両目を閉じ、今度は左目を開ける。そこに白ギャルはいない。
三度目の正直。勢いよく両目を開くと、白ギャルは両手でピースしながら眩しい笑顔を向けてくる。
「なんだよもぉぉぉ!またかよぉぉぉ!」
クラス全体に響く絶叫とともに、俺は膝から崩れ落ちた。周りの目線など気にならない。右目だけの特殊能力が両目でも適用されている事実に、自身が人外になっている感じがした。
『おーい?』
床に寝転がりながら顔を覗き込んでくる白ギャル。顔面偏差値の高さに思わず胸が高鳴るも、俺はすぐに行動を移す。
白ギャルの腕を掴み共々立ち上がると、勢いのままクラスを飛び出した。
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選ばれたのは中庭でした。
自販機隣のベンチに座らせ、俺は立ちはだかった。
「お前なんなんだ」
『女の子にお前はないんじゃない?』
「……君はなんだ」
『そっちこそ、見えてるならどうして1学期は無視してたの?関わりたくないとか?』
「見えるようになったのは夏休みにだ。もしかしてずっと俺の席に?」
『ずっとじゃないよ。たまには他のクラス行って遊んでた。あそこは私の定位置』
え、じゃあずっと俺の上にいたの?なんかむず痒いんだけど。
『ね、ね。それよりも遊ぼ!鬼ごっこ?それともかくれんぼ?』
「遊ばない」
『じゃあ私も答えない』
んぐっ……端から見れば一人で走り回ってるだけなんだぞ。ていうかチョイスが小学生かよ。
「じゃあじゃんけんだ。勝ったら質問に答える。いいな?」
『ん、いいよ。最初はグー!じゃんけんポン!』
俺パー、白ギャルチョキ。つまんな。
『やった!じゃあ、君の名前は?』
「佐藤 光だ」
『好きな食べ物は?』
「質問は1回だけだ。もう一回!」
じゃんけん!
『しょうが焼き、赤色、コーヒー派、文系と……』
ーーなんで4連敗すんの?俺ってじゃんけん弱すぎ?それと最後の質問は聞かなくてもクラス見れば分かるだろ。
『どうする?まだやる?』
「やるにーー」
「おい、自販機でどんだけ悩んでんだ。もう始業式始まるぞ」
一向に帰ってこない俺を呼びに来た優斗。見れば既に他のクラスは移動を始めている。
「……ん、分かった。行くわ」
一旦お預けだなこれは。そう切り替えて歩き始めるが、後ろからふよふよと浮きながら白ギャルが後を付いてくる。ダメだ、完全に弄ばれるわ。
「すまん、トイレ行くから先行くわ」
それだけ伝え、俺はまた白ギャルの腕を掴むと男子トイレの個室に駆け込んだ。これでようやく話が……
白ギャルに視線を向けると、明らかに怯えた様子で肩を震わせていた。よく考えれば相手が幽霊であって、普通に事案だわ。
「えっと……その、聞きたいことがあるだけなんだ」
『……ごめんなさい。許して……』
その言葉を聞き、罪悪感が込み上げる。そうだ。こんな状況怖いに決まってる。
俺はそっと鍵を開け、個室から出てゆっくり扉を閉める。敵意さえ見せなければーー
『ヤダ……!ヤだやダやだ!こンなトコろに閉じ込メルな!お願イ!何デもイウコとギくガら?!』
明らかなヒステリックに危険を感じ再び扉を開けると、白ギャルは俺を突き飛ばし逃げるように飛び出していく。
衝撃で背中を強打し踞る。次第に始業のチャイムが鳴り響くが、そんなところではなかった。何かしらの地雷を踏んだーーそうとしか思えなかった。
何が相手でもちゃんと見ようって思ったのに、結局自分の都合優先じゃないか。片目とか両目とか、そんなの後からでよかった筈だ。
「最低だ、俺……」
両目でも白ギャルーーいや、彼女が見えるのは、何があっても逃げるなよという忠告なのかもしれない。
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翌日早朝。部活動の朝練組すらまだ来ていない時間に、俺は校舎の階段を駆け上がっていた。
この時間帯なら彼女とちゃんと話が出来るかもしれないと、ちゃんと昨日のことを謝罪しないといけないと思いクラスの扉を開ける。
「姿はなし、か……」
昨日の今日で流石にいるとは思っていない。俺は自席に荷物を置き、早速彼女を探し始めた。
ーーかれこれ20分は走り回っただろうか。まだ見れてない場所はあるが、一向に見つからない。そもそも学校で見つけたからって、ずっとここにいる訳でもない確証もない。
それでも見つけるしかない。関わるなと言われてもせめて謝りたい。その一心だった。
「おっと……」
トイレを横切り思わず足を止める。もちろん昨日とは違う場所だ。……彼女の生前には一体何があったのだろう。こんな場所で思い付くのは、最悪な事しかない。
「女子トイレの前で何してるんですか」
「部長?なんでここに?」
熟考していた俺に話しかけてきた彼女は花田美咲。俺が所属してる弓道部の部長で、この高校では【大和撫子】を一番体現している人だ。男子はもちろん、女子からも人気が高いらしい。
「文化祭の準備で部活動に出れてないので、朝練しているんです。勝手な都合なので皆さんには言ってませんが」
「あ、そうなの……」
「貴方の方こそ朝早く何をしてるんですか。他の人が見ていれば怪しまれますよ」
「部長は怪しまないのか?」
「貴方がそんなことしない、もとい出来ない事は分かってます」
自分は分かってますみたいに言うけど、クラス一緒だったこともないじゃん。部活動が一緒ってだけで。
「それより昨日の活動日誌見ましたけど、いつにも増して適当過ぎじゃないですか。仮にも副部長なんですから、後輩の見本になるような姿勢をですね……」
「副部長って、2年生俺と部長しかいないからだろ」
「貴方が1年生の時から部長、部長って呼ぶからなし崩しで任されたんですが、その件に関しては何か弁明が?」
それに関しては本当に申し訳ないです。いや、だって俺の学年の時から女子側は部長しかいなかったし、男子側は俺含めて4人いたけど1人は仮入部中に止めて、あと2人は在籍していたって実績が欲しかっただけで幽霊部員だし……
今年は部長のおかげか、女子側が10人くらい入った。男子側?2人だ。形見狭い。
「いや、こんな話してる場合じゃない」
「こんな話って……まぁ、確かにそうですね。一刻も早くここから立ち去ってもらいたいです」
そんな言い方……あ、そっか。そうだよね。じゃなかったら来ないもんね。
「失礼しました……」
踵を返しそそくさとその場を離れていく。なんで早く気付かないかな。でも話しかけてきたのそっちーー
「弓道場から近いトイレってこっちじゃないよな?」
気にしたところでの疑問を投げ捨て、俺はまた走り出した。
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早く登校している生徒がちらほら来はじめた。まずい、時は一刻を争う。焦りすぎて言い方が潜入スパイみたいになってる。
角を曲がると、昨日のようにふわふわと浮かぶ姿が見えた。
「見つけた!」
思わず出てしまった俺の声に反応し彼女は振り返る。逃げようとするのを見て、俺はまた叫ぶ。
「待って、待ってくれ!昨日は悪かった。話だけでも聞いてくれ!」
動きを止め振り返る彼女。少し距離は離れているが、これ以上詰めたらまた同じ轍を踏むと考え、その場から話し始める。
「その……本当にごめん。俺もいきなりで驚いててさ。実は見えるってのは右目だけなんだ。左目や両目じゃ見えない」
「けど、君は両目でも見える。その理由が知りたくて焦って……ほら、もしかしたら悪い方向に進んでるかもしれないし」
「だから、怖がらせたりとかそんな意図はなかった。これだけでも信じてくれ」
誠心誠意に頭を下げる。正直もう、周りがどうとか気にしなくなってきた。
『顔、上げてよ』
彼女の声を聞いて恐る恐る頭を上げる。偏差値限界突破の顔で儚げ表情が襲いかかったが、長男なので耐える。別に関係ない。
『私のお願い聞いてくれたら許す』
「お願い?」
『今週末、文化祭あるでしょ?一緒に巡ってよ』
「へ……?」
『いや?』
「いやって言うか……」
あんなことしたのに?との疑問が勝つ。いや、あんなことがあっても見えてるのが俺だけなら、誰かと巡りたいなら、その選択肢しかないのか……
「昼からで良いなら」
『本当に?じゃあ約束だよ!』
さっきまでの不安はどこへやら、俺は強引に指切りをさせられてしまう。
『あ、今日はかくれんぼね!』
「しないよ?」
聞く耳持たずすっ飛んでいく彼女。気分屋っぽいというか何というか……このままじゃ振り回されっぱなしになりそう。
一抹の不安を覚えながら、俺は自分のクラスに戻った。
次回、白ギャル幽霊は遊びたい➁