司会「高松宮記念、枠順が出ました。フルゲート十八人です。今夜は星野さん、水原さん、それに展開を読ませたら右に出る者のいない三上さんにお越しいただきました。よろしくお願いします」
三上「お願いします」
高松宮記念 出走表(中京・芝1200m・GⅠ)
1枠 1番 スプリングウェル(差し)
1枠 2番 パワーチャージャー(逃げ)
2枠 3番 アストンマーチャン(先行)
2枠 4番 ドミナントパワー(先行)
3枠 5番 トラッドパルフェ(差し)
3枠 6番 ファーメントウィン(先行)
4枠 7番 ブリーズシャトル(差し)
4枠 8番 ブルータルラッシュ(追込)
5枠 9番 ジャズステップ(先行)
5枠 10番 ショアライトハウス(差し)
6枠 11番 サウザンボルテール(逃げ)
6枠 12番 プロペライザー(先行)
7枠 13番 カレンモエ(追込)
7枠 14番 ワイナリーベティ(差し)
8枠 15番 バトルオブエラ(先行)
8枠 16番 ノーティカルツール(差し)
8枠 17番 タップステップ(先行)
8枠 18番 ベーサルシュート(追込)
司会「今年の主役は、やはりこの子でしょう。カレンモエさん。香港スプリントを勝って、海外GⅠウマ娘になって帰ってきました」
星野「ニュースになりましたからね。スポーツ欄だけじゃなく、一般の番組でも取り上げられた。ウマ娘のレースが、ああいう扱いを受けるのは珍しい。それだけ、世界を獲るというのは大きいんです」
司会「実はこの三人、ちょうど一年前、同じこの中京の高松宮で、直前特集をご一緒しています」
三上「……あまり、思い出したくない回ですね」
司会「と、言いますと」
三上「あの時、私はこの子を、展開的に厳しいと切ったんです。スローペースの先行有利、後方の差し追込には出番がない、と。理屈は正しかった。実際、三着以下は読み通りに先行勢が残った。……ただ一頭、カレンモエさんだけが、後方十二番手から、上がり三十二秒五で突っ込んできて、二着。私の分析が、丸ごと意味をなさなかった」
水原「私は、もっと無様でした。実績のないこの子は掲示板まで、五着か六着、と言い切って、結果はクビ差の二着。番組で『撤回します』と頭を下げました。あの子は、実績では測れない」
星野「私は、あの時この子を対抗に推していました。展開が向かなくても来る、と。一番近かったのは私です。……まあ、それでも二着までは読めませんでしたが」
司会「その子が一年で、スプリンターズSを勝ち、香港まで獲った」
星野「ええ。ですから今年は、はっきり言います。本命は、カレンモエさんです」
司会「対抗ではなく」
星野「本命です。去年、半信半疑で対抗に置いて、当てた。今年は迷う理由がない。世界を獲ってきた脚ですよ。この中京で、去年以上の走りを見せても、私は驚きません」
水原「……星野さん、そこなんですが」
星野「はい」
水原「私は今年、この子を実績では切りません。去年それで恥をかいた。ただ、一つだけ、去年となにもかも違うことがあるんです。芝です」
司会「芝、ですか」
水原「去年は、国内を使ってきての高松宮でした。今年は、香港の重い芝を勝ってきての高松宮です。香港のコースは、ヨーロッパに近い、重くて時計のかかる芝。脚力で踏み込んで、ねじ伏せるレースになる。一方の中京は、日本の標準的な、軽くて速い芝です。——香港の重い芝で活きたあの脚が、中京の軽い芝に戻った時、同じように動くのか。私は、そこを本気で疑っています」
星野「芝が違うのは、そりゃ違いますよ。でも、強い脚は芝を選びません。香港で世界をねじ伏せた子です。中京の軽い芝くらいで、止まりますか」
水原「止まるかもしれない、と言っているんです。……ただ、これも、去年この子を読み外した人間の言うことです。半分は、自信がない。聞き流してくださって構いません」
司会「三上さんは、展開からどう見ますか」
三上「今年は、逃げ宣言が二人います。2枠2番のパワーチャージャーさんと、6枠11番のサウザンボルテールさん。去年の単騎逃げと違って、前に二人いる。流れは、去年より速くなる可能性が高い」
司会「ハイペースに」
三上「読み切れませんが、その公算が大きい。——そして、ここが去年の私の宿題なんですよ。去年の回顧で、私はこう言ったんです。今回はスローでこの子に最悪の展開だった、もしハイペースだったら結果は逆だったかもしれない、と」
司会「ハイペースなら、カレンモエさんに向く」
三上「私の理屈では、そうなります。だとすれば——去年勝てなかった分、今年こそ、この子に展開が向く。本命はマーチャンさんに推しますが、その最大の脅威は、私はカレンモエさんだと見ています」
司会「本命はアストンマーチャンさん」
三上「ええ。2枠3番。セントウルステークスを勝って、勢いがある。先行できる枠を引いて、中京は前残りのコース。堅いのはこの子です。ただ、去年あれだけ展開を無視された手前、カレンモエさんを『来ない』とは、口が裂けても言えません」
水原「三上さんまで、強気ですね」
三上「強気というより、去年の傷が疼くんです。あの上がり三十二秒五を、私はまだ説明できていない」
司会「先行勢で、他に注目は」
三上「前残りなら、二、三番手にいる先行勢がそのまま残ります。3枠6番のファーメントウィンさん、5枠9番のジャズステップさんあたり。上位はマーチャンさんとカレンモエさん、それを先行勢が追う。私の絵は、そういう形です」
司会「新人の子はどうでしょう。4枠7番、ブリーズシャトルさん」
三上「……差し脚質ですが、新人で、初めてのGⅠです。素質は認めますが、この面子で上位に絡むには、まだ一枚足りない。展開がよほどはまれば、という程度ですね」
水原「経験のなさは、こういう大舞台で出ます。私も、上位には置きません」
星野「若い子ですから、思い切りはいいでしょうが……まあ、今日の主役は、別の子でしょうね」
司会「では、予想を。三上さんから」
三上「本命、アストンマーチャンさん。対抗、カレンモエさん。流れが速くなれば、対抗が本命を差し切る目も、十分にあると見ます。三番手以下に先行勢、という並びです」
司会「水原さん」
水原「本命は……アストンマーチャンさんにします。カレンモエさんは、正直、評価に困るんです。脚は本物。でも、軽い芝で同じ脚が出るのか、私には確信が持てない。だから、軸にはできない。今日のこの子は、私にとっては、勝ち負けより、日本の軽い芝でどう走るかを見極める一戦です」
司会「星野さん」
星野「本命、カレンモエさん。去年、この中京でこの子に裏切られた借りを、今年はこの子自身が返してくれる番です。世界を獲った脚が、地元でどんな走りをするか。私は、一番いい結果を見せてくれると信じています」
司会「本命が、割れましたね。星野さんはカレンモエさん、三上さんと水原さんはアストンマーチャンさん。一年前、お三方がそろって読み外したこの子が、今年はどう走るか。高松宮記念は、今週日曜、中京。お三方、ありがとうございました」
星野「ありがとうございました」
水原「ありがとうございました」
三上「ありがとうございました」