アンチ・ヒーロー:カレンモエ   作:ねじぇまる

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金曜特番【高松宮記念直前SP】

司会「高松宮記念、枠順が確定しました。18人のフルゲート。今日は星野さん、水原さんに加えて、レース展開分析でおなじみの三上さんにもお越しいただいています」

 

三上「よろしくお願いします」

 

 

 

 

高松宮記念 GⅠ

3月29日 中京レース場 芝1200m

番号名前脚質人気短評

1
1レディペティヤン先行11先行力は確か

2フリルドライム差し13末脚一辺倒

2
3ジップライナー逃げ10単騎なら粘る

4ヤムヤムパルフェ先行8好位から

3
5サクラバクシンオー先行
1
引退レース・盤石

6ピッコラバリアント差し9展開待ち

4
7アンタゴニスト先行
2
昨年2着の実力

8コロッセオファイト追込14後方一気

5
9ブリーズグライダー差し7前が崩れれば

10シャインプレイズ先行4先行有利の枠

6
11ブリッツエクレール先行
3
前残り警戒

12フリルドアップル差し12大駆けあるか

7
13フェアリーズエコー追込15同型と被る

14カレンモエ追込5展開次第

8
15ブラボーセカンド差し6堅実な末脚

16スウィフトアクセル先行16前で渋太く

17ロングウェスト差し17展開向けば

18レイナーディン逃げ18大外から主張

 

 

 

 

 

司会「では早速、注目の枠を見ていきましょう。まずバクシンオー選手、3枠5番」

 

星野「内目の好枠。バクシンオー選手は先行タイプですから、内枠からスムーズに好位につけられる。陣営は大喜びでしょう」

 

水原「引退レースでこの枠。持ってますよ」

 

三上「枠としては文句なしです。注目すべきは周りの枠ですね。2枠3番にジップライナー選手。逃げ候補が内枠にいて、バクシンオー選手がその直後に入れる。そして4枠7番にアンタゴニスト選手。昨年2着の実力者がすぐ外。先行グループの並びとしては理想的な配置になっています」

 

司会「カレンモエ選手は7枠14番。外目です」

 

三上「結論から言うと、追込脚質のカレンモエ選手にとって、14番という枠自体は致命的ではありません。どうせ後ろに下げますから。ただし、問題は隣の枠です」

 

司会「隣?」

 

三上「7枠13番にフェアリーズエコー選手。この子も追込タイプなんです。スタートで二人並んで後方に下がると、お互いの位置取りが被る。道中で余計な脚を使わされる可能性がある」

 

水原「そこまで気にする必要がありますかね。1200メートルの後方なんて、どこにいても同じでは」

 

三上「いえ、1200の後方こそ位置取りが重要なんです。追込はコーナーでどこを通るかが全て。内に入れるか、外を回すか。その選択を第二コーナーまでに決めなきゃいけない。隣に同型がいると、その判断が1テンポ遅れる」

 

司会「なるほど。では展開予想に入りましょう。三上さん、まず、カレンモエ選手が善戦するとしたら、どういう展開が必要ですか」

 

三上「ペースが速くなること。これに尽きます」

 

司会「具体的には」

 

三上「2枠3番のジップライナー選手と、8枠18番のレイナーディン選手。逃げ候補がこの二人います。レイナーディン選手が大外18番から意地でもハナを主張しに行った場合、内のジップライナー選手と逃げ争いになる。二人が競り合えば、前半600メートルが33秒を切るかもしれない。スプリントGⅠでも速い部類のペースです」

 

星野「ハイペースになると、先行勢が脚を使わされますね」

 

三上「そうです。先行勢が直線で脚が残らない。バクシンオー選手は別格なので先頭は守るでしょうが、二番手以下の先行グループが崩れる。そこに後方から脚を溜めていたカレンモエ選手が差し込んでくる。阪神カップの上がりタイムを見る限り、この子にはそれだけの脚がある」

 

水原「ハイペースになれば、ですよね」

 

三上「はい。ハイペースの展開で、先行勢がバテて、直線で前がバラけて、内にスペースが空く。その条件が揃えば、バクシンオー選手に次ぐ2着まであり得ると思います」

 

星野「バクシンオー選手の隣まで来る可能性があるんですね」

 

三上「展開が完全に向いた場合は、はい。仕掛けのタイミング次第ですが、残り600メートル地点——第三コーナーの入り口で動き出して、直線入り口で4番手以内にいれば。そこからの上がりで、バクシンオー選手に迫る可能性はあります」

 

司会「面白い展開ですね。では——逆に、そうならなかった場合は? ペースが落ち着いた場合」

 

三上「厳しいです」

 

司会「即答ですね」

 

三上「レイナーディン選手が大外から行かずに控えた場合。ジップライナー選手の単騎逃げになります。ペースは前半600メートル34秒前後。スプリントGⅠとしては緩いペースです」

 

水原「先行勢が楽をする展開ですね」

 

三上「そうです。先行勢が脚を温存できる。直線に入っても止まらない。バクシンオー選手、アンタゴニスト選手、ブリッツエクレール選手、シャインプレイズ選手——この四人が前を固めたまま、壁になる。後方からの追い込みでは物理的に捌けない」

 

星野「内に入ったら壁、外を回したら距離のロス」

 

三上「その通り。1200メートルでそれをやると、届きません。カレンモエ選手の上がりがいくら速くても、前が止まっていなければ差は詰まらない。掲示板に入れるかどうか、というところでしょう」

 

水原「つまり、カレンモエ選手の成績は、展開次第で2着にもなれば6着にもなると」

 

三上「極端に言えば、そうです。この子自身の力というより、逃げタイプの出方でレースが決まってしまう。レイナーディン選手が行くか行かないか。それだけです」

 

司会「なるほど。水原さんは、レイナーディン選手はどう出ると見ますか」

 

水原「控えると思いますよ。大外18番からハナを主張するのは相当なリスクです。最初の200メートルで脚を使い果たしかねない。陣営が冷静なら、無理はしないでしょう」

 

司会「つまり、スローペースの可能性が高い」

 

水原「はい。となると、先行勢がそのまま残る。バクシンオー選手が1着、アンタゴニスト選手が2着、ブリッツエクレール選手が3着。堅い決着です。カレンモエ選手は5着か6着。……芝スプリントGⅠの実績がない子が、この展開で上位に来ることは、まずない」

 

司会「星野さんは」

 

星野「展開の話は、三上さんと水原さんに完全に同意です。スローペースならカレンモエ選手は厳しい。ただ、一つだけ」

 

司会「何でしょう」

 

星野「この子はGⅢで走らないのにGⅠで走る子なんです。データで読めない子なんですよ。展開が向かなくても何かをやる可能性が——いえ、これは願望ですね。解説者として言うべきことじゃない」

 

水原「願望では予想になりませんよ」

 

星野「はは。すみません」

 

司会「では最後に、お三方の予想をお聞きしましょう。三上さんから」

 

三上「本命はバクシンオー選手。これはどの展開でも揺るぎません。2着はペース次第。スローならアンタゴニスト選手。ハイペースならカレンモエ選手が入る可能性がある。ただし、スローの確率が高いと見ています」

 

司会「水原さん」

 

水原「バクシンオー選手が1着、アンタゴニスト選手が2着。堅い決着です。カレンモエ選手は、掲示板に載れば健闘と言えるでしょう。芝スプリントGⅠは、そんなに甘い世界じゃない」

 

司会「星野さん」

 

星野「本命はバクシンオー選手。……対抗は、カレンモエ選手を推したい」

 

水原「展開が向かない前提で、ですか?」

 

星野「ええ。根拠はありません。ただ、バクシンオー選手があの会見でこの子を名指しした。あの人の直感は、私たちのデータ分析より当たるんです」

 

水原「……それは、否定しにくいですね」

 

三上「展開の専門家としては何も言えませんが、一つだけ。バクシンオー選手が名指ししたということは、あの方はこの子がどんな展開でも来ると思っている、ということです。展開に関係なく来れる子だと。……もしそれが正しいなら、私の展開分析は意味をなさない」

 

司会「興味深いですね。高松宮記念は今週日曜日、中京レース場、芝1200メートル。バクシンオー選手の引退レース、カレンモエ選手の芝スプリントGⅠ初挑戦。お三方、ありがとうございました」

 

星野「ありがとうございました」

 

水原「ありがとうございました」

 

三上「ありがとうございました」

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